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【連載第29回】大人による大人のための洋ゲー連載

Game Dudeの「大人のための海外ゲームレポート」

専用グリップを装着してDS本体がギターに変身!!
世界で1,500万本を売った怪物音楽ゲームがとうとう携帯機に進出

「Guitar Hero On Tour」

  • ジャンル:音楽ゲーム
  • 開発元:Vicarious Visions
  • 発売元:Activision
         RedOctane
  • プラットフォーム:ニンテンドーDS
  • 価格:$49.99
  • レーティング:Everyone 10+ (10歳以上推奨)
  • 発売日:2008年6月22日


 音楽ゲームの開拓者「Guitar Hero」がとうとうニンテンドーDSに登場、「どうやってゲームをプレイするのか!?」という疑問には専用に開発されたグリップコントローラとピック型のスタイラスで応えるという気合の入ったパッケージ構成で、いつでも・どこでも「Guitar Hero」を実現する、ファンにとっては要注目のアイテムだ。

 ゲームは、同シリーズのデザインをしっかりと踏襲しており、ビジュアル面では非力なDSではあるが、ステージやキャラクタは全て3Dで表現され、演出面でも一切妥協がない。曲も新旧の人気アーティストから30曲以上を収録し、プレイステーション 3やXbox 360など他機種版にも遜色の無い内容に仕上がっている。

 欧米ではパーティーゲームの代表作として定着した本作が、携帯ゲームという限定された環境の中で、どこまで面白さを発揮できるのかファンにとっては気になるところで、海外ゲームメディア等の評価は賛否両論と言ったところ。今回は実際にゲームをプレイしてみることで、携帯版「Guitar Hero」の実態をレポートしてみたい。

【お断り】
 当連載でご紹介したゲームは日本国内で流通しているハードウェアでは動作を保証するものではありません。編集部では海外版ハードウェア・ソフトウェアを輸入して紹介しています
 この記事を読んで行なった行為によって、生じた損害はGAME Watch編集部および、メーカー、購入したショップもその責を負いません
 GAME Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません



■ 専用ハードウェアを独自開発、DSでもLet's Rock!!

 今、海外では音楽ゲームが大ブームなのは本連載を含め、GAME Watch上でも度々紹介をしているが、全世界で1,500万本のセールスを記録している先駆者「Guitar Hero」が、ついにというかやはりというか、携帯ゲーム機にも進出した。

 ニンテンドーDS(以下DS)用に発売された「Guitar Hero On Tour」は、まさにどこでもプレイしたいときに「Guitar Hero」を楽しむためのゲームだ。専用グリップとストラップ、ピックを模したスタイラスペンという専用ハードまで用意して、満を持して投入された本作は、携帯機という非力なハードでありながら、ほぼ忠実な「Guitar Hero」をプレーヤーに体験させてくれる優れもの。ファンであれば注目せざるを得ない逸品だ。

 ハードウェアの開発はRed Octaneが行ない、ゲーム本編はVicarious Visionsが担当している。どちらもActivision傘下のスタジオで前者は「Guitar Hero」シリーズの版権を持ち、後者はDSを含めた携帯機の開発実績が豊富で、Activisionタイトルの携帯機版では必ず同社が携わるほどの重要なポジションを占めるスタジオと言える。

 Activisionが考えつくベストなパートナー同士が集まって作られた本作は、発売前から高い注目を浴びていたが、今回日本版発売に先駆けて海外版を入手したので、早速、できばえの程を見てみよう。



■ 専用グリップとピックでDSがギターに変身!

パッケージは専用機器入りなので特別仕立てだ
 ゲームを遊ぶためにはパッケージに同梱されている専用グリップをDS本体のGBA用スロットに装着することが必須になっている。これが装着されていない状態だと、ゲームは起動するが、タイトル前に警告メッセージが表示されて先に進めないようになっている。

 専用グリップはデフォルトの状態ではDS Lite用に設定されている。通常(初代)のDSでゲームをする場合は、グリップとDSをつなぐコネクタ部分を取り替える必要がある。交換用のコネクタはちゃんとパッケージ内に入っているので通常版のDSを持っている人も一安心だ。作業は簡単で、マイナスドライバかコインでネジをゆるめてコネクタを差し替えるだけなので、誰でもすぐに済ませることができるだろう。

 プレイ中にギターの絃を弾くのに相当する部分は、タッチパネルで実際に弾くような動作をするが、付属のピックを使うと雰囲気が出て良い感じだ。ピックは専用グリップの後ろにあるスロットに入れられているので、パッケージに同梱されていない!と慌てないこと。無論、ピックが合わなければ爪でもDS付属のスタイラスペンでも構わない。

