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会場:ガンホー本社
一度ドミニオン世界の運営をストップして再開発に乗り出すのか、直しながら運営を継続していくのか、それとも沈黙を貫くのか。無数の選択肢が考えられたが、ガンホーの動きはそのいずれでもなかった。「ECO」運営チームの最高責任者である執行役員オンライン事業部サービス運営本部長の堀誠一氏が事態の収拾に乗り出したのだ。「SAGA8」で実装されている、現行のPvPシステム「フィールドチャンプシステム」の破棄を決断し、約1週間で新しい「SAGA8」の企画を練り直した上で、改めて弊誌にインタビューの再要請をするという、まさに電光石火の動きを見せた。 インタビューには、堀氏に加え、「ECO」の担当責任者であり、“淺間教授”の名前で知られる淺間達雄氏が出席。堀氏自らが、持ち前のパワフルな語り口で、前回のインタビューにおいて回答を得られなかった部分の解説と、既存の「フィールドチャンプシステム」に変わる、新たなPvPシステム「新フィールドチャンプシステム」の概要を説明してくれた。 新PvPシステムは、“自らの利益のために、戦う意志のない人までも攻撃する”という「ECO」にはとうてい相容れない既存の無差別PvPのスキームを全面的に破棄して、戦う意志を持つ人々だけでDEMを迎撃するためのヒーロー(代表者)を選出するという、選択の自由と機会の平等を保持した民主的なシステムに刷新される。また、「ドミニオン世界を守るため」という、何のためにPvPを行なうのかが、明確に提示される点も、大きな違いといえる。 「新フィールドチャンプシステム」は7月の実装を予定。いますぐに変わるという話ではないが、大前提として「フィールドチャンプシステム」は失敗であることを認めており、緊急避難的な措置としてドミニオン世界で“PKの発生を回避するアップデート”を早急に実装する。 今回のインタビューでは、PvPの実装経緯の説明に付随して、SAGA8からSAGA10までの全体の構想も堀氏の口から語られている。また、同社の厚意により、新システムの理解促進のための捕捉資料も大量にいただいたので、一挙掲載している。「SAGA8」の初期構想からかなり変更されているので、「ECO」ユーザーはぜひ一度チェックしてみてほしい。
今回発生した「SAGA8」の混乱により、「ECO」そのものと「ECO」ファンが受けたダメージは決して小さくないが、同社が過ちを認め、即座に仕様を変える意志を表明したことは最大限に評価できる。同社の今後の名誉挽回に向けた取り組みをじっくりと見守りたいところだ。 ■ フィールドチャンプシステムは「失敗」。混乱を招いたPvPシステムを全面改修へ
堀誠一氏: まずは「SAGA8」で実装となったPvPシステム、「フィールドチャンプシステム」に関しましてユーザーの皆さんに混乱を招いてしまったこと、そして対応のアナウンスが遅れていることをお詫びさせていただきたいと思います。同システムにつきましては、多くのユーザーの皆さんから改善要望を頂きました。約800件に至る改善要望に私自身全て目を通させて頂き、早急な改善対応を行わなければならないと感じました。目下、運営チームにおいて仕様の改善及び、改善内容に関する公式発表の準備を進めさせていただいている最中です。今回は、本件に関しGAME Watchさんに頂いた問題提起に答えさせていただく形で、少しでも早く皆さんに速報をお伝えしたいと考えた次第です。 編: 厳しい質問ですが、あえてお伺いします。既存の「フィールドチャンプシステム」は失敗したという風に理解して良いのでしょうか? 淺間達雄氏: 思わしくない結果となりました。ユーザーの皆さんにはご迷惑をお掛けいたしました。 編: 失敗の最大の原因は何だったと考えていますか? 堀氏: 「フィールドチャンプシステム」の機能に関し、「ECO」ユーザーの皆さんの許容力に頼りすぎてしまったことだと考えています。ドミニオン世界では、その世界観「修羅の世界」に即した新しい遊びの要素として、PvPを取り入れていくことが目標となっていました。PvPシステムの危険性は企画段階で運営チームの認識にもありました。