インタビュー

韓国発ソウルライクアクション「偽りのP」、“ジャンルへのリスペクト”と“絶対妥協しない覚悟”をたっぷり語る

「ダークソウル」シリーズや「Bloodborne」を「クオリティの基準に」

【偽りのP】

発売日:未定

価格:未定

 韓国NEOWIZが開発中のソウルライクアクション「偽りのP(Lies of P /ライズオブP)」。11月19日に初のゲームプレイ映像が公開されると、そのダークかつシビアな世界観、ハードさを感じさせるアクションなどが目を引き、期待の新作として話題となった。

【Lies of P | Alpha Gameplay Teaser】

 舞台はベル・エポック時代(フランスにおける、19世紀末から1914年の第一次世界大戦開幕までの時代。ベル・エポックはフランス語で「よき時代」。産業が進歩し、万国博覧会が開かれるなど、生活が発展していった華やかさが特徴)。童話「ピノキオ」を新解釈したという世界観のなかで、主人公のピノキオが人間になることを目指す。

 「ゼペット爺さんを探せ」とのメッセージをはじめ、機械じかけのおどろおどろしいモンスター、武器を組み合わせる調合システム、改造できる左手「スレイブアーム」、プレーヤーが選択する「嘘」で変化する内容などが特徴となる。

 まだ開発中の段階ではあるが、今回韓国メディア向けにNEOWIZへのメールインタビューが実施された。本稿では、そのインタビューの内容をお届けしたい。メディアからの質問は多岐にわたっており、そのボリュームの多さから韓国内での注目の高さが十分に感じられる。

 なお本作のジャンル「ソウルライク」とは、フロム・ソフトウェアの「デモンズソウル」、「ダークソウル」シリーズから強く影響を受けたもの。ザコ敵が強い、ボスはもっと強い、死んだらレベル上昇に必要なアイテムがゼロからやり直しなど、高難易度だが達成感の味わえる体験が特徴だ。インタビューのなかでも、本作を「ソウルライク」とした理由についてたっぷりと語られている。

 なお「偽りのP」はSteam版のページが開いており、世界で同時リリースが予定。日本語はテキストでのサポートが決定している。音声のサポートも検討中だが、世界観維持のためにテキストのみのサポートになる可能性もある、としている。

「絶対に妥協しない」ソウルライクへの挑戦

――みんなが知っている古典童話の中でもピノキオを選んだ理由と、ピノキオの素材を残酷劇に脚色したきっかけが知りたい。

NEOWIZ: テーマやストーリーを広く覚えてもらうための戦略的な意図だ。多くの人がよく知っているタイトルで、ソウルライクジャンルで変化を与えることを考えた結果、ピノキオの冒険を選んだ。

 ダークファンタジーと中世時代、大人でも幼稚だと感じない物語/冒険/魅力的なキャラクターをかけ合わせた。私が企画者出身ということもあって、ゲームの中で最も気を付け、また大事に考えているのがストーリーと設定だ。

 ユーザーに確実に覚えてもらえるようなストーリーを作るために、みんながよく知っているピノキオの話を借りてきた。そしてこれを全く違う形で表現し、興味や関心が持てるようにするための戦力として「ピノキオの冒険」を選んだ。

――「偽りのP」はソウルライクジャンルだ。個人的には単に難しい難易度と戦闘がソウルライクを表わしているとは思わない。プレーヤーがどのような感情を体験できるように制作しているか、説明をお願いしたい。

NEOWIZ: 私も同じく、ソウルライクジャンルは“難しいゲーム”を意味するものではないと思っている。ただし、脳の活動をたくさん要求するジャンルだと思っている。なぜなら、フィジカルなジャンルよりはユーザーの経験や判断力を要するためだ。このように「偽りのP」も絶え間なくユーザーに判断力を要求に考えさせて難易度を克服し、達成感を得る経験を与えたいと思っている。

――「偽りのP」 の紹介で立体的なレベルデザインの話があった。個人的にはソウルライクで最も難しい部分がこのような立体的なレベルデザインだと思うが、「偽りのP」は立体的なレベルデザインをどのような方式で作っていこうとしているのか?

