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同社は今回のリリースについて都内ホテルで緊急記者会見を行ない、和田洋一スクウェア・エニックス代表取締役社長が説明と質疑応答を行なった。和田氏は今回のリリースの発表がすなわち「友好的公開買付け (TOB)」そのものではないという点を強調しながら、「テクモの創業家である柿原康晴代表取締役会長兼社長と5月以降面談を行なっていた」とこれまでの流れを説明。「何回か面談を行なったが、安田氏が辞任し、どういった事態なのか不安になった (和田氏)」ことから今回のリリースを発表したという。 和田氏は「すばらしいものを持っているのに、株価の件や報道されている問題など、これからどうするのか?」といった点についてメールベースでやり取りを行なってきたことを明かし、「取締役会で議論していただきたい」と書面とメールで提案している状態だという。 今回の件について和田氏は「スクウェアとエニックスが一緒になったときと同じ」と語った。「エンターテインメント業界においてゲーム業界はテレビ、映画などと同等の規模で、成長についても堅調。でも日本のゲーム業界は今も主役の一画ではあるが以前のような圧倒的な勢いはない」とし、「世界で戦い、ものを作り浸透させるには力のあるところが手を組んでやるのは当然」とし、CESAの会合などで会う機会のある安田善巳元代表取締役社長とも「会う機会があったときに話していると、日本のゲームメーカーの立ち回り方について共感している点があった」という。 テクモへのTOBが行なわれ成功した場合は、タイトーと同じくスクウェア・エニックス・ホールディングスの傘下とする考えだが、この点についても言及。「傘下になることでいずれかのブランドが無くなったり、タイトーもテクモも一緒になると思われるかもしれないが、それは違う」とし、10月1日からスクウェア・エニックスの体制が変更されるのを引き合いに出し「そうならないために持ち株制に移行する。ビジネスラインの相乗効果を提供できると考えている」と続けた。 では、会社の価値とはどこにあるのか。和田氏は「IPが重要といった話もあるが、そんなものはゼロでもいい。モノを作る能力が必要。外部発注すればいいと言うかもしれないが、発注する能力が必要」と言い、モノを作る能力を持つ人材が企業にとって最も大切であるとした。和田氏は、クリエイターの能力や制作者の強いリーダーシップ、個性を尊重するとしながらも「ゲームはひとりの天才が作っているように見えるが、チームで作るもの。その一部が崩れると、全滅する」とし、企業としてはそこを補完し、いかに成果を出してもらえるかが重要だと語った。テクモはこの“モノを作る能力”を持っていると高く評価。この力を発揮して欲しいと言い、「一緒にやりたい」と同社社員に対してもラブコールを送った。 テクモのブランドの一角をなす「DEAD OR ALIVE」シリーズや「NINJA GAIDEN」シリーズを手がけてきた板垣伴信氏が今年テクモを退社したが、こういった個別の社員の処遇についての質問には「個別、具体的にどうかはまったくわからない。各人の能力も大切だが (チームの) 人間関係が重要。状況が決まれば、それぞれ個人が何を考えて何をしたいかを聞いて決めるべき」と和田氏は答えている。 テクモの得意分野などへの評価については、「家庭用ゲームからアーケード、オンラインから携帯まで広範囲にわたって優れたコンテンツを持っている」とし、格闘ゲームが得意なことを引き合いに出し「スクウェア・エニックスではこれまで格闘ゲームを出したのは1本か2本程度。テクモの格闘ゲームを作り上げるインスパイアも期待している。テクモは爽快なアクションとディープな世界観を作り上げる能力がある。こだわりの作品を作り上げる企業風土が重要」と和田氏は語り、アーケード分野のほかでは、海外比率7割という海外に強いコンテンツなどについても期待しているようだった。 920円というTOB価格の設定については「勢いでつけたわけではないが、スペックシートを出せと言われても困る」とし、あくまでも議論するための指標に過ぎないとしたが、「本件については手元の資金でまかなうつもり」としファンドなどから資金調達は行なわない考えだ。 テクモがTOBに応えるかどうかについては「提案を受け入れられると信じるしかない。祈っている。経営陣には賛同して欲しいし、株主の説得に協力して欲しい」とコメント。もし賛同を得られない場合については「グループとして一緒にやっていきましょうという提案なんです。そうなると株の問題は必然的に出てくるんですね。となると手続きとしてはTOBですよねと。それに対する議論というのをぜひ活発にやっていただきたいということで、突然のTOBではなく今回のような記者会見を行なっているんです。つまりグループとしてどのように一体的に仕事ができるかというのが最終的なゴールなんです」と語り、TOBはあくまでも手段としての選択肢だと強調。スケールメリットを出すためにはグループ化することがひとつの方向性としてあり、そのために株式総数の過半数にこだわってTOBを行ないたいとしている。
同社は約2年ごとに大型企業買収を行なうなど劇的な変化を見せてきている。今回の件が決定すればある意味スケジュール通りともいえる。和田氏自身も「スクウェアとエニックスの時と同じ」とコメントするように、和田氏の発想にぶれは見られない。今回の記者会見では時間の都合で聞くことはできなかったが、テクモのオンラインゲームの資産はかなり大きく、また力を入れているジャンルで、そこでは数多くのユーザーが楽しんでいる。そういった意味でも今回の件はどのように展開するのか非常に興味深いところだ。
□スクウェア・エニックスのホームページ http://www.square-enix.com/jp/ □ニュースリリース (PDF形式) http://www.square-enix.com/jp/company/j/news/2008/download/20080829_133.pdf □テクモのホームページ http://www.tecmo.co.jp/ □関連情報 【6月13日】テクモ労働組合の執行役員2名が未払賃金を求めて提訴 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080617/tecmo.htm 【6月4日】テクモ、板垣伴信氏の声明文に対するコメントを発表 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080604/tecmo.htm 【6月3日】テクモの板垣氏が同社と安田社長を提訴する声明を発表 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080603/tecmo.htm (2008年8月29日) [Reported by 船津稔]
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