しかし「ECO」のユーザーの皆さんなら遊びとして許容していただけるだろうと問題を甘く見積もってしまい、仕様の練りこみが足りなかったことで今回の混乱を招いてしまったのだと考えています。 また「SAGA8」の位置付けが今までのSAGAアップデートとは性質が異なるということを、伝えきれなかった点もあるかと思います。「SAGA8」は世界法則の異なるドミニオン世界に旅立つエピソードですが、異世界での冒険であることを公式サイト、ゲーム内の実装で説明しきることができず、結果としてユーザーの皆さんに「ECO」の世界に異質の文化が入ってきたように感じさせてしまいました。 淺間氏: PvPをごくごくシンプルな形で導入してしまった結果、“無差別PKシステム”として受け取られてしまいました。「ECO」の今までのアップデートと同様に、まずはいろいろな形で遊んでいただいて、おいおい改修が必要な部分に手を入れていこうと安易に考えてしまっていました。今回は厳しいフィードバックをいただきまして、結果に対する考察が足りなかったと反省しています。 編: どうしても伺いたいのですが、「ECO」運営チームでは、「SAGA8」の初期の仕様で、ユーザー同士が切磋琢磨を目的にPKしあうだろうと本気で考えていたのですか? 堀氏: 「ECO」のコミュニティは、とても良い雰囲気を育てていただいており、騎士団演習などもうまく遊んでいただいています。互いに殺伐とした関係ではないコミュニティであれば、遊びとしてPvPを捉えていただき、フラストレーションよりもドキドキ感として捉えてもらえるのではないか、という意図があったのですが、空回りしてしまいました。 淺間氏: 甘かったです。まさに「敵対勢力に対抗するため、PvPで切磋琢磨をする」という仕様が、皆さんに面白くないと感じられてしまいました。 編: PvPやPKシステムというのはキャラクタの生き死に直結するわけで、非常にデリケートなコンテンツだと思います。“綺麗なお花畑を作りました”とか“使いやすいチャットシステム”を作りましたということと同列のコンテンツとして捉えてしまったところが、失敗の要因だったのではないかと考えています。 堀氏: 配慮が非常に足りなかったと感じています。PvPが発生するフィールドをドミニオン世界という異世界に設定したまではよかったのですが、世界観に対するPvPの必然性を補完しきっていませんでした。ユーザーの皆さんのご意見を真摯に受け止め、「SAGA8」前後のバックグラウンドをきちんと説明した上で、理解して頂ける改修を行なっていくつもりです。 編: 今回の件に関して、内部の意識が変わったところがあるのでしょうか? 堀氏: そうですね。 淺間氏: 実装から1か月たって運営チームとして蓄積されてきたものがあります。ユーザーの皆さんに頂いたご意見も含めて変えていこうよ、ということが今の動きにつながっています。 編: それはつまりPvPは無くしてしまうということですか? 堀氏: 詳しいことは公式サイトにて発表させていただきたいと思うのですが、全員がPvP対象になってしまうということをまずは回避するために、今のPvP回避アイテムを皆さんに手に入りやすいようにしていきたいと思っています。そして後ほど詳しく説明させていただきますが、最終的にはPvPへの参加を選択できるように改修をしていこうと考えています。 編: もうひとつ。PK回避アイテムのレギュレーションに関してですが、非常に迷いがありましたよね。初期構想では「ナシ」でした。なぜならドミニオンは修羅の世界なので、PK回避アイテムは導入しないという説明でした。ところが前回のインタビューでは、「PKを忌避する人がいるのは“想定内”なので、『10分、15分』くらいの制限時間でPK回避アイテムを導入しても良いのではないか」と方針を転換しました。インタビュー後にいただいたリニューアル案では、こっそり「30分」と延長されていて、5月30日の実装内容はというと、これがまた180分に伸びていました(笑)。 そして本日話を伺ったらついにオンオフ機能を付けてPvPを選択制にしようというお話しです。「ECO」に無差別PKは無理だというのは、実際に遊んでみればわかりきった話なのに、なぜ一番現場に近い運営側がそれを理解するのに2カ月あまりもの時間を必要としたのか、そこがどう考えてもよくわからない。ここまで決断が遅れた理由は何だったのでしょうか?
