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会場:台北世界貿易中心
入場料:大人150台湾ドル(約450円)
2008年は、「ルーセントハート」の日本でのヒットや、他業種の急激な業績悪化による株価の高騰など明るい話題が多かったが、台湾本社自体は依然として伸び悩んでおり、毎年ヒット作を生み出しているSoftworldグループの後塵を拝している。しかし、そうした状況下でも積極的に海外に打って出ようとするところがGamaniaのユニークなところだ。今年は香港や日本に加えて、中国や欧米でのビジネスを本格化させる。今回は、Gamaniaで積極展開されつつある海外展開と自社開発ビジネスを中心に話を伺った。 ■ 台湾ゲーム業界の好況はまだまだ続く!? 昨年のヒット作は「Counter-Strike Online」
Albert: とても良いとまでは言えませんが悪くはありません。不況下としては運が良い部分もありました。 編: しかし、世界が同時不況に陥っているなかで、台湾は10%以上の成長を遂げているのは驚きました。 Albert: ゲーム業界の業績が上がっている要因として面白いのは、台湾のユーザーさんの収入は減っていることです。収入が減った際に真っ先に切られそうなのはエンターテインメントに対する支出です。しかし、ゲームはエンターテインメントの中で最も安い部分になりますので、そこまでの影響はありませんでした。 編: そうした中でGamaniaさんの2008年のビジネスはいかがでしたか。 Albert: 昨年のGamaniaはそれほど大きな成長はありませんでした。競争が激しくなり、特に新規タイトルで大きな成功を収めることはできませんでした。しかし、ガマニアジャパンの業績が非常に良く伸びていて、台湾ゲーム業界でも弊社の日本での成功は話題になっています。 編: Gamaniaさんは株価が高騰していますね。その理由は何でしょうか。 Albert: 詳しくはわかりません。ゲーム業界全体の業績が成長しているのが要因ではないかと考えられます。不景気になっても投資したい人はいます。ゲーム業界は投資リスクが低いという理由があったと思います。 編: Gamaniaに対する投資家の期待とは何だと考えていますか? Albert: 投資家の皆さんがもっと儲けられることでしょうか(笑)。台湾ではこの会社が公約していることをきっちり実行しているかどうかに関心が高いと思います。Gamaniaとして投資家の皆様にお約束しているのはグローバルな成功です。昨年はガマニアジャパンとガマニア香港の両方で実績を上げることができました。こうした事実が投資家から注目されていると思います。台湾に関しては、新規タイトルの実績が予想より高くなく、あまり満足できませんでした。海外の業績が伸びているのは非常に満足しています。 編: 昨年提供した新規タイトルを教えてください。 Albert: 合計で13タイトルの新規タイトルをリリースしました。予想通りの実績までは到達しませんでした。台湾市場に関しては、成長はしているのですが、自分の中では不合格だったと評価しています。 編: ということは、台湾での主要な収益源は、依然として「カートライダー」や「リネージュ」といった既存タイトルということになるのでしょうか。 Albert: そうです。主力のタイトルは「リネージュ」と「メイプルストーリー」です。しかし、2008年末に変化がありまして、「Counter-Strike Online(CSO)」が4倍も成長しました。この3タイトルがメジャータイトルになっています。 編: 現在「CSO」はどれくらいのユーザーがいますか。 Albert: 最高同時接続者数で5万人以上、ユーザー数で20万人以上になっています。 編: 台湾で展開している日本産のタイトルについてはいかがでしたか。 Albert: 日本の新規タイトルは予想通りにはいきませんでした。今後は日本タイトルを担当しているチームにプレッシャーをかけて引き続きプッシュしていきたいです。 編: 「仙魔道」や「橘楽町」といった自社開発タイトルはいかがでしたか。 Albert: 正直なところあまりよくありません。カジノゲームの「橘楽町」は、中にあるゲームの質が足りない。インターフェイスも改善すべき点がある。「仙魔道」や「ブライトシャドウ」、「ルーセントハート」は開始当初2万人以上の同時接続者がありましたが、OBT(オープンβテスト)の段階でサーバーの安定性が足りないというユーザーの指摘がありました。結果的に正式サービスへの移行時に流出率が高かったです。「ブライトシャドウ」も一時期は35,000人を越える時期もありましたが、同様の理由で数字が落ちました。ガマニアジャパンでサービスされているものは、ガマニア台湾のものに比べて安定性が高いので、それが良い成績を出している理由かもしれません。 