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「信長の野望 Online ~争覇の章~」運営5周年記念インタビュー
「信On」の“これまで”と“これから”を聞く。実はオフラインRPGだった!?

6月4日 収録

会場:コーエー本社

 株式会社コーエーのプレイステーション 2/Windows用MMORPG「信長の野望 Online」は、2008年6月12日でサービス開始から5周年を迎える。外国を舞台としたオンラインゲームが多勢を占める中で、日本の戦国時代を舞台とした和風MMORPGである本作は異彩を放っている。ただ、「和風だから」という理由のみでは、これだけの長期間ユーザーの支持を得ることはできなかっただろう。

 定期イベント、適切なタイミングで供給される拡張キット、実装コンテンツのケアといった丁寧な作り込みがユーザーの信頼を築き、「信長の野望 Online」の長期運営に繋がったといえる。今回はこの5年という節目を記念し、開発・運営スタッフにインタビューを敢行した。「信長の野望 Online」の長い歴史を振り返りながら、今後のアップデートや記念イベントの「東西大合戦」についての貴重なお話を伺うことができた。



■ 「超・信長の野望」からスタートした「信長の野望 Online」。その誕生秘話とは?

「信長の野望 Online」運営プロデューサーの山中肇氏
「信長の野望 Online」開発ディレクターの渡辺知宏氏
5年間でこれだけの数のPS2版とWindows版のパッケージがリリースされている
関連書籍も多数出版されている。出版元はすべてコーエー。コミックアンソロジーまであったとは……
渡辺氏が最もシステムの安定に苦心したという拡張キット「飛龍の章」のマグカップが取材時に登場した
GAME Watch編集部: 少し早いですが、「信長の野望 Online」5周年おめでとうございます。5周年を迎え、どのような感想をお持ちですか?

渡辺氏: あっという間で、「本当に5年もやっていたの?」という空気が開発の中にはあります。スタート当時、開発側はユーザーの皆さんとのコミュニケーションのりかたが分からないと思っていた時期がありました。しかし、ユーザーの皆さんからの声に耳を傾け続けてきた結果が現在の運営につながったと思います。まさにユーザーの皆さんと一緒に作ってきた5年間だった、と感慨深いものがあります。

山中氏: 私は「信長の野望 Online」のプロジェクトにテクニカルディレクターとして、サーバー周りのシステム開発のために入ってきました。その後、ディレクターを経て現在は運営プロデューサーをしています。運営プロデューサーとしてユーザーの皆さんに近い位置にいることで、開発の場にいたときよりもMMORPGの持つ幅の広さを実感しています。「信長の野望 Online」はコーエー初のMMORPGということでβテストから見ていますがユーザーの皆さんの反応が目の当たりにできる面白い仕事です。ここまで運営を続けて来られたのも、ユーザーの皆様のおかげだと感謝しています。

編: 対外的な最初の動きは、2002年4月のネットワークゲーム発表会になるかと思いますが、発表当時の開発チームはどのような状態だったのでしょうか?

山中氏: あの時は私がテクニカルディレクター、渡辺はクライアントのメインプログラマーということで、我々は完全に技術系の担当でした。当時のディレクターは現在、別のプロジェクトをしていますし、プロデューサーの松原(松原健二氏、現コーエー代表取締役社長)は12月に入社して、すぐに「信長の野望 Online」のプロデューサーに就任しました。

編: 当時の松原さんはどういう方でしたか?

山中氏: ゲーム業界は初めてと聞いていましたが、とにかくパワーを感じさせる人柄だったので、社内に自然に溶け込んでいました。今までのコーエーにはいないタイプの人だな、と思いましたね。最初の発表会で、海外の方からの質問に、英語でお答えしていたのも印象的です。

編: そうそう。あれは驚いた。5年以上コーエー番を務めていたのに未知の人物が一番目立ってる。「誰だこの人、こんな人がコーエーにいたのか」って驚いたことを昨日のように思い出します(笑)。

渡辺氏: 松原にはプランを練るときの考え方や実践方法など、色々と勉強させてもらいました。ビジネスに対する新たな考え方をコーエーの開発スタッフにに持ち込んでいただけたのかな、と思います。

編: 2006年に松原さんにインタビューさせていただいた際に、「信長の野望 Online」発表から4年ということで感想を伺ったのですが、「山あり谷あり谷あり谷ありですね」という回答だったんです(笑)。実際、現場として辛かったことを教えていただけますか?

