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Xboxキーマンインタビュー |
場所:米国ロサンゼルス Renaissance Hollywood Hotel
北米でのXbox Live本サービス開始の前日である11月14日に行なわれた合同インタビューでは、マイクロソフトXbox事業部オンラインサービス統括部統括部長の小出雅弘氏に加え、米Microsoft Xboxプラットフォーム担当ゼネラルマネージャーのJ Allard氏にもお話を伺うことができた。ここでは、そのときの記者会見の模様を紹介していこう。
■ ブロードバンドの採用……それは25年間にわたる長期的な“夢”への賭け!
米Microsoft Xboxプラットフォーム担当ゼネラルマネージャーのJ Allard氏。技術的な内容や日本市場に関する質問が多かったが、どの質問にも的確に回答していただいた |
J Allard:私たちが提供しようとしているサービスを実現するためにはブロードバンド環境が不可欠です。また、現時点はもちろん、今後ますますブロードバンド環境の普及が進んでいくはずです。さらに、Xbox同様Xbox Liveについても長期的な視点に立って投資や開発を行なっています。確かに、3年前にXboxの設計を始めた時にはその点が懸念としてありました。しかし、私たちはその時点で将来に賭けたのです。そして、現時点で状況を見る限り、我々はこの賭けに勝ったと思っています。アメリカでのXbox所有者のうち、すでに50%以上のユーザーがブロードバンド環境を持っているのです。つまり、アメリカにおけるXbox Liveの市場は限定的なものではなく、非常に大きなものであると考えています。
質問:ブロードバンド接続環境を提供しているISPとの提携に関する具体的な計画はありますか?
J Allard:Xbox Liveというのは非常に野心的な試みです。Xbox自体がそもそも最大限にゲームの可能性を活かせるようなゲームコンソールです。また、Xbox Liveはブロードバンドという最先端のデジタル通信技術を駆使しなければなりません。そこで、ISPをとおしてブロードバンド環境の普及を高めていくために、Xbox Liveとの互換性を検証するプログラムを準備しました。Xbox Liveとの互換性が確認されたネットワーク関連の周辺機器やISPのブロードバンドサービスなどにXboxのロゴをつけて提供します。そして、ユーザーがXbox Liveを楽しむために必要となる周辺機器やサービスを導入しようと思った場合、Xboxロゴの入ったネットワーク周辺機器やISPのブロードバンドサービスを選択すれば、問題なくXbox Liveが楽しめることになるわけです。つまり、このロゴがXbox Live対応を保証することになるわけです。
現時点ですでに14のISPと互換性プログラムに関する提携を行なっています。また、ネットワーク関連周辺機器ベンダーとは4社と提携を行なっています。この数は今後増えていくことになるでしょう。また、それ以外の分野においても今後提携を発表していきたいと思っています。
私たちは、エンドユーザーであるゲームプレーヤーのための、統合的なソリューションを提供しやすくするということが非常に重要であると考えています。そして今後は、小売店とISPとの間で協力して、各種サービスがバンドル化された商品が提供される、ということも増えてくると思います。実際に、FOX CommunicationsおよびRogers CommunicationsというISPと提携して、Xbox Liveに加入することを前提にブロードバンドサービスに加入することで、いくらかのインセンティブがもらえる、という企画も出ています。
質問:Xbox Liveの構想を実現するためにどの程度の投資が必要でしたか? また、その投資をどの程度の期間をかけて回収しようと考えていますか?
J Allard:最初にXboxというプロジェクトを承認したのは、Xboxという単なるひとつの商品に対して承認を与えたわけではありませんし、たった向こう3年間の事業に対して承認を与えたわけでもありません。25年間にわたる長期的な“夢”に対して承認を与えたのです。その夢というのは、インタラクティブなビデオゲームだけでなく、テレビや映画、音楽などが融合された“デジタルエンターテインメント”を提供しよう、というものでした。
Microsoftは、“エンターテインメントはソフトウェアビジネスである”という考えに基づいてこの事業を展開しています。そのため、ビデオゲームという分野がこの事業の入り口として非常に重要な役割を果たしていると考えています。
この事業に対しては、初期5年間に対して約20億ドルという予算を計上しています。もちろん、この投資を回収し収益を上げていくにはかなりの期間がかかると考えています。しかし私たちはこの事業に真剣に取り組んでいますし、まだまだ立ち上がりの段階ではありますが、これまでの業績に誇りを持っています。難しいことではありましたが、良くやったのではないかと思っています。
■ “次世代のハードウェア”は非常におもしろい競争になる
質問:今回Xbox Liveサービスの提供が始まることで、Xbox関連のハードウェア環境がほぼ整うことになりますが、今後の課題はどのように考えていますか?