NEOWIZ: 私たちはレベル制作時、ステージそのものの構成も気を付けているが、それよりもステージ間の連続性や流れ、そして変曲点のような体験サイクルのバランスに最も気をかけている。

 ユーザーが次のステージをプレイした際に感じる新鮮味や期待感に気を付けることを考えると、様々なテーマのステージを制作することが必須だと思っている。

 この企画者全員が何時間もプレイをしながらフィードバックを残し、そのフィードバックに対する受容可否を熱く話し合う。このようなプロセスの中でみんなが納得する修正方向を決め、またこれをテストしてフィードバックを交わすことを繰り返す。絶対妥協はしない。

 企画者はプライドが高く自負心も感じていて、この方たちの適当に妥協しない姿勢を私はとても誇らしく思っている。このようにレベルを一つ一つ作っているので、ソウルライクで感じるレベルデザイン的な要素を「偽りのP」からも十分感じることができ、そこに私たちならではのレベルデザインテクニックも感じることができると思う。

――「偽りのP」ならではの違いというか、武器調合システムやアーム改造によるスキルなどが紹介されていた。既存のソウルライクの足りなさを埋めようとした意図がうかがえるが、2つの要素を企画した理由が知りたい。

NEOWIZ: ソウルライクを経験した方や他のアクションゲームをプレイした人ならわかると思うが、自分に合う武器やメタを決めるとだんだんとプレイスタイルが固着化してくる。

 武器の場合も自分が慣れていると思っている武器があるなら、その武器を強化し鍛えるようになる。そのうち、新しい武器を獲得するとその武器のパターンや特徴が気に入ったとしても、結局は効率性を考えるため、簡単に新しい武器を選ぶことはあまりない。

 このようなことは開発者の立場からすると、制作したものが無駄になってしまうと判断する。新しいコンテンツが登場するとユーザーはこれを積極的にプレイするし、それを楽しむようにすることが開発者の使命だと思っている。そこで考案したのが武器調合やスレイブアーム(改造できる左手の武器)システムだ。

 武器調合の場合、気に入った取っ手と刃があった場合、これを入れ替えるときは損は最小限にし、得は最大にできるようするために意図したシステムだ。スレイブアームの場合にも様々な敵やステージの中で今使っているスレイブアームに足りなさを感じたなら、これを入れ替えて克服できるように考案したシステムだと思ってほしい。

――「嘘」が分岐を作り出すといった反面、プレイタイムはそう長くはないと聞いた。この2つのバランスはどう取るのか?

NEOWIZ: 分岐によってプレイタイムが異なる方式には制作しない。そのため、エンディングが分岐になる方法を選んだ。プレイ内容が分岐になるとむしろゲームの分量を感じづらかったり、もしくは面白い区間が省略されることがあるので、とても気を使っている部分でもある。

――武器調合や身体改造システムが期待できるが、その一方繰り返しやりこみプレイが必要になるのではないかと心配も出てくる。ソウルライクジャンルにどのように溶け込ませたか知りたい。

NEOWIZ: やりこみ要素は考えていない。やりこみに頼るとゲーム本来のシナリオの伝達や難易度を範囲の中に留まることになる。ユーザーに冒険心や好奇心が十分あるなら、キャラクタービルディングコンテンツを無理なく楽しめるように制作する予定だ。

――数多い時代背景から、ベル・エポックという時代背景を選んだきっかけや理由はあるか。この世界観についてネタバレにならない程度で説明をお願いしたい。

NEOWIZ: 中世時代と未来SFはよく採用される時代だ。19世紀近代時代は比較的ゲームであまり登場しない時代だから選んだ。また、スチームパンク、ディーゼルパンクなどは前例があったので、まだ登場していないベル・エポック時代を使用した。

――RPG要素はどれほどあるか知りたい。ピノキオを成長させると難しいエリアもスムーズにプレイできるほどの成長数値を提供しているのか?

NEOWIZ: すでに「偽りのP」は複数回のプレイを考慮した形式でコンテンツを制作している。なので、十分RPGとしての様々な要素があり、収集欲を刺激する構成もたくさん入っている。

――ボスは何種くらいを予定しているか、また「偽りのP」ならではの特別なボス戦闘システムがあるか?

NEOWIZ: 10種以上のボスを制作する予定。ボスごとに新しい戦闘経験を提供することがポイントだ。一例として、新しいボスには既存ボスにない新しい体験を作っている。そのために各ボスのR&D(研究開発)やスキル研究をすることが多い。ボスとの戦闘では、パターンの把握や関連システムの理解が最も大事になると思う。

――公開されたプレイ動画を見るとベル・エポック時代の特徴が活かされているが、エリア別の色味や雰囲気は似たような感じがした。背景の変化を感じられるような都心部以外の別のエリアもあるか。それとも暗い雰囲気のワールドだけか。

NEOWIZ: 当然、別のエリアもある。明るくて華やかな背景もあるが、「偽りのP」から感じ取れる主な雰囲気は暗さや狂気であってほしいと思って制作している。

――ゲーム内で探検できるエリアはどの程度の規模か? マップは一直線の構図か、またユーザーが探検することができるシームレス方式のオープンワールドか教えてほしい。

NEOWIZ: まず、「偽りのP」はオープンワールド方式のマップ仕組みではない。ステージ間の進行は直線方式で表現しているが、ステージの中では解放感のあるステージもある。また、通るルートも選択型ルートもあり、報酬や様々なアイテムを入手するためにユーザーの好奇心や探求心を刺激する構成も多数存在する。

――ソウルライクの特徴上、難易度が高いと思われるが、「偽りのP」の難易度はどれくらい高くする予定か? ライトユーザーも十分楽しむことができるか? もしくは、進入ハードルを低くするためにゲームの難易度を調整できるオプションなどがあるか、難易度調整オプションがないなら、難易度バランスはどういった方向性で開発しているのか?

