インタビュー

【G-STAR】「Lies of P」を韓国の代表的ソウルライクにする!

「世界最高レベルの打撃感」に自信。主要スタッフへインタビュー

【Lies of P】

2023年 発売予定

価格:未定

 NEOWIZが開発中のソウルライクアクション「Lies of P」を「韓国を代表するソウルライクにする」。そう語ったのは、NEOWIZの開発スタジオ「Round 8 Studio」の「Lies of P」統括ディレクター、チェ・ジウォン氏だ。

 「Lies of P」は、Round 8 Studioが2019年春から構想をスタートさせてソウルライクアクション。幼少期から「ストリートファイター」シリーズ、「ファイナルファンタジー」シリーズ、「聖剣伝説」シリーズなど日本のゲームに親しみ、今ではフロム・ソフトウェア作品にすっかり魅了されているというチェ氏が中心となって開発が進められている。

【Lies of P - Gameplay Reveal】

 チェ氏は過去に、「Dark Blood Online」で企画統括、「Asker Online」と「Lost Ark」で戦闘企画統括を務めた経験を持つ。どれもオンラインゲームであり、オンラインゲームが主流の韓国では自然にも思えるが、この次にチェ氏らが打ち出したのが完全1人用ゲームとなる「Lies of P」というわけだ。

 今回、G-STAR 2022でチェ氏を含め、「Lies of P」アートディレクターのノ・チャンギュ氏、そしてRound 8 Studio長のパク・ソンジュン氏へインタビューできた。あえて1人用ソウルライクへと舵を切った狙いや、本作に搭載された様々なこだわりなどを聞くことができたので、ご紹介したい。なお出展されていたプレイアブル版のレポートは別稿にてお伝えしているので、合わせてご覧いただきたい。

上の2人がRound 8 Studio長のパク・ソンジュン氏(左)、「Lies of P」アートディレクターのノ・チャンギュ氏(右)。下側にいるのが「Lies of P」統括ディレクター、チェ・ジウォン氏

ダークで残酷、大人向けに振り切った「ピノキオ」

 なぜRound 8 Studioは1人用のソウルライクアクションゲームの開発に乗り出したのだろうか。その大きな理由のひとつには、「今ソウルライクは知名度が上がって、一般のユーザーでも楽しめるジャンルになってきたから」だとチェ氏は語る。

 ソウルライクのゲームとしてのハードルが下がってきたことに加えて、実際にビジネス的にも成功するタイトルも多い。一方で、韓国からはソウルライクの代表作は生まれていない。だからこそ、この「Lies of P」を韓国発のソウルライクゲームの代表作にする、という意気込みで臨んでいるそうだ。コンソールゲームを幼少期から追いかけてきたチェ氏ならではの発想と言えるだろう。

 その思い入れは多くのゲーマーに伝わっており、本格的にプロモーションが始まった2021年、5月と11月に公開された2つのトレーラーはどちらも再生数100万回を超えている。2022年にはドイツのゲームショウ「gamescom」で、Best Role Playing Gameなど3つの賞を受賞。「Lies of P」は世界でも期待されるタイトルとなっている。

「Lies of P」は世界的にも期待されている

 世界観とストーリーのベースとなっているのは、カルロ・コッローディによる「ピノッキオの冒険」。舞台設定を19世紀フランスとし、デザインはベル・エポック調を打ち出している。ただし、全体のトーンは「ダークで残酷」。かわいらしい「ピノキオ」のイメージからあえてかけ離れた「大人のための残酷童話」とすることで、そのギャップの驚きも狙った。

 また「嘘」がひとつのテーマになっており、主人公のP(ピノキオ)が嘘をつくかどうかを迫られる場面も登場する。嘘をつけば人間性を獲得して人間に近づけるが、プレーヤーのモラルを問われるようなシビアな選択もある。本作はマルチエンディングとなっており、嘘をつくかどうかで、P自身の運命も周りのNPCの運命も変わっていく。全体として「大人向け」を強く意識し、一筋縄ではいかないストーリー構築にも力を入れている。

「ピノキオ」のイメージとはかけ離れた暗い世界観。嘘をつくほど人間に近づき、その嘘はゲームのエンディングに影響する

 敵はザコ敵なら動きがゆっくりでも強かったり、倒れると獲得した経験値ポイントをその場で落としたり、チェックポイントに触れるとステータスが回復する代わりに敵が復活したり、多くの要素やプレイサイクルの基本はソウルライクそのもの。

 一方で、成長要素には通常のレベルアップのほかにステータスを上昇させる「Pの機関」という特別な成長システムがあったり、また武器は「Handle(柄)」と「Blade(刀身)」に分けて自由に組み合わせられたり、独自のアイデアも詰め込んでいる。武器は30種類ほどあり、組み合わせの数だけバリエーションが考えられる。

 特に武器は、新たな武器を入手するほどに戦術の幅が広がることを意味する。「こうした、成長につながる要素はゲーム内にたくさん用意している。知らないままでも楽しめるが、知れば知るほどより楽しくなるような仕組み。情報が増えるほど、楽しい悩みが増えていく」という。

成長要素や戦術の幅を広げる要素は多く仕込まれている

 「Lies of P」を作る上で心がけているのは、たとえ敵に倒されても「納得できるプレイ」を作ること。特に戦闘面ではオンラインゲームで培った「攻撃と守備のタイミング」を細かく絶妙にコントロールすることで、失敗を理不尽に感じず「もっと上手くできたはず」と考えさせるような仕上がりを目指している。

 また戦闘アクションにおける「打撃感」はこれまでの開発経験が存分に活かされており、本作での打撃感は「世界最高レベル」になっているとした。ちなみにだが、クリア後は成長後のステータスを引き継いで周回プレイができるそう。この辺りも、ソウルライクのふるまいをしっかり分かっている感じがある。

 現在、「Lies of P」の開発はほとんど終わっており、バグチェックや完成度を上げる調整に注力している。音声言語は世界観を維持するために英語のみとし、日本を含める各国のローカライズは字幕で対応。まだ正式な発売日は発表されていないが、世界同時発売を予定しているため日本でも発売後最速で遊べることになる。プラットフォームは現在PC(Steam)のみが発表されているが、すべてのコンソール機での対応を検討中ということだ。

 なおRound 8 Studioでは、コンソール機に向けたゲームづくりを積極に進めたいと考えているそう。特に日本のクリエイターとのコラボレーションを臨んでいるそうで、「韓国のコンソールゲームはまだこれからの段階。新たなゲームを開発するために、ぜひ日本のクリエイターとコラボする機会を作りたい」とスタジオ長のパク・ソンジュン氏は言う。

 まずは「Lies of P」の完成と発売に期待したいところだが、「今後もコンソールゲームを作りたい」とはっきり述べるRound 8 Studioには貫く姿勢を感じさせる。オンラインゲーム大国の韓国から生まれた「Lies of P」がどのように羽ばたき、また世界にどのような影響を与えていくのか。今後も行方を注目しておきたい。

写真撮影で茶目っ気を見せてくれるチェ氏。そのゲーマー魂に期待だ