★ PCゲームレビュー ★

新緑薫る山陰地方 目指すは鉄路の名所餘部鉄橋
鉄道ファンに贈るスペシャルレビュー第6弾

リアルアドオンシリーズ5
山陰本線キハ181系

  • ジャンル:Microsoft Train Simulator用アドオンソフト
  • 発売元:トワイライトエクスプレス
  • 価格:4,980円
  • 対応OS:Windows 98/Me/2000
  • 発売日:5月11日発売(発売中)


 3Dで描かれた世界各国の各路線を楽しめる「Microsoft Train Simulator」(MSTS)。「Microsoft Flight Simulator」同様、アドオンソフトで楽しめる路線や車両を拡張できるのが特徴だ。ゲーム本体については以前掲載したレビューを参考にしていただくとして、今回お届けするのはコンスタントにMSTS用のアドオンソフトを出し続けるトワイライトエクスプレスの最新作「山陰本線キハ181系」。タイトルどおり山陰本線の一部の区間とキハ181系がプレイできるアドオンだ。


■ 鉄路の魅力あふれるJR山陰本線

これが「山陰本線キハ181系」の区間図。有名な餘部鉄橋は餘部駅の真横というより、その一部という状況になっている
これが実際の餘部駅と鉄橋の様子。一見断崖絶壁のようにうかがえるが、右側に鉄橋下の住民が駅を利用するための細い山道がある
 この「山陰本線キハ181系」で走行可能な区間は、山陰本線城崎(きのさき)-浜坂間39.9km。山陰本線そのものは、京都-下関間を島根県や鳥取県など山陰地方沿いに結ぶ重要な路線なのだが、このアドオンソフトではその入り口(京都方面から見て)となる部分が収録されている。

 ただ、重要な路線とはいえ、同じく京都-下関間には全線電化、しかも複線化(路線が2路線ある)されている山陽本線があるため、全線をつらぬく列車などは走っていない。また、京都方面から入ると城崎までしか電化されていないため、城崎以西はディーゼルカーが運用されている。しかも、今回収録されている城崎-浜坂間は単線となっており、結果的に運行されている列車の本数や、車両のバリエーションも山陽本線に比べると遙かに少ない。

 もちろんこれは、周辺人口が少ないためだが、路線の魅力という点では山陽本線以上のものが山陰本線城崎-浜坂間にはある。ひとつは日本の鉄道風景を語るときに必ず出てくる餘部鉄橋が存在すること、そしてもうひとつは非常に海に近い場所を走るため変化に富んだ風景を眺められることだ。

 特に餘部鉄橋付近は、このアドオンソフトで一番のポイントとなる部分。トワイライトエクスプレスもその辺りは当然わかっており(というか餘部鉄橋がある部分を収録路線として選んでいるのだろう)、鉄橋そのものや周辺のテクスチャもよく作り込まれている。

 また、山陰地方は日本海側のため、山陽地方より雪が降りやすく四季の変化の魅力に富んでいる。このアドオンソフトとはあまり関係がないが、浜坂は、松葉ガニやホタルイカの漁獲高が日本一の浜坂港を近くに擁し、城崎は外湯巡りで有名な温泉があるなど観光地としてのポテンシャルも高い。

浜坂駅を出発するキハ181系特急形気動車。これが現在のカラーリングとなるJR色。特急としてはやや地味な感じがあるが、落ち着いた色とも言える。気動車らしく屋根上から薄煙が上がっている こちらがキハ181系特急形気動車の国鉄色。国鉄時代、特急形の電車や気動車はこの色で塗り分けられていた。キハ80系の先頭車であるキハ82と非常によく似たデザインなのだが、運転台下部のスカートが二分割されているのが、簡単な識別ポイントとなる

キハ181の運転台。左の黒いボールが付いたハンドルがマスコン、右のオレンジ色のボールが付いたハンドルが貫通ブレーキコントローラとなる。中央の大きなふたつのメーターが左から速度計、ブレーキ圧力計。当時としては洗練された運転台だ。速度計は120km/hまで刻まれ、キハ181系の高速走行能力がうかがえる キハ181系の中間車両キハ180。屋根の上にある黒いルーバー状のものは、エンジンの放熱器機。つまりラジエターだ。これもキハ80系にないもので、500PS特急形気動車である証。窓から車内が透けて見えるところや車体の微妙な曲線など再現度は高い


■ キハ181系の力強い走行音を聴け

 そんな収録路線で楽しめる車両がキハ181系。MSTS本体にもキハ35が収録されていたが、あちらが通勤形のディーゼルカーなのに対し、キハ181系は特急タイプのディーゼルカー(気動車)でなる。国鉄初の特急形気動車は昭和35年に作られたキハ80系。このキハ80系が180馬力のエンジンを2基搭載していたのに対し、昭和43年に登場したキハ181系は500馬力のエンジンを1基搭載し、キハ80系では高速走行が不可能な勾配区間の多い路線に投入されていた。ただ、現在ではそれら多くの路線が電化されたため、JR西日本にしか存在しない貴重な車両となっている。

