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★PS3ゲームレビュー★

狂気の海底都市で展開する生と死のドラマ
PS3オリジナル要素により、味わい深くなった名作

「バイオショック」

  • ジャンル:アクション・アドベンチャー
  • 開発元:2K Games
  • 発売元:スパイク
  • プラットフォーム:PS3、Xbox 360
  • レーティング:CERO:D(17歳以上)
  • 価格:7,140円
  • 発売日:PS3版:2008年12月25日、Xbox 360版:2008年2月21日



 世界最大規模のゲーム開発者向けカンファレンスGame Developers Conferenceでは、開発者が投票でその前年の優秀なゲームを決めるGame Developers Choice Awardsが開催される。2008年2月に行なわれたAwardsでは最高賞である「Game of the Year」は逃したものの、Writing(ストーリー)、Audio(サウンド)、Visual Arts(グラフィックス)という重要な3賞を獲得した作品があった。それが、スパイクが2008年12月25日にPS3の完全日本語版を発売した「バイオショック」である。

 「バイオショック」は北米では2007年8月にXbox 360版とPC版が発売され、様々なメディアやユーザーから高い評価を得た作品である。PS3版はUnreal Engine 3の開発の遅れの影響で発売が遅れた形になってしまったが、完全日本語版のPS3版の発売をまずは喜びたい。

 PS3版では発売が遅れた代わりに、オリジナル要素としてダウンロードコンテンツ(DLC)が用意されている。このDLCはPlayStation Storeで1,000円で購入できる。DLCをインストールすることでXbox 360版やPC版にはなかった3つのオリジナルミッションとセーブデータの装備を引き継いで最初からプレイできる「ニューゲームプラス」が選択可能になる。

 「バイオショック」の舞台は、国や宗教などの呪縛を逃れた科学者、芸術家が集まって己の才能を制約無しに開放させるユートピアとして作り上げられた海底都市「ラプチャー」である。本作の主人公はふとした偶然から、世界と隔絶し、独自の進化を遂げたこのラプチャーに迷い込む。

 主人公が訪れたラプチャーは無惨に破壊され、狂気に囚われ殺人鬼と化した住人が徘徊する街となっていた。ラプチャーに何が起きたのか、科学者達の理想郷はどうしてこのような廃墟に変わってしまったのか。「バイオショック」はホラーテイストと1960年代のアメリカの雰囲気、そして現代でも実現していない未来技術を持った世界をベースに、優れた演出と、高いゲーム性による戦いの駆け引きを楽しめる作品である。

 PS3版は他機種と比べ発売が遅れる形になってしまったが、ダウンロードコンテンツを購入することで他機種とはひと味違う要素が楽しめる。本稿ではゲームの基本要素と共に、PS3版オリジナル要素を紹介していきたい。なお、文末に付録として、Xbox 360とPS3版の比較写真も掲載しているので参考にしてほしい。


■ 海底に現れる科学者、芸術家達の理想郷。しかし内部は既に夢の残骸と化していた……

海底に突如現われる都市。ラプチャーの迫力に圧倒される瞬間だ
理想が崩れ、荒廃したラプチャー内部。暗さのない広告が一層もの悲しい。1960年代の雰囲気が独特の味わいをもたらしている
ジャックの行く先々で妨害してくるライアン。ユートピア計画は失敗したとはいえ、彼の支配力は依然として強大だ
 「バイオショック」は、1960年、主人公ジャックが大西洋を横断する定期旅客機の中で家族の写真を見ているところからはじまる。次の瞬間、飛行機は謎の事故により大破、ジャックは大西洋に投げ出されてしまう。

 海の中へ沈んでいくところを必死になって水をかきわけ、海面に浮上するジャック。あたりは飛行機の破片と、燃える燃料で火の海である。炎を避けながら進んでいくジャックの目の前に巨大な「灯台」があらわれる。大西洋のど真ん中に、何故こんな灯台が? 疑問を持ちつつも誘い込まれるように灯台の中に入ったジャックはそこで球形の潜水装置「潜水球」を発見する。