渡辺氏: やはり当時は、現場がPS2でMMORPGを作るノウハウが全くわかっていなかったことが厳しかったですね。今考えれば無謀なのですが、発売後のアップデート無しのDVDで作ろうとしていたこともありました。それが実現できればPS2のBBユニットを持っていない方でも、みんな遊べるはずだと考えていましたね。

編: 2001年前後、当時のゲームメーカーさんは、自社の有力IPをオンライン化したものを発表するのが当然、みたいな風潮がありました。そして2008年、残っているのはコーエーさんを含めわずか数社だけ。しかも、本格的なRPGを作ったのは初めてだったコーエーさんが残っている。これはスゴイことだと思います。

山中氏: 実は「信長の野望 Online」の初動プランはMMORPGではなく、「信長の野望」の世界観を題材にしたスタンドアロン型のRPGでした。企画が立ち上がったのは私がプロジェクトに入る前の2001年です。

編: それはシミュレーションゲームの「信長の野望」シリーズのナンバリングタイトルではなく、あくまで新シリーズとして?

山中氏: ナンバリングタイトルではなく、あくまで戦国を舞台にした新RPGとして企画していました。社内での仮タイトルも「超・信長の野望」(一同笑)。

渡辺氏: 「信長の野望」を超えた! という意味合いですね(笑)。1人のプレーヤーが世界を作っていき、それがストラテジックに動いていくという感じでしたね。

山中氏: RPGらしく日本の民間伝承ですとか神話とかも入れ込んでということでストーリーはがっちり作ってありました。

編: 「超・信長の野望」はあくまでオンラインには繋がらない仕様で進めていたのですか?

山中氏: 開発初期には「MMOパート」と「スタンドアロンパート」の2部構成でスタートしていました。

編: それはセガさんのネットワークRPG「ファンタシースターオンライン」のようにロビーに接続してマッチングして遊ぶシステムだったのでしょうか?

山中氏: いえ、MMORPGでありながらオフラインでは1人で遊んでも大丈夫という仕様でした。構想的にはおもしろく、両立させるためにがんばっていたのですが、途中でどりあかに絞らないとよりおもしろいものにはならないだろうという話になりまして、MMORPGの道を取ったわけです。

編: 最終的にMMORPGに決めたのはどなたですか?

山中氏: ゼネラルプロデューサーのシブサワコウですね。

編: MMORPGに決定してからの紆余曲折を教えてください。

山中氏: まず、βテストを2回やることになりましたね。1度目のβテストでは7職業間のバランスが取れていませんでしたが、計画としては年内に出そうという意向があったわけです。そこで「このままでは無理です。もう一度βテストやらせてください」とねじこみまして(苦笑)。ユーザーの皆さんにはお待たせすることになりましたが、2回目のβテストで「信長の野望 Online」の原型がようやく出来たかな、という感じですね。

編: これは私の個人的な印象で、「信長の野望 Online」に限定したことではないのですけど、コーエーさんのオンラインゲームはローンチに弱いですよね。ローンチしてからコンテンツが完全に整備されるまでやたらに時間がかかる。これはコーエーさんの社風が影響している部分もあるのですか?

渡辺氏: 我々に関していえば、やはり初の試みということであまりにもMMORPGを知らなさすぎたというところが大きかったと思います(苦笑)。ですから、「信長の野望 Online」の場合は開発予定が1年だったところが丸2年かかってしまいました。

編: サービスインするまでの一番の苦労は何でしたか?

山中氏: やはり多人数を公正に満足させる、というゲームバランスの部分ですよね。βテスト1ではうまくいかず、βテスト2でブラッシュアップして製品版として送り出した「侍・忍者・陰陽師・神職・鍛冶屋・僧・薬師」の7職業。それらの技能と生産のバランスが立ち上げ当初には遊べるレベルに到達しました。でも、その適性バランスを見つけるまでは「これ本当にゲームになるのか?」と思ったことはありましたね。

渡辺氏: 2001年に出来た社内評価バージョンはMAPも尾張一国だけで、キャラクタも水の中を泳いでいるようなカクカクの動きでまともに走ってくれないんです(笑)。他のタイトルの社内評価バージョンは総じて完成度が高いものが多いので、胃が痛くなったのを覚えています。



■ 正式サービス後の紆余曲折について。 ユーザーの声がゲームを作っていった

「信長の野望 Online」は侍や忍者などの7職業でスタート。2007年の拡張パック「破天の章」で新職業「傾奇者」が実装され、現在は8職業からひとつを選択し、キャラクタをクリエイトできる
2002年当時の「信長の野望 Online」の初代プロデューサー松原健二氏。「信長の野望 Online」に深く携わった松原氏がコーエー社長となるとは、運命めいたものが感じられる
5年前は「日本全土の実装」が公言されていたが、現在は21国の実装に留まる。山中氏は「(ワールドのユーザー数に対して)このサイズがちょうどいいと思う」と判断している
編: かつて松原さんとのインタビューで何度かネタにさせていただきましたが、松原さんは発表会で「最終的には日本全土を実装する」と公言されました。私は「それはムリだな」と思ったのですが(笑)、現場が「全国実装はやっぱり無理だ」と気づいたのはいつ頃ですか?

