← 前回分 【バックナンバー】
【連載第34回】大人による大人のための洋ゲー連載
■Game Dudeの「大人のための海外ゲームレポート」■
ついにオリジナルのアーケード版を越えた!?
ハイデフ美麗ビジュアルでリメイクされた人気作
「Super Street Fighter II Turbo HD Remix」 |
|
|
対戦格闘ゲームの名作をプレイステーション 3 / Xbox 360でもう一度! 10年以上前に登場した「Super Street Fighter II Turbo」(日本版の名称は「スーパーストリートファイター II X」)をHDクォリティのビジュアルとオンライン対戦に対応させたリメイク版「Super Street Fighter II Turbo HD Remix」がダウンロード専用タイトルとして登場した。
過去の名作をリメイクした製品はプラットフォームを問わず多数発売されているが、本作はオリジナル版を手がけたカプコンは販売のみで、開発はカナダ・米国のスタジオが関わっている点で興味深いタイトルである。
海外のクリエイターによる国産ゲームへのリスペクトは珍しいものではないが、リメイクまで行ったケースは、そうあるものではない。今作はダウンロード販売専用のタイトルであり、この手の販売形態のゲームはお手軽さを第一としているためと、開発コストや仕様面での制限が多いため、タイトルの品質にバラつきが多いのが気になるところ。
果たして「ストリートファイター」シリーズにかけるクリエイター達の本気度はいかに? そして気になるオンライン対戦の環境などをレポートしてみたい。
【お断り】 |
---|
当連載でご紹介したゲームは日本国内で流通しているハードウェアでは動作を保証するものではありません。編集部では海外版ハードウェア・ソフトウェアを輸入して紹介しています
この記事を読んで行なった行為によって、生じた損害はGAME Watch編集部および、メーカー、購入したショップもその責を負いません
GAME Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません
|
■ カナダ人の愛と根性が伝わってくるリメイク作品が登場
|
対戦格闘ゲームの元祖がHDクオリティで復活
|
|
オンライン対戦も快適に遊べる。この快適さは衝撃的だ
|
今回紹介するタイトルは、当連載としては初めてのダウンロード専用タイトルで、先月27日に発売された「Super Street Fighter II Turbo HD Remix」である。その名の通り1994年に登場した「Super Street Fighter II Turbo」をプレイステーション 3とXbox 360が持つハイデフ環境でリメイクを試みた、ファンであればグッとくる一作だ。
最新作「ストリートファイター IV」の発売が控えている格闘ゲームの勇「ストリートファイター」シリーズは、登場以来日本国内のみならず世界中で多くのファンを擁するビデオゲームを代表する作品の1つとして認知されている。
本作のベースとなった「Super Street Fighter II Turbo」の日本版名称は「スーパーストリートファイター II X」で、シリーズ最高傑作と呼び声高いタイトルだ。両バージョンの違いは一部キャラクタの名称が入れ替えられている。(ベガ→M.バイソン M.バイソン→バルログ バルログ→ベガなど)これは登場するキャラクタの見た目が実在の有名人物に似ている(というかそのまんま)であるから、といった理由があるようだ。
当海外ゲームレポート連載でなぜ国産ゲームを代表する「ストリートファイター」を紹介するのかといえば、本作がカナダ・米国のスタジオによる作品だから。海外のクリエイターがオリジナルをリスペクトして生み出された本作は、海外ゲームの範疇に入るのではないだろうか。その影響か日本のPLAYSTATION NetworkやXbox Liveマーケットプレイスでの発売は未だにされていない。
開発を行なったのは、Backbone Entertainmentと呼ばれる開発スタジオで、数多くのダウンロードゲームの開発を行なっているDigital Eclipse Softwareおよび、それらを含む複数のスタジオをとりまとめるFoundation 9 Entertainmentの一部門となっている。
カナダと米国カリフォルニア州などにスタジオを置く同社は、N-GageやPSPといった携帯ゲーム機への移植タイトルなどを専ら手がけてきていたが、昨年あたりからはプレイステーション 3やXbox Liveのサービスを使ったダウンロード販売専用のゲームを意欲的に開発している。
ちなみに同社がカプコンのゲームをリメイクしているのは「Super Street Fighter II Turbo HD Remix」が初めてな訳ではなく、アーケードの古典とも言える「戦場の狼」をリメイクした「Wolf of the Battlefield: Commando 3」や「1942」を大幅進化させた「1942: Joint Strike」などを手がけて海外で販売している。