編: 日本で「ルーセントハート」が好調ですが、ヒットの要因をどのように考えていますか。 Albert: 大変嬉しいです。2つの要因があると思います。ゲームのボリュームとシステム上の安定性が高いということです。2番目はガマニアジャパンの運営チームとマーケティングの手法が優れていることです。 編: 先日開催されたCEOフォーラムでは、日本法人は2003年から2007年までずっと赤字で、「2008年に初めて黒字になって嬉しい」と発言されていましたよね。ああ、そうだったのかと(笑)。 Albert: ガマニアジャパンはようやく黒字転換しまして、グループとして意味深いです。業界を問わずそうだと思いますが、日本は世界的に見ても非常に難しいマーケットで、そこで非常に良い成績を上げられて大変嬉しいです。Gamaniaのグローバルステップの中で日本での成功は重要な第1ステップです。 編: 次の段階では何を考えていますか。 Albert: 次のステップはさらに拡大する時期だと思います。「仙魔道」を成功させたいです。日本向けの趣向をかなり入れ込んでいる自信がありますので、それが次のステップです。 編: また、「台湾で客単価が低く、まだまだ高められるのではないか」とおっしゃっていました。ユーザー層の拡大ではなく、客単価にこだわる理由はなんでしょうか。 Albert: 経営上の効率を高めるべきだからです。たとえば、台湾の物価やGDPは、韓国とほぼ同じくらいであるにもかかわらず、台湾の客単価は韓国の半分しかありません。サーバーコストやマンパワーのコストは同じなので、客単価を高めればさらに利益率を高められると思います。 編: 台湾の客単価は、韓国の半分、日本の4分の1ということですが、台湾の客単価が低い理由は何だと思いますか? Albert: 台湾でオンラインゲームが勃興した初期のタイミングでの設定に原因があります。ユーザーさんに馴染みのないサービスを低い単価で提供することで、ひとりでも多くのユーザーを獲得したいという考えがありました。ユーザー数が増えていくに従い、オンラインゲームの運営会社の中には運営が難しくなるところが出てきました。良いコンテンツを供給することで客単価を上げていくことは可能だと思います。
■ 中国市場は大事だが、欧米市場はもっと大事。Gamaniaグループが推進する「HERO 108」プロジェクトとは何か?
Albert: Gamaniaとしても中国市場は大事だと考えています。しかし、私は台湾のメーカーさんが考えている中国の戦略的地位が高すぎると思います。Gamaniaとしてはグローバル戦略が念頭にありますので、タイミングを見て中国だけでなく、欧米も狙っていきたいです。 編: 日本の次は中国ではなく欧米でしょうか。 Albert: はい。どちらが優先ではなく同じタイミングです。今年中にはやりたいです。欧米には力を入れるべきです。中国で急いでやるのはリスクが高いので、水を沸騰させるようにゆっくりやったほうが良いと思います。 編: 今年中に同じタイミングでというと、今年は北米とヨーロッパと中国の3地域を同時展開するということでしょうか。 Albert: 3つの地域を同時にやります。欧米に関してはオーストラリアもやりたいです。オーストラリアは英語圏なのでそれほど大きく力は入れないのですが、そこも同時に取り組みたいです。 編: それはすべて現地法人を設立するのでしょうか。 Albert: 北米は現地法人を作ります。ヨーロッパとオーストラリアはガマニア香港で専門のチームがありまして、ゲームが立ち上がった段階ですぐにタイミングを見て派遣できるような体制を整えています。 編: そこまで海外展開を強化する理由は何でしょうか。 Albert: これまでGamaniaはアジア中心の展開でした。中国も6、7年前に1度進出したことがありました。今年というタイミングでなぜ進出を狙うかと言えば自社開発タイトルのクオリティが上がっているからです。Gamaniaでは6、7年前から北米でアニメーションをやりたいと考えていました。今年の下半期がアニメーションが完成するので、欧米市場に入っていくには良いタイミングではないかと考えています。 編: 北米ではどういったゲームタイトルを投入するつもりですか。 Albert: アニメーションと同じタイトル名の作品「HERO 108」を先行部隊として最初に投入して、次の段階で「ブライトシャドウ」と「ルーセントハート」を投入していきます。 編: Gamania本社でも「HERO 108」のゲームを見せていただきました。「HERO 108」とは、どのようなプロジェクトなのですか。 Albert: 「HERO 108」というのは、中国の水滸伝をオリジナル要素として、ハリウッドの監督さんと制作スタッフの力を借りて作成したアニメーションと、西洋式のゲームコンテンツを織り込んだアクションゲームの2つのプロジェクトのことを指しています。 