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会場:AppleStore 銀座 3F シアター
「newtonica」はiPhone/iPod touch用に制作されたオリジナルゲームで、フィールドシステムからApp Storeを通じ、全世界に600円 (4.99ドル) で配信されている。画面中央にあるスターパネルスフィアをクルクル回転させ、飛んでくるメテオをキャッチしていく。赤いメテオはスターパネルスフィアの赤い部分で受け止め、青いメテオは青い部分で受け止めなければならない。シンプルなルール故にプレイすることが気持ちいい作品。 同イベントは、西氏がWEB媒体「WIRED VISION」において制作過程にまつわる話を連載したことをきっかけに“WIRED VISION presents”として行なわれたもの。イベントは、「newtonica」のデバッグやチューンを担当した猿楽庁の橋本徹氏のプレイ映像をバックに飯野賢治氏のライブで幕を開けた。ゲームでも使われているMacの起動音のような音を使用した楽曲などを披露。 トークイベントは奥山氏の司会により進められ、西氏と飯野氏がコメントするといった展開。「newtonica」の制作のきっかけは、飯野氏が西氏にiPod touchの壁紙を送ったところからはじまる。2人ともApple製品のファンであり、iPod touchが発売されたときに飛びついたとか。しかし西氏は購入することができず、一足先に購入した飯野氏がうらやましかったという。西氏がやっとiPod touchを手に入れたときに飯野氏が、iPod touch用の壁紙を西氏にプレゼント。これをきっかけにゲーム制作に流れていくことになる。 壁紙は星で構成された球体で、2人はこの壁紙を見ながら「これを回転できたらいいね」と話し合ったという。ここからゲーム化の話に進展していくことになる。2人はiPhone/iPod touchの魅力についてタッチセンサーの性能について触れた。西氏は「ニンテンドーDSは1カ所だが、iPhone/iPod touchでは複数箇所認識することができる。1作目はそれがわからなくてシステムのデザインを行なった」という。プログラマーに「複数箇所大丈夫ですよ」といわれガッカリしたとか。 一方、奥山氏から「ジャイロ機能も面白いですよね?」と向けられた飯野氏が「ジャイロを使ってiPhone/iPod touchを傾けながら遊んでいる人を見てカッコイイと思うのか?」と疑問を投げかけた。もちろん、こういった機能を使ってゲームを制作するのはありだとは思うが、飯野氏は「newtonica」において、「プレイして気持ちいいことや、カッコイイということは譲れない」として、こういった機能を使用することには反対したという。ゲーム作りにおいては色々なことに手を出しゲームのプレイ感などが散漫になることは往々にしてあることで、こういった絞り込みは重要だろう。ちなみに西氏は「寝転がってプレイできるようにもしたかった」のでジャイロ機能は採用しなかったとしている。 この「カッコイイ」の元にあるのは、ふたりのApple製品に対する想いだ。スタイリッシュであるといった点や思想にまで及ぶと言われるAppleへの想いが「newtonica」のゲームデザインにも反映されていると言える。 完成した「newtonica」はシンプルだが、開発当初はゲームが進むことでスターパネルスフィアの青と赤の位置が色々と変化する仕組みなども考えられていた。また、iPhoneが発売された頃にゲーム自体はほぼ完成していたが、飛来したメテオをスターパネルスフィアの周りに空いた穴に通していくといったルールで、ゲーム自体が細かいためテストプレイした飯野氏も「自分の指が邪魔になる。自分の指が敵になっている」と指摘したという。 ここで、前述のように「気持ちいいことを最優先」したことでシンプルなゲームシステムになったが、リリース前後に周りからは「もっとゲーム的にした方が良いのではないか?」といった意見やApp Storeのユーザーレビューを目にしたという。しかし、2人は「あえてゲームっぽくしなかった」という。その根底にあるのはもちろん“気持ちよさ”や“カッコよさ”であり、それはApple製品への想いでもある。 会場では一般来場者からの質問も寄せられた。まずは「newtonica」のタイトルのネーミングについて。当初色々な案があったというが、最終的に造語とすることに決定。全世界でタイトルが商標として登録されていないかチェックを行ない、決定した。ゲームの内容が「落ち物ゲームっぽい (飯野氏)」ことと、「Apple Newton」へのオマージュから「newton」を採用し、「Electronica」と掛け合わせたという。 また、音楽についても質問が飛んだ。音楽について担当した飯野氏は「音楽はゲームの状況によって変わる。ライフが上がれば盛り上がり、失敗するとバスドラが無くなったりする。プレーヤーがプレイすることで、音楽の演奏に加わっている」と説明。「僕はゲームを作っていたことがあるから、プレイ中に違う音楽が鳴るのは許せない。ゲームの内容を活かした音楽にしたかった」と続けた。
ゲーム内では4種類の音楽が状況に応じてシームレスに切り替わるようになっているのだが、実は常に4曲が並行して再生されているのだという。しかしCPUには負荷が関わらないというiPhone/iPod touchのハード特性を活かしてこういった機能を実現していて、たとえば透けて見えるといったグラフィックス処理を採用すると処理が遅くなるため採用されていない。「ハードの得意な部分を組み合わせて作っている (西氏)」という。もちろんグラフィックスでも必要なところには使われていて、スターパネルスフィアが綺麗な球体に見えるよう1,600万ポリゴン相当で描かれているのだという。
iPhone/iPod touchについてはハードだけではなく、App Storeの仕組みについても触れられた。現状62カ国で配信されており、配信状況のデータは3日遅れで送られてくると言う。どこの国でどれほど配信されたかがほぼリアルタイムでわかり、「制作者側のゲームのようだ (飯野氏)」と一時期盛り上がったという。さらにApp Storeのユーザーレビューも楽しいといい「米国ではベタホメだったが、ドイツでは星ひとつ。ドイツ語がわからないが怒られているみたいだ (笑)」と感じという。App Storeではアイコンが表示されているが、「国によってアイコンを変えている所もあるようだ。アメリカでは青いアイコンで、スペインではオレンジ。スペインって青ってイメージじゃないじゃない? (西氏)」と語ると、携帯業界が長い奥山氏が「携帯のアプリを配信していると、アイコンひとつでダウンロード数がガラリと違う」と経験を語った。このほかにもApp Storeへの参入障壁の低さ、在庫を持たないで良いといったリスク回避、スピーディな点など、ゲームの販売に比べての利点が数多く挙げられた。 西氏は「newtonica」について、「勝手に3部作だと思っていて、今年中に3タイトルリリースするつもりでいる」と語った。現在開発中の「newtonica2」はグラフィックスの雰囲気は引き継ぎながらもよりゲームらしくするつもりだとか。「newtonica」を中心に「newtonica2」ではゲーム寄り、「newtonica3」ではアプリ寄りになっているという。飯野氏は「『newtonica2』でゲーム寄りに展開できるのも、『newtonica』を作ったから。色々なことができることがわかった」と続けた。
西氏と飯野氏の2人は「発表会でスティーブ・ジョブズの手でiPhoneが紹介され、その時にゲームも紹介されたが、我々はそれとは違った、我々が思うiPhoneらしいゲーム……iPhoneを使う人がこういったものが欲しいだろうと思うオリジナルのゲームを作った。夢はスティーブ・ジョブズが発表会でゲームの代表として我々のゲームを壇上で紹介してくれること」と語りトークイベントは締めくくられた。
(C)2008 Route24 Inc.
□フィールドシステムのホームページ (2008年10月3日) [Reported by 船津稔]
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