 基本的なプレイスタイルはDSを縦にしてプレイする、いわゆる「脳トレ」タイプ。なので利き腕によって反転させることができるため、左利きの人でも左腕でボタンを押すことができるのは幸いだ。専用グリップには「Guitar Hero」シリーズではおなじみのボタンが4つ付いている。押し心地は他機種のギターコントローラについているボタンとそんなに変わらない。この辺はハードの開発を担当し、歴代シリーズを育ててきたRed Octaneの面目躍如といったところだ。

同梱品一覧。これ以外にステッカーなどもついてくる ボタンを押すときの握り方はこんな感じ。慣れるまではやや大変
グリップをしっかりと掴むためにはバンド部分をやや緩めた方が良い ピック型スタイラスとDS本体との対比。操作性は良好だ
画面の反転で左右の両利き腕に対応 ゲーム内容はまさにGuitar Heroそのもの




■ DSと言っても侮れない、Maroon 5など全30曲以上を収録

 DS版の場合、PS3やXbox 360など据え置き型のゲーム機に比べると不安なのが、ゲームカートリッジという小さい容量にどれほどの曲が収録されているか? という点だ。これに関する心配は杞憂で、シークレットを含めると31曲も入っている。全ての曲がまるごとフルで収まっているのは、Vicarious Visionsが持っている高度な圧縮技術のおかげかもしれない。PSPならばもっと上を求めてしまいたくなるが、DSでここまで実現できれば大満足だ。

 もちろん、曲の追加はハードウェアの仕様上難しい。本作がうまくヒットすれば専用周辺機器を除いた「アペンドカートリッジ」という形で展開される可能性はあるだろう。この形はPS2やWiiなどでは既にいくつかのタイトルで行なわれた実績もある。

収録されている曲は以下の通り。

"All Star" Smash Mouth
"All the Small Things" Blink-182
"Anna Molly" Incubus
"Are You Gonna Be My Girl" Jet
"Avalancha" Heroes del Silencio
"Black Magic Woman" Santana
"Breed" Nirvana
"Ca Me Vexe" Mademoiselle K
"China Grove" Doobie Brothers
"Do What You Want" OK Go
"Heaven" Los Lonely Boys
"Helicopter" Bloc Party
"Hit Me with Your Best Shot" Pat Benatar
"I Don't Wanna Stop" Ozzy Osbourne
"I Am Not Your Gameboy" Freezepop
"I Know a Little" Lynyrd Skynyrd
"Jessie's Girl" Rick Springfield
"Jet Airliner" Steve Miller Band
"Knock Me Down" Red Hot Chili Peppers
"La Grange" ZZ Top
"Monster" Beatsteaks
"Monsoon" Tokio Hotel
"Pride and Joy" Stevie Ray Vaughan
"Rock and Roll All Nite" Kiss
"Rock the Night" Europe
"Spiderwebs" No Doubt
"Stray Cat Strut" Stray Cats
"This Love" Maroon 5
"We're Not Gonna Take ItTwisted Sister
"What I Want" Daughtry featuring Slash
"Youth Gone Wild" Skid Row

 最近の人気どころではMaroon 5がシリーズ初めてラインナップに加わっている。収録曲の「This Love」は比較的演奏しやすく、初心者向けの曲と言えるだろう。その他ZZ TopやKissなど音楽ゲームの定番になってしまったアーティストや曲も収録されているため、「これは俺の十八番!」になっている曲も比較的多く含まれているのではないだろうか。

 DS本体から再生される曲はそれほど際立ってノイジーな感じがする訳でもなく、十分聴くに値するクォリティに仕上がっているが、やはりDS本体のスピーカーから鳴る音では貧弱さを感じる。プレイ環境の向上と周囲の人に与える影響も考えて、イヤフォン、ヘッドフォンは必須装備と言っても差しつかえなさそうだ。

演奏前にキャラクタをエディットする必要がある ギターは実際にあるモデル各種が登場
各ステージ5曲づつ用意されているが、うち1曲はシークレット ゲームプレイ中はヘッドフォンの使用をオススメしたい




