レビュー
「PlayStation VR2」レビュー
機能と体験に値段以上の価値。“ハイエンド”を感じるリッチなVRゲームハードに
2023年2月21日 00:00
- 【PlayStation VR2】
- 2月22日 発売予定
- 価格:74,980円
いよいよ明日、2023年2月22日にPS5専用新型HMD「PlayStation VR2(以下PSVR2)」が発売される。
前世代機である「PlayStation VR」は2016年10月13日に発売。プレイステーション 4とプレイステーション 5に対応していたのだが、今回のPSVR2はPS5専用のデバイスだ。そのためPSVR2自体のハードウェアスペックはもちろん、PS5のパワーを生かしたデバイスになっている。そんなパワフルな本機に触れた感想を一言で伝えると「値段以上に価値があるVRヘッドセットである」ということだ。
74,980円という本体価格はPS5本体以上に高額だが、低価格モデルでも59,400円するVRヘッドセット「Meta Quest 2」を普段使っている筆者(単純な価格の比較がナンセンスなのは承知だ。そもそも製品の方向性が違う)としては、本機には値段以上のスペックがあり、本機でしか体験できないゲーム体験があると感じた。
今回は接続前のセットアップから、実際のゲーム体験の入口部分までを集中してお伝えしていきたいと思う。筆者が値段以上に価値があると感じた理由を述べているので、ぜひ最後まで読んでほしいと思う。
なおPSVR2の開封レポートや、ゲームタイトルの体験に特化したレポートは別項でお届けしている。そちらもあわせてお楽しみいただければと思う。
スペック比較表(本体) | PlayStation VR | PlayStation VR2 |
---|---|---|
重さ | 約600g(ケーブル含まず) | 560g |
トラッキング | 6DoFサポート | 6DoFサポート |
ディスプレイパネル | OLED | 有機EL |
解像度 | 1,920×1,080(単眼) | 2,000×2,040(単眼) |
リフレッシュレート | 120Hz、90Hz | 120hz、90hz |
視野角 | 約100度 | 約110度 |
接続端子 | HDMI、USB | USB Type-C |
オーディオ | マイク内蔵 | ステレオヘッドホン端子、マイク内蔵 |
IPD(瞳孔間距離) | 調整可 | 調整可 |
フィードバック | なし | ヘッドセットの振動 |
PS5との接続は簡単。付属ケーブルの長さと柔らかさは大きなポイント
まずはPS5とPSVR2との接続について見ていきたい。使用するのは、PSVR2本体から伸びるUSB Type-Cのケーブル1本だけ。非常に簡単でシンプルなものだ。前世代機である「PlayStation VR」が本体とは別に「プロセッサーユニット」というハードが必要だったこと、HDMIケーブルなど複数のケーブルを接続する必要があったことを考えると、かなりのシンプルさだ。
さすがにそもそも線のない「Meta Quest 2」や「PICO 4」と比べると分が悪いが、グラフィックス関連のデータやサウンドなど転送するデータ量の多さを考えると有線の方が安定するという判断なのかもしれない。
なぜケーブルにこだわるかというと、それはVRヘッドセットだからこそ起きるコードの取り回しの問題にある。例えば、大きく動かさないゲームのコントローラーやキーボードなどであれば有線でも全く問題ない。たがVRヘッドセットは、ゲームによってはプレイ中に頭を大きく動かすこともあるし、プレイしている最中にいつの間にかぐるっと回転していることもある。しかもVRヘッドセットを被っているために外の状態が見えず、コードが絡まったり、引っ掛かったりしやすいのだ。
だが本機のケーブル長は4.5mと長めで、しなやかなケーブルになっている。思った以上に余裕があり、何十周も回転したり、思いっきりケーブルを引っ張らなければ快適にプレイできる印象だ。普通にVRゲームをプレイする上では、最初にプレイ範囲や周囲の環境を整えておきさえすれば、ほぼ誤差レベルだと言って良いだろう。
