【特別企画】

“究極のVRレースゲーム”現る。PS VR2版「グランツーリスモ7」体験レポート

F1カーで駆け抜ける東京は“鳥肌モノ”! 「GT7」×VRだけの体験がここに

【グランツーリスモ7:PS VR2対応アップデート】

2月22日 配信予定

 全てのレースゲームファンに“普段味わえない体験”を提供してくれる「グランツーリスモ7」。シリーズ25年の集大成として2022年3月に発売され、1年が経とうとしている今、最大規模のアップデートが到来しようとしている。それが「PlayStation VR2」への対応アップデートだ。

 もちろん、前作「グランツーリスモSPORT」でも初代「PlayStation VR」に対応していた。だが、基本的には「VRドライブ」と「VRショールーム」の2つのモードのみで、小規模な実装に留まっていた。だが、あれから5年半の月日が流れた「グランツーリスモ7」では、“ほぼ”全てのモードがVRに対応するだけでなく、“無償アップデート”で提供される。

 そこで本稿では、“VR完全対応”を果たしたアップデート版「グランツーリスモ7」の体験レポートをお届け。細かな部分まで再現し、愛車を間近で感じることができる「VRショールーム」や、あまりの速さに鳥肌が立つドライブ中の様子など、PS VR2の機能をとことん使い倒した“究極のVRレースゲーム”の一部始終をお伝えする。

【CES 2023 Press Conference|Sony Official(グランツーリスモ7 PS VR2パート)】

VGTにはインテリアが無い!? ウィンカー点滅など“芸が細かい”「VRショールーム」

 まずは「グランツーリスモ7(以下、GT7)」について少しおさらいしたい。本作は、「グランツーリスモSPORT(以下、GT SPORT)」から約4年半越しにリリースされた「グランツーリスモ」シリーズ最新作で、シリーズ初のPS5世代となりレイトレーシングに対応するなど、グラフィックスが一層進化している。また、オンラインレースに特化した「GT SPORT」とは異なり、オフラインでプレイ可能なワールドマップが復活するなど、シリーズ25年の歴史が詰まったレースゲームだ。

 アップデートを適用した「GT7」では、PS VR2を接続し頭に装着すると、自動的にVRモードに切り替わる。といっても、最初はシネマティックモードの状態で表示されるのだが、ガレージに行くとTVモードでは表示されなかった「VRショールーム」などの専用メニューが現れる。

こちらはTVモード時のガレージの画面。PS VR2を接続し頭にかぶった状態でガレージに入ると、「VRショールーム」という項目が現れる

 最初は、愛車を間近で眺めることができる「VRショールーム」。「GT SPORT」の「VRショールーム」では、愛車の外観を舐めまわすように見たり、外からインテリアを覗いてみたりと、愛車を間近に感じることはできるのだが、ショールーム内でできることは限られていた。

 だが「GT7」ではVRショールームが大幅に進化。まず、「GT SPORT」では真っ黒な室内に車が置かれているだけだったが、「GT7」では外の景色を変更できるようになった。さらに、コックピット内部のシートに座ることができるようになっている。これでインテリアを“まじまじ”と見ることができるようになったのだが、このインテリアの作りこみが凄い。

 「VRショールーム」ではウィンカーを付けることができるが、きちんとメーター内のウィンカーも点滅するほか、足元を覗き込むと、ちゃんとアクセルべダル、ブレーキペダル、そしてクラッチペダルがある。レースカーになると、室内の驚異の狭さを体験できるほか、剥き出しの配線も再現されており、思わず「おぉ……!」と声に漏れてしまう。また、ドライバーが使うであろう小さなマップを発見すると「こんなに細かいところまで……!」と感動してしまうだろう。

VRショールームを体験する筆者の様子。シートベルトの金具からの光の反射がものすごくリアル

 なお「VRショールーム」の時点から、PS VR2の新機能「フォビエートレンダリング」が機能している。これは、ヘッドセット内部の赤外線カメラによって視線を検出し、ユーザーが見ている箇所のレンダリングを強化する機能だ。筆者は今回がPS VR2初体験だったが、スタッフの方から言われるまで機能していることに気づかなかった。“注意して見ると”「視線以外の画質がボヤけてるかも……?」のレベルで、寧ろ目の前にある車の驚異的なグラフィックスに目を惹かれる。

