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米Apple、iPod担当シニアディレクターStan Ng氏に聞く
「将来に向けて非常にすばらしいゲームのプラットフォームが誕生した」

11月12日 収録

9月に発売された新しいiPod Touch。現在CMでは多数のゲームが直感的な操作で楽しめることをアピールしたテレビCMも流され、Appleがゲームに力を入れていることを現わしている
 7月にソフトバンクモバイルから「iPhone 3G」が発売され、9月にはAppleから「iPod Touch」の新ラインナップが発売された。iPhone 3GやiPod Touchをはじめ各種iPodを管理するソフト「iTunes」には、iPhone 3G/iPod Touch用アプリを販売する「AppStore」が開設され、直接ソフトを購入することができる。もちろん日本だけでなく世界中でアップロードされたソフトをダウンロードして楽しむことができる。そこにはゲームも多数アップロードされている。

 iPhone 3Gが発表されたWWDC 2008の基調講演で一番最初にiPhone 3G向けアプリの説明を行なったのはSEGAの「Super Monkey Ball」だったし、現在iPhone 3G/iPod Touchで多くのゲームが楽しめることをアピールするテレビコマーシャルが流されている。iPhone 3G/iPod Touchの登場当初からAppleとしてはゲームをひとつの柱として大きく育てていきたい意向があったと言える。

 今回、米Apple ワールドワイドプロダクトマーケティング iPod担当シニアディレクターのStan Ng氏からゲームについてのデモンストレーションとAppleのゲームに対する取り組みを聞くことができたのでお届けする。


米Apple ワールドワイドプロダクトマーケティング iPod担当シニアディレクターのStan Ng氏
 まずStan Ng氏は、iPodを総括し数々のデータを披露。最近の統計では1億7千万台のiPodが利用されていると言い、米国では7割以上のシェアを持ち、日本でも6割以上のシェアを占めているという。

 iPodシリーズに関しては9月に新しいラインナップが発表されたわけだが、その中でも第2世代のiPod Touchには注目しているという。8.5mmと薄型で後ろに向かって曲線を描くようなスタイリッシュなデザイン。ディスプレイは3.5インチで、ゴージャス感を出したフレームで覆われている。インターフェイスはマルチタッチスクリーンを採用することで摘んだりなぞったりすることが可能となっている。すでにあちこちで書かれているが、タッチスクリーンという点ではニンテンドーDSと同じだが、ニンテンドーDSが1点しか判定しないのに対して、iPod Touchでは複数点判定することが可能である。このため“摘む”といった動作が可能というわけだ。Stan Ng氏は「iPodの中でもiPod Touchはさらなる進化を遂げたと思っている」とiPod Touchに関してまとめた。

 そして、アプリケーションをAppStoreから直接取り込むことが可能な点が大きいとした。「iPod Touchに色々な機能を追加できるよう様々なカテゴリに分けられています。その中でも特に大きいカテゴリに育っているのがゲームです」とStan Ng氏は言う。AppStoreでのアプリケーションの総数が6,000本あまりで、その中でもゲームは1,500本以上がアップされているという。ちなみにAppStoreのダウンロード数は100日で2億件を超えたという。AppStoreでは有料のアプリケーションも多く存在するが、無料のものもアップされている。

 Stan Ng氏は「AppStoreにおいてゲームタイトルも増えてきたので、ゲームコンソールとして使用するユーザーも増えているようだ」と続けた。iPhone 3G/iPod Touchがゲーム機として注目されているという点についてAppleではどのように分析しているのか、ここでいくつか挙げた。1点目はその薄さ。Stan Ng氏はニンテンドーDSとPSP、そしてiPod Touchを並べ「サイズを比べれれば一目瞭然です」と自信たっぷりに語った。そして「iPod Touchにはいくつかの革新的な技術が搭載されており、開発者にとっても興味深いデバイスになっていると思う」とコメント。マルチタッチのインターフェイスについても、「インターフェイスとして優れているだけでなく、ゲームを開発するデベロッパの方々にも色々な“コントロール”を作り上げる上でクリエイティブな面でも優れている。ボタンに縛られることなくどんなゲームでも思うがままに作り上げることができます」とした。