さらなる快適性を目指すなら天井にケーブルを回して上からぶら下げる、という方法もあるが、そこまでしなくても十分に安心して遊ぶことができる。
PS5のUIと統一されたセットアップ画面は高級感あり。非常に丁寧なのも良ポイント
続く初期セットアップだが、最初はヘッドセットを外した状態で進めていく。1ステップごとにモニターに手順が表示されるので、画面の表示にあわせて「ヘッドフォンをPSVR2に接続する」、「装着用のスコープを引き出す」といったステップを実行していく。「Meta Quest 2」はスマートフォンを使ってセットアップしていくが、それをPS5に接続されているディスプレイを使って行なうようなイメージだ。
その際の手順やディスプレイに表示される丁寧すぎるほどに親切だ。画面には大きくPSVR2の絵が描かれており、その絵がアニメーションしてパーツの位置や対応手順を教えてくれる。ここのビジュアルはPS5のホーム画面などと同じトーンになっており、統一感もあってPS5/PSVR2の値段相応の高級な雰囲気を感じられる。
そして初期セットアップの途中でヘッドセットを装着するように指示されるので、そのタイミングで指示に従ってヘッドセットを装着する。装着方法もアニメーションで説明されるが、ゴーグル部分を頭の前部分で支えつつ、後ろのヘッドバンドで固定するというもの。この装着方法は頭への締め付け感を殆ど感じない。また筆者はメガネをかけているのだが、メガネをかけた状態でも、目の周りにはスペースに余裕があり、そのまま装着できた。これはかなり快適だ。
また本体は約560gということだが、、フィット感や装着している時の首への負担はあまり感じない。固定方法もあるが、前後の重量バランスにも相当こだわっているのだろう。筆者は「Meta Quest 2」を使用するとき、後頭部にカウンターウェイトを兼ねてモバイルバッテリーを付けているのだが、PSVR2はそういった調整は一切不要だ。
アイトラッキングやレンズ間距離の調整は、ヘッドセットを被った状態で行なう。
レンズ間距離の調整は、画面を見ながら本体のダイヤルで調整する形だった。個人的にはかなり好印象の機能で、何よりPSVR2側で正しい位置を判定してくれる所が良い。というのも、他のVRヘッドセットのレンズ間距離調整は、装着した本人次第のものが多く、どう調整すれば自分の目に合っているかがわかりにくい。極端にズレていれば「見にくいかな?」という印象程度はあるのだが、“正確に”となるとかなり難しい。
だが本機はヘッドセット内のモニターに自分の瞳の位置とヘッドセットの絵が表示される。その状態で、本体にあるダイヤルを回すとレンズの間隔を広げたり狭めたりできる。自分の瞳の位置が表示されるので非常に調整しやすく、判定後に微調整が必要な場合もあるが、ピッタリの位置にレンズの間隔をあわせられるのはかなりポイントが高い。この間隔をあわせることで目の疲れやすさも軽減される。ヘッドセット自体の装着感の良さも合わさって長時間のプレイが快適にできるのはゲームファンとしてはありがたいポイントだ。
またアイトラッキングは、ヘッドセット内のディスプレイに表示される点を目で追いかけるというもの。手順はそれだけで、時間も殆どかからない。体感では1分かからないくらいだろうか。一度調整すれば、遊ぶ人が変わったりしない限り再調整は必要ないので、手間に感じることはない。
その後はプレイエリアの設定などに移る。この時、ヘッドセット側にはパススルー機能で白黒の部屋の様子が表示される。この状態で周囲を見渡すと、障害物などが自動で判定されてプレイエリアが設定される。自動でプレイエリアを設定した後も手動で範囲を調整することも可能だ。ちなみにだが、座ってプレイしたり、立って動かずにプレイする場合は1m×1mの広さが、大きく動いてプレイする場合は2m×2mの広さが必要になる。事前に障害物などをどけてスペースを確保しておきたい。
このパススルー機能について述べておくと、かなり画質が良い。PSVR2本体にあるファンクションボタンを押すと起動中はいつでもパススルー機能が有効になるのだが、くっきりとしている。白黒ではあるものの、周囲にある障害物などをチェックするのは十分な性能だ。ちなみにどれくらいくっきりしているかというと、スマートフォンの大きめに表示されている時計の文字が読めるくらい。ただ、Twitter画面のような細かい文字は読めなかった。それでも必要な場合は、ヘッドセットをずらしてチェックすることになるだろう。
