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会場:台北世界貿易中心
入場料:大人150台湾ドル(約450円) 新会長のXPEC総経理 許金竜氏をモデレータに、パネリストとして前会長のSoftworld総経理 王俊博氏、Gamania執行長 劉柏園(Albert Liu)氏、Wayi董事長 黄博弘氏の4人加え、元経済部の官僚というキャリアを持つ拓撲産業研究所所長 陳清文氏、元Electronic Arts Chinaというキャリアを持つVanedge Capital合夥人 簡士軒総経理という蒼々たるメンバーが参席。朝9時半という比較的早い時間からのスタートだったにも関わらず、開幕前には満席となり、立ち見が出る盛況となった。 発言を抑え、数字を出さないという互いに牽制しあうような状態から始まったが、徐々に議論が白熱し、海外展開について話が移ると、我が意を得たりとばかりに、大胆な発言が相次ぐなど、有意義な談論風発の場となった。さっそくその模様をダイジェストでお届けしたい。
■ 最初のお題「2009年の台湾ゲーム産業はどうなるか!?」
陳氏の意見を受けて黄氏は「2008年は競走が激しかった。前年比で10%成長したのは事実だが、コンテンツは倍になっている。我々は苦しいが新しいタイトルを取らなければならないというジレンマを抱えている。タイトルは2008年ほどではないにしても増え続けるが、ユーザーは増えない。市場は完全に飽和状態になっている。今後、大幅な成長は難しいので、開発やマーケティングのコスト管理が重要になってくるだろう。Wayiでは新しいビジネスを模索するために、昨年eスポーツブランドを立ち上げたところだ」と、経営者らしく現状を冷静に分析した。 両者の意見に対して、劉氏は新しい視点を提示した。「『苦しい』という黄さんの意見に賛成する。しかし、苦境を脱する方法が無いわけではないと思う。たとえば、客単価にはまだまだ向上の余地がある。台湾の客単価は、韓国の半分、日本の1/4に留まっている。客単価を上げることでまだまだ成長が見込めるのではないか。Gamaniaでは300~400台湾ドル(約900円~1,200円)の客単価を、900~1,000台湾ドル(約2,700円~3,000円)まで上げていきたいと考えている。今年のマーケットはとても楽しみだ」と破顔した。 各氏の意見を引き継ぐ形で、長老格の王氏は、「プレイ時間が延びる方向に推移すると思う。1930年代の世界恐慌下のアメリカでは人々は映画館の中で時間をつぶした。今はオンラインゲームがその役割を担うのではないか。IT業界のリストラで失職した人は意外にお金を持っているから不景気下でもゲーム産業は成長するだろう。怖いのは景気回復後に売り上げが落ちるのではないかということだ。なぜならみんな仕事で忙しくなるから(笑)」と場内を沸かせ、後で「マスコミの皆さん、不景気賛成論者みたいに書くのは止めてくださいね」と慌てて補足した。
■ 台湾メーカーの宿命「グローバル展開について」
これについては王氏が口火を切った。「やはり中国。台湾の昨年の売り上げが130億台湾ドル(390億円)に対して、中国は200億人民元(約2,700億円)で、その差は歴然としている。むしろなぜ行かないのかと言いたいぐらいだ。我々は5年前に進出し、あっという間に現地のパブリッシャーに追いつかれ失敗した。やはりタイトルを出すだけでは成功できない。しっかりとした土台が必要であり、会社ごと進出すべき。現在中国では新規タイトルの成功例が少なくチャンスである。台湾メーカーは中国で必ずシェアを獲得できる。約束しよう。弊社は3年以内に中国で成功する。だから皆さんも台湾のゲームメーカーの株を買うより、中国展開に投資した方が良いですよ」と台湾ゲーム産業の長老として長広舌をふるった。 王氏の発言を受けて、陳氏は元経済部官僚という立場から「経済部は十数年前から中国展開を計画しているが成功していない。それは中国マーケットがわからないという点と、外資への規制が強いから。中国タイトルにはあまり良いものがないのでチャンスではある。台湾政府経由で中国展開すべき」と繋いだ。 モデレーターの許氏は、話を日本展開に転じようとして劉氏に振ったものの、劉氏はそれを無視して、笑みを浮かべながら「中国市場へのリベンジの機運が高まってきた」と切り出した。「我々はかつて中国市場で敗れたが、いろんな理由があると思う。マーケットがよくわからなかったし、コンテンツの質も量も足りなかった。ここ数年でヒットしているタイトルはいずれも現地の好みがよくわかっているものばかりだ。