 また、「GT7」に収録されている“ほぼ全て”である450車種以上が「VRショールーム」に対応しているが、一部の「ビジョングランツーリスモ(VGT)」などの車種については、VRショールームに入ることができない。これは、エクステリアのデザインを極めた結果、“内装のスペースがない車”があるためとのことだ。これらの車種については、VRモードで運転することもできないため、注意が必要となる。

PS VR2に実装される視線トラッキング&フォビエートレンダリング
先日実装された「フェラーリ ビジョン グランツーリスモ」にはインテリアが実装されている

“F1ドライバーって、このスピードを体感してるんですか!?” あまりのスピードに鳥肌が立つドライブモード

 続いては、メインとなるPS VR2を被った状態のドライブだ。先ほど述べた通り「GT7」では、ワールドサーキットやミッションといった“ほぼ”全てのモードがVRに対応しており、オンライン対戦となるスポーツでもVRを被った状態で挑むことができる。逆に利用できないモードは、1画面を2分割する「ローカルマルチプレイ」のみ。理由は明白で「PS5にPS VR2を2台接続できないから」とのことだ。

 VRを被った状態での操作方法は2つ。1つ目はDualSenseコントローラー、そして2つ目はハンドルコントローラーだ。お気づきの方もいると思うが、PS VR2に付属する「PSVR2 Senseコントローラー」には非対応となっていて、画面上の操作をすることもできない。この点は少し残念だが、両手が離れた状態のコントローラーで運転するのは恐らくとても難しいので、無難な選択のようにも思う。

 今回は、ワールドサーキットより「東京エクスプレスウェイ」のタイムトライアルを体験した。試乗したのは、マツダのスポーツカー「ロードスター S(ND)'15」と、マクラーレンのF1カー「MP4/4 '88」の2台だ。

今回は「東京エクスプレスウェイ 中央ルート 外回り」を駆け抜けた

 まずは、比較的運転しやすいロードスターに乗り込んだ。ローリングスタートから始まるのだが、最初に驚いたのは、首都高をモチーフにした街並みの美しさ。「GT7」のグラフィックスが、PS VR2の4K(片目あたり2000×2040)HDRの有機ELディスプレイと組み合わさり、時速200km以上で東京の夜景が過ぎ去っていく。

 また、通常のTVモードと同様に、レース中のレイトレーシングには非対応。また先の「VRショールーム」においてもレイトレーシングは非対応とのことだ。ただでさえ、両目用の映像を作り出さなければいけないVRモードで、レイトレーシングもというのは欲張りな話だが、光の反射は“こだわったポイント”とのことで、レイトレーシングと遜色を感じないほどライトやボディへの反射はリアルだ。

 さらに、筆者が「GT7」をプレイしていると、バックミラーやサイドミラーの確認を怠って、ウォールや他車にぶつかってしまうこともしばしば。だが、VRでドライブしていると、“チラッと”ミラーに目を向けるだけで後方・サイドを確認できるため、まるで実車を運転しているような感覚を味わうことが可能だ。

今回VR内で試乗した「ロードスター S(ND)'15」。余談だが、筆者はマツダの本拠地・広島出身で工場見学に訪れたことがある
夜の都内をロードスターでゆっくりと巡っていくのも楽しい。また画像では確認しづらいが、ハンドル上にポジションやタイム、視界左側にブレーキバランスなどが表示されている

 続いては、F1カーの「MP4/4 '88」。ホンダ製エンジンを搭載し、誰しも名前を聞いたことがあるであろうF1ドライバーであるアイルトン・セナが、初めてワールドチャンピオンを獲得したF1マシンだ。伝説ともいえるマシンに、VRモードで乗車できるというのは「GT7」ならではのロマンだろう。