 加速度センサーを搭載したことも革新的なことのひとつと説明した。加速度センサーは傾けることで動きを伝えることができるわけだが、これを搭載したことでより直感的な操作が可能になっている。さらに近くにいる人とローカルネットワークでマルチプレーヤーゲームをプレイすることができるようWi-Fiを搭載したほか、インターネットを通じマルチプレイも楽しめる。

iPod TouchからAppStoreにアクセスしてみたところ。各アプリでアップデートがかかると、写真右下にあるようにマークが付く。写真では現在1タイトルでアップデートがかかっていることを現わしている
 これらのゲーム向きのハードウェアの機能を搭載している事も大きいが、「AppStoreやサービスなどもゲーム産業のひとつの未来を描けるものではないか」とStan Ng氏は語っている。これは、「カートリッジやディスクなどプレイするために探し回らなくても良い (Stan Ng氏)」ということでAppStoreにアクセスできればゲームを楽しめると言える。さらにゲームのデベロッパにとってもAppStoreが配信を行なっている62カ国に配信可能という点は魅力的ではないかとアピール。

 さらにカートリッジやディスクとの違いについて、いつでもアップデートできる点を挙げた。ユーザーの要望に対するフィードバックとしてキャラクタやレベルなどをいつでも追加することができるとし、AppStoreではユーザーの要望も簡単に吸い上げることが可能だとした。AppStoreではレビューを簡単に投稿することができ、デベロッパはこれらをいつでも見ることができる。Stan Ng氏は「ポータブルデバイス対応のゲームで有りながら、初めてこのような形で時間を経てゲームが進化することができるようになりました。将来に向けて非常にすばらしいゲームのプラットフォームが誕生しました」と締めくくった。


 ここで同席したショーン氏から現在すでに配信中のタイトルとしてVivendi GAMES MOBILEの「Crash Bandicoot Nitro Kart 3D」、ゲームロフトの「REAL SOCCER 2009」、ngmocoの「Topple」、そして年内配信が予定されているngmocoの「RLAND」、EAの「SimCity」、「Need For Speed Undercover」の計6タイトルを見せていただいた。すでに配信中の3タイトルについては以下に写真ともに紹介させていただく。

 これから配信される3タイトルについては残念ながら撮影が禁止されていたため、簡単にフォローしておく。

 「RLAND (ロランド)」はアクションパズル。ロランドとはこの世界にいるキャラクタ達のこと。各面の中に設置された出口からロランドを助け出すことが目的となる。面の中にはトゲのある穴があったり、敵キャラクタが歩いていたり、様々なトラップが存在する。これらを上手く解いていきキャラクタを出口に導いていく。

 「SimCity」はご存じ都市育成シミュレーション。画面にあるコマンドをタッチし目的の土地をタップすることで造成など直感的に簡単に行なうことができる。犯罪発生率、交通の状態などのデータも画面上の情報を選択することですぐに色分けされ表示され非常にわかりやすい。スクロールは画面をなでればその方向にスクロールするほか、拡大縮小はiPod Touchで写真を見るときと同じインターフェイスである“摘む”入力で行なうことができる。ショーン氏によれば「EAから聞いた話では、シリーズ中最も出来がいいと聞きました」ということで、かなりのクオリティに仕上がっているようだ。

 最後にデモンストレーションをしてもらったのが「Need For Speed Undercover」。カーレースゲームとして人気の高いシリーズだが、iPhone 3G/iPod Touchバージョンでも非常に美しいグラフィックスを実現している。ガレージでは車を選択し、もちろんチューンナップが可能。ホイールを変えようと思えば車のホイール部分をタップすれば選択され変更できる。ボディのデザインについても同様で、ボディを直接タップすればよい。そしてレースでは、ハンドリングは加速度センサーを使用し傾けることで左右に曲がることができる。傾けると同時に画面にタッチすれば、触れている間はドリフトを行なってくれる。また、右下にニトロマークが表示されるときがあり、これをタップすると急加速を行なう。画面がそのままインターフェイスとして機能しているため、プレイに集中できるという高いクオリティだった。