 ゲーム中のキハ181系も、そんな大馬力ディーゼルエンジンを持つ車両らしく、エンジン音は大きめ。マスコン(マスターコントローラ)を操作すると、その量に応じた音が「ゴォォォォォ」と聞こえてくる。

 実際の客室ではそれほどうるさく感じないのだが、運転室ではゲーム中のような音がするのだろうか? もちろん、鉄橋や踏切などでは音が変化し、プレイ中の臨場感を高めてくれる。特に地上高41mの餘部鉄橋区間では、その景色とあわせて楽しみも倍増だ。プレイできる車両はキハ181系のみ(CPU車両としてキハ47系が登場)と少しもの足りない感じがするのは事実だが、今やキハ181系が活躍する路線は少なく、その代表的な線区を楽しめるのはうれしいところだ。

 なお、カラーリングは現在のJR色の“特急はまかぜ”のほかに、赤とクリーム色の塗り分けの国鉄(JNR)色の“特急はまかぜ”、そしてそれぞれに冬季のみ運行される“特急かにカニはまかぜ”が用意されている。

「冬のはまかぜ4号」アクティビティからの1シーン。雪が降ることも多い山陰本線だけに違和感なくなじめる風景だろう 初めてプレイする場合はこの「キハ181系運転チュートリアル」を選んでほしい。基本的な操作方法を教えてくれるので、すんなりMSTSの世界に入っていけるだろう。MSTSになれている人でも、キハ181系の操作方法の習得に役に立つ


■ アクティビティは盛りだくさん?

夜、しかも雨だとこれほど暗くなってしまう。標識なども見落としやすく、運転には注意を必要とする。「夜のはまかぜ5号(夜)」からの1シーン
「山陰本線チュートリアル」アクティビティでは画面のように周辺の観光案内を行なってくれる。このアクティビティをプレイしたら収録線区に行きたくなる人もいるのではないだろうか
○用意されているアクティビティ

1.自由走行

2.キハ181系運転チュートリアル
動力車:キハ181系JR色
区間:城崎-竹野
季節/天候:夏/快晴
出発時刻:12:00

3.冬のはまかぜ4号
動力車:キハ181系JR色
区間:浜坂-城崎
季節/天候:冬/雪
出発時刻:13:54

4.冬のはまかぜ4号(キハ181系国鉄色)
動力車:キハ181系国鉄色
区間:浜坂-城崎
季節/天候:冬/雪
出発時刻:13:54

5.夏のはまかぜ1号
動力車:キハ181系JR色
区間:城崎-浜坂
季節/天候:夏/快晴
出発時刻:12:32

6.夏のはまかぜ1号(キハ181系国鉄色)
動力車:キハ181系国鉄色
区間:城崎-浜坂
季節/天候:夏/快晴
出発時刻:12:32

7.山陰本線チュートリアル
動力車:キハ181系国鉄色
区間:城崎-浜坂
季節/天候:夏/快晴
出発時刻:10:30

8.かにカニはまかぜ
動力車:JRかにカニはまかぜ
区間:城崎-香住
季節/天候:冬/快晴
出発時刻:11:08

9.かにカニはまかぜ(キハ181系国鉄色)
動力車:JNRかにカニはまかぜ
区間:城崎-香住
季節/天候:冬/快晴
出発時刻:11:08

10.秋のはまかぜ3号
動力車:キハ181系JR色
区間:城崎-浜坂
季節/天候:秋/快晴
出発時刻:15:14

11.秋のはまかぜ3号(キハ181系国鉄色)
動力車:キハ181系国鉄色
区間:城崎-浜坂
季節/天候:秋/快晴
出発時刻:15:14

12.夜のはまかぜ5号(夜のキハ181系国鉄色)
動力車:キハ181系国鉄色
区間:城崎-浜坂
季節/天候:夏/雨
出発時刻:21:04

13.夜のはまかぜ5号(夜)
動力車:キハ181系JR色
区間:城崎-浜坂
季節/天候:夏/雨
出発時刻:21:04

14.春のはまかぜ6号
動力車:キハ181系JR色
区間:浜坂-城崎
季節/天候:春/快晴
出発時刻:16:35

15.春のはまかぜ6号(キハ181系国鉄色)
動力車:キハ181系国鉄色
区間:浜坂-城崎
季節/天候:春/快晴
出発時刻:16:35

 以上、計15種類のアクティビティが用意されており、JR色、国鉄色のはまかぜ(かにカニはまかぜ)を各季節で手軽に楽しめるようになっている。半面どこか組み合わせのみ?という気もしないでもない。しかしながら、運行アクティビティメニューから手軽にさまざまな条件のプレイが選べるのは評価したい。