リメイクする上で重要なビジュアルに関しては、同じくカナダに拠点を構える「UDON Entertainment」が手がけている。この会社はゲーム開発スタジオではなく、主に日本のマンガを英訳して出版するのを生業としており、「ストリートファイター」シリーズのコミックシリーズや、カプコンゲームタイトルのアートブックなどを現地展開していたのが縁で、今回の組み合わせと相成った形だ。
古典的な人気作品を現代のハードウェア特性に合わせてリメイクする商売は、限られた容量と開発費用などの兼ね合いの中から、面白いゲームを世に送り出すための手法として様々なメーカーから今後もコンスタントに提供されるだろう。
|
|
ゲームの基本的な部分は全く変わらない |
最大6人で交互に対戦することもできる |
|
|
キャラクタのバストアップも全て忠実にリメイク |
ビジュアルはUDONが手がけている |
■ ついにネットワークの遅延とおさらば!? UDON謹製ビジュアルにも注目
|
ホークのスーパーコンボでフィニッシュ!!
|
|
ボイスチャットしながら対戦も可能
|
本作はベースとなった「Super Street Fighter II Turbo」のビジュアルをHD画質へと全面リメイクし、「Remixモード」と呼ばれる新しいゲームモードを搭載。さらにオンライン対戦もサポートしている。根幹となるゲームデザインはベースとなった作品と変わらないものの、見た目と遊び勝手はオンライン常時接続が当たり前の現世代ハードへの対応がしっかりと行なわれている。
本作で特に注目なのは、オンライン対戦に必要なネットワークコードが、他のリメイク系対戦ゲームの中でも突出した出来を誇っている点だろう。具体的にはPing100以下の環境ではほとんどラグによるストレスを感じることはない。
日本国内のユーザー同士で対戦するには、ほぼラグなし対戦が楽しめると言う点で、本作はオンライン対応の格闘ゲームで度々問題にされてきたネットワークの遅延問題をほぼ気にする事の無いレベルまで持って行くことに成功している。オンライン対戦対応格闘ゲームのエポックメイキング的な存在と言っても決して過言ではない。
海外ユーザーとの対戦についてはPing200~300以下であれば何とか許容範囲だが、まれに遅延で当たったと思った攻撃が実は当たっていない、というようなことも発生する。日本と回線の太い地域(米国の西海岸など)のユーザーとの対戦であれば、こちらも問題なく楽しめそうだが、ヨーロッパや経路が複雑な他アジア地域とのユーザーとは、正直ゲームとして成立しない。これはゲームの作りうんぬん以前に、ネットワークテクノロジーの限界である。
もっとも、解決策として、あらかじめPingの低いユーザーと対戦するという手もある。マルチプレイではオンラインのユーザーはメニューから一覧表示され、自分から相手までのPingも表示されるため、「クイックマッチ」で適当なユーザーとマッチングされて残念ことにならないように、事前に対戦相手を選んでから挑むようにすると良いだろう。
ビジュアルに関してはカプコン作品のコミック(特に「ストリートファイター」シリーズは現在も新作を出している)を数多く出版しているUDON Entertainmentが手がけるだけあり、オリジナル版の雰囲気を忠実に守りつつ、彼ら流の味をうまく出した絶妙な職人技が光っている。北米のデザイナーによって、かなりアメコミ風のタッチに描き変えられているため、熱心なファンであれば異論もあるかもしれないが、ほとんどの人が抵抗なく受け入れることができる絵柄で、あくまで個人的な意見ではあるが私は気に入っている。
サウンドに関してもリメイクがされており「Overclocked Remix」というゲームミュージック好きが集うコミュニティで制作が行なわれ、同ウェブサイトでサウンドトラックがダウンロード可能になっている。前述のUDONもそうだが、海外のカプコン、あるいは「ストリートファイター」ファンが総結集して作り上げたゲームという印象が非常に強い。
作り手に同作への愛情が強いため、ゲームとしての完成度は高く、14.49ドル以上の満足感とお買い得感は必ず購入したプレーヤーに感じさせてくれる。事前の評判などをほとんど知ることができない、ダウンロード専用ゲームにとっては、内容・クォリティ共に模範とも言える出来栄えを誇っている。
|
|
観戦中は画面下部にSpectorと表示される |
背景も全てリメイク。人物はかなりジャパニメ風なのは賛否両論か |
|
|
ポーズメニューから技表を出してチェック可能 |
キャラクタの動き1枚1枚が忠実に描き直されている |
■ 海外版「Super Street Fighter II Turbo」と異なる点は?