編: ゲームはともかく、なぜGamaniaがアニメ事業に乗り出すのでしょうか? Albert: アニメとゲームはファミリーだと考えています。「HERO 108」でも基本的なストーリーは同じです。コミュニティを動かすパワーが最もあるのはやはりアニメーションだと考えています。欧米に進出して成功するためには、パワーがあるアニメーションを使って先行してゲームが追従するべきだと考えています。 編: アニメという点では、日本も世界最大規模の生産国であり消費国です。なぜ日本ではなく欧米なのですか。 Albert: Gamania社内のアニメーションの開発チームが元々欧米のメンバーがたくさんいまして、元々ディズニーにいたメンバーもいます。ですから、製作したものも北米テイストのコンテンツになります。日本市場ではガマニアジャパンがすでに順調な売り上げを出しています。海外の新しいマーケットに進出するためには、アニメーションのパワーを活かそうと考えました。 編: アニメーションのターゲットを教えてください。 Albert: ターゲットはティーンエイジャーです。男女比は6:4ぐらいで考えています。配信先はカートゥーンネットワークです。オリジナルコンセプトとデザインはGamania本社ですが、制作はヨーロッパのTuffyとカートゥーンネットワークに投資いただいて共同開発しています。実際のアニメの内容は北米式です。表現は悪いたとえかもしれませんが、見た目はアジア系で中身は北米系です。 編: ゲームはどういった内容になっているのでしょうか。 Albert: アニメーションと合わせる方向で進んでいます。ゲームプレイは2Dに3Dの要素を混ぜた横スクロールのゲームです。MMORPGではありません。比較的近いタイトルでは、「Castle Crusher」ですね。 編: 北米進出するにあたり、横スクロール型のアクションゲームを選んだ理由はなんですか。 Albert: アニメーションのマーケットユーザーがティーンエイジャーなので、ゲームの作りもライトユーザーや新規ユーザー向けのタイトルを作りたいと思います。欧米の実績のあるMMORPGはハードコア要素のあるタイトルが多いので、それとは違う方向のライトユーザー向けのタイトルを作りたいです。ユーザーさんがハードコアを遊びたいといったところで、「ルーセントハート」や「ブライトシャドウ」もできるという構図です。 編: 日本展開についてはいかがですか。 Albert: やります。 編: 欧米での展開時期と日本での展開時期を教えてください。 Albert: 欧米のスケジュールは今年の下半期でアニメと同時にリリースしたいです。スケジュールは確定していませんが、北米が少し先で、欧州が続きます。アジアは欧米での様子を見て、成功してからになりますので時期などは未定です。欧米でカートゥーンネットワークと組むことが決まっていますが、アジアでは配信するテレビ局などを検討しているところです。ただ、日本でアニメーションを展開するのは、日本のアニメコンテンツのクオリティが高いので少し不安があります。 編: 日本は、アニメは展開せず、ゲームだけになる可能性もあるということですか。 Albert: ゲームは必ずやりますが、欧米と同じ戦略でいきたいです。カートゥーンネットワークでは年間で2つのメジャータイトルのラインナップがありまして、「HERO 108」はその1つに入っています。
■ 2009年も5タイトル以上の新作を用意。期待作は「HERO 108」と「Bean Fun」
Albert: 台湾全体のマーケット規模は成長が続きます。Gamaniaの規模もそれに従い上昇します。マーケティングの中で、さまざまなジャンルの中で、ターゲットユーザーが出てくると思います。 編: 昨年よりも成長するという根拠は何ですか。 Albert: 「CSO」の反応がよく3本目の柱になりつつあります。それから新しく立ち上がる新規タイトルで可能性のあるタイトルがあります。たとえば「アトランティカ」があります。「アトランティカ」は日本や韓国でも実績があり、今年から台湾ではGamaniaが配信する予定です。 編: それ以外に今年登場する新規タイトルを教えてください。 Albert: 上半期にリリース予定で、「アトランティカ」と北京の開発会社が作った「尋仙」というタイトルを配信します。これが今年の2大タイトルです。 Taiwan Indexという会社は、Gamaniaグループの台湾にある独立運営子会社になります。最初は「Seal Online」を運営していましたが、現在はGamaniaが買収して、グループ内の中国発オンラインゲームの運営を行なう子会社です。中国発のタイトルの運営はすべてTaiwan Indexから配信しています。 編: Taiwan Indexは具体的にどういったタイトルを運営していますか。 Albert: 「赤壁」などです。