NEOWIZ: まず、私たちが解釈したソウルライクジャンルの本質について話したい。ソウルライクはユーザーに判断力を強く要求するジャンルである。

 単純にアクションジャンルだからと言って動体視力の良さ、素早い手の動き、また瞬発力を要するジャンルではない。ユーザーが行なう選択は単純かもしれないが、その選択がどれくらい有利なのか、いつ選択した方が良いか、休むことなく考えさせるのがソウルライクの本質だと思う。なので、プレイ後はよく「ユーザー自身のレベルが上がる」と表現することもある。

 私たちも同じくユーザーの経験レベルを要求する方向で構成している。そして数えられないほどの選択肢が存在する。武器をどのように組み合わせ、スレイブアーム(改造できる左手)をどのように強化するか、またどうレベルアップをしていくか。

 このような選択によってユーザーの戦闘スタイルが決まり、これに合った戦略を揃えることが難易度調整オプションになる。与えられた課題をユーザーがどう受け入れて、戦略を立てるか悩ませることが「偽りのP」のプレイのメイン方法だ。

 難易度は人気のあるソウルライクの難易度に感じるように制作する予定だ。そして同じ辛口と言っても、最高の素材で作った本当の辛さであって、人工的な調味料の辛さにならないように努力している。

「奇妙だが美しい」アートワーク

――「ブラッドボーン(Bloodborne)」と似ているという反応を見ると、「もう韓国でもこういうゲームが制作されているのか」というポジティブな意見がほとんどだった。特に、アートやエフェクトなどの見せ方に関して好評を得ているが、「偽りのP」はグラフィックスの面においてどういったところに重点を置いたか知りたい。

NEOWIZ: ハイパーリアリズムクオリティをグラフィックの目安にしている。しかし、目に見えるものはすべて設定やストーリーから来た制作物である。クオリティは最高の目標にするが、細かいものもすべて設定を考えて制作し、リアリティを与えることがアートの制作方向である。

 また、企画内容やコンセプト方向に従ったテーマを維持しながら、できるだけ独創的な形にするのを目標としている。品質は私たちができる中で最高水準を追求し、もう少し整える予定だ。「Bloodborne」はとても素晴らしい作品だが、美術的な部分は参考にしていない。

 レンダリングやライティング演出部分に気を付け、霧、湿度や光の表現に重点をおいて作業した。エフェクトもできるだけ物理的な表現をしようと努力している。

――「偽りのP」の世界観やキャラクター、背景などを表現するためにアートビジュアルの面ではどういった物に重点を置いて企画及び開発したか教えてほしい。

NEOWIZ: ピノキオというコンセプトがとても気に入っているので、このようなゲームを開発できることが個人的にとても楽しい。一番大事に思ったことは19世紀のベル・エポック時代の世界にユーザーを招待したかったことだ。臨場感を引き出したかった。

 関連する歴史資料は相当な量を参考にし、細かく考証を行なった。例えば、この時代にはジッパーが開発されていないので、このゲームにジッパーは登場しない。企画者、アーティストがすべて詳細な部分まで考慮して開発をしている。

 後は全体の雰囲気とカラーをユーザーの肌で感じられるように、興味が湧くように伝えるように努力している。ただリアルなグラフィックだけを追及していない。キャラクターの個性や欲望をユーザーが感じられるようにアーティストが努力を惜しまなかった。

――ゲームのアートワーク/クリーチャーのデザインで主に表現したかったコンセプトがあったら説明をお願いしたい。

NEOWIZ: 代表的なコンセプトとしてスリラーやホラー的な要素をベースにしたかった。「奇妙だが美しい」というキーワードをもとにコンセプトを考えた。美術的に価値がある制作にしようとできるだけ努力している。

 デザイン全体は比喩的か直接的かのバランスをコントロールして表現し、「偽りのP」の世界観の中でできるだけ詳細に設定チームやコンセプトチームと話し合って決めている。

 クリーチャーのデザインも設定要素の中でそのような部分を強調できるように開発した。今回公開された機械人形のモンスターも19世紀に実際作られた人形の質感などを参考にした。全体的に「偽りのP」ならではの独創性をキャラクター背景、アニメーション、エフェクトなどに持たせるように努力した。

「篝火」的な要素などはあるが、設定や形は全く違う方式に

――Co-opなどマルチプレイコンテンツの予定はあるか? シングルプレイ以外にはどういうコンテンツを用意しているか?