 この中で、ちょっと変わったアクティビティが「山陰本線チュートリアル」。これまでのチュートリアル系のアクティビティは、車両の操作方法を習得するためのものだったが、このアクティビティでは観光案内を行なってくれる。たとえば城崎駅では、駅周辺の日帰り温泉や、駅の東側にある円山川の案内などをしてくれ、ちょっとした観光ガイドとなっている。今までにないおもしろい試みと言えるだろう。

 日本の鉄道風景としてあまりにも有名な餘部鉄橋区間にポイントを絞り、今や貴重な車両となったキハ181系を楽しめるこの「山陰本線キハ181系」。収録された路線の周辺には温泉地も多いので、鉄な観光ガイドとして遊んでみるのもよいだろう。


■ JR山陰本線 城崎-浜坂間徹底比較

 今回もお約束の比較写真を掲載。実際に収録線区に取材に行ってきました。このアドオンの魅力である餘部鉄橋をお楽しみください。

浜坂駅で折り返すための時間待ちをするキハ181系特急はまかぜ号。電車特急はスマートさがウリだが、気動車特急らしい無骨な感じがよく再現されている。車両だけでなく、浜坂駅の再現度もかなりのもの

キハ181系の室内。特急形車両としては標準的な2+2配置の座席。実際に座り心地もよく、その辺りはさすが特急車両だ。気動車独特の音もそれほど聞こえてこず、快適な旅が楽しめる。ゲーム内でも運転台との音の違いは再現されているが、ぜひ本物の運転台で音を聞いてみたかった

このアドオンで一番楽しめるのがこの餘部鉄橋付近。トレッスルタイプと呼ばれる橋梁で、高さ41m45cm、長さ310m59cmという大きさ。明治45年3月1日に完成し、当時のお金で33万1,535円もの巨費が費やされた。ゲーム画面ではキハ181系が走行しているが、実際の写真に写っているのは普通列車のキハ41(両運転台なのでたぶん)だと思う。分かる人は編集部までメールください

餘部駅の近くにある小山からの風景。餘部鉄橋の全体像がよくわかる。すぐ北側(写真では左側)は日本海になっており、トンネルを抜けた後の景色の広がりがとても印象的だった。ゲームをプレイしているときもこの部分は印象的で、城崎側から進行した場合、トンネル内を「グゴゴゴゴォ」と進み、トンネルを抜けた瞬間に視界が広くなり音もサラウンド感の高いものになる。「トンネルを抜けたらそこは発射台だった(by星野鉄郎)」という感じだろうか? ちなみに実際の写真に写っている車両はキハ47。ゲームにもCPU車両として登場する

餘部鉄橋上を走るキハ181特急はまかぜの車窓からはこのような風景が見える。ゲームではどうしても窓枠が入ってしまうのが残念だが、41mの高さからの風景は実写、ゲームどちらも迫力がある。山陰本線では、山、トンネル、そして海、さらに橋梁と変化に富んだ風景を存分に堪能できる

完全に同じ角度はムリだが、餘部鉄橋から無理矢理下を見下ろすと写真のような感じになる。怖いというかなんというか、列車で空を飛んでいる雰囲気が味わえる。ただし、列車から身を乗り出さないようにして見て欲しい。ゲームではとてもこのような角度で眺めるのはムリなので、外部視点を列車の真上に持ってきた。鉄橋の下には民家が多く並んでおり、それがまた浮遊感を高めてくれる

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【動作環境】
  • CPU:Pentium II 300MHz以上
  • メモリ:64MB以上(Windows 98/Me)、98MB以上(Windows 2000)
  • HDD:400MB以上(MSTSで別に1.2GB必要)
  • CD-ROMドライブ:4倍速以上 (8倍速以上を推奨)
  • 解像度:800×600~1,280×1,024ドット


□トワイライトエクスプレスのホームページ
http://www.twilight.co.jp/
□「Microsoft Train Simulator」のホームページ
http://www.microsoft.com/japan/games/trainsim/
□「リアルアドオンシリーズ5 山陰本線キハ181系」のホームページ
http://www.twilight.co.jp/trainsim/trainsim_sanin.htm
□関連記事
【4月4日】PCゲームレビュー「リアルアドオンシリーズ4 JR東日本 東京-横浜」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020404/yoko.htm
【12月26日】PCゲームレビュー「リアルアドオンシリーズ2 JR信越本線 碓氷峠」
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【11月13日】PCゲームレビュー「MSTS アドオンシリーズ 国鉄485・583系特急」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20011113/485583.htm
【10月15日】PCゲームレビュー「リアルアドオンシリーズ1 JR中央線 東京-高尾」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20011015/tyuou.htm
【8月24日】PCゲームレビュー「Microsoft Train Simulator」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010824/train.htm

(2002年5月15日)

[Reported by DOS/V POWER REPORT編集長 谷川 潔]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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