淺間氏: 現状の実装の中での改修に固執してしまった部分があります。今後の「SAGA」の流れにも影響を及ぼすために悩んでいまして、時間がかかってしまったことになります。 ■ ついに明かされる「SAGA8」のバックグラウンドと、その最終的な狙い
堀氏: 実は「SAGA8」は「ECO」にとって大きな変革のあるアップデートでした。それは「世界法則の違う並列世界」と「時間軸をもったエピソード進行」を実装するという狙いがありました。まず時間軸について説明させてください。「SAGA8」は「ECO」にとって初めての現在進行形エピソードとして実装されています。 エミル、タイタニア、ドミニオンの3種族、3つの世界は互いに争われた時代があり、今は住み分けられているという設定が「ECO」のバックグラウンドストーリーとして存在します。その後エミル世界にタイタニアの民やドミニオンの民がやってきたというのが「SAGA7」までのお話でした。 「SAGA8」にて、ドミニオンの民は自分の世界を「第4の種族“DEM”」に侵略された“追われる民”であるという設定が、初めてユーザーの皆さんに明かされました。今後、「SAGA9」では同様にタイタニアの世界で起こっていることが紹介されていくことになります。そしてこれらをプロローグとして「SAGA10」では「ECO」の世界に危機がせまりつつあるというエピソードが積み重ねられていきます。こういった現在進行形の時間軸を持ったエピソードが「SAGA8」から「SAGA10」の流れになっていきます。 淺間氏: 「SAGA7」までは世界に広がりを見せてきたことになります。これに対し、「SAGA8」から「SAGA10」では少しずつストーリーを進めながら「ECO」の“クロニクル”を更新していくというのが意図としてあります。 堀氏: そしてもうひとつの変革が「世界法則の違う並列世界」です。先にもお話しましたがこのバックグラウンドの説明が足りなかったと感じています。 エミル、タイタニア、ドミニオンの3世界は「天まで続く塔」で繋がった並列世界です。それぞれの世界は、おどろくほど共通点が多い“パラレルワールド”となっていますが、大きな違いを生んでいるのが「世界法則」です。各世界は世界法則が異なることで人々の考え方や行動、文化などに違いが生まれています。冒険者達は「天まで続く塔」を通って他の世界に行くことができるのですが、他の世界では、世界法則が異なるため、冒険者自身に変化が現われます。それが「次元転生」です。 ドミニオンの世界に行った冒険者達は次元転生をすることで、それまで得てきた冒険の記憶やテクニックはそのままでありながら、身体的にはその世界で経験したことだけが残されることになります。“冒険者は世界法則からは逃れられず、別世界の世界法則に従わされてしまう。“この大事なキーワードが、ユーザーの皆さんに伝わっていませんでした。そしてこの設定が実はフィールドチャンプシステムの拠り所となっています。 PvPは“対戦”という遊びの要素としてゲームを拡張する鍵だと考えていました。しかしながらハートフルな世界観のエミル世界には、スポーツ的要素としても入れていくことは難しい。そこで冒険の舞台をドミニオン世界に移し、 “別なゲーム世界”として実装すれば、ユーザーの皆さんの頭の中で住み分けていただけるのではないかと考えたのが起点になっています。 次元転生してレベルが1になる。けれどもレベルは上げやすくも下げやすくもなっている。変化が激しい世界でお互いに争い、ランキングを競い合うというものが企画の意図として当初想定されていました。但しそのためには、並列世界の構造、次元転生の仕組み、そして危険な世界に移っていくのだという警告を充分に行なう必要がありました。実際にはベリアルをはじめとするドミニオン世界に渡るために出会うNPCたちが充分に説明と警告をしている状況にはありません。