 スイッチを入れるジャック。潜水球はライアンを乗せて潜水していく。真っ暗なはずの深海から、まぶしい光が見える。ジャックの目の前に現われたのはニューヨークもこれほどまではと思えるほどの高層ビルの建ち並ぶ摩天楼だった。この街こそが「ラプチャー」。第2次世界大戦が終結した次の年、1946年に科学者アンドリュー・ライアンが、国家や法律、宗教、思想に縛られることなく科学や芸術活動を進めることを理想とした人々を集めて作った海底都市だった。

 こうしてジャックは世界とは全く別の進化を遂げたラプチャーにたどりつく。しかし未来的で華やかな外見とは裏腹に、ラプチャーの中は醜く破壊されていた。潜水球の前でジャックは1人の男が惨殺される場面を目撃する。ラプチャーでは“ウミウシ”から抽出された遺伝子物質「アダム」により、人を急激に進化させ、プラスミドと呼ばれる超能力を獲得させる技術を生み出していた。しかしアダム注入の副作用で多くの人は狂気に陥り、正気の人を殺す殺人鬼「スプライサー」へと変貌してしまったのだ。

 理想世界を目指したラプチャーは科学者の対立に端を発し、住人の暴動、そしてアダムによる変貌で破壊され、現在は都市機能を失ってしまっている。廃墟の町にたどり着いたジャックは潜水球の無線機から「アトラス」と名乗る男に話しかけられる。彼はラプチャーでの数少ない正気を保った生き残りであり、離ればなれになっている妻子を連れ出して脱出をはかっているという。アトラスはジャックに自分たちをここから連れ出して欲しいとジャックに頼む。

 ラプチャーを脱出する手段を探すため、アトラスの家族を救うために行動を開始したジャックの前にライアンが立ちはだかる。ライアンは崩壊しつつある海底都市の中で、スプライサーやラプチャーのシステムを操る強大な支配者となっていた。ジャックをCIAかKGBの諜報員と見なしたライアンは、アトラスとジャックの行動を全力で阻もうとしてくる。アトラスの声に導かれながら、ジャックの戦いが始まった……。

 「バイオショック」はゲームジャンルとしてはアクション・アドベンチャーだが、インターフェイスは純粋なFPSである。バリバリ撃って敵をなぎ払いながら進む、というよりもストーリーと世界観を楽しみ、演出を楽しむタイプの作品だ。プラスミドで特殊能力と共に狂気を得たスプライサー達はサーカス団員のような派手な扮装をしているが、その身体能力もサーカスの人そのままで、プレーヤーの攻撃をひらりひらりとかわす。手に入る弾丸は少なめで、敵と戦うためにはフィールドをじっくりと探索していかなくてはならない。

 その探索の中でプレーヤーはラプチャーが目指していた理想と、夢破れた後の“副作用”による恐ろしい現実に直面することになる。プレーヤーが進むフィールドは豪華な劇場、充実した医療設備、海底でありながら自然の息吹を感じられる森、と現代社会に住む我々も憧れるようなコロニーが作られていたことがわかる。

 しかし住人達は今や狂気にかられ、施設を破壊してしまった。ラプチャーの多くの施設は破壊され、そこら中に戦いに敗れた死体が転がっている。芸術作品を死体で飾るものもいれば、犠牲者の血でメッセージを書き記すものもいる。スプライサーは調子はずれの歌を歌ったり、訳のわからないつぶやきを続けたり、泣き続けたりしながらフィールドを徘徊し、ジャックを見つけると奇声を上げて襲いかかってくる。