NEOWIZ: ユーザー間に直接的な影響やインタラクションをするマルチプレイは考えていない。あくまでもシングルプレイとしての最高の楽しさを感じてもらうための選択だ。だが、間接的なコミュニティやオンライン要素は導入する予定。オンラインでユーザー同士の協力はできないが、戦闘の協力者として登場する魅力的なNPCは登場する。そして難易度を緩和させる役割をすると思う。

――チェックポイントはどのように保存されるのか? 「ダークソウル」シリーズの「篝火」のように、途中セーブポイントがあるのか、もしくはこのゲームならではのチェックポイントが別にあるのか?

NEOWIZ: 「篝火」と似たような方式になるが、設定や形は全く違う方式だ。また、単にチェックポイント機能をするだけではなく、このオブジェクトを通じてのみ使用できる「偽りのP」ならではの新しいシステムがある。ユーザーが戦闘を有利にするために戦略的な用途として使用する要素だと理解してほしい。

――武器や義手以外にキャラクターをカスタムできる要素には何があるか?

NEOWIZ: 基本衣装以外に魅力ある別のコスチュームがある。またイヤリングのようなアクセサリー類もある。キャラクターの外見も変化するが、一般的なカスタム方式ではなく、私たちが提供する方式によって外見が変わる方式になると思う。しかし、ストーリーによって外見が変わる方式ではなく、ユーザーの選択による変化となる。

――ソウルライクゲームのほとんどに採用されている「死亡時、拠点に帰還した後獲得した通貨をなくす」というシステムは、「偽りのP」にも採用されているのか?

NEOWIZ: はい。ソウルライクはある程度ローグライクの運営要素を使用しているため、死亡後に集めた通貨を探しに行くルールはソウルライクジャンルの必須要素となる。しかし、表現方法や具体的なルールは既存のソウルライクとは大きく異なる方式で開発している。

――ストーリーテリングはノンリニア型になると思われる話があったが、これについて準備しているシステムや企画などがあったら教えてほしい。

 大きな軸はリニア型だ。しかし、途中ユーザーがプレイするイベントや経験は違うものになる。ゲーム内のクエストが変わり、登場する敵の種類が変わってくる。これ以外にも多くの興味深い要素が「嘘」の選択有無によって様々な形で登場する。ただし、具体的な内容を明かすと楽しくなくなるのでこの辺にする。

――マルチエンディングの話があったが、ユーザーの選択によってストーリー以外に主人公キャラクターの外見や戦うボスも変わってくるのか?

NEOWIZ: 外見は異なるが、具体的な変化方式は今は言えない。当然選択によって出会う敵の種類も代わり、敵ではなく仲間になることもある。

――調合できる武器の種類や攻撃方式は合計何種類ほどあるか。どういうデザインやメカニズムを持った武器があるかいくつか紹介をお願いしたい。

NEOWIZ: 30種以上の調合武器が公開される予定で、一般武器ではなく特殊能力を持つ武器の種類もある。調合すれば何百種類以上の武器を作り出せるので、自分に合う武器の調合を見つけるのが重要になる。

 実際に異なる種類の武器を調合していくと笑える外見になったり、格好いい武器になったりすることもある。好みにあった武器調合を見つけることも、もう一つの魅力になると思う。

 武器は、分解して別の種類と調合できる。実際にユーザーが体験できる武器の数は100種類を上回るくらいになる。

――「武器調合」システムについて詳しく教えてほしい。単に「デビルメイクライ」や「ベヨネッタ」のように武器をスイッチングするのか、それとも着用する武器がお互いにシナジー効果を発生させてスキルまで変わっていくのか知りたい。

NEOWIZ: 武器を調合すると調合した種類によって攻撃モーションやパターンが変わり、性能も変わってくる。そして武器ごとにキャラクターのステータスレベルによる性能が変化するが、これもまた分解して別の種類と調合するとレベルによる性能も変わってくる。

 武器調合のポイントは捨てられる武器をなくすことだ。武器を入手すると少しでも自分に有利な形で活用できるように、不利な物は捨て、有利な物を選択して調合するようにすることだ。

――アクションゲームはヒットボックスが大事だと思われる。動画を見ると遠くにいる敵を引っ張ってくるスキルがあったが、精巧なアクションのためにどの程度の物理エンジンやヒットボックスを作ったのか知りたい。

NEOWIZ: ソウルライクを表現する言葉がある。「ヒットボックス・ポルノ」という表現だが、私たちもとても繊細でリアルな判定範囲をお見せするつもりだ。

 しかし、ある程度はアクションゲームの楽しさも重要なので、実際にはヒットにならないが、ユーザーが攻撃を受けた際にはヒットにするなどのポジティブな容認措置も存在する。実際にプレイをしてみると「うわーこういう風に避けることもできるんだ」という反応が出ると思う。

クラート市は「人形たちが反乱を起こした」世界

――主に木彫り人形が敵として登場するという印象を受けたが、中世風の都市で木彫り人形が登場するようになった背景はどういうものか?

