★ PCゲームレビュー★
今年の頭にリリースされた「Medal of Honor」を初めとして、第二次世界大戦を舞台としたFPSは数多い。その中でも今年の5月末にアメリカで開催されたE3において、今年発売される多くのFPSを押しのけBest of Action賞を受賞したのが今回紹介する「Battlefield 1942(以下「BF1942」)」だ。
■ 状況にあわせて臨機応変に5つのクラスを切り替えて、装備を使い分けろ!
これまで二次大戦を舞台としたFPSは数多くあったが、その多くは歩兵の視点で作られたものであり、仮に兵器が登場したとしてもステージの一部で使えるだけということが多かった。しかし、「BF1942」ではプレーヤー自身の手でそれらの兵器を思い通りに運用し、戦況にあわせて戦場を縦横無尽に駆け回ることができる。 敵の銃撃が激しく、歩いて進むことができないと判断すれば戦車を使って歩兵の持つライフルをまったく気にせず前進できる。また、敵の戦力が多く、現在の地上兵力だけでは敵を攻め落とすことができないと判断すれば、沖に停泊している戦艦の主砲を使った艦砲射撃や攻撃機による爆撃をしてもらえばいい。要するに「BF1942」では、陸、海、空、全ての兵器を効率よく連携・運用するというゲームプレイが要求されるわけだ。 「BF1942」においてプレーヤーは、最初は必ず歩兵としてマップにRespawnする。そこからマップ上に設置された兵器を使うなり、自分の足で前線に向かうなり、拠点を守るなりといった行動に入るわけだ。歩兵にはScout、Assault、Anti-tank、Medic、Engineerという5つのクラスが用意されている。では、各クラスの能力を簡単に解説しよう。
・Scout
・Assault
・Anti-tank
・Medic
・Engineer
■ 敵を蹴散らし、敵陣を占領し、戦線を押し上げるコンクエスト 「BF1942」のゲームシステムで注目すべきは「コンクエスト」と「チケット制」というふたつの要素だ。FPSでは、手当たり次第に敵を殺しまくるデスマッチ、敵の旗を取って自陣に持ち帰るキャプチャー ザ フラッグといった多くのゲームモードがあるが、「BF1942」ではコンクエストと呼ばれるゲームモードをメインゲームモードとして採用している。 コンクエストとは簡単に言ってしまえば陣取り合戦であり、プレーヤーは、マップ各所に設定された拠点をめぐって争う。プレーヤーが拠点毎に設定された制圧可能範囲を一定時間確保すると拠点に建つポールに自軍の旗が揚がり、制圧完了となる。これで、その拠点は制圧されたとみなされ、自軍に属する味方プレーヤーのRespawn(復活)が可能になるという仕組みだ。 拠点を制圧するという行為は、復活→前線への到達というサイクルが短くなる点でゲームに勝利するという目的達成のためには非常に重要だ。前線までの距離が短くなれば、戦死した味方がRespawnして戦列に復帰するまでの時間が短くなる。仮にプレーヤーがやられたとしても、すぐに戦列に復帰できれば、敵に前線を押し上げられることがなくなるからだ。基本的に戦争は戦力と戦力のぶつかり合いだ。ゲームに勝利するためには、その力を長時間にわたって維持することが重要だということがおわかりいただけるだろうか。 「BF1942」では、その各陣営の戦力をチケットという数値で表現している。「BF1942」におけるゲームの勝利条件は「敵軍に割り当てられたチケットを“0”にすること」これだけだ。この数値は両陣営に等しく割り当てられるのではなく、ステージによってチケット量は変化する。たとえばベルリン攻防戦の場合は敗北寸前のドイツ軍は60、勢いに乗って攻めるソ連軍のチケットは100と差がつけられている、といった具合だ。 このチケットは兵士がマップ上にRespawnするたびに一定数(設定によって変わる)が消費されていく。敵の兵士を手当たり次第に倒していけばいつかは終わるというわけだが、それでは1ステージ終わるまでの時間がかかりすぎる。各マップには「敵陣地の半分を制圧せよ!」といった条件が設定されており、それを満たすと時間単位で敵のチケットが減少していく。敵を倒さなければ減らないチケットが、時間単位ごとに減少していくわけだ。
このシステムのおかげで、プレーヤーは「常に拠点を制圧していかないと自動的に負けとなる」という焦燥感に常に襲われることになる。このシステムは特にノルマンディーや硫黄島と言った上陸制圧作戦では顕著で、上陸側のチケットはスタートからいきなり減っていく。上陸用の橋頭堡を急いで確保し、次の拠点を確保しないとこのチケット減少は止まらない。プレーヤーに対し、常に前へ前へと進むように設定されたシステムといえよう。
■ ノルマンディー、アルデンヌ、ベルリン、ガダルカナル…… さて「BF1942」には以下のステージが収録されている。
●アフリカ戦線
●東部戦線
●西部戦線
