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「Age of Mythology」リードデザイナー |
「マスターアップに立ち会えなかったのが残念だ」と言いながら、「Age of Empires」、「Age of Empires II」での来日の際には見られなかった、発売前に新作の大ヒットを確信した絶大な自信ぶりが印象的だった。なお、弊誌では、同作についてすでに過去3回に渡ってインタビューを行なっている。このため、今回基本的な質問はあえて省き、作品の魅力を構成する周辺事情を中心に聞いている。同作の基本的な要素については、過去のインタビューを参照いただきたい。
さて、インタビューは氏のデモンストレーションからスタートした。デモンストレーションに使用したのは最新ビルドの英語版で、同梱のキャンペーンエディタを使って作成された専用マップを見せながら作品の魅力について解説してくれた。ちなみにこの専用マップは、3文明がそれぞれの大陸で生産活動に従事し、それらを舐めるようにゲーム視点が自動で移動していく。
スイッチ機能を利用して、最適なタイミングでユニットが沸いて戦闘が始まったり、ゴッドパワーが炸裂してその派手なエフェクトと効果が実感できるところが特徴で、プロモーション映像としては最上質と思える内容だった。このデータは製品発売後に英語版の公式サイト上から無料でダウンロードできるようになる予定だ。
終始ご機嫌だったBruce Shelley氏 |
Bruce Shelley 今回は最初からキャンペーンを強化しようと決めていた。というのはマルチプレイを好むハードコアゲーマー以外に、RTSに不慣れなカジュアルゲーマーも数多く取り込む必要があったからだ。カジュアルゲーマーは、シングルプレイでの印象を非常に重視する傾向がある。いずれにしても、幅広いユーザー層を対象にした結果といっていいだろう
GW 今回、神話がモチーフになっていますね。日本人は日本の神話については多少知識があるのですが、西洋神話についてはほとんど知識がありません。かくいう私がそうなんですが、今回のストーリーは神話上の有名なエピソードを題材にしているのか、それともオリジナルなのでしょうか
BS ほとんどは我々のオリジナルだが、いくつかは北欧、ギリシャ、エジプトの神話の有名なエピソードも採用している
GW 神話の魅力というのはどのあたりにあると考えてますか
BS 神話を選んだのは、ゲームのテーマとして最適だと考えたからで、個人的に神話に詳しかったわけではない。もちろん、ゲーム開発を進めていく上で、自然に神話に対しては詳しくなったけどね。西洋人としてギリシャ神話や北欧神話のエピソードは知っていたし、たとえばWednesdayはウーンという神、Thursdayはトールという神が語源になっているように、神話が文化の背景にある。そうした神話上の神々がゲームに登場するのは興味深いことだろうと考えたんだ
GW 先ほどカジュアルゲーマーの話が出てきましたが、今回β版をプレイしてみて、最初に神々の存在があって、そのほかゴッドパワー、神話クリーチャー、ヒーローなどが新しく登場して、とにかく新しい要素が豊富に盛り込まれています。そうした点ではカジュアルゲーマーにはちょっと難しいかなという気がしているのですが
BS そうかもしれない。ただ、キャンペーンでは、各文明の最初の3つのシナリオはチュートリアルにしてゲームの進め方が理解できるようになっている。またロールオーバーヘルプと呼ばれる新しいヘルプ機能も追加している。難易度についても「簡単」は、負けるのが難しいぐらいに設定しているので、ゲームを楽しみながら上達していくことができるはずだ
GW ちなみに「もっとも難しい」の強さはどうなってるんですか? 今回もまた少しインチキしてるわけでしょうか?(笑)
BS そのあたりはこれまでどおりだと思う。ただ、実はこのところ出張続きでゲームの細かいところの最近の開発状況が良くわかっていないので、最終的にはインチキなしになっているかもしれない
GW 確かに今回のコンピュータのAIは、これまでに比べて格段に鋭くなっている印象がありますね。AI開発に関して新しいブレイクスルーなどがあったりしたんでしょうか
BS 我々も仕事のやり方に習熟してきたということだろう。AI担当者は「Age of Empires」からこれで3作目になるしね。あと、今回は完全に一から開発をし直し、コードもいちから書いていったので、その辺で効率化が図られたのだと思う
GW 今回、1万人を対象にマルチプレイテストを実施しましたが、ユーザーからの反応、そしてメーカー側の対応について教えてください
BS 一番影響が大きかったのはプレイ時間の短縮だ。マルチプレイテスト開始前に比べて、1ゲームで5分ぐらい短縮した。やはりユーザーはスピーディにゲームを楽しみたいと考えているようだ。資源の採集速度、建物の建設速度、ユニットの生産速度などがすべて速くなっている
GW ちなみに反応が多く寄せられた国というとどこになるのでしょう。一番は北米だと思いますが
BS 北米が一番で、ドイツ、イギリス、フランスと続く。アジアでは日本、韓国、台湾からの反応が多かった。世界中で支持されている証明だと思う。我々が考えているのは単にコアゲーマーからカジュアルゲーマーまで、幅広い層に支持される内容に仕上げるだけでなく、文化的な思考を超えてドイツから台湾まで全世界で通用するゲームを作ることだと考えている。今回、その手応えは十分に感じることができた
GW ところで、今回、時代を進化させるたびに信仰する神を選択していくわけですが、初心者にはとっつきにくい印象があります。初心者向けの文明や神などがあったら教えてください
BS 初心者にはギリシャがお勧めだ。なぜならこれまで(AoE、AoK)と同じ感覚でプレイすることができるからだ。エジプトと北欧は、ギリシャに比べるとプレイにこつがいる文明になっている。これらは通常とは別のチュートリアルを用意しているので、プレイする前に試しておくといいだろう
GW 開発にもっとも苦労したところはどこになるのでしょう