 「VRショールーム」では試乗せず、タイムアタックにてぶっつけ本番のドライブとなったが、これが間違い(もちろん、いい意味で)だった。ローリングスタートで加速した瞬間に、体中が“ゾワッ”としたのだ。先に乗った「ロードスター」は、重厚感のあるボディで“守られてる感”があるのだが、F1カーは頭が剥き出しの状態で、さらに市販車に比べ圧倒的な加速力を誇る。幅の狭い「東京エクスプレスウェイ」を運転していると、少しアクセルを踏むと壁が迫ってきて「ハンドル切らないと死ぬ!」と脳が感じとってしまうのだ。筆者は、改めてF1マシンに乗るドライバーたちの凄さを実感した。

 またロードスターの後に、MP4/4を乗って気付いたのが、車種ごとのUIの違い。ロードスターでは、視界の上にタイムとポジション、視界左側にブレーキバランスなどの情報が表示されていたが、MP4/4では視界上の情報に変わりはないが、ブレーキバランスなどの情報が右側に変わっていた。これはドライビング中に視界の邪魔にならないよう、1台ずつ調整しているとのことで、こだわりを感じる点の1つだ。

右手前が「MP4/4 '88」。マクラーレンホンダ時代のアイルトン・セナが乗った伝説のF1マシンだ
そもそも「MP4/4 '88」で都内を駆け抜けるというのが「GT7」でしかできない体験。PSVR2でレースに挑むと、あまりの速さに“脳が驚く”かも!? またUIの位置も、ブレーキバランスが視界右側にくるなど、車種によって調整されているようだ

 そして、ここでもPS VR2ならではの利点を感じた。それは残像感が少ないこと。時速300km越えで首都高を走り抜けるが、応答速度の速い有機ELパネル、パンやチルトといった頭の動作は120Hzに対応していて、残像は非常に感じづらい。これはVR酔いの軽減にも繋がるだろう。

 実際に、筆者も計1時間ほどPS VR2を被った状態で「GT7」をプレイしていたが、VR酔いは全くと言っていいほど感じなかった。もちろん、日ごろから「Meta Quest 2」などのVR機器を被っていることも考慮する必要があるが、今までで一番快適にVRゲームをプレイできたように思う。

 また、今回の体験会では、ハンドルコントローラー(通称:ハンコン)でもプレイする機会があった。PS VR2上での体験はコントローラーと同じものだが、ハンドルを持って運転するというドライバーとしてのフィーリングは格別。ハンコン・PS VR2・GT7という組み合わせで、揃っていないものと言えば“体にかかるG”くらいだろう。

「GT」シリーズ25周年スタジオツアーの画像。こちらのRECAROのレーシングシートとThrustmasterのハンコン、そしてPS VR2を用いた「GT7」の体験は、“実車の運転”に限りなく近い

PS VR2によって“新しい時代”のレースゲームとなった「GT7」。ネックはPS VR2の“価格”か

 「GT SPORT」の“VRコンテンツの少なさ”を克服した、PS VR2対応の「グランツーリスモ7」。ディスプレイ上の存在だった“自分の愛車”を、間近で眺めて、サーキットを駆けることができるのは、「GT7」とPS VR2の組み合わせならではの体験となるだろう。また、F1カーやスーパーカーのコックピットに座って、ドライブできるというのは、PS VR2に対応した「GT7」にしか成しえないロマンだ。

 今回体験した範囲だけでも、“究極のVRレースゲーム”を体験させてくれた「GT7」。残りの課題は、PlayStation VR2本体の価格となるだろう。無論、高性能なVRヘッドセットに、両手分のコントローラーが付属して約75,000円というのは納得できる値段だ。だが「GT7」では折角の「PS VR2 Senseコントローラー」を使うことができない。「GT7」の様なゲームのために、初代PS VRのような“VRヘッドセットのみ”で5万円ほどの価格で販売するのも、筆者としては“アリ”のように感じる。

 だが、今回のPS VR2版「GT7」は「グランツーリスモ」ファン、VRファンともに“必ず体験しておきたい”VRゲームの1つになっていることを確認できた。ぜひ1度はPS VR2版「GT7」を体験してみてほしいとともに、今後の「PlayStation VR2」、そして「グランツーリスモ7」の更なるアップデートに期待したい。

「GT7」とPS VR2の組み合わせ“ならでは”の体験がたくさんある。ぜひとも体験してみてほしい