結果として中国は同じようなものばかりになっているが、だからこそクリエイティブ性の高い台湾コンテンツはチャンスである」と参加者に発破を掛けた。 また劉氏は話を欧米に転じ、「欧米の動きはゆっくりで、オンラインの分野では我々のほうが先行しているので、今後は欧米進出も検討すべき。しかし、欧米のメーカーは資金も人材も豊富なので、本気を出されたら勝てないというリスクもある」と言及したあと、ようやく話を日本に転じ、「高い授業料を払えば成功できるということ」といって会場を笑わせ、「日本法人は2003年から2007年までずっと赤字だったが、今年初めて黒字にできた。日本市場は、コンソールのユーザーが多く、コンソールのユーザーを獲得するのは非常に難しく、中国市場とはまったく違う」と安易な展開計画には否定的な考えを述べた。
■ 「台湾ゲーム産業に求められることとは何か!?」。質疑応答ではユーザーの乱入でちょっとした騒ぎに
先輩経営者に譲る形で発言を控え気味にしていた簡氏は、「クリエイティブ性も含めてパッションが大事」と切り出した。続けて簡氏はEA China総経理時代を振り返り、「中国ではゲームに対する情熱ではなく、お金に対する情熱が優先される。これでは良いゲームが作れるはずがない。台湾はゲームに対する情熱が高い。開発者の皆さんは情熱を高く持つべき」と発言して来場者から多くの拍手を受けた。この意見には賛同するパネリストが多かったが、劉氏はゲームのボリュームを挙げ、陳氏はゲーム開発管理、長期的なパッション、人材獲得の3点を挙げた。 話題は「仮に台湾政府から100億台湾ドル(約300億円)の支援があったら何に使うべきか」というユニークな方向にも転じた。賛否両論があるなかで、その手の政府支援は得てして大手メーカーばかりに流れがちで、支援を本当に必要としている中小企業に流れないという傾向があるという見方から否定的な意見が多かったのが印象的だった。 そのほかにも、給与水準の向上、教育機関の整備、ベンチャー企業のためのパブリックな開発環境の整備などさまざまな意見が交わされた。結論は「ゲームはお金で解決できるものではない」という、当初の予想とはずいぶん違ったものとなったが、ゲーム開発および展開に大きな夢を抱いている人が多いことが実感できたのは収穫だった。 フォーラム終了後には質疑応答の時間が設けられたが、1人を除いて質問者はいずれもユーザーだった。しかも、「『World of Warcraft』級のゲームをなぜ台湾のメーカーは作れないのか? 武侠と三国志のゲームしか作れないのはなぜか」、「日本や欧米のゲームに比べると台湾のゲームはつまらないと思う」などといった敵意むき出しの発言が相次いだ。 それで場が凍り付いたかというと、むしろ逆でパネリストや来場者全員が尻餅をついたような大爆笑となった。パネリスト達はその彼らを閉め出しを命じることもなく、ひとしきり笑った後、真顔で解答していくという実にアジア的な対応が取られた。 まず前者の質問については、劉氏が解答した。劉氏は「WOW」はすべてのゲームメーカーにとって参考になるタイトルだということを前提に、「『WOW』をコピーすることは難しくない。しかしGamaniaのポリシーは、今あるゲームを超えるような作品を作ることだから、コピーするつもりはない。魅力的なストーリーを書ける人材は少ない点が課題として挙げられるだろう」と解答した。 後者の質問については、王氏が「本当におもしろくないゲームならば、我々は成功していない。確かにグラフィックスやエフェクトについては海外のゲームに劣る部分もあるが、ストーリー性やボリュームについては負けていない」と教え諭すような口調で解答。最後に許氏が、コンシューマゲームのデベロッパーとしての立場から「台湾のゲーム開発力に対する不満は理解しているつもり。しかし、弊社の新作『カンフーパンダ』では欧米でそれなりのスコアを出すことができ、台湾の開発力は着実に成長しつつある。そんなに不満があるなら、ぜひあなたも我々に力を貸して欲しい」と遊技産業振興会2代目会長らしいまとめ方でフォーラムを締めくくり、来場者から大きな拍手を受けた。 史上初の台湾CEOの鼎談は波乱含みの内容となったが、CEO間の微妙な感覚のズレや見解の違いが明瞭になり、また台湾勢が一丸となって海外進出を図る意向が確認できるなど、非常に有意義だった。ぜひ毎年定例のイベントにしてもらいたいところだ。
□Taipei Game Showのホームページ (2009年2月14日) [Reported by 中村聖司]
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