★ PCゲームレビュー ★

東海道線と横須賀線をのんびり走ろう
鉄道ファンに贈るスペシャルレビュー第5弾

リアルアドオンシリーズ4
JR東日本 東京-横浜

  • ジャンル:Microsoft Train Simulator用アドオンソフト
  • 発売元:トワイライトエクスプレス
  • 価格:5,800円
  • 対応OS:Windows 98/Me/2000
  • 発売日:3月29日発売(発売中)


 すでに多くのアドオンソフトが国内外で発売されている「Microsoft Train simulator」だが、また新たなソフトが発売された。今回ご紹介するのは、トワイライトエクスプレスが3月29日にリリースした「Microsoft Train simulator リアルアドオンシリーズ4 JR東日本 東京-横浜(以下東京ー横浜アドオン)」。これまではタイトルに代表されるひとつの路線しか遊べないものがほとんどだったが、このアドオンソフトでは東海道線と横須賀線の東京-横浜間を楽しめる仕様となっている。さて、それでは今回も実写写真を交え、その内容を見ていこう。


■ 二つの東京-横浜間

雪の東京駅を出発する211系近郊形電車。左奥に見える赤い建物が三角屋根で有名な煉瓦造りの東京駅舎。その手前にある高層ホームがJR中央線だ。視点をぐるぐる変えるとわかるのだが、従来の作品よりも格段に作り込まれている
 この東京-横浜アドオンのセールスポイントとなっているのが、東海道線と横須賀線の2路線でプレイできること。東海道線の東京-横浜間は、「汽笛一声新橋を~♪」で知られるように日本の鉄道発祥区間(汐留-桜木町間)でもあり、新幹線が開業する以前は多数の特急や急行が行き交う路線であった。新幹線が開通し、特急や急行は減ってしまったものの、今でも多数の通勤・通学客が利用しており、この路線で通っているという人も多いのではないだろうか。

 特にこのアドオンに収録されている3つ目の路線である京浜東北線は、東京駅より南側では東海道本線を、北側では東北本線を利用する形で運用され、神奈川-東京-埼玉を結ぶ通勤・通学路線として多くの本数が走っている。東京-横浜間は、東海道線と京浜東北線が並行して走っているが、東海道線の停車駅が、東京-新橋-品川-川崎-横浜と数少ないのに対して、京浜東北線は各駅に停車し、東海道線は快速、京浜東北線は緩行列車という位置づけになっている(ただし、京浜東北線は山手線と並行する田端-東京-田町間において、昼間は快速運転を行なっている)。

 一方横須賀線は、明治22年(1889年)に東海道線の大船駅と当時(今もだが)軍港であった横須賀港を結ぶ目的で開通した路線で、後に久里浜まで延長された。東海道線の列車が静岡のみかんの実と葉(みかんとお茶畑という説もある)をイメージした橙と緑で塗られていたのに対して、横須賀線は海と砂浜をイメージした青とクリーム色の列車を投入。前者を湘南色、後者をスカ色と呼び、両線の始発となる東京駅では一目で行き先がわかるなど実用上のメリットもあった。その後'80年に、横須賀線が分離され、東京駅では地上から地下へ、さらに神奈川-東京-千葉を結ぶ総武本線快速としての直通運転が開始され現在の状態になっている。

 もちろん、このアドオンソフトでもそれら線区の状態はよく再現されている。アクティビティで東海道線や京浜東北線を選べば、東京駅の地上ホームを、横須賀線を選べば東京駅の地下ホームを使用する設定になっている。トワイライトエクスプレスでは「リアルアドオンシリーズ1 JR中央線 東京-高尾」で、東京駅を収録したものを発売しているが、4作目となるこのタイトルでは再現度もアップ。地上の東京駅のホームからまわりを眺めれば、シリーズ1よりも作り込まれた東京駅を望むことができ、地下ホームの雰囲気も抜群だ。

 横須賀線では東京-品川間で地下を走りっぱなしになるのだが、実際よりも明るく再現されているのでそれほど単調にならずにすんでいる。品川を過ぎて横須賀線が東海道本線と別れて行く部分、多摩川の橋梁、横浜駅付近のゴチャゴチャした沿線風景など、さすが4作目と言えるデキだ。

疾走する15両編成の211系。プラスチック製の前面、そしてステンレス製の車体とある意味現在のスタンダードな作りとなっている。細かく描かれた線路や路面のテクスチャにも注目してほしい 211系の中央部分に2両連結されているのがこのグリーン車だ。1階、2階ともグリーン席になっており、長距離通勤の人にはうれしい配慮だろう。もちろん、グリーン料金が必要なのは言うまでもないのだが