■ キャリアーとギターデュエル、1つで2度おいしいゲームモードを搭載

ゲーム内容は他機種版Guitar Heroとほとんど変わらない
 「Guitar Hero On Tour」の凄いところは、見た目・内容共に他機種版とあまり内容に差異がないところだ。カスタマイズやビジュアル面での見劣りは仕方ないにしても、ゲームの土台はしっかり「Guitar Hero」であり、ゲームモードもキャリアーモード、無線を使って2人でギターバトルを楽しめるのも面白い。Wi-Fiネットワークでネットを介した通信対戦ができないのは、やや残念なところ。

 ゲームモードはキャリアーモードとギターデュエルの2モードに大きく分かれる。キャリアーモードは、このレポートでも以前紹介した「Guitar Hero III Legends of Rock」の同機能を簡略化したような感じになっていて、全部で5つのステージ・5曲を演奏で構成されている。ステージは本作のオリジナルになっていて、ビジュアル面は「Guitar Hero III」の物に近い。ショップなども用意されており、演奏で稼いだ賞金を使って新しいギターや服装を購入できる。ギターはもちろん、ギブソンなどの実モデルが登場するのはシリーズ共通だ。

 ギターデュエルは1人でもCPUとプレイできるが、2人で対戦するとより楽しめるモードだ。名前の通り演奏で競うが、相手がミスをするようにギターの絃を切ったり、難易度を上げたりと様々な邪魔を仕掛けて対戦相手にミスを誘導することができるようになっている。この仕掛けは例えば絃が切れたらタッチパネルで張りなおすとか、ギターが燃えてしまったらマイクに息を吹きかけて消すなど、DS特有の機能をうまく活用しており、実はキャリアーモードよりもDS版の場合、こちらの方がプレイしていて白熱する。

 2つのモードは機能的には分かれているので、例えばキャリアーモードでアンロックしたステージがギターデュエルでもそのまま使える訳ではない。ゲーム内容的には1つで2度おいしい仕様になっている。両モードはゲーム性が全く異なるため、プレーヤーは2度手間感はさして感じずにゲームを遊び続けることが可能なのは嬉しい仕様。

スターパワーが発動すれば更なるボーナススコアを叩き出すチャンスだ
 ゲームのプレイ方法について解説するのも今更という感じだが、簡単に述べると上から降ってくる「ノート」と呼ばれる4色の玉のようなものを下のスロットのような部分に合わさった時にタイミングよく対応する色のボタンを押して、同時にピックでギターを弾く動作をすることで、1アクションとなる。

 曲の演奏中は、調子に合わせて様々なタイミングでノートが振ってくるので頑張って失敗せずに引き続ければ、ボーナスが入ってスコアもどんどん上がっていくという仕組み。音を伸ばすWhammy Barの代わりは、ピックをこすることで代用するようになっている。うまく演奏すればそれだけハイスコアが叩きだせる、至極シンプルなルールだ。

 他機種版にある「スターパワー」と呼ばれる発動要素もそのまま用意されている。これはノートが☆の形をしたものが連続で降ってくるので、これを全てタイミングよくやっつけることができれば、ゲージが溜まり、ここぞというときにSTARTボタンを押すとパワーが発動され、更なるハイスコア獲得のチャンスになるというもの。ギターソロが入る部分などで発動させると効果的。自分なりのタイミングを各曲で見つけてみるのも楽しい。

Whammy Barを動かして音をゆらすとカッコ良さ(とスコアも)アップ! キャリアーモードのステージは全部で5つ用意されている
2人までの対戦に対応している。これぞGuitar Heroの醍醐味 ギターがいきなり燃え出した! マイクに息を吹きつけ消し止めよう
絃が切られて音が出せない! タッチスクリーンを使って張りなおせ 演奏後は自分のプレイ内容をチェックできる。めざせ高評価




■ プレイしているとムクムクと湧き出る矛盾感、壮大な実験作の予感が!?

 実際に「Guitar Hero On Tour」をプレイしてみた感想を述べてみると、ゲーム的にはおおいに評価できる内容だが携帯機としての限界も感じさせる、というもの。

 内容については何度も書いているように据え置き機の他機種版に劣らぬ内容であり、開発側の技術力の高さと自信をヒシヒシと感じさせる。PS3やXbox 360とそう変わらないプレイ感覚をDSでも体験させてくれるゲームは、なかなかお目にかかれない。ジャンルによっては、ハードのスペック差など関係ないという事を本作は示してくれている。

 キャリアーモードを1周25曲、サクッとプレイしてみたインプレッションとしては、まず目が痛くなる。これはプレイ環境の問題だが、グリップで縦にDSを持ってプレイするスタイルに加えてピックでタッチスクリーンをこする際に、どうしてもDS本体が揺れるため、長時間プレイしていると物理的な「揺れ」で目が疲れてくる。これは個人差があるのでゲームとは直接関係ないにしても長時間プレイはちょっと堪えた。