J Allard:課題は非常にたくさんあります。まず、Xbox Liveの立ち上がりをうまく成功させる必要があります。また、パブリッシャーとも協力して、対応ソフトの提供も継続されなければなりません。現時点では勢いがありますが、それを今後も失速させずに続けていく必要があるでしょう。そして、Xbox Liveの競争力を高めなければなりませんし、Xbox Liveで提供するサービスの能力も高める必要があります。つまり、ゲーム産業そのものに関わることが課題となるとなるわけです。
Xbox Liveのいいところは、次から次へと革新的なプラットフォームを提供できるところにあります。ゲームを制作するパブリッシャー側にとっては、革新的なフィーチャーを持つゲームを今後次々に開発できることになりますし、ゲームをプレイするユーザー側にとっても革新的なゲームが今後次々にプレイできることになるわけです。また、テクノロジーに関して言えば、すでに私たちは次世代のハードウェアの技術に関して、非常にすばらしいものになるように研究を始めています。
質問:その“次世代のハードウェア”とは、Xboxの次世代機のことですか?
J Allard:たぶんね(笑)。ここでは否定も肯定もしません(笑)。重要なのは、ゲーム業界は動きが非常に早いということです。事実、ゲーム業界は四半期ごとの移り変わりとなっています。Xboxが発売されて今日でまだ364日しか経っていないのですが、この1年の間で私たちはたくさんのことを達成してきたと思っています。しかし、これからやらなければならないこともまだまだたくさんあるというのも確かだと思います。
次世代のことを考える場合には、まず現世代のことを考える必要があります。昨年、PlayStation 2の出荷から私たちのXboxが発売されるまでの間にたった19日しかありませんでした(筆者注:北米でのPlayStation 2の発売は2000年10月26日なので、この指摘は勘違いだと思われる)。しかし、そのたった19日の間に、PlayStation 2がどれだけ優位に立てたかという点は、非常に重要な問題です。当時私たちはXbox開発チームや製造ライン、販路などを一から立ち上げなければなりませんでした。しかし、現在はそれらが立ち上がって時間的な余裕ができました。そこで現在は、長期的な視点から設計をどうすればいいのか検討しています。次世代のハードウェアが出されるときには、Sonyにはそれほどリードを許さないのではないかと思います。非常におもしろい競争になることでしょう。
あともうひとつ。これまで、過去のゲーム産業はあくまでハードウェアが牽引していたと思います。つまり、ハードウェアの技術革新がこの産業を引っ張っていたわけです。しかし未来は、ハードウェアではなく、ソフトウェアやサービスがこの産業の発展を加速させていくのではないかと考えています。おそらく次世代のゲームは、ハードウェアによって限定要素がつけられてしまう、ということがなくなってくるでしょう。
■ 我々はネットワークゲームを普及させたいだけ
J Allard:もちろん、変更するということ自体は可能です。実は、現在でもXbox LiveではTCPを利用している部分もあるのですが、セキュリティの扱いから基本的にUDPのパケットフローを利用するようになっています。現在の家庭用のネットワーク機器では、NATによって家庭内ネットワークを構築するのが基本となっていますので、こちらで何らかの対策を施さなければ、ユーザー側ですばらしい体験ができなくなってしまいます。
私は、TCP/IPの開発に15年間関わってきました。また、IPv6の設計にも関わっていますのでよくわかります。今後新しい技術が登場して、そのうちのいくつかはXbox Liveのソリューションを提供するうえで役立つものになるでしょう。5年や10年という期間で考え、そういったスタンダードな規格を利用した方がより良いソリューションを提供できるというのであれば、そちらに変更することになるでしょう。つまり、現時点ではUDPの方が確実にサービスを提供できるから利用しているというわけです。
質問:Xbox Liveでは、ボイスチャットの様子は基本的にヘッドセットから出るようになっています。これでは、Xbox Liveのプレイの様子をそばで見ている人にボイスチャットの内容が聞こえないので、プレイの様子を見るときにはもおもしろさが半減してしまう気がするのですが、なぜこのような仕様になったのですか?