今年3月から「尋仙」の運営も行ないます。下半期にもリリース予定がございますが、これについてはまだ申し上げられません。 編: グループ全体で今年何か新しい取り組みはありますか。 Albert: やはり「Bean Fun」です。ガマニア香港で既に「Bean Fun」のベータテストが2、3か月続けられています。ガマニア台湾では第2四半期に「GASH Town」のサービスとして「Bean Fun」の提供を考えています。 編: 「Bean Fun」のサービスの内容と狙いを教えてください。 Albert: 「Bean Fan」の第1ステップとしてユーザーさんが持っているさまざまなゲームのアカウントを統合します。統合することによりユーザーの利便性が高まります。第2ステップとしてアニメなどのデジタルコンテンツとタイアップしていきます。 編: 「Bean Fan」の最終的な狙いを教えてください。 Albert: 現時点で申し上げることは難しいです。「Bean Fan」はブラウザではなくアプリケーションになります。 編: 日本展開についてはいかがですか。 Albert: 展開します。ブランチがあるところではすべて展開を予定しています。 編: かつて2005年ぐらいにゲームポータルとしての「gamania.com」を普及させようという動きがありましたよね。「Bean Fun」とはそれに代わる動きと捉えていいのでしょうか。 Albert: そうとも言えます。「gamania.com」自体はPCのみだったのですが、「Bean Fan」は、長期的目標としてモニターが付いているデバイスが接続できるサービスにしていきたいです。 編: ちなみにBean Funのサービスを香港で先行させた理由は何でですか? Albert: 戦略としてガマニア香港の新しいミッションがあります。自社開発のコンテンツもサービスも香港で先にサービスされるべきだと考えています。台湾ではグループ会社が多いので、新しいコンテンツを最初に台湾でサービスするリスクがあまりに大きいので、ガマニア香港で先行して成熟度の高いコンテンツやサービスをガマニア台湾とガマニアジャパンに行くべきだと考えています。 編: 一方、ガマニアジャパンのそれぞれの目標を教えてください。 Albert: ガマニアジャパンでは、日本のオンラインゲーム配信会社のトップ5にいるべきだと思っています。ガマニア台湾と香港は目標としてSoftworldさんの「武林群狭傳」に勝負できるようなタイトルを育てたいです。Softworldは確かに香港と台湾では競合関係にありますが、それ以外のエリアにはお互い提携する方向を模索するケースもあります。 編: つまり、それはSoftworldのタイトルを今後日本で展開することもあるだろうということですね。 Albert: はい、あります。 編: そういえば、今回Softworldブースでは、「仙剣」というSoftstarのタイトルを出展していましたよね。 Albert: 両社の提携関係は本当に面白いです。そういう方向をGamaniaとしてもやりたいです。 編: 日本では、自社開発タイトルの「仙魔道」の展開が予定されていますが、どのような期待をお持ちですか。 Albert: 私個人の見解として、日本でより受け入れられるように期待しているのですが、正直な話、オリエンタルのイメージが強くて日本のユーザーさんに受け入れていただけるかという不安があります。ガマニアジャパンの運営チームを信頼して、本社の開発チームにうまくユーザーのニーズを反映するようにできるのではないかと考えています。 編: 今回見せて頂いた「HERO 108」以外に、現在自社開発しているタイトルはいくつありますか。 Albert: 確定しているのは5タイトルです。いずれも完成度が低いのでジャンルしか申し上げられませんが、4つがMMORPGで、1つがアクションアドベンチャーの入っている新しいジャンルのタイトルです。リリース時期は未定ですが、今年の年末からリリースしていきたいと思います。来年の上半期までには遅くてもサービスしていきたいですね。 編: Albertさんが今年事業として1番期待しているのは「HERO 108」ということになりそうですね。 Albert: 「HERO 108」と「Bean Fun」です。「Bean Fan」はサービスで、「HERO 108」はコンテンツです。並行して重要度の高い事項です。 編: 日本のユーザーさんに向けて一言お願いします。 Albert: 日本のユーザーさんから「ルーセントハート」に支援をいただきましてありがとうございます。今年ももっと良いサービスを提供できるようにがんばります。
編: ありがとうございました。
(2009年3月3日) [Reported by 中村聖司]
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