NEOWIZ: 木彫り人形ではなく、クラート(本作に登場する街)で生産された別の素材で作られた制作物である。クラートでは人間の労働に代わる人形を発明し、この人形が多く使われるようになった。

 労働力が上がると、文化や芸術の方も代替できる範囲まで人形を活用するようになり、その結果クラート市では市民の人数と同じくらい普及したという背景がある。

 しかし、ある日、何らかの理由をきっかけに人形が市民を攻撃するようになり、市を掌握するようになった。市民は隠れて暮らすか、クラート市を離れるようになったストーリーを描いている。

――動画で唯一のセリフ「Wake up, son」は誰に向かってのセリフか? 何らかの理由で復活した主人公? それとも正体がわからない黒幕が人形を操っている様子なのか?

NEOWIZ: このような解釈やミステリアスに思ったユーザーの反応を見ることがとても楽しい。私たちはユーザーが様々な形に解釈してほしいので、答えることはできない。

――ベル・エポックはよく活気や希望があふれる未来志向的な背景で描かれることが多い。その反面、「偽りのP」ではベル・エポック時代を背景としているのに、とても重くて暗い雰囲気になっている。「クラート」を襲った事件や悲劇について知りたい。

NEOWIZ: 実は、クラート市は自動人形という人間の労働力に代替できる人形の発見やその普及によって急激に発達した都市である。そして、ベル・エポック時代のように科学や技術が全てを解決してくれるという楽観論が広がっていた。

 しかし、何らかの病気がはやり、それによって多くの人が死んでしまう。その上、人形たちが反乱を起こして人間を襲って殺す事態に発展する。そんな中でストーリーが始まる。なので、このような雰囲気を表すために私たちが知っているとは真逆のベル・エポック時代に表現した。

「嘘」は人間性とエンディングに影響する

――ピノキオの嘘がゲーム内で重要な要素として働くと思われるが、嘘がどのように活用され影響を与えるのkか? 関連クエストの展開方法について詳しく教えてほしい。

NEOWIZ: 嘘はメインクエストで登場、エンディングの分岐に直接影響を与える。クエストをクリアするために複数の答えを選択するが、この中で嘘になる答えを選択すると人間性という報酬を手に入れ、獲得した報酬の程度によってエンディングが分岐する方式に開発した。

――ゲームのタイトルが「偽りのP」。嘘をつくと鼻が伸びるピノキオを指していると思うが、このピノキオの特徴がゲームに反映されているところがあるか? 鼻が伸びてアクション要素として活用されることもあるのか?

NEOWIZ: ゲームには大きな目標があり、ピノキオの冒険のように「偽りのP」もピノキオが人間になることがユーザーの目標になる。

 人間になるためには原作と逆に嘘をつかなければならなくなり、嘘をついて獲得した人間性ポイントによって人間になる程度が決まる。そのため、ユーザーが最終目標を達成するために行なう選択要素と言っておきたい。

 鼻が伸びるのを直接的にピノキオに付与するには格好いいキャラクターを表現することに無理があると判断した。しかし、この特性はゲームのどこかには反映する予定だ。具体的な計画を話すのは無理がある。

――今回の作品では原作童話のように主人公のピノキオが「嘘」を付く過程で様々なストーリーの分岐が行なわれると聞いたが、マルチエンディングで「嘘」は選択肢が変わってくること以外にもプレイにも影響が出るか?

NEOWIZ: もちろん、エンディングだけ違うのではない。ゲーム内のクエストも変わり、登場する敵の種類も異なる。これ以外も多くの楽しい要素が嘘の選択の有無によって様々な形で登場する。但し、具体的な内容はゲームの楽しさを損なうため言えない。

エンディングは「マルチ」に

――エンディングまでの1回目の平均プレイタイムはどれくらいか? またいくつのマルチエンディングが存在するのか教えてほしい。ゲームボリュームはどの程度か?