J Allard:この部分の仕様に関しては、もともとゲームのデザイナーやクリエイターに最大限の柔軟性を与えるという意味から、すべて制作側に一任しています。ヘッドセットを通してのみ会話が聞こえるという場合の利点としては、ゲームをプレイしている人だけで秘密の会話ができる、ということが挙げられます。しかし、テレビのスピーカから会話の内容を出すことも全く問題なくできるようになっています。要は、ゲームの制作側がどのように設計するかによって変わってくるわけです。しかし、ゲームの音量と会話の音量を独立して調整できるようにするという点と、ミュートをコントローラ側でできるようにという点は必ず守るようにお願いしています。
質問:では、5.1チャンネルサラウンド機能を利用して、会話している相手の声を後方のスピーカから出す、といったことも可能なのでしょうか?
J Allard:はい、もちろん可能です。
質問:Xbox Liveでは、サーバーが全て中央に集まっており、Microsoftによってトラフィックの状況をモニターされたり、顧客の情報が勝手に集められてしまう可能性があるために、参加を躊躇してるベンダーがあると聞いたのですが?
J Allard:Xbox Liveでサーバーを集めるという形態を採用したのは、あくまでもベンダーがゲーム開発に注力できる環境を整えるためにやっていることです。当然、あるベンダーのゲームの顧客はあくまでもそのベンダーの顧客です。ですから、あるゲームの顧客に関するデータは、必ずそのゲームのベンダーとの間でのみデータを共有することになります。
この形態は、放送の形態に似ていると思います。例えば、放送衛星を打ち上げて各家庭まで放送電波が届くような環境を作って管理する会社と、番組を制作する会社が異なっていることと同じです。
しかし、ベンダー側がどうしても自分たちでサーバーや顧客の管理を行ないたいというのであれば、それも可能です。ただし、システムのセキュリティの枠組みや、ゲーマータグやフレンドリストなどといった運用上の基準、十分なサービスのクオリティが提供でき保証できるのか、といった部分について十分にチェックし、私たちの要件を必ず満たしてもらうことになるでしょう。
ゲームのクリエイターは、ネットワークのホスティング業務や、オペレーションセンターの運営管理に精通していないことが多いです。そこでこの部分を我々が全て提供することで、ベンダーはゲーム開発に注力できるわけです。とにかく私たちは、オンラインゲームの普及を加速させたいのであって、私たちがオンラインゲームそのものをコントロールしようとしているのではありません。
■ 大浦氏にはXboxの次世代のプランをチェックして欲しい
質問:先日、日本のXboxの責任者である大浦氏が米Microsoftに移籍されましたが、この人事が日本の市場に対してどのような意味を持っているのでしょうか。今後の日本市場に対する戦略をお聞かせください。
J Allard:もともと私たちは、このXboxの事業やビジョンを北米にとどまらず全世界に展開していきたいという、非常に野心的な考えをしていました。しかし、現時点での日本市場では、もともと私たちが本来達成したかったことが、今の世代では達成できていないというのが事実です。そこで大浦さんに我々の事業計画をチェックしていただくためにアメリカに来ていただいたのです。それによって、今後の事業展開が多少変化してくる可能性はあります。ただ、私たちが大浦さんに期待する最も重要な部分は、私たちが計画しているXboxの次世代のプランが、より深く日本の市場になじむかどうか見ていただく、という点にあります。それによって、私たちが打ち出す計画が、日本市場でより大きな可能性を持ち、大きな成功が納められることを期待しています。
質問:どうもありがとうございました。
□Xboxのホームページ (英文)
http://www.xbox.com/
□「Xbox Live!」のページ
http://www.xbox.com/LIVE/Xbox%20Live-Media%20Event/
□Xboxのページ (和文)
http://xbox.jp/
□「Xbox Live!」のページ (和文)
http://xbox.jp/live/
□関連情報
【11月15日】北米で「Xbox Live!」が正式サービスをスタート
~記念パーティにはサミュエル・L・ジャクソンなどビッグネームが来場~
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20021115/live1.htm
【11月15日】Xboxキーマンインタビュー
小出雅弘氏に日本でのXbox Live限定ベータプログラムについて聞く
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20021115/live2.htm
【11月18日】北米版Xbox Live体験レポート~購入およびプレイ編~
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20021118/xbox2.htm
(2002年11月18日)
[Reported by 平澤寿康]
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