有機EL&高解像度パネルがクッキリとした画面を生む
ヘッドセットのセットアップが終わったので、まずはPSVR2で通常のPS5(PS4)用ゲームをプレイしてみた。
PSVR2では通常のPS5(PS4)用ゲームをプレイを起動すると、PSVR2のスクリーンにゲーム画面が表示され、そのままゲームをプレイできる。さながら目の前に広がる1人用の大きなスクリーンといったところだ。この機能は正直最初はあまり期待していなかったのだが、プレイ感覚は想像以上に良かった。
まずスペック表にあるとおりPSVR2のディスプレイは有機ELを使用しており、くっきりとした発色はかなり美しい。また片目当たりの解像度は2,000×2,040で。そのため通常のPS5(PS4)用ゲームのゲームをプレイしても、VRヘッドセットによくある発色の物足りなさや解像度の低さからくるぼんやりとした感覚や、文字が読みにくいというようなこともほぼなかった。
今回は「ASTRO's PLAYROOM」をプレイしたのだが、最初に感じたのは「こんなに発色がしっかりしていて、画面もクッキリ見えるのか!」ということだった。その感覚は下手な液晶モニターよりキレイに感じた。文字もくっきり読めるし、遅延も感じない。装着感のところで述べたとおり、長時間装着していても疲れにくく快適なので、普段のモニターでゲームを遊ぶ代わりにPSVR2でゲームをプレイするのも十分選択肢に入るという印象だった。
一点注意が必要なのが、こうした(PSVR2非対応の)ゲームをプレイする際はPSVR2専用のPS VR2 Senseコントローラーは使用できない。PS5本体に付属する、DualSenseコントローラーを使用する必要がある。
続いてPSVR2専用の「Horizon Call of the Mountain」をプレイしてみた。ゲーム難易度や操作方法のカスタマイズなどの設定を追えた後にゲーム本編が始まるのだが、最初に度肝を抜かれたのはやはりビジュアル面だった。
この世界に降り立ったときの圧倒的な自然の美しさ、特に緑の発色と、水の表現には驚いた。これはPS5のパワーを使えることと、ヘッドセットのディスプレイの性能によるものだと思う。特に、PSVR2に搭載されたアイトラッキング機能はハード性能を語る上で外せない要素だ。
そもそも、まずアイトラッキングを搭載しているVR機器はまだ少なく、あったとしても非常に高価だ。例えばHTCが発売した「VIVE Pro Eye」や、昨年Metaから発売された「Meta Quest Pro」などがそうで、用途や接続方法などが違うので単純に比較するのはやや乱暴だが、両機ともに20万円を越える。
それが8万円もしないハードウェアに搭載されている。この時点でまずポイントが高い。例えば「Horizon Call of the Mountain」では、メニューの項目に視線を送ると選択状態になる、といった機能がある。
そして、PSVR2のアイトラッキング機能の真の価値は「フォビエートレンダリング」にある。「フォビエートレンダリング」は、ユーザーがフォーカスしている部分の画質を優先することで、GPUパフォーマンスを向上させる技術だ。この技術と本機のアイトラッキング機能をあわせることで、プレーヤーが見ている部分の画質を優先して描画できるため、GPUのパワーをプレーヤーのゲーム体験にフォーカスできる。特定の部分にフォーカスしながら横目で他の部分を見るというのは一般的なプレイではしない動作だし、別のところを見る視線もヘッドセットが追ってくるので、自分が見ている場所が常にほかの場所より美しく表現されていると考えていただければ大丈夫だ。
ゲーム体験という点では、ヘッドセットの振動も新しい感覚を感じさせてくれる。「Horizon Call of the Mountain」のゲーム内で世界を見渡していると、巨大な機械獣が現われるのだが、その時に轟音と共にヘッドセットが揺れる。音と振動の両方で、機械獣の大きさを「体感する」という演出になっていて、想像以上に臨場感があった。VRハードとしてはハイエンド技術のアイトラッキング機能などが、すべてゲーム体験向上のために使われているところにSIEのこだわりを感じるし、そこにVRゲームハードとしての頼もしさがあるように思う。