|
トーナメントは8人まで参加可能
|
|
途中敗退するとこの表を最後まで見てるだけ。ちょっと寂しい……
|
本作のゲーム内容自体はもはや語るまでもないだろう。リュウやケン、春麗といったおなじみのキャラクタを選び、ライバル達と戦っていくという、現代の格闘ゲームでも一般的なルールだ。ちなみに最後まで勝ち残ればエンディングを見ることもできるが、こちらの内容も若干リメイクされている。
全て16:9のHD対応に描き直されたビジュアルは見た目も良好で、UDONのスタッフによる「ストリートファイター」シリーズに対する愛着も感じられる。任天堂のゲーム以外では海外でこれほどリスペクトされている国産ゲームも珍しい。
気になるオリジナル版のビジュアルについてはキャラクタのみ残されており、オプションから変更することができる。背景等は全てリメイク仕様しか収録されていないためこの設定を適用した場合の見た目はかなりチグハグで、あまりオススメできない。あくまでオマケ的な要素と考えた方がよさそうだ。
ルールはリメイクするにあたり細かい仕様を改変した「Remixモード」と、オリジナル版の仕様を踏襲した「Classicモード」の2種類を実装することで、こだわりゲーマーへの要望に応えているため、リメイクによる変化を好まない人も手を出しやすいだろう。
「Remixモード」は、開発を行なったBackbone Entertainmentの手により、個々のキャラクタの強さに調整が加えられている。技の強さや判定、コマンドまで手を加えられている。強すぎる/弱すぎるキャラクタや技に修正を入れることで、ゲーム全体のバランスをとりなおしたらしい。らしい、というのは私がオリジナル版とRemix版を交互にプレイしても特段の差異を感じなかったからで、格闘ゲームに精通したプレーヤーであれば、この点は実感できるのだろう。
対戦まわりはオンライン対応を果たしているため、ビジュアル以外では最大の特長となっている。
今作ではオンライントーナメントが搭載されている。アーケードでも同種のモードは存在したが、本作のトーナメントは最大8人まで、しかも敗退すると他のプレーヤーの対戦が終了するまでトーナメント表をじっと見ているしかなく、なぜか観戦できないのが残念なところ。負けたあとのアフターフォローはもう少し考えて欲しかった。
また、最大6人で、戦っていない4人のプレーヤーは現在戦っている様子を観戦できる「Player Matchモード」が用意されている。上限6人という微妙な設定になっているのは、遅延に関する対策であることは明白だ。もちろん両機種ともボイスチャットに対応しているのでゲームセンターで夢中になっていた頃とほとんど同じ環境でゲームを遊ぶことができる。個人的にはトーナメントよりもこちらの方が楽しめた。手持ち無沙汰にならないのが良い。
|
|
優勝者は表彰される |
対戦する場合はなるべくPingの低い人を指名しよう |
|
|
世界中のプレーヤーが競いあっている |
各キャラクタにはエンディングも用意 |
■ 心配ご無用!本体標準のコントローラだってちゃんとゲームを楽しめる
|
最初は昇竜拳もまともに出せなかったが……
|
|
慣れると溜め技も自在に使いこなせるように
|
さて、人気格闘ゲームがコンシューマゲーム機に登場した際に話題になるのが操作性の部分だ。このジャンルを追求する人であればスティックコントローラの導入は当たり前、という結論に達すると思うが、一方で私のように、追加周辺機器を導入せず手軽にプレイしたいという人も多いはず。
本体付属のコントローラでどこまで楽しくゲームができるか、これはアーケードゲームからの移植であれば必須課題と言えるだろう。そこで実際に約3時間ほど2人でひたすら対戦に打ち込み、どこまで標準のコントローラで楽しめるかを試してみた。ちなみに試してみたのはXbox 360版のRemixモードだ。
