【特別企画】
新型VRヘッドセット「HTC VIVE Focus Vision」レポート。DisplayPortとの直繋ぎで美しく高リフレッシュレートのVR体験を
標準搭載のアイトラッキングでソーシャルVRでの表現力も増す
2024年9月25日 10:52
- 【VIVE Focus Vision】
- 10月18日 発売予定
- 価格:
- Consumer Edition:169,000円
- Business Edition:214,000円
HTC VIVEは9月24日、新型VRヘッドセット「VIVE Focus Vision」を発表した。価格は、Consumer Editionが169,000円、Business Editionが214,000円となっている。PCと有線接続するためのVIVE Wired Streaming Kitは別売で29,000円。
予約は9月24日12時から開始されており、一般販売は10月18日0時から(小売店は営業開始時刻から)を予定している。Consumer Editionを予約すると、特典として有線ストリーミングケーブルとVRゲームが、Business Editionを予約するとVIVE Businessパスのライセンスが1年分提供される。
本機の最大の特徴は、PCのDisplayPortに接続することでより忠実なPCVRの体験ができる点だ。他社のコンシューマー向けVRヘッドセットと比較した本機の強みはこのモードにある。
また、アミューズメント施設などでも使いやすいバッテリーホットスワップ機能や、「VRChat」をはじめとするソーシャルVRのヘビーユーザーにも勧めたいアイトラッキング機能などを搭載している。
もちろん、本機の魅力はそれだけではない。今回は記者発表会で発表された内容や、実際に体験できた内容についてお届けしていく
DisplayPort接続で実現する、驚異のグラフィックス。ソーシャルVR向きの多彩な機能も
今回プレゼンテーションを行ったHTC NIPPONの政田雄也氏は、本機の最大のメリットは「PCのDisplayPortに接続することでより忠実なPCVRの体験ができる点」にあると語る。他社のコンシューマー向けVRヘッドセットのモデルがUSB、もしくはWi-Fiを使ったストリーミングを採用しているのに対し、本機はDisplayPort経由でGPUがレンダリングした映像をVRヘッドセットのディスプレイで受信することもできる。
政田氏によると、USBやWi-Fiを使って映像など送受信すると、通信の関係上の理由で映像などが圧縮し劣化してしまうのだという。だが、本機でDisplayPortを経由することで、データが圧縮されずにVRヘッドセットで受信できるため、より美しく高フレームレートの映像を楽しむことができるのだ。このモードを利用した場合のリフレッシュレートについては、発売時点は90Hzで、2024年内に120Hzに対応する予定だという。
気になる解像度は片目辺り2448×2448ピクセル、視野角は最大で120度になっている。内臓プロセッサはQualcomm Snapdragon XR2。メモリは12GBで、ストレージは120GBで、MicroSDを使うと、最大2TBまで拡張できる。
一方で、スタンドアローンモードではケーブルレス、ベースステーションレスでのプレイが可能だ。そのため、ユーザーは環境や用途に応じてDisplayPortモードとスタンドアローンモードを切り替えて使用できる。
さらに、MR(複合現実)機能も搭載しており、現実世界にバーチャルな情報を重ねることができる。実際の体験では、歪みをほとんど感じることなく、自然で快適な視界が得られた。ハンドトラッキング機能も向上しており、前面に搭載された「赤外線フラッドライト」により、暗い環境でもパフォーマンスが向上している。
実際に会場では、MR機能とハンドトラッキング機能を活用し、バーチャル上に存在するVTuberとコミュニケーションを取ることができた。ヘッドセットの音質も十分で、自然な会話ができ、ハンドトラッキングのおかげでVTuberと手を合わせるようなコミュニケーションも取れた。
また、VIVE Focus Visionは快適な装着感も特徴の1つだ。ヘッドセットの具体的な重量までは発表されていないが、前後の重量バランスの調整や、頭と接する部分のクッションなどにより、かなり快適な装着感を提供している。筆者は少し大きめのメガネを使っているのだが、眼が接する部分はかなりのスペースがとられており、窮屈に感じることも、どこかと当たって痛いということもなかった。
そして、瞳孔間距離(IPD)の自動調整機能を備えており、ヘッドセットを装着すると自動で最適な設定を行うためのセッティングが始まる。これは画面中央にある点をじっと見つめ続けるというもの。体感にして十数秒だろうか、それほど長くは感じないスピードで最適な設定が行われた。こちらもメガネをかけたままでも一切問題がなかったのはありがたい。
さらに、バッテリー駆動時間最大2時間。バッテリーはホットスワップに対応しており、電源を入れたまま交換が可能だ。内臓予備バッテリーで20分間のスタンバイがあるので、途切れずに、長時間の利用や、アミューズメント施設での連続運用が容易になる。
これにより、個人使用はもちろん、アミューズメント施設など不特定多数のユーザーが利用する環境でも快適なVR体験ができるのはポイントだと感じた。
全体を通して感じたのが本機のターゲットについてだ。大きくわけると3タイプあり、一つがアミューズメント施設などで使うビジネス用途。本機はワイヤレスでベースステーションの設置なしに使用できるし、バッテリーのホットスワップにより中断することなくVR体験を提供し続けることができる。さらにIPDを自動で調節してくれる部分が不特定多数のユーザーが使う環境では大きなメリットになるだろう。
そして、残り2つは個人用途だ。まず、よりリッチな環境でVRゲームをプレイしたいと考えるヘビーゲーマーだ。単純に価格だけを見ると、今人気のVRヘッドセットである「Meta Quest 3」や、「PICO4 Ultra」よりは値段が張る。
だが、現時点ではDisplayPortと接続して、クリアかつリフレッシュレートが高いVR体験ができるのは本機だけである。そういう意味でこの環境でVRゲームを楽しみたいというユーザーには本機は乗り換えの候補に挙がるだろう。
そして3つめが「VRChat」をはじめとするソーシャルVRユーザーだ。本機には「アイトラッキング」が標準で搭載されており、目の動きをバーチャル世界に反映できる。これは現時点ではMeta Quest 3にもPICO4 Ultraにも搭載されていない機能なので、この機能を求めるとVRヘッドセットの選択肢はグッと減る。
スタンドアローン機でこの機能を持っているのは「Meta Quest Pro」があるが、「Meta Quest Pro」の価格が159,500円であることを考えると値段の差はかなり小さい。
さらに別売りではあるが「VIVE フェイシャル トラッカー」を組み合わせればより現実世界の動きをバーチャル世界に反映できることから、本機はソーシャルVRユーザーにも相性が良いと感じた。
政田氏も、「目と口のトラッキングにも対応させるのは必要だと思っています。VTuberさんやVRChatのユーザーが開拓してくれた業界ですので、応援したい限りです」とソーシャルVRユーザーや、VTuberのことを強く意識していると話してくれた。