山中氏: いや、もう、そう思っていたのは松原だけです(一同笑)。スタッフは開発当初から現在の勢力の数が丁度いい、と考えて設計していました。ただ、全国にまで拡がった方がおもしろいのは確かですし、現状にとどまることを良しとせず、なんでも積極的に考える松原の人柄が現れた一面と思っています。

渡辺氏 「それは構想段階です」という話が外に出ちゃったことは多少ありましたね。ずいぶん前の話ですが、「髪型の変更も可能になる」という話を外でされたのですが、開発はまだ実装時期も決めておらず、焦った覚えがあります(笑)。

編: オンラインゲームビジネスは、ユーザーの声を拾い上げて、リアルタイムで実装していくという形が既存のゲームビジネスと根本的に異なると思います。その辺りのノウハウを習得されるのは苦労されましたか?

山中氏: 開発当初はユーザーの皆さんからの声をキャッチアップするのは公式ホームページの掲示板の書き込みくらいしか無いと思っていたのですが、ゲーム内から直接ゲームマスターにメッセージを発信できるGMコールから有効な要望が多数寄せられました。そのようなご意見は「飛龍の章」や「破天の章」、「争覇の章」といった拡張パックを企画する際に有効活用させていただいています。最近では、「争覇の章」の「大決戦」にユーザーの皆さんからの厳しい意見が多く、これはユーザーの皆さんが望まれるコンテンツになっていない、ということがすぐわかり、迅速に調整を入れました。

渡辺氏: ユーザーの皆さんの声がダイレクトに届く、というのは大変ありがたいのですが、精神的にはきついですね。相当胃が痛くなりました。多い時は分単位どころではなく秒刻みでGMコールが滝のように流れてくるわけです(笑)。

編: 過去にもっとも多くGMコールが発生したのは何の時ですか?

山中氏: 巻き戻し関係でした。最近は巻き戻しを行なうことはまず無いですけれど。

編: GMコールで記憶に残っているエピソードは?

渡辺氏: やはりβ1とβ2の間でユーザーの皆さんの声を反映できたことですね。β1の頃は我々が提供する「信長の野望 Online」と、ユーザーが求める「信長の野望 Online」の形がいかにズレていたかというのが、GMコールを通して瞬間的に理解できました。

山中氏: ある時、テストワールドで「付与石(装備品に取り付けることで恒久的なステータスアップを装備に付与するアイテム)の効果が時間で切れる」という仕様を発表したんですね。直後に「何でこんな酷い仕様を入れるの?」というお叱りのGMコールを大量に受けたことがあります。そこで開発一同再考しまして、「では時間で効果が切れるのではなくて別のシステムを考えよう」ということで「入魂(付与石とは別の装備品を強化するシステム)」システムが誕生した、というエピソードが印象深いですね。ユーザーの皆さんが起こす反応が、開発の再考を促すこともあるという象徴のような出来事でした。

編: 5年間の運営を通じて、ユーザーのトレンドや好みの変化は感じますか?

山中氏: 発売当時は別のMMORPGをやっていて「信長の野望 Online」をやってみようというユーザーの方が多かったのですが、最近は新規というかカジュアルなユーザーの方が参加してきてくれていると感じますね。実際、「信長の野望 Online」の年齢層は、少しづつ若くなってきています。

編: 私は昔から「信長の野望」シリーズのインタビューもさせていただいていますが、その中で「戦国武将の末裔の方に配慮して、パラメータ・グラフィックも失礼の無いように工夫している」という話が印象に残っています。その辺りは「信長の野望 Online」でも守られているのでしょうか?

山中氏: もちろん、基本には武将へのリスペクトというものがあります。「信長の野望 Online」に関しては、もちろん末裔の方に最大限配慮しながらも、ゲームバランスを優先してパラメータやグラフィックスを調整するようにしております。

編: ただ、彦根城の「ひこにゃん」をイベントに採用する辺り、コーエーさんの社風の変化を感じさせますよね。昔の漢字の「光栄」時代だったらあり得ないと思うんですよ(笑)。

渡辺氏: 時代と共にユーザーの皆さんのニーズも代わってきてますし、やはり作り手も若くなっていますからね。時代に受け入れられるように多方面に可能性を追求するようには意識しております。

編: これまでの大きな新要素の中で一番成功した、一番失敗したと感じているものは?