【Crash Bandicoot Nitro Kart 3D】
1本目は日本でもおなじみのキャラクタ、クラッシュ・バンディクーが登場する「Crash Bandicoot Nitro Kart 3D」。Vivendi GAMES MOBILEからリリースされている。加速度センサーを利用しハンドリングは本体を傾ける事で行なう。かなりキビキビと反応する。さらに傾けたところで画面の左右の端にタッチすると、タッチしている間ドリフト走行状態となるなど直感的な操作が可能だ

【REAL SOCCER 2009】
ゲームロフトからリリースされている「REAL SOCCER 2009」。他の携帯機と遜色ないグラフィックスとキャラクタの動きを再現している。操作は画面上に薄く表示されている十字キーとA、Bボタンを使用。画面上に指を置いて操作する事となる。キャラクタの切替はダイレクトにキャラクタを指定してタップする。また画面上でクルッと円を描くと選手もクルッと周り、相手選手を避けるなどの動きを見せる

【Topple】
元EAの社員が設立したngmocoという会社からリリースされている「Topple」。上に表示されているブロックをタッチし画面下に持って行き順々に重ねていく。指定された高さまで積み上げればクリア。もちろん足場が悪ければぐらぐらと崩れてしまうが、崩れる方向に上手く傾けることで崩れるのを防ぐこともできる (加速度センサーを使用)。ブロックは一カ所をタッチしてもうひとつの指でクルッと回せば回転させることも可能。ブロックの積み重ね方で、描かれたブロックの顔が変わるなどコミカルな雰囲気が魅力のひとつ


 最後のほんの少しの時間を割いてもらい質問させてもらった。アップロードされているのはゲームが多いが、ダウンロード数はどうなのだろうか? この点に関しては、全世界的な傾向としてゲームのカテゴリのダウンロード数の伸びが一番高く、トップ25のほとんどがゲームとなっているという。

 また、日本のゲームメーカーの参入も相次いではいるが、まだまだ参加企業は少ないと言える。これら企業への参加を促す施策については、「各ゲームメーカーにも興味を持ってもらっている。ハドソン、セガ、バンダイナムコゲームス、スクウェア・エニックスみな興味を持って作ってもらっている。もうすでに他のメーカーも手がけてもらっているのかもしれないが、この時点で我々から発表できることはありません」とStan Ng氏は返答した。

 AppStoreは大手デベロッパだけでなく、アマチュアのゲームプログラマでも参加の敷居が低いと言われている。この点についてStan Ng氏は「もちろんアマチュアゲームデベロッパにもアピールしていきたいと思います。また、ゲームの開発環境についても支援が行き届いた開発環境を用意しており大手だけでなく個人の方にも世界中に配信できるチャンスを掴んでいただきたい」とし、「99ドルで開発キットに参加することができ、AppStoreで世界中に配信することができます。どのように利益分配するかも我々は透明性が高いようにやっています。開発者に売上げの7割が行くようになっています。パッケージなどについても考えることなく、より簡単に参加することができます」と語った。

 最後にゲームに力を入れているAppleだが、iPhone 3G/iPod Touch、AppStoreにおいてゲームに関するアップデートが行なわれる可能性はあるのだろうか。この点について「現状発表できる状態ものはありません」としたが、「いままでの音楽、ビデオに留まるものではなくiPod Touchというものはゲームも重要であると考えています」としているので、今後需要がより高まれば、もしかしたらアップデートなどが行なわれるときが来るのかもしれない。

□Appleのホームページ
http://www.apple.com/jp/
□iPod Touchのページ
http://www.apple.com/jp/ipodtouch/
□関連情報
【10月6日】ハドソン iPhoneアプリ統括の柴田真人氏インタビュー
iPhoneで日本向けのコアゲームは実現できるか?
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081006/hudson.htm
【10月3日】西健一氏、飯野賢治氏による対談が実現
「iPhoneのために作ったゲーム『newtonica』」で新作を披露
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081003/r24.htm
【7月11日】ハドソン、iPhone/iPod touch用ゲームの配信を開始
「BOMBERMAN TOUCH」など3タイトルをプレイレポート
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080711/hudson.htm

(2008年11月12日)

[Reported by 船津稔]



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