最初は的確にコマンド入力が可能な十字キーを使った操作が有利かと思っていたが、何度か試すうちにゲーム自体がゲーム機のコントローラに合わせて調整されているため、アナログレバーで操作したほうが技が出やすいということに気づいた。
リュウやケンなどのコマンド入力を素早く行なう系統の技を持つキャラクタは特にアナログの方がやりやすいように感じられた。昇竜拳や波動拳などの技は慣れてくるとアナログレバーの方が確実に出せるようになる。
反面、溜めて発動させる技の場合、例えば← → + パンチというコマンドが必要な際は左右に溜めたつもりでいても、気づかないうちに斜めにレバーが入って発動し辛い時があったが、何度も練習を重ねていくうちに出せるようになってきた。
個人的な結論を言えば、ゲームパッドでもある程度練習すれば、十分に戦える操作はマスターできた。格闘ゲームだからといって無理矢理アーケード用のスティックコントローラを導入しなくても楽しめるように、きちんとバランス調整がされている点は大いに評価をしたい。
久しぶりに格闘ゲームを集中的にプレイしてみたが、やはり面白い。ここ最近はアクションゲームを多くプレイしてきたせいか、対戦者との腕を純粋に競い合うシンプルかつ奥の深いゲームデザインに改めて惚れ直してしまった次第だ。これだけ楽しませてくれる内容でありながら価格は14.49ドル(1,200マイクロソフトポイント)と、コストパフォーマンスも抜群。日本国内での購入手段が限られるため、やや手間を要するがそれでも十分見合う物だ。
若干気になったのは、HPバーの表示が最初から減っているように見えたり、サウンドが鳴らなくなる等のバグがいくつか残っているところだ。また、レーティングまわりのシステムにもバグがあるようで、ランキングの信頼性は低い。いずれにしてもアップデートで改良できる問題であり、早急な解決を期待したい。
今回は初めてダウンロード専用のゲームをまるまる取り上げてみたが、フルパッケージのゲームにも負けない内容を持つゲームが徐々に増えてきた。今まではXbox Liveの独壇場だったジャンルではあるが、ここ1年でPLAYSTATION Networkのタイトルも充実してきており、急速なラインナップ整備が図られている点にも注目したい。近いうちにオススメのダウンロード専用ゲームを特集してみたい。
|
|
キャラクタのみオリジナル相当に変更可能だが、かなりの違和感が…… |
背景とのギャップがちょっと苦しい |
|
|
何度対戦しても飽きない不思議な魅力を持つ |
更なる上達を目指して精進したい |
SUPER STREET FIGHTER(R) II TURBO HD REMIX (C) CAPCOM U.S.A., INC. 1991, 2008 ALL RIGHTS RESERVED.
□「Super Street Fighter II Turbo HD Remix」公式ホームページ(英語)
http://games.capcomdigital.com/streetfighteriihdr/
(2008年12月16日)
[Reported by Game Dude]
当連載でご紹介したゲームは日本国内で流通しているハードウェアでは動作を保証するものではありません。編集部では海外版ハードウェア・ソフトウェアを輸入して紹介しています
この記事を読んで行なった行為によって、生じた損害はGAME Watch編集部および、メーカー、購入したショップもその責を負いません
GAME Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします
ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp
Copyright (c) 2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.
|