山中氏: 成功したものは「飛龍の章」で導入した「トライアルダンジョン」だと思います。今でもアクティブで技能の修得度がお手軽に稼げる、そしてどの城下町からも入口が近いということで重宝されていますから。失敗したというか結果的にユーザーの皆さんにあまり使われていないのは、「流派」や「アイテム改良」。あとは「交易商(各国の貿易品を他国に届けて利ザヤを稼ぐ)」ですね。

編: 交易商は何をどうやっても儲からなくなったというという話ですが(笑)。

山中氏: 交易商を儲かるコンテンツにしちゃうと、楽なのでそればっかりやればいいということになってしまうんですよね。それなのでやむを得ず交易商を儲からないようにしたら、当然どなたもやらなくなって「駄目だなこりゃっ」ということで手を加えなくなりました(笑)。

渡辺氏: 私は成功したと思うのは家や家具を設置できる「武家屋敷」ですね。プレーヤーが生活するという世界観も広がりましたし、「茶会」や、生産品を販売できる「楽市楽座」のNPCを「武家屋敷」に置けるようになるなど、「武家屋敷」から複数のコンテンツが派生していきました。

渡辺氏: 失敗したところは「飛龍の章」のシステムの安定性ですね。やはり良いコンテンツを用意しても、プレーヤーがスタックしてしまうなど不具合が多発するようでは高い満足度が得られません。逆にあの頃、システムの安定性に苦慮して仮眠室の枕を涙で濡らしたことが、後の拡張キットの品質管理の向上に繋がっているのかなとも思います(笑)。

【トライアルダンジョン】
開発陣が「信長の野望 Online」の5周年の集大成と太鼓判を押すビッグイベント。体験版のユーザーも参加可能なので、開催期間中に「信長の野望 Online」にアカウントを作って「東西対抗大合戦」に参加してみるのもいいだろう

【武家屋敷】
渡辺氏は武家屋敷を優良な要素として挙げた。ユーザーが城下町に領地を持ち、家屋敷や家具を置いて楽しむことができる箱庭コンテンツ。金策に有効な「楽市楽座」のシステムも「武家屋敷」があってこそ機能する


■ 2008年「東西対抗大合戦」は、「信on」5周年とコーエー30周年を祝うイベントに

東洋水産とタイアップイベントが実現した第五回「東西対抗大合戦」
戦国時代にお馴染みの商品が登場するというアバンギャルドなイベント。渡辺氏は「うどんのおつゆが地域によって違うんですよ」とディテールへのこだわりをPRしていた
編: ワールドのユーザーが東軍と西軍に分かれて合戦を行なうという定例イベント「東西対抗大合戦」。今年は例年の「東西対抗大合戦」とはテイストが少々異なる、特殊なイベントになるようですね。

渡辺氏: 今回は人間の合戦の延長ではなく、「狐と狸の変化合戦」をテーマにしております。ここではユーザーの皆さんにも人気の高いキャラクタのビジュアル変化を最大限に活かしたギミックを実装しました。キャラクタが人ではない何かに変化することで、視覚的にイベントを楽しんでいただけるよう工夫しました。大勢の方が同時に参加する1年に1度の大イベントですので、どなたでも楽しんでいただけるお祭り的な雰囲気を作り上げることが今回の「東西対抗大合戦」の基本コンセプトとなっております。

編: プレスリリースを拝見しましたが、今年の「東西対抗大合戦」は相当凝っていますよね。これはどのくらいのリソースを注いでいるのでしょうか?

渡辺氏: 相当頑張りましたね(笑)。「信長の野望 Online」の5周年記念ということもありますし、「コーエー30周年」を記念するイベントにもなっているのです。

編: なるほど、その両方の意味をかけているのですね。

渡辺氏: そうです。この2つを盛大に祝うために、ビジュアル的にも遊び方的にもユーザーの皆さんとの一体感を出したかったのです。そこで2004年のイベント「追儺式(複数のユーザーが協力して街から鬼を追い出すイベント)」のような、ユーザーの皆さんの協力が鍵となるギミックを導入しました。

編: そのギミックとは?

渡辺氏: 「誘導ギミック」といいまして、感覚的には「みんなで御神輿を担ぐ」ような協力型のギミックです。従来の「東西対抗大合戦」は「合戦」というコンテンツをある程度知っていないと楽しめないという側面はありましたが、今回の「誘導ギミック」などの小人数でも遊べるようなアクション要素の高いギミックを採用することで、対人戦のスキルや合戦のやり方をまだ知らない方でも「東西対抗大合戦」に気軽に参加していただけるようになったと思います。

編: 「東西対抗大合戦」もすっかり6月の定例イベントとなりましたね。

山中氏: 「東西対抗大合戦」は、「信長の野望 Online」の年間スケジュールにまず最初に組みこむほどのビッグイベントです。第5回目となる今回は、合戦に変化ギミックや誘導ギミックをミックスした5年間の集大成の合戦に仕上がっています。また、「狐と狸の変化合戦」がテーマですので、「赤いきつね」と「緑のたぬき」でおなじみの東洋水産様とタイアップイベントを行ないます。

編: そのまんまじゃないですか(笑)。インゲームアイテムで「赤いきつねうどん・緑のたぬき天そば」が登場するということでしょうか?

