★ PCゲームレビュー ★
世界各国の鉄道を楽しめるマイクロソフトの「Microsoft Train Simulator」(以下MSTS)。すでに発売から2カ月以上が過ぎ、収録されている六つの路線を遊び尽くしてしまった人もいるのではないだろうか。そのMSTSの特徴として挙げられるのが、同社の「Flight Simulator」シリーズと同様、アドオンソフトにより遊べる路線や車両を追加できるところ。GAME Watchでもトワイライトエクスプレスの「リアルアドオンシリーズ1 JR中央線 東京-高尾」を前回紹介したが、今回取り上げるのはエアロシムの「マイクロソフト トレインシミュレータ アドオンシリーズ 国鉄485・583系特急(以下国鉄485・583系特急)」だ。トワイライトエクスプレスのJR中央線 東京-高尾は、通勤電車にフォーカスしたアドオンソフトだったが、エアロシムの国鉄485・583系特急は、全国で活躍する485系や、すでに引退してしまった583系特急電車でMSTSをプレイできる。MSTSそのもののレビューは下記リンクを参照いただきたい。
■ 485系特急形車両で楽しめる
ここで全国各地で走行可能と書いたのにはワケがある。実は電車には車両によって走行できない(つまり運用できない)路線が存在する。ひとつは電化されていない路線(当たり前だ)、そしてもう一つは供給されている電気の形式が違う路線だ。国鉄の電化は直流1,500Vで始まり、その後電力供給効率の高い交流20,000Vへ変更。そのため、電化されている路線には直流や交流の違い、さらに交流については、西日本は60Hz、東日本では50Hzという違いまで存在する。 電車特急の先駆けとなったのは、直流の東海道線に投入された151系「こだま」なのだが、この151系を交直両用タイプとしたのが481系電車だ。ただし、この481系は西日本で運用するために、60Hz対応の交直両用として作られていた。その後東北本線に投入するために50Hz対応の483系が作られ、すべての電化区間を走行できる485系が作られた。この481~485系の違いは基本的に動力車(モーターを搭載し、電気を動力に変換する)のみで、付随車(モーターを持たない)は同じものが使用されている。
つまり動力を持たない(ことが多い)先頭車や、食堂車は同じものが使われているわけだ。おまけ的な話だが、JR(国鉄)車両の車体の側面には形式が書いてあり、「モハ」とか「モロ」とか「モ」の字が書いてあるのがモーターを持つ動力車、「サハ」とか「モ」の字がないのが付随車だ。普段電車に乗る上でそれほど違いはないのだが、「サハ」とかの車両にのれば若干静かなのは事実なので、気にして乗ってみるのもおもしろいだろう。
一方、クハ481-200番台は、前面に扉を持つ貫通形の先頭車両。分割・併合運用をするために作られた車両だ。この分割・併合運用とは、行き先の異なる2つの列車を、乗客の多いところはひとつの列車で運用する(つまり2つの列車を密着して運行できる)ことで、先頭車両に扉があれば乗客は列車間を行き来できる。そして481系-300番台は200番台と同様のデザインの先頭車両ながら扉を持たない非貫通タイプとなる。扉を廃したことで運転台の居住性がアップしている。実際の485系では、これら複数のタイプの先頭車両を使い分け、さまざまな運用を実現しているわけだ。 ■ さらには583系、117系も
一方特急タイプ以外の車両として唯一収録されているのが117系。私鉄との競争の激しい京阪神間で新快速用電車として投入され、特急形電車並みの快適なシートを持つ車両として話題を集めた。事実、この電車を改良して作られた185系は特急「踊り子」として運用されるなど、特急並みのシートを持つ117系を、特急料金なしに乗ることができる関西の鉄道はすごいと思ったことを覚えている。逆に言えば京阪神間における、国鉄(JR西日本)と阪急・阪神などの私鉄の競争はそれだけきびしく、新快速の運用は、すでに新型の221系・223系に移っており今では普通電車として使われている。 以上大きく3タイプの電車をプレイできる国鉄485・583系特急だが、特筆したいのはそのすべての車両がきちんとモデリングされている点だ。各先頭車両の立体感は抜群で、室内の表現もよくできている。トワイライトエクスプレスの201系の室内が、テクスチャデータを張りましたという雰囲気なのに対して、エアロシムの各車両は座席や室内壁面がきちんと描写されているのが大きな違いだろう。