●太平洋戦線 これらのステージを舞台にプレーヤーは連合軍(Allies)と枢軸軍(Axis)に分かれて戦う。「BF1942」ではアメリカ、イギリス、ソ連、ドイツ、日本という5つの国が参加している。ノルマンディーではアメリカ軍vsドイツ軍になるし、トブルクではイギリス軍vsドイツ軍、硫黄島ではアメリカ軍vs日本軍、ベルリンではソ連軍vsドイツ軍という具合で、各国に合わせたプレーヤーモデルも用意されている。 ただ、「BF1942」における兵器考証はかなり甘く、日本軍がドイツ軍のStg44ライフルを運用していたり、アメリカ軍の戦艦がイギリスのプリンス オブ ウェールズだったりとかなりごちゃごちゃしている(なぜか戦車だけはきっちり各国のものが用意されているのが面白い)のは少々残念な点だ。 せっかく史実に基づいたステージを用意しているのだから、兵器だってちゃんとしたものを使いたいというのがミリタリー好きとしての本音ではある。今後出てくるユーザー作成のMODやモデルの追加によって兵器がしっかりすることを期待したい(もちろんEAがそういったものを作成できるように情報をきっちり開示してくれればではあるが……)。
■ 代表的なマップのスクリーンショット集
■ 自分本位で動いたのでは決して味わえない、大規模集団先頭の醍醐味 「BF1942」がゲームで再現しようとしているのは、陸、空、海、全ての兵器と兵士の連携だ。現実の戦場でもそうだが、戦場において一個人の兵士がいくらがんばっても戦場の大局を崩すことは難しい。戦車くらいなら対戦車バズーカをを使えば何とかなるものの、対航空、対艦船となってくると生身の兵士ではなすすべも無い。戦車には対戦車兵器を、航空機には対空兵器を、艦船には対艦船兵器、といった具合にその時その時の戦況にあわせて兵器を運用しなければ戦況を優位に運ぶことはできないわけだ。 これは「BF1942」でも同じことで飛行機、艦船、戦車などの兵器を効果的に運用しなくてはゲームに勝利することはできない。「BF1942」では数々の兵器が用意されているが、それはゲームに参加している全てのプレーヤーが使える量が用意されているわけではないのだ。実際のゲームでは、歩兵と比べると見た目が派手な各種兵器には、当然多くのプレーヤーが群がることになるだろう。 しかし、ここで「兵器に乗って華麗に戦場を!」との利己的に考えに固執してプレイするのは本来の「BF1942」の楽しみ方とは大きくかけ離れている。ひとりの利己的なプレーヤーが兵器を独占する、または兵器のRespawn(復活)待ちをしたとしよう。その利己的なプレイのおかげで本来だったら敵に向けられるはずの彼らの戦闘能力は、無駄に浪費され、自軍の戦闘能力は大きく減衰する。 32人サーバーでプレイしていた場合、通常ならば16人対16人の戦いになるはずだが、1人が戦闘に参加しなかった場合、15人対16人になる。それは戦闘が進めば進むほど次第に14人対16人、13人対16人と戦力差は広がっていく。兵器の使い方にもよるが、一般的戦闘論で言えば彼我の戦力差が2:3になった時点で自軍の負けがほぼ確定する。結局の所、その状況を招かないためには各人が自分の実力を見極め、自分の役割を見定めて戦闘に参加することだ。 筆者の場合だったら戦車が得意なので、敵の戦車を排除して、敵陣を占領することを自分の役割と考える。ただ、戦車だけでは接近してくる敵のAnti-tankに対抗することは難しいので、随伴する歩兵にサポートしてもらう。戦車ひとつ取っても戦車単体で100%の能力を発揮することなどはできはしないのだ。戦場では「敵に銃口を向けること」が重要なのであって、戦車に乗ってるから歩兵より偉いなどということはない。重要なのは「その兵器を使って自分がチームの勝利に貢献できるか」であって、それ以上でもそれ以下でもない。 小難しいことを書いてしまったが、「BF1942」と同様のコンセプトで作られた「WW II Online」が兵器の特性などにこだわってしまった結果、ハードなシミュレーター的要素を持った敷居の高いゲームになってしまったのに比べ、「BF1942」は兵器の操作方法など非常に簡単に理解できるようになっている。30分もプレイすれば陸、空、海に存在する全ての兵器を使うことが出来るようになる。
これまでのゲームではあまり考えられなかった広大なマップを、さまざまな兵器を使って縦横無尽に駆け巡ってほしい。そして、仲間とともに戦うことの素晴らしさ、楽しさをこのゲームで味わってもらえればと思う。「Battlefield 1942」とはそういうゲームだ。
(C) 2002 Electronic Arts Inc. Alrights Reserved.
□エレクトロニック・アーツ・スクウェアのホームページ (2002年9月9日)
[Reported by TYQ] |
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