山中氏: インゲームアイテムでも登場します。「茶会」というコンテンツでキャラクタが湯のみを口に運ぶ仕草をするのですが、それが「赤いきつねうどん」をだしの一滴まで飲み干す動作になります。また、実際に「赤いきつねうどん・緑のたぬき天そば」をプレゼントするキャンペーンも行います。開発の企画から挙がってきた東西合戦の企画案を見て、広報を通じて東洋水産様に「いかがでしょうか?」と持ちかけてみました。

編: 「信長の野望 Online」のユーザーにとって大きな楽しみに育ちましたよね。ちなみに、毎年の「東西対抗大合戦」は全ワールドで何万人くらいの方が参加されているのでしょうか?

山中氏:  アクティブなアカウントの7割強ほどの数字で、参加率はかなり高いです。年間のイベントの中で一番参加率が高く、盛り上がるイベントですね。6月の「東西対抗大合戦」開催時期になると、「信長の野望 Online」から一時離れたユーザーの方々も戻ってきていただけるという傾向にあります。毎年この期間はアクセス数が伸びますね。

編: それだけ固定的な人気を獲得していると、毎年きちんと内容に変化をつけていかないと、「過去のイベントの使い回しかよ」と受け取られそうで怖いですね。

渡辺氏: 正直言いまして、年々、ネタ探しは大変です(笑)。しかも「争覇の章」の新コンテンツを出した後ですから、今回も構想段階から実行まで時間がかかってしまいました。

編: ちなみに過去もっとも評判のよかった「東西対抗大合戦」は何回目ですか?

山中氏:  第3回目だと思います。報酬品の評判もよかったですし、大砲などの新ギミックも登場して新鮮だったのが高い評価を受けた理由でしょうね。「東西対抗大合戦」は報酬に期待されるお客様が多く、その意味では第4回目は「こんな報酬が欲しいわけじゃない」とご指摘の声を多数いただいてしまいました(苦笑)。その反省も踏まえて、今回は、新規のアイテムはもちろん、過去の「東西対抗大合戦」の報酬で評判の良かったアイテムや、実用性の高いアイテムまでバリエーション豊かに報酬を用意しております。

【東西対抗大合戦】
開発陣が「信長の野望 Online」の5周年の集大成と太鼓判を押すビッグイベント。体験版のユーザーも参加可能なので、開催期間中に「信長の野望 Online」にアカウントを作って「東西対抗大合戦」に参加してみるのもいいだろう


■ 「争覇の章」の自己評価は75点。合戦の仕様は修正を検討中

勝敗結果が勢力の最大国力に影響を及ぼす「大決戦」。勢力に所属するユーザーは「大決戦」に馳せ参じるのだが、「最大100人」という壁のせいで参加できない可能性もある
山中氏、渡辺氏ともに「合戦の仕様につきましては、改善の必要があると思います」と修正に前向き。残念ながら、この時点では修正の具体案や時期については伺うことができなかった
編: 拡張キット「争覇の章」の発売から3カ月が経過しましたが、ユーザーさんの反応はいかがでしょう?

山中氏:  概ね好評ですが、我々の意図しているところとは違うように受け取られた部分もあります。たとえば「大決戦」は両勢力が100人ずつ戦場に入れるという新仕様で、我々は勢力の人数差の均衡を取るために導入しました。ですが、一部のユーザーの方には「その100人に入れなくて遊べないんじゃ仕方がないよな」と不満に受け取られてしまいました。

渡辺氏: また、既存の合戦である「陣取戦」での勝敗が、勢力の興亡にあまり影響が無いものになったことがユーザーの皆様から厳しいご指摘を受けています。「陣取戦」は5年間磨き続けてきたコンテンツですので、そこは何らかの調整を入れて、大決戦も陣取戦も楽しめるように努力したいと思います。

編: ということは、陣取戦がまた最大国力に影響を及ぼすように戻るのでしょうか?

山中氏:  運営側としては、ユーザーの皆さんの声を反映させた方向にしたいと思っています。

編: 「九州三国志」クエストはいかがですか?