品川駅付近で、地下から地上に現われたE217系。前面上部のラウンド具合など実車の雰囲気がよく再現されている。車体に入るクリーム色と青色のストライブはこの列車がスカ線(横須賀線)である証だ 211系と同様E217系にも2階建てのグリーン車が2両連結されている。休みの日に鎌倉などへ行く際には、ぜひ利用してみたい。ちなみに右側に見えるのは東海道新幹線の路線なのだが、その車両を見ることができないのは残念

京浜東北線大井町駅へ滑り込む209系通勤形電車。その四角い車体がよくわかるカット。大宮と書かれた方向指示幕、赤く光るテールライトなど、シリーズ1より進歩しているのがわかると思う 209系通勤形電車に組み込まれている6扉車。個人的にラッシュ時に座席がなくなるというコンセプトは間違っていると思うのだが、乗れないよりはマシということなのだろう。209系から採用された、簡素な構造の台車もよく再現されている


■ 各種通勤・近郊形電車を収録

ほかの2つの車両と違い、マスコン(マスターコントローラ)とブレーキの2ハンドルで操作する211系の運転台。人によっては1ハンドルよりこちらのほうが楽しいかもしれない。ちなみに前方に見えているのが、113系近郊形電車。211系と同じ東海道線を走る列車だ
横須賀線東京地下駅を出発するE217系の運転台。211系と比べるとそのシンプルな作りがよくわかる。地下といっても十分明るく描かれているので、運転にあきることはないだろう。この東京駅を出ると、次の停車駅は新橋地下駅となる
 それらよく作り込まれた路線で楽しめる電車は3種類用意されている。「価格半分」、「重量半分」、「寿命半分」の新コンセプトで作られた京浜東北線の209系。1両に乗降客用の扉が片側で3つある(いわゆる3扉)東海道線の211系。中距離を走る近郊形でありながら4扉を採用したE217系だ。

 一般的に、短距離を走り短い停車時間で多くの乗降客を効率よくさばく必要のある通勤列車は4扉、長距離を走り駅の間隔が長くなりがちな特急・急行列車は2扉(もしくは1扉)、その中間的な近郊形は3扉となっている。ある意味扉の数が各タイプを見分けるポイントともなっていたのだが、乗客の便を最優先したE217系の登場で、一概に近郊形とか通勤形とか言えなくなってきているのかも知れない。

 とはいえ、211系とE217系には2階建てのグリーン車が組み込まれており、長距離通勤客や、熱海・鎌倉などの観光地に向かう人に配慮されている。また、209系にはラッシュ時には座席をはね上げ、お客さんは全員立たなければならないという6扉車が組み込まれているなど、路線のカラーにあわせた列車となっている。

 「東京-横浜」アドオンでは、路線同様3形式の電車の再現度も高い。209系では、ステンレス車体や、編成に組み込まれた6扉車。211系では、複雑な前面形状や屋根上のクーラー類。E217系では、独特の湾曲した先頭車がよく再現されている。211系とE217系には、2階建てのグリーン車も組み込まれ、15両編成という長大な列車を運行できる。

 これまでトワイライトエクスプレスのアドオンでは、運転台が単に実車写真をテクスチャとして貼り付けたものであった。リアルと言えばリアルな処理なのだが、運転台から見える風景との落差が大きく、違和感があったのも事実だろう。が、このタイトルではまわりの風景となじむような工夫がされ、その違和感も解消。209系とE217系では、実車同様新幹線にも使われているATC(Auto Train Control:自動列車制御装置)の指示が速度計に表示され、そのATCに沿った運転が楽しめる。

 また、211系ではATCより緻密に制御はされないものの、ATS-P(Auto Train Stop-Pattern:パターン方式による自動列車停止装置)での運転が可能だ。これら運転面では従来より遙かに充実した東京-横浜アドオンなのだが、室内視点は今ひとつ。209系では通常の4扉車の室内視点が、211系とE217系では後部運転台の視点が設定されている。209系はともかく、211系やE217系では眺めのよい2階建てグリーン車からの視点を用意してほしかったところだ。

E217系と同様1ハンドルマスコンを採用する209系の運転台。マスコンの前にある速度計に90の指示が出ているのがわかるだろうか。これがATCの指示速度で基本的にこの速度制限を守りながら運転する必要がある チュートリアル系のアクティビティを選ぶとこのようにメッセージが表示される。メッセージに従っていけばよいので、初めてプレイする際はこのアクティビティを選んでほしい


■ アクティビティの数は豊富だが……

品川駅付近で山手線の205系と行き違うE217系。東京-横浜アドオンでは、205系のほか、東海道線の113系、横浜線の205系がPCにコントロールされた列車として登場する。とくに品川-東京間では頻繁に見られるのが、無性にうれしいところ
 MSTSの特徴とも言えるアクティビティは、自由走行に加え以下の11種類が用意されている。