NEOWIZ: 約30時間以上のプレイタイムを目標に制作している。最近、ゲーム序盤の2つのステージで社内テストを行ったが、5時間以上かかったテスターが多かった。

 といっても難しいからというわけではなく、様々な戦闘システムとプレイスタイルを試したので時間がかかったということも聞いた。マルチエンディングの数は言えない。とても重要な項目になるためだ。

――マルチエンディングをもとにしたシナリオを構築していると思うが、複数回のプレイを推奨するタイプのゲームとのことか?

NEOWIZ: その通りだ。リニア形式で制作するので、プレイタイムを気にしている。なので、豊富なプレイタイムを構成するためにマルチエンディング方式に構成し、複数回プレイしても新しく楽しい経験が多数発生するように制作している。エンディングの数は最低3つ以上になる。エンディングだけではなく、様々な収集欲をあおる要素も存在する。プレイをしながら収集する楽しさも体験してほしい。

ピノキオの「改造」が攻略のカギに

――ピノキオの身体改造は機械のように左腕でだけに適用されるのか?それとも別の身体の改造もあるのか?

NEOWIZ: 「Pの機関」というピノキオを稼働する内部システムがある。このシステムを利用してピノキオをユーザーが求める形に進化できる。スレイブアームと武器の改造戦略も重要だが、この「Pの機関」こそがユーザーがどのように戦闘スタイルにしていくかを決める核心システムになる。

 これ以外にも初期には身体の様々な部分を改造して変化することを考えていた。しかし、内部テストの結果、むしろ様々な戦闘システムが私たちが提供する一定の難易度範囲から大きく外れることが多かったので、思い切ってあきらめた。ソウルライクジャンルは難易度バランスがとても大事になるため、この点も私たちは気を付けている部分の一つだ。

――スレイブアームはどういった種類があるのか?

NEOWIZ: 少なくとも8種類以上のスレイブアームを公開する予定です。そして強化を通じてユーザーが求める形に進化できるシステムもお見せする予定です。

――義手を活用した攻撃が魔法(スキル)のような仕組みなら、義手だけで戦うことも可能か?

NEOWIZ: ユーザーが希望するならできる。だが、おすすめはしない。

――このシステムの企画過程での意図を教えてほしい。

NEOWIZ: ソウルライクはシンプルだが、心理的な熟練度を強く要求するジャンルになる。そうなると、プレイスタイルの幅が少ないとライトユーザーには辛く感じるし、コアユーザーは次々に新しい戦闘スタイルを求めていく。このようなところを解消できるポジションに構成している。

戦闘を経験すると「完全に新しいゲームに感じられるはず」

――フロム・ソフトウェアなど海外で発表された、いくつかのソウルライクゲームと比べて差別化された技術やアクション性によって採用されたシステムはあるか?

NEOWIZ: オープンワールド方式ではないが、できるだけオープンワールドのような感じにすることに集中した。その中の一つが天気変化システムになる。プレイをしていると天気が変わってくるが、そのエリアのみに適用される天気の変化ではなく、同じ時間に別のエリアにも天気の変化が適用される。

 例えば、特定ステージをプレイしている時に雨が降ると、その場所だけ雨が降るのではなく、別のエリアに移動した際も雨が降っている方式だ。そして雨の時だけに出会えるキャラクターやイベントが存在する。

 このように、オープンワールドをプレイして経験した面白い要素を表現することに集中した。そのほか、戦闘と関係あるシステムは全部「偽りのP」ならではの方式で再構成し、面白さを見つけようとした。その結果、スレイブアーム、武器調合、敵の武器破壊、独特なパリィシステムがある。

――動画を見て、世界観やゲームプレイがフロム・ソフトウェアの「Bloodborne」と似ていると話すユーザーが多くいる。実際のプレイでは時代背景や世界観、もしくはプレイ面で「Bloodborne」とどういった違いがあるか教えてほしい。

NEOWIZ: このような質問や意見をたくさん受けている。まず、このような反応に対して、私たちはそんな名作と比べられることをとても光栄に思っている。

 まずは私たちが考えたコンセプトだけに集中していて、近代時代を背景として使っているのでそのような意見が出ていると思う。同じ近代時代ではあるが、ベル・エポックという時代が登場し、この時期に存在していたと思われるフランスの都市のイメージを描いている点が大きく異なる。

 戦闘システムは全面的に「偽りのP」固有のシステムで構成したので、実際に戦闘を経験すると完全に新しいゲームに感じられるはず。ここは自信をもって話したい。今まで公開した資料はごく一部に過ぎず、様々なスペースやストーリーがまだたくさんある。「偽りのP」ならではの要素は今後公開していくので、じっくり待っていただきたい。

――実際のプレイから雰囲気やBGMまで「ダークソウル」シリーズや「Bloodborne」を思い浮かべることが多いが、この中でもアクションの面でどういった影響を受けたか、具体的な例を挙げて教えてほしい。

NEOWIZ: クオリティの基準だと思う。この2つの作品のアクションクオリティはとても優れている。本当に職人たちが一つずつアクションを作っていると感心する。そのような部分に私たちも負けたくないと思い、できるだけ2つのタイトルに登場するアクションクオリティを表現しようと努力している。

――そのほかにインスピレーションを受けたり、実際にベンチマークをしたりしたゲームがありますか?