また、公式サイトでもそれらの設定を説明しきっていませんでした。 機能的な面でフィールドチャンプシステムがユーザーの皆さんに頼ってしまっていた点も、もちろん別の問題としてあります。オーソドックスなPvPのアプローチをしすぎているために、現状のシステムではPvPの嫌な部分が強く見えすぎてしまっています。それに加えて世界法則に関する説明が足りなかったことも、混乱を強調してしまった要因となっていると思うのです。 「『SAGA8』はドミニオンの修羅の世界。しかしながら「SAGA9」では一転してタイタニアの争いのない世界が実装されていく。エミルの世界は主たる冒険の世界として今後も存在していますが、皆さんはドミニオン、タイタニアの世界を渡り歩いて、違う世界観の違うゲームを遊ぶことができます」ときちんと説明させていただくべきでした。 編: なるほど、それが「SAGA8」の構想ですか。ようやく筋書きが見えましたが、これは当初から抱いていたアイデアですか? 淺間氏: 「ECO」のコンセプト、基本設定を基に昨年末頃から運営チームの企画としてそのように進めていこうと相談がされていました。 堀氏: 「SAGA8」構想と関連して「マーシャホットライン」は「時間軸を持ったエピソード進行」を伝える工夫として実装した経緯があります。「マーシャホットライン」自体は新しく「ECO」を始める方向けにチュートリアル要素として実装されていますが、今起きていることをイベント進行などとは別にアナウンスできる機能もあります。リアルタイムに冒険をサポートするサービスとして、今後エピソード進行に活用していく予定です。また、「SAGA9」についてもタイタニアの世界の実装ということで、ドミニオンの世界とは真逆の世界の企画素案が起こされています。 淺間氏: ユーザーさんからのご要望にも、「タイタニアの世界と同時だったらまだよかったのに」というお話がありました。私達の伝えたかった遊び方の一部は感じ取っていただけたのかもしれません。 堀氏: 無差別PKと映ってしまったフィールドチャンプシステムを受け入れていただけなかった現状ではありますが、ドミニオンの世界自体がユーザーの皆さんに嫌われてしまっているわけではないと考えています。 編: 「ECO」は「SAGA」アップデートを通じて1本道のストーリーを展開してきたわけですが、その延長線上に“無差別PK”を置いた。この新しい道、つまり無差別PKを乗り越えないと「SAGA9」には行けませんよと、そういうやりかたをしてしまったわけです。それに対してはっきり「イヤだ」と言ったのが今回のユーザーさんの反発の本質だと思います。 先ほど淺間さんがおっしゃったように、仮に「SAGA8」と「SAGA9」を同時並行して実装し、PK、PKKの生き方も選択肢の1つですよ、かたや天空に生きるのでもいいですよ、どちらかの生き方を選んでくださいということであれば、今回のような猛反発はまったくなかったと考えています。
堀氏: おっしゃる通りです。我々の中での「ECO」に対する想いが空回りしていたところが大きかったと考えています。
■ 新たに実装される「新フィールドチャンプシステム」は、ヒーローを選ぶシステムに
堀氏: 「新フィールドチャンプシステム」を実装していきます。フィールドチャンプシステムは、我々がシステムの必然性を説明できておらず、それを説明できたとしてもユーザーの皆さんの想いと合致していないと認識しています。頂いたご意見を見ていますと、ユーザー同士がお互いに争うことに対してあまり良く思っておらず、ランキングを制したものが利益をとるというゲームシステムを好ましくないと考えているユーザーさんが「ECO」には多い。 それが如実に出てしまったのが「フィールドチャンプシステム」です。そこを根底から変えなければならないと思いますので、現状のシステムの考え方は根本的に改めます。