このスペックを考慮した上でゲーム体験を振り返ると、やはりPSVR2ならではの圧倒的なビジュアル表現への感動を感じる。発色の美しさもそうだし、自分が見ているところが微細に描かれているのもすごい。目の前でしゃべる人物は本当の人間のような生々しさを感じるし、機械獣の金属部分の冷徹な感覚も強く感じられる。そして巨大な機械獣や山の頂上などを下から見上げるという体験はVRゲームでしか体験できないので、それらが合わさってPSVR2ならではの体験に繋がっているのだと思う
PS VR2 Senseコントローラーは独特の形状だが使いやすい
では、PSVR2専用のコントローラー「PS VR2 Senseコントローラー」はどうだろうか。こちらは形状が独特だ。
コントローラーは左右独立しており、左にはPSボタン、クリエイトボタン、アクションボタン(△ボタン/□ボタン)、L1ボタン、L2ボタン、左スティック/L3ボタンが、右にはPSボタン、オプションボタン、アクションボタン(○ボタン/×ボタン)、R1ボタン、R2ボタン、右スティック/R3ボタンがある。L1、R1が中指の位置に来ているのが特徴的だが、基本的にはDualSenseコントローラーの左手で持つ部分と、右手で持つ部分が分かれたようなイメージだ。
ビジュアルはヘッドセットと同じく白と黒がベースになっている。手で握る部分やコントローラーの内側が黒くなっており、外周部分が白くなっている。両方ともつや消しの素材になっており、ヘッドセット、そしてPS5との統一感があり、単体での高級感、そして全体を組み合わせたときの高級感を感じられた。また本コントローラーにはポジショントラッキング用のIR LEDが搭載されている。このLEDから出る光をヘッドセットのカメラで測定し、空間上のどの位置にコントローラーがあるかを特定するという仕組みだ。前世代期の時に使用したPS Moveは巨大なLEDがついていたが、今機ではその辺りがグッとスマートになっているのも見た目のポイントが高いところだ。
持つときはリング部分に手を通しグリップを握るようにして持つ。このグリップ部分には触れている部分を判定するタッチセンサーが搭載されており、持っている時の指の形状がゲーム側に反映できるようにもなっている。
まずコントローラーのグリップ感が非常に良い。グーで握るように持つのだが、グリップ部分が手のひらの凹凸にあわせてカーブしており、自然な感覚でコントローラーを持てる。ゲームプレイ中に熱くなって思わずコントローラーを強く握ったりしても自然に受け入れてくれる形状になっていた。初代PSからPS5までずっと家庭用ゲーム機のコントローラーを作り続けてきたSIEのノウハウが活かされている部分だと感じた。
またハプティックフィードバックも搭載されており、ゲームの動きに合わせてコントローラーが振動したり、R2/L2ボタンの押し込むときの固さが変わるトリガーエフェクト(アダプティブトリガー)も搭載されている。コントローラーが振動するというのは他のVRヘッドセットのコントローラーにもあるが、微細な振動の表現と抵抗を感じるトリガーエフェクトが可能なのは本機ならでは。目で見る臨場感、ヘッドセットの振動で感じる臨場感以外に、弓矢を引き絞る感覚など、手からのフィードバックでもさらに深い臨場感を楽しむことができた。
今回は初期セットアップから、ゲーム体験の入口部分までを試したが、どの体験も非常に上質だった。初期セットアップのわかりやすさや、UIの親切さはもちろんだし、ヘッドセットの装着の快適さも素晴らしい体験だった。
実際にゲームをプレイしてみて感じるディスプレイの美しさや、ヘッドセットやコントローラーからのフィードバックは没入感を語る上では外すことができず、まさに“ハイエンド”なVRゲーム体験となっている。VRゲームの次世代を感じられるという点で、値段以上の価値のあるハードウェアと言えるだろう。
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