 正気を保っている住人はほとんどいない。アトラスやライアンをのぞけば、プレーヤーが人の「声」を聞くことができるのはかつて録音されたボイスレコーダーを通してだけだ。ボイスレコーダーには様々な人が声を吹き込んでいる。熱に浮かされたように自らの研究の成果を語る科学者、強制的に子供を施設に預けさせられて不安がる母親、アダムで変貌していく自分の顔を嘆く女性、ラプチャーに対立する勢力に荷担しようとする男……。

 「バイオショック」はプレーヤーの前に姿を現わす登場人物はそれほど多くない。しかし、ボイスレコーダーや無線を通じて、変貌してしまったラプチャーの現実がプレーヤーの前にくっきりと浮かび上がるのだ。このストーリーテリングの手腕はうならされる。狂ってしまった歯車の“哀しさ”を体験できる作品となっている。

飛行機事故から謎の建造物、竜宮城のような未来都市から、破壊された現状へ、舞台はめまぐるしくかわる
クリニックが集まったフロア。美容整形も進歩しており、人々は理想の美しさを手に入れていたのだが……
華やかだった劇場は、今やコーエンという狂人の支配下にある。爆弾つきのピアノで無理矢理演奏させられている男など、プレーヤーはコーエンの残虐さを目の当たりにする
ラプチャーの酸素を生み出す植物ブロック。アダムによって狂気に支配された人々は、原始的な宗教観を持ち、人々を襲いはじめた
地熱を利用した発電所。ラプチャーを理想的なコロニーとすべく、開発者が綿密な検証と設定を行なっているのがわかる


■ 少女を守る潜水服姿のモンスター「ビッグダディ」との死闘。戦いの後にプレーヤーは大きな決断を迫られる

廃墟の中を歩くビッグダディとリトルシスター。リトルシスターは鼻歌を歌いながら楽しげに歩いているのが、陰惨な廃墟の雰囲気を皮肉にも強調してしまっている
得たアダムを消費することで様々な特殊能力を獲得できる。戦い方も大きく変わってくる
助けるか、犠牲にするか。彼女の命はプレーヤーの手に握られている
 超能力“プラスミド”をもたらした“アダム”は「バイオショック」の世界を象徴する物質であるといえる。この物質の発見と利用が理想をふくらませ、無数の対立を生みだし、そして荒廃へと導いた。プレーヤーはラプチャーに入ってすぐに自らの体にアダムを注入し、特殊能力を得る。この力なしではラプチャーでは生き残れないのだ。

 アダムは人間の死体から抽出できる。これは誰でもできることではなく、ラプチャーにおいて唯一その能力を持つのが小さな女の子の姿をした「リトルシスター」だ。ラプチャーでは彼女たちだけがアダムを生み出すことができるのである。

 リトルシスターを守るのが潜水服姿でずんぐりむっくりの体型をしている「ビッグダディ」である。ヘルメットには無数の不気味に光る目が設えられ、敵に注意を払っている。リトルシスターとビッグダディは、2人1組で廃墟となったラプチャーを徘徊し、死体からアダムを集め続けている。リトルシスターの声は無邪気で、楽しそうであり、その後をゆっくりとついていくビッグダディの姿はユーモラスだ。

 普段リトルシスターとビッグダディはプレーヤーに対して無関心だが、プレーヤーがアダムを手に入れるためにはリトルシスターを捕らえなくてはいけない。その時、ビッグダディは恐怖の殺人マシーンと変わるのだ。ビッグダディの力は、通常モンスターであるスプライサーの力を大きく越えている。多少の攻撃をものともしないタフネスさと、機敏な運動性能、そして強力な攻撃力を持っている。準備をしなくては、あっという間に即死させられてしまう。ビッグダディにいかに挑むかは、「バイオショック」における最大のハイライトといっても過言ではない。

 何とかビッグダディを倒すと、リトルシスターはビッグダディの死体にすがりついて泣き続けるだけの無防備な存在になる。ここでプレーヤーは選択を迫られる。プレーヤーを導くアトラスは彼女たちからウミウシを取り去り、リトルシスターが持つすべてのアダムを回収しろという。突然現われた女科学者テネンバウムは、ウミウシを取り去るとリトルシスターは死んでしまう、お礼に少しだけアダムをあげるから、彼女たちを助けてくれ、と懇願する。プレーヤーはどちらを選ぶべきだろうか。