ただ、完全にPvPのシステムをあきらめたわけではありません。PvPを面白いという意見も一部にはいただいており、我々も遊びの要素として大切にしていきたいと考えています。しかし、いずれにしてもドミニオン世界でPvPをやるための必然性を設けなくてはなりません。 「新フィールドチャンプシステム」では、“フィールドチャンプ”の名の通りチャンピオン、つまりはヒーローを生み出すための様相としてPvPを扱います。ドミニオンの世界は設定上、350年間もの長い間戦乱が続いています。“DEM”の侵略に遭い、そのほとんどが“DEM”の支配下となっています。“DEM”の勢力はそれ自体が非常に強力なのですが、なかでも一般のドミニオン達ではなかなか太刀打ちできない強力な“DEM”が存在し、そもそも戦闘種族として戦い慣れしているドミニオンでありながらも、自分達の世界を支配されてしまう憂き目にあっています。今回追加される設定ですが、この強力な“DEM”は“チャンプDEM”と呼ばれます。“チャンプDEM”はアンチヒーローですので、通常の冒険者達ではまともに渡り合うことができません。しかし戦闘種族であるドミニオンの世界には、ヒーローの登場が切望されると、ヒーローが生み出されるという世界法則が存在していました。それがフィールドチャンプです。 フィールドチャンプが生み出されるためには、フィールドチャンプになることを望む者達があらわれなければなりません。さらに望んだ者達の全てがフィールドチャンプになれるわけでもなく、多くの犠牲の上にしか生まれないのです。フィールドチャンプになることを望んだ者同士は互いに戦い、より強い個体を選出していかなければなりません。敗者は勝者にその経験と想いを託し、勝者はその想いを背負った“孤高の戦士”へと成長していきます。そして残された一握りの勝者がフィールドチャンプ=ヒーローとなりアンチヒーローたる“チャンプDEM”に対抗できる力を得ることになります。 この設定をシステム化したものが新フィールドチャンプシステムとなります。新フィールドチャンプシステムにはエントリーという概念があり、エントリーをした冒険者だけがフィールドチャンプになる権利を得ます。フィールドチャンプにエントリーするためにはクエストをクリアしていくことになるかもしれません。 フィールドチャンプにエントリーしたものだけがPvPの対象となり、現状のフィールドチャンプシステムと同様にプルルアイコンが表示されます。フィールドチャンプになるためには、他のPvP対象者と戦いあい、WRP(ウォー・レコード・ポイント)を奪いあわなければなりません。WRP及び、WRPランキングに関しては、現状のシステムとほぼ同等となると考えてください。つまりWRPランキング上位者がフィールドチャンプになります。現在の想定ではTOP10がフィールドチャンプとなります。フィールドチャンプとなると、そのキャラクターには“チャンプ属性”が付与され、チャンプと認識できるエフェクトが表示されます。“チャンプ属性”が付与されているため、同じく“チャンプ属性”を持つ“チャンプDEM”と同等に渡り合うことができるようになります。 さらに、新フィールドチャンプシステムでは、WRPは積算されていくだけのものではなく、消費してチャンプスキルを利用することができるようになります。チャンプスキルはパーティメンバーに対して支援することができるスキルであり、戦闘を有効に進めることができるようになります。チャンプスキルはレベルアップで得られるものではありませんが、いくつかのバリエーションが存在しゲーム中で集めていくことができるようになります。
