★ PCゲームレビュー ★

京都-敦賀間をじっくり検証!
鉄道ファンに贈るスペシャルレビュー第3弾

MSTS アドオンシリーズ
国鉄485・583系特急

  • ジャンル:Microsoft Train Simulator用アドオンソフト
  • 発売元:エアロシム
  • 価格:5,800円
  • 対応OS:Windows 98/Me/2000
  • 発売日:9月14日発売(発売中)


 世界各国の鉄道を楽しめるマイクロソフトの「Microsoft Train Simulator」(以下MSTS)。すでに発売から2カ月以上が過ぎ、収録されている六つの路線を遊び尽くしてしまった人もいるのではないだろうか。そのMSTSの特徴として挙げられるのが、同社の「Flight Simulator」シリーズと同様、アドオンソフトにより遊べる路線や車両を追加できるところ。GAME Watchでもトワイライトエクスプレスの「リアルアドオンシリーズ1 JR中央線 東京-高尾」を前回紹介したが、今回取り上げるのはエアロシムの「マイクロソフト トレインシミュレータ アドオンシリーズ 国鉄485・583系特急(以下国鉄485・583系特急)」だ。トワイライトエクスプレスのJR中央線 東京-高尾は、通勤電車にフォーカスしたアドオンソフトだったが、エアロシムの国鉄485・583系特急は、全国で活躍する485系や、すでに引退してしまった583系特急電車でMSTSをプレイできる。MSTSそのもののレビューは下記リンクを参照いただきたい。

PCゲームレビュー「Microsoft Train Simulator」はこちら

PCゲームレビュー「リアルアドオンシリーズ1 JR中央線 東京-高尾」はこちら


■ 485系特急形車両で楽しめる

国鉄485・583系特急をMSTSにインストールすると写真の各特急形車両が楽しめる。左から、583系、485系貫通タイプ、485系非貫通タイプ、485系ボンネットタイプ
 国鉄485・583系特急に収録されている車両は、先ほども書いたように485系、583系の特急電車、そして関西で新快速として運用されていた117系電車だ。その中でも一番力が入っているのが485系特急だろう。この485系特急は、全国各地で走行可能なように設計された交直両用形の電車で、一時期はどの特急電車も485系で運用されていると言ってもよいほど広範に使われていた車両だ。

 ここで全国各地で走行可能と書いたのにはワケがある。実は電車には車両によって走行できない(つまり運用できない)路線が存在する。ひとつは電化されていない路線(当たり前だ)、そしてもう一つは供給されている電気の形式が違う路線だ。国鉄の電化は直流1,500Vで始まり、その後電力供給効率の高い交流20,000Vへ変更。そのため、電化されている路線には直流や交流の違い、さらに交流については、西日本は60Hz、東日本では50Hzという違いまで存在する。

 電車特急の先駆けとなったのは、直流の東海道線に投入された151系「こだま」なのだが、この151系を交直両用タイプとしたのが481系電車だ。ただし、この481系は西日本で運用するために、60Hz対応の交直両用として作られていた。その後東北本線に投入するために50Hz対応の483系が作られ、すべての電化区間を走行できる485系が作られた。この481~485系の違いは基本的に動力車(モーターを搭載し、電気を動力に変換する)のみで、付随車(モーターを持たない)は同じものが使用されている。

 つまり動力を持たない(ことが多い)先頭車や、食堂車は同じものが使われているわけだ。おまけ的な話だが、JR(国鉄)車両の車体の側面には形式が書いてあり、「モハ」とか「モロ」とか「モ」の字が書いてあるのがモーターを持つ動力車、「サハ」とか「モ」の字がないのが付随車だ。普段電車に乗る上でそれほど違いはないのだが、「サハ」とかの車両にのれば若干静かなのは事実なので、気にして乗ってみるのもおもしろいだろう。