■ 収録されている路線は湖西線
パッケージアートにもなっている485系の代表的な特急である「雷鳥」は大阪-京都-敦賀-金沢と駆け抜けるのだが、その一部区間しか楽しめないのは残念だ。しかも、京都駅近辺のゴチャゴチャした感じや近江今津駅近辺で沿線風景は雰囲気は再現されているものの、リアルと言うには今ひとつのできで、細部まで作り込まれた列車データとの差が大きいと感じた。 確かにMSTSでの主役が各車両であることは事実なのだが、主に長距離を走る特急がメインのタイトルであればこそ、収録路線は長くしてほしかったところだ。また、用意されている運行アクティビティも、各車両による、各季節での運行のみでドラマチックなものはない。せっかく分割・併合運用が可能な485系貫通タイプや583系が収録されているので、それらの特徴を活かしたものを用意してほしかった。車両がよくできているだけに、残念な点と言えるだろう。
なお、すでにエアロシムのホームページ上では、次回作となる「国鉄型電気機関車」のスクリーンショットが公開されている。ブルートレインの愛称で親しまれている寝台列車が楽しめるようになるようだ。
EF65 PF形のファンの筆者としては、その発売に期待したい。また「国鉄485・583系特急」用のアップデータも同社のホームページで公開されている。アップデートを行なうと運転台の解像度が上がるなど一目で分かる違いもあるので、購入者は忘れずにアップデートをしておこう。 ■ 湖西線徹底比較 さて、今回も恒例の実車写真との比較だ。筆者は東京に住んでいるため、湖西線での撮影ポイントがよくわからず、完全に同じアングルでの撮影ができなかったのは勘弁してほしい。担当編集のN君と京都-敦賀に日帰りという強行軍。結局秋の京都というのに、観光は何もせずとんぼ返りしました。
■ 【コラム】「Microsoft Train Simulator」オフィシャルガイドブック
特に国内の路線となる「JR九州 肥薩線」と「小田急電鉄 新宿-箱根湯本」に関しては、各アクティビティの攻略法が豊富なスクリーンショットとともに詳細に解説されていて、読んでいるだけで実際にプレイしているような感じを覚えるほどだ。肥薩線のスイッチバックについて、この本ほど具体的に詳解されているものはないので、MSTSのプレイに行き詰まっている方は参考にしてみるのもよいだろう。
そのほか、実際の鉄道における技術解説など、MSTSをより興味深く楽しむための情報も多数掲載されている。ただ、MSTSの特徴ともなっているエディタ&ツールについては、もう少し詳細な解説がほしかったところだが、この本1冊あればMSTSを遊ぶ上での疑問はほぼなくなるのではないだろうか。鉄道シミュレーションゲームは、まだそれほど一般的ではないだけに、MSTSが初めてという人にお勧めしたいガイドブックだ。
□エアロシムのホームページ http://www.aerosim.co.jp/ □「Microsoft Train Simulator」のホームページ http://www.microsoft.com/japan/games/trainsim/ □「MSTSアドオンシリーズ 国鉄485・583系特急」のホームページ http://www.aerosim.co.jp/page1.htm □関連記事 【10月15日】PCゲームレビュー「リアルアドオンシリーズ1 JR中央線 東京-高尾」 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20011015/tyuou.htm 【8月24日】PCゲームレビュー「Microsoft Train Simulator」 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010824/train.htm 【6月6日】PCゲームファーストインプレッション「Microsoft Train Simulator」 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010606/trainsim.htm (2001年11月13日)
[Reported by DOS/V POWER REPORT編集長 谷川 潔] |
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