ただし注意していただきたいのは、チャンプスキルを使用するとWRPが消費されるという点です。WRPが減れば当然WRPランキングが後退することになり、フィールドチャンプから脱落することになります。フィールドチャンプでなければチャンプスキルは使えませんので、チャンプスキルの乱用は諸刃の剣になると思います。これだけでは、チャンプスキルはあまり有効ではないように感じますが、後に説明させていただく「都市攻防戦」になくてはならないスキルとなります。余談ですが、チャンプスキルを集めるために、WRPを消費しなければならない場合等も想定していますので、新フィールドチャンプシステムのWRPランキングはかなり変動することになると思います。
■ ヒーロー達が活躍する「攻防戦(仮)」改め「都市攻防戦」
“DEM”に侵略されたドミニオン世界は、王家も軍も離散してしまっており、“DEM”に対抗できる存在は「ウェストフォート」に残されたレジスタンス達だけとなります。しかしながらそのウェストフォートも“DEM”の侵略の脅威にさらされている状況です。そのウェストフォートを巡る“DEM”との戦いが、「都市攻防戦」です。 都市攻防戦は数百人単位で参加可能となる、大きなPvEシステムです。“DEM”は一定の周期、現段階では毎週開催を想定していますが、大規模な侵攻をウェストフォートに仕掛けてきます。冒険者は「防衛戦」と称して都市の防衛にまわり、勝敗の鍵となるシンボルを守りきらなければなりません。シンボルは複数存在していますが、その全てを“DEM”に破壊されてしまった場合は防衛失敗となり残念なことにウェストフォートはその都市機能を失い、モンスターが徘徊する街となってしまいます。 ただしその場合、ウェストフォートを奪還するために今度は冒険者達がウェストフォートに「奪還戦」を挑むことができます。奪還戦では防衛戦とは逆に、シンボルを全て修復する戦いになります。シンボルを全て修復することができれば、ウェストフォートの奪還は成功となり、都市機能が復活することとなります。「防衛」と「奪還」が繰り返される大規模PvEであることが「都市攻防戦」の名前のゆえんです。 この都市攻防戦にも“チャンプDEM”は現われます。“チャンプ属性”を持つ“チャンプDEM”は、都市攻防戦に参加する冒険者にとって、対抗手段に乏しい恐怖の存在になると思います。そこで“孤高の戦士”として磨かれたフィールドチャンプが“チャンプDEM”に対抗する決定力を持つヒーローとして登場することになります。フィールドチャンプは世界にたった10人ですので、本当にヒーローのような存在として映ると思います。もちろんフィールドチャンプの全員が都市攻防戦に参加してくれるとは限りませんが、フィールドチャンプのチャンプスキルには、パーティメンバーにチャンプ属性を付与するスキルが含まれます。フィールドチャンプが1人でも参加していれば8人、最高80人の“チャンプ属性”を持つヒーロー達が登場できますので安心してください。 以上のように、ヒーローを生み出すための必然性をもったPvP、ヒーローがヒーローとして活躍できる場面の実装、ヒーローが常に入れ替わり誰もがヒーローになるチャンスを持てるシステムが「新フィールドチャンプシステム」と「都市攻防戦」の概要です。 PvPを楽しみたい方にとってPvPの目的を提示し、また一方でPvPを好まない方にとって完全に住み分けてしまうのではなく、PvPを楽しんでいる方と共存できるようにしたいというのが今回の改修の主眼となっています。今回のご説明だけでは、全てをお話できていませんのでルール的な疑問点を持たれることもあるだろうと思います。現在、仕様の詰めを行なっていることもあり、実装時には若干の修正をさせていただくこともあるかもしれません。もし興味をもたれた方は運営チームにご意見を寄せていただければと思います。皆さんのご意見も参考にさせて頂き、よりよいものにしていきたいと考えています。 編: なるほど。きれいにドミニオン世界におけるPvPの必然性が説明されていますが、この理論構築はいつ完成されたものですか? 堀氏: つい最近です。