 無力になったリトルシスターを前にするとプレーヤーの前に「ハーベスト」と「レスキュー」の2つの選択肢が浮かび上がる。ここでハーベストを選ぶとプレーヤーは少女からウミウシを抜き取りアダムを回収する。このハーベストの画面はいやがる女の子を捕まえるというかなりきつい演出で、生き残るためのジャックの必死さと、ラプチャーに囚われてしまった狂気を実感できる。

 レスキューを選択すると、女の子の頭をなでると血管が光り、次の瞬間、光る目を持つ怪物だったリトルシスターが正常な女の子に戻る。彼女は小さく「ありがとう」とお礼を言ってどこかへ去っていく。得られるアダムは少量だが、実は複数のリトルシスターを助けるとボーナスとしてアダムをプレゼントしてもらえる、という特典もある。

 この選択こそがゲームのエンディングに大きな影響を与えるのである。一度リトルシスターを助けてみればそれが倫理的に助けるという行動が「正しいこと」なのは伝わってくるのだが、少女を犠牲にして一度に大きな力を得るという背徳感も「バイオショック」の選択の1つである。

 アダムをギャザラーガーデンという自販機で使うことでプレーヤーは様々なプラスミドを獲得できる。物体を浮かび上げさせる「テレキネシス」や、敵を吹き飛ばす「ソニックブーム」、ターゲットを発火させる「インフェルノ」といった超能力のイメージそのままの能力だけでなく、様々なプラスミドが用意されている。

 腕から「蜂」を生みだし敵を大量の蜂に襲いかからせる「ホーネット」、虚像を作り出して敵を欺く「ターゲットダミー」、敵を怒りにからせて同士討ちを引き起こさせる「エンレイジ」や、警報装置に引っかかるようにさせる「セキュリティビーコン」といったプラスミドもある。手に入れたプラスミドで戦い方も変わってくる。武器とどう組み合わせて戦うのかを模索するのが「バイオショック」の楽しさだ。

 この他にも、アダムと引き替えに「トニック」という特殊能力を身につけることができる。トニックには戦闘関係の「コンバットトニック」、肉体を強化する「フィジカルトニック」、ハッキングや生産を助ける「エンジニアトニック」の3種類がある。リトルシスターを助けるか、ハーベストするか、そして得られたアダムをどう使うか、この選択でゲームの展開は大きく変わっていくのである。

左はハーベストの画面。直接的な描写はないが、小さな命を犠牲にするかなり衝撃的なシーンだ。助けることで怪物だったリトルシスターは少女としての心と体を取り戻す。複数のリトルシスターを助けるとプレゼントがもらえる
ゲームでは状況に合わせてプラスミドやトニックを組み替えることができる。中央のインフェルノは氷で閉ざされた道を説かして進むことが可能だ。右はホーネット。手から生み出した蜂が敵を襲う
左から、敵同士を争わせるエンレイジ、敵を吹き飛ばすソニックブーム、そして分身を生み出して敵を欺くターゲットダミー


■ 超能力と武器を駆使して戦う駆け引き。力押しだけでないアイデアが重要な戦闘

アイテムの購入や武器のパワーアップなど、何を使うか、プレーヤーによって戦い方は大きく変わってくる
電流を流したワイヤーと、地雷を仕掛けて敵をおびき出す。本作は待ち伏せが有効な場面がいくつもある
自動販売機やトラップなどはハッキングすることが可能。ハッキングは水道管ゲームになっている
 「バイオショック」の多彩なバトルシーンは、本作の大きな楽しみのひとつだ。中でも大きな障害として立ちふさがる存在が驚異的な身体能力や特殊能力を持つスプライサーである。両手に持った刃で斬りつけてくる「スパイダースプライサー」は天井に張り付いて攻撃してきたりとトリッキーだし、「ファデーニスプライサー」は瞬間移動と遠距離攻撃をしてくるやっかいな敵だ。