ていねいにモデリングされた485系ボンネットタイプの雄姿。ボンネットの曲面や、そこに付いている各取っ手類、そして屋根の上に乗る長細い空調機器など細かく再現されている。国鉄と銘打っているだけあって側面にはJNR(日本国有鉄道の略)の文字が描かれており、JR時代よりもシャープな印象を受ける
 なんだかゲームそのものと関係ない話が長くなってしまったが、要するに私は電化区間なら全国どこでも走れる485系で遊べるのはうれしいのだということが言いたいのである。さらにこの485系は、大量にそして長期間製造されたため先頭車両に数々のバリエーションが存在している。その中で、ゲームに収録されているのは、クハ481-100番台、クハ481-200番台、クハ481-300番台の3形式だ。クハ481-100番台は、先述した151系同様ボンネットタイプの運転台を持つ。年輩の方の中にはこの形こそ特急電車と思っている人もいるだろう。

 一方、クハ481-200番台は、前面に扉を持つ貫通形の先頭車両。分割・併合運用をするために作られた車両だ。この分割・併合運用とは、行き先の異なる2つの列車を、乗客の多いところはひとつの列車で運用する(つまり2つの列車を密着して運行できる)ことで、先頭車両に扉があれば乗客は列車間を行き来できる。そして481系-300番台は200番台と同様のデザインの先頭車両ながら扉を持たない非貫通タイプとなる。扉を廃したことで運転台の居住性がアップしている。実際の485系では、これら複数のタイプの先頭車両を使い分け、さまざまな運用を実現しているわけだ。

こちらは、485系非貫通タイプの先頭車両となる。よく見るとボンネットタイプでは長細かった屋根の上の空調機器が、短くなっているのが分かると思う。また、連結器の下にあるスカートの先には、雪を掻き分けるためのスノーブロウも付いているなど、そのこだわりには驚かされる。ちなみに後方に見える塔は京都タワーだ 敦賀駅に停車中の特急雷鳥号。485系貫通タイプの先頭車両を後方視点から見たものだが、「大阪-富山」と書かれた行き先表示や、客室窓から透けて見える座席などの再現性は素晴らしい 国鉄485・583系特急で特筆すべき点は、列車に組み入れられている各車両の違いまで描き分けられていることだ。ちなみにこの車両は食堂車で、左側の車両がグリーン車となる


■ さらには583系、117系も

雪の湖西線を走る583系寝台形特急電車。個人的には新大阪-博多間を走った「月光」よりも、上野-青森間を走った「はつかり」、「はくつる」の印象が強いため、583系には雪景色が似合う気がする
 国鉄485・583系特急では、583系特急形車両も用意されている。この583系も交直両用(50Hzも60Hzも可)タイプの特急電車で、もともとは直流と交流60Hz区間が走行可能な581系の発展型だ。その最大の特徴は、昼間は通常の車両(座席車両)として使い、夜はその座席をずらして上・中・下3段タイプの寝台車両として使えたことだ。そのため、昼でも夜でも運用可能な電車特急として各地で活躍した。東京圏では、上野-青森間を走る長距離特急「はつかり」、「はくつる」として記憶している方もいるだろう。

 一方特急タイプ以外の車両として唯一収録されているのが117系。私鉄との競争の激しい京阪神間で新快速用電車として投入され、特急形電車並みの快適なシートを持つ車両として話題を集めた。事実、この電車を改良して作られた185系は特急「踊り子」として運用されるなど、特急並みのシートを持つ117系を、特急料金なしに乗ることができる関西の鉄道はすごいと思ったことを覚えている。逆に言えば京阪神間における、国鉄(JR西日本)と阪急・阪神などの私鉄の競争はそれだけきびしく、新快速の運用は、すでに新型の221系・223系に移っており今では普通電車として使われている。

 以上大きく3タイプの電車をプレイできる国鉄485・583系特急だが、特筆したいのはそのすべての車両がきちんとモデリングされている点だ。各先頭車両の立体感は抜群で、室内の表現もよくできている。トワイライトエクスプレスの201系の室内が、テクスチャデータを張りましたという雰囲気なのに対して、エアロシムの各車両は座席や室内壁面がきちんと描写されているのが大きな違いだろう。