山中氏:  「九州三国志」に関しても多くのユーザーの皆さんに遊んでいただいているのですが、ノック(九州三国志の友好度ポイントを効率良く貯めるために簡単に倒せる武将を何度も倒すこと)が流行していますよね。開発サイドとしてはクエストを先に進めてボスのギミックを楽しんでいただきたいのですが、効率を考えるとノックも理解できるのです。そこは開発意図と実際の遊ばれ方のズレがあったと認めるべきでしょうね。

編: それと「九州三国志」は「島津」勢力のクエストの人気が異常に高くて、「大友」や「龍造寺」のクエストを進めている人が少なくて寂しいですね……。

渡辺氏: それはダイレクトに人気と難易度の問題で、龍造寺は島津に比べると人気が低く、なおかつクエストの難易度も高い。開発としては、勢力や登場武将ごとにお楽しみいただけるギミックを作り込んでいますので、任期勢力の攻略後は別の勢力へ移っていただけるといいなと考えております。

編: ワールド間のユーザーが集まるPvPコンテンツ「上覧武術大会」は想定通りでしたか?

山中氏:  参加者の数は想定通りでした。ただ、テストワールドで出なかった問題がいくつか出てきてしまいました。例えば、新技能が対人戦で想定外の使われ方をされたケースなどですね。その点はアップデートでケアしたつもりですが、まだ修正をすべき技能は残っているとは思います。ただ、ユーザーの皆さんが見つけた戦術でもありますので、修正は極力避けたいのですが、公平を期すためにやむを得ない場合は実行する可能性もあると思います。

編: 「上覧武術大会」は観戦もできるので対人戦が様々な角度から楽しめる良いコンテンツだと思います。ただ、隔月開催というスケジュールはなぜなのでしょう。発表会の時は常時開催というニュアンスだったと思ったのですが。

渡辺氏: いくつか理由があるのですが、まず「上覧武術大会」のインターバルの間に報酬の天下一品を楽しんでほしいというのが一点。そして、通常合戦や「東西対抗大合戦」などの大きなイベントの週と重なってしまうと参加ユーザーが分散してしまうという点。最後に、上覧武術大会の4週間というインターバルに運営側で「夏休み大会」ですとか「~を記念しての臨時大会」などの突発大会を盛り込むためのスケジューリングとなっています。

編: 「上覧武術大会」についてユーザーからどのような意見が寄せられていますか?

山中氏:  開催の時間帯についてのご意見が多いです。遅すぎる、早すぎる、開催時間が短すぎるなどですね。

渡辺氏: その辺りはゲーム内アンケートを取っていますので、どの辺りの時間帯を適正とする声が大きいのかを見極めていきたいと思います。

編: 素朴な疑問ですが、「上覧武術大会」は誰が“上覧”しているのでしょうか?

山中氏:  もともと「上覧武術大会」は「天下一武道大会」という仮称だったのですが、それじゃありきたりだよねということで現在の名称に変更されたのですね。特定のゾーンでは軍師が見に来ていますよ。

編: コーエー社長の松原さんのアバターを作成して、試合会場に配置するというのはどうですか(一同笑)。以前インタビューしたときに、「格好は忍者で、顔は松原」もありということでしたが。

渡辺氏: ユーザーの皆さんからリクエストがありましたら、やってみたいですね(笑)。

編: それと優秀な試合のリプレイ機能とかはできないのでしょうか? 上覧武術大会は時間が固定ですので、その時間に参加できずに試合が見られなかった、という人もいますし、ニーズはあると思いますが。

渡辺氏: リプレイについては検証中でして、実装は未定ですが、前向きに検討してはおります。ただ、ユーザーの皆さんが試合を動画としてダウンロードして共有するシステムは難しいと思います。というのも、試合中のチャットで個人名や個人情報がゲーム外に出てしまう可能性もあるからです。その情報の問題をクリアできれば、リプレイ画像を「こんな面白い試合あったよ」のようにユーザー間で共有して交流に発展できるようになると思います。

編: 別に外部でなくても良いと思うんです。レースゲームのリプレイのように、ゲーム内で完結するようなリプレイ機能なら、個人情報問題もクリアできますし、コミュニティ内で楽しめますから。

渡辺氏: 確かにリプレイを見ながらそこでチャットできるようになれば、さらに楽しいはずですよね。リプレイ機能という形になるかは未定ですが、ユーザーとユーザーが作ってくれた「試合」というコンテンツを有効活用できるような機能を実装していきたいと考えております。上覧武術大会のように、ワールドを超えたコンテンツというのは今後伸ばしていきたいですね。

山中氏:  あとはワールド間を超えてトライアルダンジョンとかやりたいよね?

渡辺氏: 技術的には可能だと思いますけど、ざっと考えても問題が多そうですね。ここでそういう事を言っちゃうとやらざるを得なくなっちゃいますよ(笑)。

編: 話は変わりますが、「争覇の章」と同じタイミングで実装された新規サーバーの「嵐世紀」の状態はいかがですか?