NEOWIZ: インスピレーションの点で言えば、「リトルナイトメア」のユーザー動線を予測したギミック装置や、「サイレントヒル」のような感性に訴えかける恐怖感から影響を受けた。

発売は2022年以降を目処に開発

――2023年リリース予定となっているが、内部での具体的なリリース目標はいつか?

NEOWIZ: とりあえず2022年以降になると思う。実は内部開発速度は非常に速い方だ。プレイトレーラーを作るのにプロトタイプバージョンを除いて1年もかかっていない結果物だ。制作は問題なさそうだが、「ラウンド8スタジオ」(本作開発スタジオ)のスローガン「クオリティ・イズ・キング」を守るため、仕上げの期間を長くとった。そうなると22年以降になることもある。来年の制作状況をみて判断できると思う。

――今、コンソールプラットフォームで確定しているものがあるか? プレイステーション 4、Xbox oneでの発売はないか?

NEOWIZ: 最初は新世代スペックのみリリースする予定だったが、最近の普及率が低くて、現世代機も検討している。幸いなことにすでに「Bless Unleashed」の制作経験があるので、コンソールに対する理解や最適化TA 技術力はトップクラスなので無理ではないと思う。

手練の開発者、ソウルライクとの出会いは「ショック」

――コンソールシングルプレイAAAゲーム開発自体が韓国では珍しいが、開発過程で最も難しいと感じたことは何か?

NEOWIZ: 逆だと思う。むしろ、オンラインゲームより難しくない。オンラインはユーザーの好みや今のトレンド、そして運営面の要素も重要。ゲーム性も大事だが、このようなゲーム性以外の部分に対する考慮をしなければならない。

 そのため、以前のプロジェクトでは難しいことが多かった。また、ネットワーク環境を考慮した設計も重要なので、ゲーム性を下げなければならないことも多かった。コンソールシングルプレイはそうではない。企画の自由度がずっと高いので、本当にコンソールゲームが好きなら制作の過程はとても楽しいはずだ。

 それに私たちのスタジオはコンソール開発をするために集まっているところなので、関連経験も豊富に持っている。前に「Bless Unleashed」を制作した経験もあり、開発の過程での大変さや問題を解決した経験が大きな武器となっている。もう一度言うが、コンソールシングルプレイ制作はとても楽しくて簡単だ。この場を借りてうちのスタジオのメンバーをとても誇らしく思い、感謝していることを伝えたい。

――ソウルライクを選んだことによるプレッシャーはなかったか? ある意味の限界というか、基準、アクションやゲームプレイを構成し表現できる最大値にある程度制限があったと思うが、ジャンルや傾向面で超えたいと思ったことや、克服したいと思ったことがあるなら教えてほしい。

NEOWIZ: すでに様々なアクションプロジェクトを経験し、やりたいことは十分やってきた。そんな中、ソウルライクジャンルに初めて出会ったときにとてもショックを受けたことがある。

 アクションに対するアプローチ自体が今までとは真逆だったからだ。見てるだけでは簡単なルールなのに、こんなにもユーザーに戦略や判断を要求する戦闘は初めて見た。

 そのうち、当時の演出や過剰な表現に集中していた私自身に警鐘を鳴らすきっかけとなった。戦闘要素一つ一つが論理的な流れ、因果関係、ユーザーが感じる有利・不利などを検討する企画アプローチに気づいて、今も勉強している途中だ。制限があると思ったことはなく、もう少しゲームの本質的な部分で成長して整えている途中だと思っている。

――メジャーとは言えない要素があるソウルライクジャンルにチャレンジしたきっかけを教えてほしい。

NEOWIZ: ソウルライクはもはやマニアックなジャンルではない。すでにGOTYという最高のゲームを受賞したジャンルでもあり、難易度によってエンディングを見ることができなくてもタイトルを購入するユーザーが多数存在する。私たちもこのゲームをリリースしたら、全世界ユーザーに楽しくプレイしていただき、また次の作品を準備できるくらいの成果が出ることを望んでいる。

「禁断の領域」のセオリーを壊せるように

――販売の目標を教えてほしい。

NEOWIZ: 次の作品を自信もって準備できるほど、売れたら良いと思う。

――「偽りのP」に期待している成果は?