 ゲーム本編は4つの難易度が用意されており、一番やさしいEASYレベルであればボタンは3つしか使わないため、まずはこれで攻略を進めると良いのだが、すぐに物足りなくなるため、ある程度操作に慣れた時点でノーマル位の難易度に切り替えた方がチャレンジのしがいがある。キャリアーモードをクリアしてもエンディングがある訳ではないので、達成感には乏しいが、もともとそういう志向のゲームではないとプレーヤー自身が割り切って考えれば特に問題はない。

 本作が抱える真の問題は、本当にDSでやる必要があるのか? ということ。ぶっちゃけるとこのゲームは対戦こそが楽しさの真骨頂だが、自分の周囲に最低1人はゲームの保有者がいないと、本作の醍醐味を味わえないまま、寂しくゲームモードを一通りなめるだけで終わる。専用グリップ着脱の煩わしさがあるために、一度放置したら二度とプレイしなくなるかもしれない。PS3やXbox 360版を買えばオンライン対戦という手もあるが、DS版で対戦するにはDS本体とソフトが2セット必須になる。

 「Guitar Hero」がパーティーゲームとして優秀なのは、対戦している2人がゲームに熱中している様子を周囲が見るのも楽しいという点にある。米国のアニメ「South Park」に「Guitar Queer-O」という「Guitar Hero」を茶化したエピソードがあるが、そこで描写されているゲームのプレイ風景はまさしく米国のお茶の間を抜き出したものだろう。

 ゲームを熱心にプレイしている、プレーヤーの技量に声援を送ったり、野次を飛ばしたり、みんなとその場で共有できる楽しさ・ライブ感が米国で音楽ゲームをここまでの大きな市場規模に育てた原動力になっているのは疑いない事実。欧米人はスポーツゲームを筆頭にみんなが楽しめるゲームが大好きなのだ。

 しかし、DS版「Guitar Hero On Tour」は、ゲームの様子はプレーヤー以外から見ることはできない上に、ヘッドフォンを装着していれば、外野には音すら漏れてこない、完全にプレーヤーだけの世界になってしまい「Guitar Hero」が持つ美点を完全に殺してしまう矛盾をはらんだ内容になっている。

 プレイスタイルについては、公式サイトで公開されているトレイラーを観ればわかると思うがプレイしている様子は周囲から見れば結構マヌケだ。あくまでトレイラーは参考例ではあるが、専用グリップ付のDSは電車などの交通機関などでちょっと息抜き、とプレイするにはちょっと厳しい存在感を放っている。結局屋内でプレイするしかなく、本作の需要がどこにあるのか、位置づけが難しい。

 結論としては、内容面では気合の入った本作ではあるが、どうせ家の中でやるなら据え置き機版をやれば良い訳で、「Guitar Hero」のような音楽ゲームは携帯機で遊ぶのに適したジャンルではないと、プレイしていて確信するに至った。製品化まで漕ぎ着けたパワーと、しっかり遊べるゲーム内容を伴った開発力はお見事の一言に尽きるが、実験作品に近い本作が、世界で1,000万以上いると言われる「Guitar Hero」ファンにとって果たして本当に歓迎されるパッケージにまとまっているかどうかは大いに疑問だ。

稼いだ賞金を使ってコスチュームの変更もできる ギターなどの楽器の買い増しもできるが高価だ
ミスをせずに演奏し続けることがハイスコアの必須条件 他機種とほぼ同じプレイ感を再現した技術力には脱帽
ギターを変えれば当然スクリーン上のビジュアルにも反映される プレイ中見逃しがちなビジュアルもDSにしては頑張っている


(C)2008 Activision Publishing, Inc. Guitar Hero, Activision and RedOctane are registered trademarks of Activision Publishing, Inc. Covered by one or more of the following patents: U.S. Patent Nos. 5,739,457, 6,018,121,6,369,313 and 6,835,887; patents pending. All Gibson marks, logos, trade dress, guitar models and related rights provided pursuant to exclusive license from Gibson Guitar Corp. Nintendo and DS are trademarks of Nintendo. All other trademarks and trade names are the properties of their respective owners. All rights reserved.

□「Guitar Hero On Tour」公式ホームページ(英語)
http://www.guitarhero.com/ghot/us/

(2008年7月14日)

[Reported by Game Dude]



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