■ 収録されている路線は湖西線

クリーム色の車体にブラウンの帯が入った117系。デビュー当時は、通勤タイプの車両としては豪華な内装が話題になった。屋根の上には、通勤電車に使われている集中形空調機器が見える
 車両に対しては気合いの入った作りになっているのだが、収録路線は今ひとつ。付録のマニュアルにも「湖西線経由の京都~敦賀間をイメージした路線を収録いたしました」と書かれているとおり、琵琶湖の西にある湖西線が収録されている。

 パッケージアートにもなっている485系の代表的な特急である「雷鳥」は大阪-京都-敦賀-金沢と駆け抜けるのだが、その一部区間しか楽しめないのは残念だ。しかも、京都駅近辺のゴチャゴチャした感じや近江今津駅近辺で沿線風景は雰囲気は再現されているものの、リアルと言うには今ひとつのできで、細部まで作り込まれた列車データとの差が大きいと感じた。

 確かにMSTSでの主役が各車両であることは事実なのだが、主に長距離を走る特急がメインのタイトルであればこそ、収録路線は長くしてほしかったところだ。また、用意されている運行アクティビティも、各車両による、各季節での運行のみでドラマチックなものはない。せっかく分割・併合運用が可能な485系貫通タイプや583系が収録されているので、それらの特徴を活かしたものを用意してほしかった。車両がよくできているだけに、残念な点と言えるだろう。

収録されている路線が湖西線のみのためか、用意されている運行アクティビティのバリエーションはもの足りない。自由走行で遊ぶのがお勧めかも
 とはいえ、このタイトルによって、国鉄の代表的な電車特急の各タイプで遊べるようになるのはうれしいところ。エアロシムには、ぜひ、そのモデリング技術を活かして、各車両をアドオンソフトとしてリリースし続けていただきたい。

 なお、すでにエアロシムのホームページ上では、次回作となる「国鉄型電気機関車」のスクリーンショットが公開されている。ブルートレインの愛称で親しまれている寝台列車が楽しめるようになるようだ。

 EF65 PF形のファンの筆者としては、その発売に期待したい。また「国鉄485・583系特急」用のアップデータも同社のホームページで公開されている。アップデートを行なうと運転台の解像度が上がるなど一目で分かる違いもあるので、購入者は忘れずにアップデートをしておこう。

485系ボンネットタイプの運転台。視界の真ん中にあるクリーム色のものがボンネット。開発当時はさまざまな機器類を収容する関係から、このボンネットが必要だったのであろう こちらは、485系貫通タイプの運転台。ボンネットタイプとは異なる計器類の配置に注目してほしい。雨の敦賀駅を出て、京都に向け快走中 485系非貫通タイプでは、貫通タイプに比べ各種計器が増えている。同じ485系とは言っても時期により仕様が異なり、それらが描き分けられているのはお見事

583系の運転台は、485系ボンネットタイプと似たようなデザインになっている。これは583系と485系ボンネットタイプの生産時期が近いためだ。運転台は、国鉄の設計方針が時代によって移り変わってきたことをよく表わしている 新快速の文字から分かるように、これは117系の運転台。通勤タイプの車両では、標準的なデザインだ。ただし、左から2番目の速度計には160km/hの文字まで刻まれている。高速走行をする新快速の証だ


■ 湖西線徹底比較

 さて、今回も恒例の実車写真との比較だ。筆者は東京に住んでいるため、湖西線での撮影ポイントがよくわからず、完全に同じアングルでの撮影ができなかったのは勘弁してほしい。担当編集のN君と京都-敦賀に日帰りという強行軍。結局秋の京都というのに、観光は何もせずとんぼ返りしました。

京都駅を出発する特急雷鳥号。485系ボンネットタイプでの比較だ。このボンネットタイプの雷鳥を見ることができたのは結局これ一度きりだった

前面に貫通扉を持つ485系貫通タイプの雷鳥号。実車よりエアロシムのほうが扉が厚く見える。どちらも敦賀駅付近での写真となる。個人的にはすっきりした非貫通タイプよりも、武骨な貫通タイプのほうが力強い感じがして好みだ

高架区間での485系非貫通タイプの雷鳥号。貫通タイプに比べ扉がなくなったことでスマートな印象となる。特急電車と言えばコレというほど代表的なタイプだ。運転席の下に貫通タイプと同様銀の帯が付いているが、非貫通タイプの場合これはただの飾りとなっている