BS 苦労した点はいっぱいあるが、中でももっとも苦労したのは神話ユニットを、どうやってうまくゲームに溶け込ませることができるかという部分だ。また、ゴッドパワーや神の要素を、従来のシステムの中にいかにうまく組み込むかについても苦労した。ゴッドパワーは、これ1発でいつでも逆転可能になると困るわけで、あくまで勝利への一手段程度になるように調整に調整を重ねた
GW 開発中のおもしろいエピソードがあったら教えてください
BS うまく伝わるかどうかわからないが、我々はゴッドパワーをいかに神の力のように見せられるかについて工夫を重ねた。たとえば、動物を引き寄せるゴッドパワーは、何に対して動物が引き寄せられるかと考えたとき、道路に置いてある大きなゴミ箱がいいのではないかという案が出た。最終的には神話らしくモノリスになったが(笑)。
それからFerris Wolfは、群れをなせばなすほど能力の上がる神話ユニットなのだが、これをたくさん集めて攻撃したらどうなるかということを実験してみたんだ。30匹集めて実際に攻撃させてみたところ、凄まじいスピードと破壊力で敵を一気に破壊してしまった。このため、大量の群れをなす事が難しいように調整し、さらに攻撃力にも上限を設けた
GW ところで拡張キットの発売はすでにご自身の頭の中にあると思うのですが、ぜひ次回は日本の神話も扱っていただきたいなと思います
BS 中国の人からは中国の神を、韓国の人からは韓国の神を入れてくれと言われている。この間、メキシコの人からはアステカの神を入れてくれと言う要望も来たよ(笑)
GW そうした大量の要望の中からいくつかの神を選び抜いていくことになりそうですね
BS 私は「Age of Mythology」の成功を確信している。拡張キットもいずれ出るだろう。しかし、その内容が何になるかは現時点では口にできない、というよりまだ何も決まっていないんだ。火曜日にようやくマスターアップして、現在、全スタッフは休暇に入ってる。休暇明けの11月初めに全員で拡張キットの内容について話し合う予定だ。その会議では、「Age of Mythology」のいいところ、悪いところを全部出し合って、次回作への参考にしていくつもりだ
GW ちなみにご自身は「Age of Mythology」は、どのへんが弱いと感じてらっしゃいますか
BS 弱点!(笑)。うーむ、強いて言えばマッチメイキング機能かな。マルチプレイの利便性をもっともっと良くするためにマッチメイキングをもっと洗練したものにしたいな。今年は、その開発に時間を費やしていくことになるだろう
GW なるほどなるほど。たとえば、マッチメイキングについてどういう改案があるのでしょうか
BS 要するに簡単なことだ。ゲームを起動した人が、実際にマルチプレイを始めるまでの手続きを簡単にしたい。ルール、ゲームモードなんかも全部ひっくるめてね
GW Ensemble Studiosのリアルタイムストラテジーシリーズは今回で3作目となるわけですが、今後はどうなるんでしょう
BS まだはっきりとは決めていないが、新しいRTSを2004年発売に向けて現在開発している。ただそれが何になるかは決まっていない。「Age of Mythology II」かもしれないし「Age of Empires III」かもしれない。完全な新作になるかもしれない
GW なるほど、それは楽しみですね。それでは最後の質問になるんですが、個人的にAgeシリーズをプレイしていて一番気に入っているのは音の部分なんですね。BGMやサウンドエフェクトなどですが、たとえば剣を振るSEにしても、耳障りのいいクリティカルな音がする。音に対するこだわりなどは何かあるのでしょうか
BS 我々はゲームのありとあらゆる部分の音にこだわっている。2人のサウンド担当が、すべての音を制作している。今回、最終的にSEは1,500もの数を収録している。音にこだわることにより、仮想体験が実体験のように、ゲームであるということを忘れて内容に没頭できると捉えている。これからも音には引き続きこだわっていくつもりだ。良い質問をありがとう。何か聞きたいことがあったら、いつでもメールしてほしい。すぐ回答しよう
GW わかりました。それでは長い時間ありがとうございました
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□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/games/
□「Age of Mythology」のホームページ
http://www.microsoft.com/japan/games/aom/default.asp
□関連情報
【2002年10月16日】マイクロソフト、年末発売のPC向け3タイトルを堂々発表
「Age of Mythology」、「Combat Flight Simulator 3」、「RalliSport Challenge」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20021016/wpcms.htm
【2002年5月23日】Microsoftブースレポート(PCゲーム編)
「Age of Mythology」をはじめバラエティに富んだ大作が目白押し
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020523/e3ms.htm
【2002年3月2日】Bruce Shelley氏インタビュー 神話世界を舞台にした「AGE OF MYTHLOGY」はどうなるのか?
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020302/bs.htm
【2001年6月6日】AGE OF EMPIRESシリーズのデザイナBRUCE SHELLEYインタビュー
「MYTHOLOGY」は「EMPIRES」の続編ではない!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010606/bruce.htm
(2002年10月18日)
[Reported by 中村聖司]
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