山中氏:  当初心配されていた「ワールドとして成立するか?」ということですが、移籍組と新規組のユーザーの方が我々の想定以上に入ってきてくださいまして、アクティブなユーザー数的には中堅クラスに匹敵するワールドになっています。

編: 懸念されていた経済の行方はいかがですか?

山中氏:  古くからあるワールドほどのユーザーの資産格差はないですけど、「信長の野望 Online」のお金の稼ぎ方をわかっている移籍ユーザーと、そうではない新規ユーザーの資産格差はほんの少し出てきたかな、と思います。これが許容範囲に収まらないとなると経済システムに問題があるなということになると考えていますが、現状ではうまく回っています。

編: まったり遊びたい方や新規ユーザーさんばかりが「嵐世紀」ワールドに集まっているわけではないのですね。

山中氏:  そうでもないですね。「嵐世紀」であっという間にレベルを上げていった人も多いです。当初は人がほとんど集まらなかったとしたら、最後の手段でサーバー統合も有りうるかと思いましたが、その心配もなさそうです。

編: 「争覇の章」の自己評価は何点だと思いますか?

渡辺氏: 難しい質問ですね。調整不足が目立ちますので、100点とは言い切れません。各コンテンツに調整をかけて最大のパフォーマンスを発揮できると思いますので、その点を解消できれば100点…近くなると思います。現状は75点くらいだと思います(笑)。

編: これまでの拡張キットの中では一番満足度は高いですか?

渡辺氏: 満足度といいますか、実装したコンテンツの量が既存の拡張パックと段違いに多いです。頑張り抜いたところ、調整不足だった、というところはあるのですが、今までの拡張パックの中でもっとも頑張りました、ということだけは胸を張っていえます。


■ 拡張キット第4弾の内容はどうなる? そして5年後・10年後の世界は?

近い将来「信長の野望 Online」と「真・三國無双 Online」のユーザーがゲーム間を超えて戦う日が来るかもしれない!?
編: 「争覇の章」の次は、拡張キット第4弾ということになりますが、これからの「信on」というくくりの中で、どのような位置づけのコンテンツになるのか教えてください。

渡辺氏: そうですね。ユーザーの皆さんからかねてからご要望の多い、短時間で遊べるカジュアルなコンテンツを追加する予定です。拡張パックはユーザーの皆さんからのご要望をリサーチするところから入っていくのが方針として決まっていますので、現在は要望の集計と開発サイドのアイディアを煮詰めているところです。

編: 拡張パックは毎回、大規模かつ新しい遊びが実装されますよね。例えば、「争覇の章」だと「九州三国志」のような。この大きな柱となるような新コンテンツは定まっていないのでしょうか?

渡辺氏: まだ決まっていないことをポロっと言っちゃうわけにはいきませんので(笑)、申し訳ありません。ただ、大規模な攻略コンテンツは新しい形で入れていきたいと考えています。

山中氏:  正直言いまして、ブレイクスルーできるアイディアがまだ無いんですよね。やっぱり拡張キットの要は「おや?」と思わせる強い核が必須ですから、それがまだ決定していないという状態です。

編:では質問を変えまして、例えば「九州勢力」のような形で、新勢力の勢力実装はあるのでしょうか?

山中氏:  そちらもまだ検討中です。

編: オンラインゲームの大規模アップデートの定番といえば新ジョブの追加だと思います。例えば、他社さんだと、「ユーザーニーズ的にもビジネス的にも拡張キットに新ジョブの追加は欠かせない」とコメントされています。その点、「信長の野望 Online」は5年間で新ジョブが傾奇者のみ。これは凄くレアケースだと思うのですが。

山中氏:  「信長の野望 Online」は、職業間、特化間のバランスについて特に注意して設計されています。新ジョブを入れる場合には、現状の8職業24特化について、生産品、先頭技能などの相関関係をすべてバランスを取り直す必要がありまして、なかなか簡単にはいかない事情があります。

編: たとえば、相撲取りとか商人とか戦国時代にもいろんな職業がありますよね。そういったものを入れていくという構想はないのですか?

山中氏:  新職業を考案する場合、「戦闘での居場所」というところから入るんですよね。では、「商人って戦闘で何するの?」となると、システムとしてイメージがわかないのですね。

編: それでは、将来の展望についてお伺いします。5年先、10年先の「信長の野望 Online」はどのような形になると思いますか?