485系の室内。座席の色が違うのは、485系にはさまざまなバージョンが存在し、エアロシムがモデルとしたタイプの車両を見付けられなかったため。座席の立体感や、天井の空調機器に着目してほしい

485系からの車窓。この車窓など沿線風景が弱い点がエアロシムの国鉄485・583系特急の残念な点。実際は写真のように美しい琵琶湖の風景が広がる区間もあるのだ

京都駅での117系。実車写真で分かるように本物はすでに普通電車として運用されている。独特の柔らかい先頭車両の形状は今でも新鮮だ

本文にも書いたとおり、通勤タイプの電車とは思えない117系電車の座席。下手な特急電車よりも乗り心地がよく、長距離通勤もこれなら苦にならないかもしれない。東京圏ではいまだにこのレベルの通勤電車は投入されていない

ゲームで京都駅とともに重要なポジションにある敦賀駅の実写写真。京阪神方面から北陸への玄関口となるため数多くの路線が乗り入れている

敦賀駅からタクシーで10分の場所にある気比海岸。秋のためか海水浴をしている人は一人も見かけなかった。この左手には、松尾芭蕉や高浜虚子で有名な気比の松原が広がっている 取材途中に比良駅で下車し、琵琶湖沿岸を歩いてみた。久しぶりに見る琵琶湖はとても静かで、美しい夕暮れが迎えてくれた。取材に同行した編集者のN君は、「でっかいですね」と感心することしきり。これが海だと言っても誰もが信じる大きさだろう


■ 【コラム】「Microsoft Train Simulator」オフィシャルガイドブック

 これまで何度かニュースなり、レビューなりでお届けしてきたMSTSだが、そのオフィシャルガイドブックがアスキーより発売された。このガイドブックでは、MSTSに収録されている六つの路線のガイド、そしてそれぞれの各アクティビティの詳しい説明がなされている。

 特に国内の路線となる「JR九州 肥薩線」と「小田急電鉄 新宿-箱根湯本」に関しては、各アクティビティの攻略法が豊富なスクリーンショットとともに詳細に解説されていて、読んでいるだけで実際にプレイしているような感じを覚えるほどだ。肥薩線のスイッチバックについて、この本ほど具体的に詳解されているものはないので、MSTSのプレイに行き詰まっている方は参考にしてみるのもよいだろう。

 そのほか、実際の鉄道における技術解説など、MSTSをより興味深く楽しむための情報も多数掲載されている。ただ、MSTSの特徴ともなっているエディタ&ツールについては、もう少し詳細な解説がほしかったところだが、この本1冊あればMSTSを遊ぶ上での疑問はほぼなくなるのではないだろうか。鉄道シミュレーションゲームは、まだそれほど一般的ではないだけに、MSTSが初めてという人にお勧めしたいガイドブックだ。

(C) 2001 Aero Sim Co.,Ltd. All rights reserved.


【動作環境】
  • CPU:Pentium II 300MHz以上
  • メモリ:64MB以上(Windows 98/Me)、98MB以上(Windows 2000)
  • HDD:400MB以上(MSTSで別に1.2GB必要)
  • CD-ROMドライブ:4倍速以上 (起動時必須)
  • 解像度:800×600~1,280×1,024ドット


□エアロシムのホームページ
http://www.aerosim.co.jp/
□「Microsoft Train Simulator」のホームページ
http://www.microsoft.com/japan/games/trainsim/
□「MSTSアドオンシリーズ 国鉄485・583系特急」のホームページ
http://www.aerosim.co.jp/page1.htm
□関連記事
【10月15日】PCゲームレビュー「リアルアドオンシリーズ1 JR中央線 東京-高尾」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20011015/tyuou.htm
【8月24日】PCゲームレビュー「Microsoft Train Simulator」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010824/train.htm
【6月6日】PCゲームファーストインプレッション「Microsoft Train Simulator」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010606/trainsim.htm

(2001年11月13日)

[Reported by DOS/V POWER REPORT編集長 谷川 潔]

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ウォッチ編集部内GAME Watch担当 game-watch@impress.co.jp

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