GAME Watchさんから頂いた問題提起やユーザーの皆さんのご意見を元に、淺間と徹夜で悩んだ結果、「フィールドチャンプ」の名称からふっと浮かびあがったアイデアです。 編: 率直に言いまして、面白そうだと思いました。 堀氏: まだ荒削りな部分はあると思いますが、大規模なゲームシステムの改修を行なうことなく、今までの「ECO」をベースに実装可能な仕組みであると考えています。あとはシナリオ、チャンプスキル、都市攻防戦のバランス等、もう少しブラッシュアップする必要があると考えています。ドミニオンの世界では日々ヒーローたちが頑張っている世界になっている。ここで頑張らなければタイタニアの世界やエミルの世界にも影響が表れ始めるよ、というような「SAGA8」にシフトしていきたいと考えています。 編: ようやく初期のコンセプトをきれいにゲームシステムに落とし込めたという感じがしますね。 淺間氏: そうですね。PvPを嫌っていたユーザーさんにも、再度見方を変えていただける仕組みにできるのではないかと考えています。 堀氏: 「SAGA8」だけでは充分な対応ではないかもしれません。頂いたご意見の中には、「SAGA8」ではバックパッカーが軽視されているぞ、というご意見もありました。確かに戦闘をテーマにした世界ですし、今後の改修でも戦闘が強調されていますので、バックパッカーにとってみれば今ひとつの内容かもしれません。バックパッカーの皆さんには「SAGA9」にて、今度は戦闘キャラクタがバックパッカーを支援するようなシステムが企画されていますので、そちらを期待していただければと思っています。 淺間氏: もちろん、「SAGA8」でバックパッカー系の職業が楽しめないわけではないですよ。都市攻防戦では守るべきシンボルが出てきますので、それを守ったり、修繕したりといった支援の役割で活躍できる場面があると思います。 編: 新フィールドチャンプシステムについてどのような期待を持っていますか? 淺間氏: 今まではPvPに関わりたくないという方が、望まないPvPに巻き込まれるという状態があり、それを見たり経験したりした方に「こんな世界にはいたくない」と思われてしまうことがありました。今後はPvPに参加する人同士の中でチャンプが誕生し、都市攻防戦で仲間を守る立場として登場する。それをみてユーザーさんたちが、かっこいいな、と感じてくれたり、自分たちも参加してみようかなという気持ちになってくれるチャンスがあるのではないかと期待しています。 堀氏: かなり悩みましたが「やっぱりPvPはなくします」というご回答をユーザーの皆さんに差し上げることは、運営チームとしてあまりにも無策ですし、新しい遊びの要素として、PvPは間違ったシステムではないと、望みを捨てていませんでした。今回お話した新フィールドチャンプシステムでは「僕が君の盾になる」というECOのコンセプトに近づくことができたと思います。さらに皆さんからのご意見を頂く中で、「ECO」の精神に則り、皆さんと育てていくシステムとなればと思っています。 編: ユーザーさんが気になるのは、実装スケジュールですが、いつ頃になりそうでしょうか。 堀氏: 現時点では7月を目標にしています。 編: それでは、これから実装までの約1カ月間、サーバーではどういったことを行なっていくのですか? 淺間氏: 当然「新フィールドチャンプシステム」だけに関わっていると、この間ユーザーさんが触れるものがなくなってしまいますので、6月中の実装予定に関しては予定通りに進めていくつもりです。 編: 重要な質問ですが、今のドミニオンの世界はいったん止めるのでしょうか?
堀氏: ドミニオンの世界を止めることはしません。ユーザーの皆さんには不便な状況となってしまいますが、PvP回避アイテムの入手を容易にするなどして、現状を維持させていただこうと思います。
■ 最後の課題「PvPのバランスチューニング」はどうなるのか?