 ・209系運行チュートリアル 東神奈川-鶴見間
 ・211系運行チュートリアル 品川-東京間
 ・211系運行チュートリアル 西大井-新橋間
 ・京浜東北線 北行き列車 横浜-東京間
 ・京浜東北線 南行き列車 東京-横浜間
 ・東海道線 上り列車 横浜-東京間
 ・東海道線 下り列車 東京-横浜間
 ・横須賀線 上り列車 横浜-東京間
 ・横須賀線 下り列車 東京-横浜間
 ・東海道線 通勤列車 東京-横浜間
 ・東海道線 通勤列車 横浜-東京間

 このうち、チュートリアルは画面に次に行なうべきことが表示される入門モードで、そのほかはタイトルどおりの列車を走らせるモードだ。最後の2つが通勤時間帯ということで、やや列車のコントロールが大変なものの、すべて季節は夏となっており変化に乏しいのは事実。もともと季節による違いや列車運行の変化の少ない通勤・通学路線だけに難しかったのだろうが、もう一工夫がほしかった。停車駅に近付くと「次は○○~」という車内放送が流れたり、沿線風景や列車そのものがよくできていたりするだけに、残念に思えた点だ。

 アクティビティに不満は残るものの、従来のトワイライトエクスプレス作品とは一線を画した列車の再現、ていねいに描かれた駅や町などの風景、そしてATCやATS-Pに従っての運転など、MSTSファンにはぜひ一度遊んでほしいアドオンソフトの登場だ。

東京-横浜間の沿線風景の中で、ワンポイントとなるのがこの多摩川橋梁。手前が東京の蒲田、奥が神奈川の川崎となる。駅に近付けば社内放送が流れ、鉄橋を渡る際には走行音が変わるなど、スピーカーのボリュームを上げてそのサウンドを楽しみたい 209系で室内視点を選択するとこの画面になる。トワイライトエクスプレスの車内吊り広告がほほえましい。大型化されカーテンを廃止した室内窓、そして片持ち式の座席など、新世代通勤電車の一つのスタイルが209系によって確立された


■ JR東日本 東京-横浜間徹底比較

 とりあえずお約束ということで、今回も比較写真を掲載。しかしながら、今回は時間帯が悪くて209系の室内写真を撮影できず。加えてなかなか変化のある撮影ポイントが見付からなかったため、外見のみの比較にとどめた。

京浜東北線大井町駅付近の品川道踏切からの撮影。スクリーンショットでは、ややのほほんとした雰囲気だが、実際はいくつかのビルが立ち並ぶ風景だ。とはいえ、きちんと踏切も設置されており、その再現度は従来製品のレベルを超えている

横浜駅を東京方面に向かい出発する211系。多くのホームがある横浜駅の感じがよく出ている。実車写真の左奥に見える赤い電車は京急の車両、そして写真には写っていないものの、右側には東急東横線のホームが存在する。いずれこれらの車両で遊べる日も来るのだろうか

今回E217系の比較のために東京駅の地下ホームであらかじめ撮影をしていたのだが、ゲームでは地下となるため視点変更ができず、横浜駅でのスクリーンショットを掲載した。上方に向かってラウンドしていくE217系の前面部がよくわかる。E217系は、同じ近郊形である211系よりも209系に近い構造を持っている

(C) 2002 Twilight Express Inc. All rights reserved


【動作環境】
  • CPU:Pentium II 300MHz以上
  • メモリ:64MB以上(Windows 98/Me)、98MB以上(Windows 2000)
  • HDD:400MB以上(MSTSで別に1.2GB必要)
  • CD-ROMドライブ:4倍速以上 (8倍速以上を推奨)
  • 解像度:800×600~1,280×1,024ドット


□トワイライトエクスプレスのホームページ
http://www.twilight.co.jp/
□「Microsoft Train Simulator」のホームページ
http://www.microsoft.com/japan/games/trainsim/
□「リアルアドオンシリーズ4 JR東日本 東京-横浜」のホームページ
http://www.twilight.co.jp/trainsim/trainsim_jreast.htm
□関連記事
【12月26日】PCゲームレビュー「リアルアドオンシリーズ2 JR信越本線 碓氷峠」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20011226/yokokaru.htm
【11月13日】PCゲームレビュー「MSTS アドオンシリーズ 国鉄485・583系特急」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20011113/485583.htm
【10月15日】PCゲームレビュー「リアルアドオンシリーズ1 JR中央線 東京-高尾」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20011015/tyuou.htm
【8月24日】PCゲームレビュー「Microsoft Train Simulator」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010824/train.htm

(2002年4月4日)

[Reported by DOS/V POWER REPORT編集長 谷川 潔]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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