 これらの動きに対してなんら対応を取らず、銃を乱射しているだけでは簡単に倒されてしまう。体力を回復できるメディカルキットは最大9個まで持つことができるが、ピンチになると消費が速く、弾を買うにもお金を使うため、じり貧の展開になりかねない。

 だからこそ本作では、「どう戦うか」が重要になるのである。本作では拳銃、マシンガン、ショットガン以外にも、地雷も設置できるグレネードランチャーや、電流を流したワイヤーが設置できるクロスボウなど様々な武器が登場する。これらの武器とプラスミドを活用してできるだけ有利に戦いを進めていきたい。

 敵もなかなか狡猾で、狙いをつけようとすると走って逃げたり、体力が減ると回復装置を使おうとする。体に火がつくと水に飛び込んだりと、生への執着心の強さを感じさせる。これを逆手にとって回復装置の足下に地雷を仕掛けたり、水に飛び込んだ瞬間電流を浴びせたりと、効果的な戦法を生み出していくのである。

 プレーヤーを待ち受けるタレットや監視カメラはハッキングすることで敵を攻撃する武器になる。また、ハッキングをせずとも、エンレイジやセキュリティビーコンといったプラスミドを駆使することで同士討ちを狙うことができる。このように「バイオショック」のバトルは、ちょっとしたひらめきで展開が大きく変わる。力押しだけでない戦いは非常に楽しいものだ。

 ちなみに、ビッグダディは普段はプレーヤーらの戦いには無関心だが、スプライサーがリトルシスターを付け狙うため、そのカウンターとして戦いが始まることもある。高い防御力と攻撃力をもつビッグダディは利用することで頼もしい味方になってくれる。そして敵をけしかけ続けてビッグダディがぼろぼろになったところで戦いを挑み、とどめを刺してリトルシスターに近付く、という方法も有効だ。

 ビッグダディはこちらが攻撃を仕掛けるまでは無関心を装う。このため、戦いを挑むときにはじっくり準備ができる。筆者は特にトラップボルトを使った罠を仕掛けるのが好きだ。さらにターゲットダミーを使ってビッグダディをまどわすことでより安全に攻撃できる。ただし攻撃を与えればダディはこちらに気付いてしまうし、一撃の攻撃力が凄い。ビッグダディとの戦いはどれだけ準備をしても油断を許さない緊張感がある。

 戦い方に関しては、スタートメニューから選べる本作の特徴を紹介する「EXTRAS」では様々な戦い方を収めたムービーを見ることができる。敵をサイクロントラップで跳ね上げて無防備なところに弾丸をたたき込んだり、死体をテレキネシスで持ち上げてぶつけたりと、この映像は「バイオショック」の戦闘の“可能性”を提示するスタッフの挑戦状となっている。

 さらにPS3版オリジナル要素として、スタート時に難易度が選択できるようになっている。EASY、NORMALに加え、Xbox 360版ではゲームをクリアしなくては選択できなかったHARD、さらに難しいSUVIVALも選択できるようになっている。ストーリーや演出だけでなく、自分の戦い方を生み出す楽しさも本作の大きな特徴だ。腕に覚えのあるプレーヤーはぜひゲームを極めて欲しい。

女性スプライサーの多くは仮面をかぶっている。アダムで変質してしまった自分の顔を恥じる心が残っているようだ 血のような霧と共にテレポートするファデーニスプライサー 天井に張り付くスパイダースプライサー
敵が投げつけてくる爆弾をテレキネシスでキャッチ。このまま投げ返すことも可能だ 体に火がついて水に逃げるところをショットガンのエレキショットで追撃 グレネードは敵をまとめて倒せる。ガスボンベのあるところに撃てば威力は倍増だ
セキュリティービーコンを使って、ビッグダディを攻撃 装甲の厚いビッグダディには貫通力を高めたピアッシングラウンドが有効だ 電撃でトラップを麻痺させ、この隙に近付いてハッキングで味方に


■ DLCにより「バイオショック」はさらに楽しく! 複数プレイで見えてくる本当のテーマとは?