山中氏: うーん、進化のスピードが速いオンラインゲームについて、将来のことを考えると空想でしか無くなるのですが、10年も経つと、現在のようにサーバーごとにそれぞれのMMOが閉じているクローズドな世界ではなくて、次第に繋がっていくと想像しています。たとえば弊社のゲームで言いますと、「大航海時代 Online」や「真・三國無双Online」のユーザーが、中継サーバーを介して交流できるような仕組みがゲームの中から可能になっていく世界になっているんじゃないかなと思いますね。

編: そこまで可能になる時には、「信長の野望 Online」では、天翔記と風雲録のユーザーがワールド対抗合戦を行なってそうですよね。

山中氏:  すでにワールド間合戦が可能になるような目は出てきていますね。ワールド間合戦と同じようなことが、他のMMORPGとコミュニティが共有できるような世界になっていると面白そうですね。

編: つまり、5年後には「信長の野望 Online」のユーザーと「真・三國無双 Online」のユーザーが上覧武術大会をやっているかもしれないわけですね。

山中氏:  まったくの空想でしかないので、どうやるのかわからないですけど、できたらスゴイですよね(笑)。そういえば、台湾で「信長の野望 Online」のサービスをしているのですけど、台湾のユーザーの皆さんから「日本のプレーヤーと対戦をやらせてくれ」という要望は何度もいただいていますね。

編: 台湾は独自サーバーなんですね。現在、上覧武術大会では海外ユーザーの引き込みってできないんですか?

渡辺氏: サーバーのバージョンもクライアントのバージョンも違うので技術的には現状では難しいですね。将来的には可能性はあると思いますけど。

編: オンラインゲームビジネスでは、続編を出すという形もありますよね。「信長の野望 Online 2」というケースはあり得るのでしょうか?

山中氏:  まったくの未定ですが、そうなった場合、今遊んでいただいているユーザーの皆さんをどうするのか、乗り換えさせるのか、新規ユーザーを集めるのかという狙いで全然違ってくると思いますね。乗り換えさせただけなら、ちっとも「2」じゃないじゃないか、という不満が出ると思いますし。

編: それではどちらかというと、「信長の野望 Online」の新世代機対応のほうが興味があると?

渡辺氏: そちらに関しては、前回のインタビュー時と変わらず、現在、実現可能かどうかを検証中です。

山中氏:  PS2から入ってきているユーザーの皆さんはずっとPS2で遊んでくれている方が多いんです。その方たちの多くが「信on」の熱心なユーザーの皆さんなので、何とか新世代機対応をしてあげたいと思っております。また、ハードが壊れちゃったという方もいらっしゃるかと思いますので、その辺りの対応をきちんとしたいですね。

編: 最後にユーザーの方へメッセージをお願いします。

渡辺氏: 「争覇の章」をリリースして数カ月経ちますが、そのコンテンツを今後もしっかりとケアしていきたいと思います。また、新しい「東西対抗大合戦」も意欲的に取り組んでおります。「東西対抗大合戦」は他のイベントと比べるとイベント期間としては短いのですが、ユーザーの皆さんに訴求力のある密度の濃いイベントに仕上がったと思います。まだかなり先の話になりますが、次の拡張パックについても、皆様の要望に応えていきますのでご期待ください。皆様の要望に沿った形で「信長の野望 Online」の世界を皆様それぞれのプレイスタイルに合わせて楽しんでいただける形に進めていきます。よろしくお願いします。

山中氏: 「破天の章」から運営プロデューサーをやらせていただき、バランス調整やイベントなどで「信長の野望 Online」を盛り上げようと努力してきました。この1年間の経験を生かし、運営スキルに磨きをかけ、争覇の章のチューニング、様々なイベントやキャンペーンで盛り上げていきたいと思います。よろしくお願いします。

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□コーエーのホームページ
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□「信長の野望 Online」のページ
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□「争覇の章」特設サイト
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□「信On開発本陣」内「テストワールド」のページ
http://www.gamecity.ne.jp/nol/developer/0802.htm
□関連情報
【3月5日】「信長の野望 Online ~争覇の章~」開発/運営チームインタビュー
新サーバー「嵐世記」実装の狙い。「信on」の今後の展開は?
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080305/souha.htm
【2月28日】コーエー、「信長の野望 Online~争覇の章~」体験レポート
「争覇の章」の全要素を撮り下ろし画像と共にたっぷり紹介!!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080228/souha.htm
【2月15日】コーエー、WIN「信長の野望 Online」新情報公開
隠れ里の卒業者向けの「中級者クエスト」の概要ほか
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20080215/nobuon.htm
【2007年12月17日】コーエー、「信長の野望 Online ~争覇の章~」製品発表会を開催
九州三国志、大決戦、戦国絵巻など、ストーリーMMOとしての大幅な仕様拡張を発表
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20071217/souha.htm

(2008年6月13日)

[Reported by 福田雄一郎 / 中村聖司]



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