NEOWIZ: ソウルライクジャンルは特定の制作会社でのみ、ちゃんとしたものが作れる禁断の領域といわれている。しかし、この領域を壊したい。そして韓国にもソウルライクというジャンルをちゃんと作れる制作会社があると評価されたい。そのため、具体的な成果としては次の作品を自信もってリリースできる程度になればいいと思う。

韓国ゲームへの“不信感”を払拭したい

――韓国型ソウルライクゲームとして認識されている。ゲーム内に韓国風の要素が入るところがあるか?

NEOWIZ: 考えてはいるが、作品の本来の面白さに集中し、分散しない方が大事だと思う。内部では、冗談でeBayから草取り用のてぐわや鎌が海外で飛ぶように売れていると聞いたことがあるが、このように韓国ならではの武器や小道具などは検討している。

――ゲームタイトルの「偽りのP」は、何を意味しているのか?

NEOWIZ: どうでしょう? 私にもよくわからない。 このような好奇心を刺激し、タイトルを魅力的に表現することが私たちの狙いだ。

――「偽りのP」を一言で説明するとしたら何か?

NEOWIZ: 衝撃的なゲームと表現したい。その理由は私たちがよく知っている物を衝撃的に全く違うように感じさせようと再構成したからだ。

――まだまだ先の話になるかもしれないが、個人的に今後童話シリーズの制作ニーズがあるか知りたい。

NEOWIZ: もちろん。今回の「偽りのP」を制作しながら、新しい趣味ができた。それは古典の童話を読むこと。私たちが知っている童話が実際には全く違う雰囲気の内容が多いことを知った。この中でとても興味深い、私たちが知っている別の話があるなら、次の作品に登場する可能性がある。

――今後ゲーム市場でどういうゲームに認識されたいか?

NEOWIZ: 最近、モバイルゲームに対する拒否が多くて、韓国制作会社に対する不信感が強くなっている。そのような不信感を解消し、韓国ユーザーとして自負を感じることができるゲームだと認識してほしい。

――トレーラー動画の音楽も印象的。NEOWIZやラウンド8の内部制作なのか、もし外注ならどのチームが制作したのか知りたい。

NEOWIZ: 実際、「偽りのP」は社内の別の部署と協業して制作している。シナリオや設定は「飛雷刀(ヒルェド:韓国の有名武侠小説)」の作家で有名な「劍流魂(ゴムリュホン)」さんと協業で制作し、音楽は「DJ MAX」音楽を担当している「LAY BACK STUDIO」と協業している。

 制作する音楽の導入先、そしてその部分の設定を十分共有し、またLAY BACK STUDIOからアイディアをもらったりする方式で制作している。部署が違うが同じチームだと思っている。

――韓国産ソウルライク 「偽りのP」というタイトルより、ただ「偽りのP」としてユーザーに知られたらいいなと思う。このような面での「偽りのP」のアイデンティティ、独自の発想や要素が知りたい。

NEOWIZ: その通りだ。私たちならではのスタイルがいつか完成することを望んでいる。全く新しいものにチャレンジして結局はまとまらないままの不安定なゲームになるより、私たちが自信を持っている領域を確保し、徐々に新しいエリアを拡張してくことが賢明だと思っている。今も開発中に新しいアイデアが出たら、すぐにテストして研究開発を行ない、正式システムとして採用するかを検討している。

――華麗なグラフィックや新しいチャレンジも大事だが、打撃感やモーションの精密さなど基本技も必要になるかと思う。このためにどういった努力をしているか?

NEOWIZ: 今まで戦闘がメインとなるプロジェクトだけを10年以上開発してきた。 少なくとも韓国内では最高の打撃感を表現できると自信を持っている。優れたモーションも大事だが、これを活用して様々な物理的技術や演出テクニックを適用し、既存のソウルライクでは体験できなかった様々な戦闘システムを準備した。まさに戦闘は完成に終わりがない領域だと思っているので、締め切り1秒まで手を加える領域だと思って開発している。

――いつから開発を始めたのか? 開発チームの規模は? 現在の進捗状況(パーセンテージ)、コンテンツはどの程度まで制作されているか具体的に教えてほしい。

NEOWIZ: 制作物としての過程は約50%ほどだといえる。しかし、私たちのスタジオは「クオリティ・イズ・キング」というスタジオの座右の銘がある。仕上げ期間6カ月以上だと考えているが、この期間を入れると30%程だと思う。

 現状の制作期間は、構想期間を除いて実際の開発を始めてからは18カ月ほど経った。純粋なスタジオの開発人数は80人ほどで、他の系列会社の協業メンバーを入れると約90人ほどだ。