アンドリュー・ライアンとの対峙。2度目以降のプレイでは最初と違った気持ちが彼に対してわき上がってくるだろう
DLCによってプレイできる3つのコンテンツ。ボリュームはそれほどでもないが、舞台が凝っていて、ゲームの可能性を広げてくれるユニークなチャレンジだ
 ダウンロードコンテンツ(DLC)は、PS3版オリジナルの要素であり、これにより「バイオショック」はより楽しめる作品となる。

 DLCをインストールすることで「射撃場の謎」、「壊れた観覧車」、「8つの試練」という3つのミニゲームが追加され、さらに「NEW GAME PLUS」という項目がスタート時に選べるようになる。NEW GAME PLUSはプレイ時のキャラクタの装備やプラスミド、トニックを引き継いで最初からプレイできる。1周であらゆる要素をコンプリートするのは不可能に近いが、1周目のデータを引き継いで2周目をプレイすればそれも容易になる。ただし、NEW GAME PLUSでスタートすると“トロフィー”は獲得できないので、トロフィー狙いの人は注意したい。

 「バイオショック」はぜひ“2周”以上プレイしてもらいたいゲームだ。一度エンディングを迎えた後にもう一度ゲームをプレイすることで、登場人物達の立ち位置が明確になり、ボイスレコーダーのメッセージがより重要な意味を持ってくる。伏線、人間関係、その人達の思惑と結果……そして、開発スタッフが作品を通じて語るテーマが見えてくる。

 「バイオショック」はグロテスクな表現と、陰惨な雰囲気にまず目がいってしまうが、制作スタッフが掲げているテーマは暖かく、普遍性のあるものだ。繰り返しゲームをプレイすることでそれが伝わってくる。NEW GAME PLUSは繰り返しプレイするモチベーションを飛躍的に高めてくれる要素だと感じた。

 DLCでプレイ可能となる3つのコンテンツはどれも「バイオショック」の世界とシステムを活用しつつ、新しい遊びを提示してくれる。「射撃場の謎」は武器が全くない状態で暴走したビッグダディを倒し、リトルシスターを救出するのが目的だ。ターゲットダミーでビッグダディを誘導し、その頭の上に乗って離れた場所のアイテムをとる、といった本編では全くなかった要素が面白かった。

 「壊れた観覧車」は本編中に描かれなかったラプチャーの遊園地を舞台にしたコンテンツ。電力供給パネルが壊れた観覧車を動かし、リトルシスターを救出しなくてはならない。殴られると電気を放出して防御するといったトニックを活用したり、クマのぬいぐるみに火をつけて氷を溶かしたり、目の前のものをどう活用するかの試行錯誤が楽しい。

 「8つの試練」は8つの闘技場にいる敵とどう戦うかを考えていくコンテンツ。1つの試練を越えるとアイテムやアダムがボーナスとして与えられる。待機場にはすべての自販機が揃っている。どのプラスミドをとるか、どんな戦い方をしていくか、プレーヤーごとの戦い方で展開が大きく異なっていくコンテンツである。敵と戦ってはじめて有効な戦法などが見えてくるので、セーブをこまめにする必要があるコンテンツだ。

 DLCはどれもユニークでゲームの面白さを増してくれる要素だ。この要素が追加されることでPS3版の「バイオショック」は既存の機種以上に楽しいゲームとなったことは間違いない。しかし、その一方で、やはりこの要素を有料のコンテンツにしてしまっているところは不満だ。PS3ユーザーは他機種のユーザーに比べて1年以上も「バイオショック」の発売を待たされてしまった。他機種の廉価版が発売されてもおかしくないこの時期に、フルプライスで製品版を発売し、さらに追加料金を取ることで差別化を図る、という姿勢は疑問が残る。

 「バイオショック」は続編の「バイオショック2」の制作も発表されている。PS3向けのUnreal Engine 3の開発の遅れから発売時期がずれてしまったPS3版だが、続編は他機種との同時発売を期待したいところだ。もちろん本作同様、日本語版の発売も期待したい。米国をはじめ多くのユーザー、ゲーム開発者を魅了した、濃厚な演出と高いゲーム性を持った本作の雰囲気をうまく再現したフルローカライズで発売してくれたことはうれしい。ぜひ多くの人に触れてもらい、そしてスタッフの届けたかった暖かなテーマを感じ取れるところまで、たっぷり味わってもらいたい作品である。

全く攻撃力がない状態でビッグダディを倒す「射撃場の謎」。まずは様々な場所を探索し、どう組み合わせればいいかを考えていく
止まってしまった観覧車を動かす「壊れた観覧車」。どうすることで観覧車を動かすための電力を発生させられるか? DLCはどれもゲームをクリアするくらいの「バイオショック」に関しての知識と経験が必要となる
次を考えてキャラクタの能力を獲得していく過程が楽しい「8つの試練」。倒れてしまうと再開できないので、セーブは必須だ。扉が開いて敵との戦いを把握してから、ロードしてキャラクタの能力を揃える、という戦略も必要となる


 最後に、おまけとしてゲームの評価としては関係ないが、今回改めてPS3版をプレイしていて気になった点を1つだけご紹介しておきたい。PS3版「バイオショック」はXbox 360版に比べると、グラフィックスが少しシャープさにかけるかな、という印象を持った。そこで比較サンプルとしてXbox 360版と比べてみたのだが、明らかに違いがあることがわかった。PS3版の方がゲーム内部の解像度が低いため、引き延ばして表示している関係で輪郭がぼやけているように見えるようだ。

 この他、PS3版は、ゲーム起動時にメーカーロゴの表示が飛ばせなかったり、ハードディスクへのインストールが必須だったり、ステージ間のロード時間も長い。PS3版ではロード中に、ラプチャーの世界観にあった広告を見ることができ、待ち時間に対しての配慮もされているが、1年近く発売が後になったにも関わらずグラフィックスが見劣りする、というのは残念だ。作品のテーマ、戦いの駆け引きなど、ゲームの本質部分に両者の違いはないのが救いだが、「バイオショック2」ではこのような差が生まれないようにプラットフォーマー、デベロッパー双方に一層の努力を期待したい。

PS3版 Xbox 360版
ゲーム序盤をほぼ同じと思えるアングルで撮影してみた。PS3版の方が解像度が低く、ぼやけている。実際にプレイするとこの差は明らかだ

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□スパイクのホームページ
http://www.spike.co.jp/
□「BIOSHOCK」のページ
http://www.spike.co.jp/bioshock-p3/
□関連情報
【1月18日】スパイク、PS3「BIOSHOCK」
ゲームの世界観を垣間見られる体験版を配信
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20090108/bio.htm
【2008年7月19日】Take Two Interactiveプライベートブースレポート
PS3「BIOSHOCK」独占DLC、2K初のMMO「Champions Online」等、2K Gamesの新作タイトル4本を一挙紹介!!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080719/e3_2k.htm
【2008年2月21日】傑作FPS「BIOSHOCK」のストーリーテリング技法が明らかに
「Storytelling in BIOSHOCK:Empowering Players to Care about Your Stupid Story」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080221/gdc_bio.htm
【2007年12月7日】スパイク、Xbox 360「BIOSHOCK」
オフィシャルサイトで日本語字幕入りのムービーを公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20071207/spike.htm

(2009年1月23日)

[Reported by 勝田哲也]



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