淺間氏: デスペナルティに関してはこのまま(編注:BASE経験値10%、JOB経験値2%)いきます。 堀氏: レベルのアップダウンやデスペナルティが存在するハイリスクで厳しい世界の様相はドミニオンの世界法則として残しておきたいと考えています。 編: 現状ですと、特定のペットやスキルによるバトルバランスの崩壊が問題になっていますが、その点についてはいかがですか。 淺間氏: ゲームバランスについても手を入れていく予定です。但し36+1の職業のバランス調整はとても難しく、まとまった時間が必要だと思いますのでしばらくお時間をいただくことになると思います。 編: それはPvPを意識したジョブバランスのチューニングになるのでしょうか。 淺間氏: いえ、それだけでなく根本的なジョブバランスの調整ですね。有効なスキルが少ない職業もありますし、レベル50でのスキルが足りないものもあります。そうしたものはたくさんユーザーさんからご指摘いただいており、蓄積させていただいていますので、是非活かしていきたいと思っています。 編: ペットについてはなかなか難しい問題ですが、どのように考えていますか? 淺間氏: 現状に問題があることは、ご指摘のとおりです。ただし、今後ドミニオン世界のレベルキャップの解放が進めばペットの優位性は下がってきますので、極端にペットのバランスを変える必要はなくなります。今後のレベルキャップ解放のタイミングを考慮し、ドミニオン世界においてのペットの仕組みを変更するか、現状を維持するかを判断したいと思います。 編: ドミニオン世界のレベルキャップは、「SAGA8」でいくつぐらいを考えていますか? 淺間氏: 「SAGA8」ではレベルキャップは50くらいまでいければよいのではと考えていますが、現時点では未定です。新フィールドチャンプシステムの仕様と関連し考慮していきます。 編: いずれにしても30で終わりというわけではなく、5刻み10刻みで解放されていくことになると?
淺間氏: はい。あざとい考えではあったのですが、いったんレベルキャップを30まで制限させていただいて、バランスを見させていただきたいと考えていました。ペットの問題などもありますので、検討を急ぎたいと思います。 ■ 淺間氏「すごく痛い経験をしたので、その反省を活かしていきたい」
淺間氏: データ収集の過程で感じることですが、「ECO」は幅広い遊び方をしていただいているなぁ、と思います。普通に王道的な遊び方をされている方もいますし、飛空庭やアバターといった「ECO」の特色に特化して楽しんでいる方もいらっしゃいます。特に飛空庭やアバターといった「ECO」らしさを楽しんでいただいている方に向けては、「SAGA8」では提供できなかった、ほんわかとした要素を楽しんでいただける実装を入れていかなければならないなと感じています。 編: 弊誌で掲載した「SAGA8」の最初のレポートに関して、コミュニティでもっとも話題になったのは、PvPではなくて、実はネコマタだったんですよね(笑)。我々メディアとして、PvPのコンテンツとしての危うさが十分に伝えられていないなと思うと同時に、「ECO」のユーザーさんは非常にタフだなという印象を受けました。淺間さんがおっしゃるように、「ECO」は遊びが様々な方向に拡散しており、ユーザーはいろいろな形で楽しみを獲得していると思いました。 淺間氏: そうですね。常にいろいろな方向から遊びを企画していかなくてはならないのは苦しいところですが、楽しいところでもあります。今回はすごく痛い経験をしましたので、その反省を活かしていきたいです。 堀氏: 私としても「ECO」のコミュニティの特長に注目させてもらっています。たとえばガンホーの他のコンテンツ、「ラグナロクオンライン」や「TANTRA」のコミュニティでもそうなのですが、ゲームによってコミュニティに性格のようなものがあると感じています。今回の改修検討の最中に特に感じたことは、非常に「ECO」のコミュニティは、「ECO」の世界観に対するイメージをしっかりと持っていて、世界観、設定と仕様に対する一体感を大切にされているということです。 編: それは「ラグナロクオンライン」のユーザーさんよりもはっきりしていると? 堀氏: 直接比較できるものではないですね。ただ、「ECO」のコミュニティは「こうなったらいいな」、「こうして欲しい」という意見が我々として捉えやすい、受け取りやすい情報をいただける存在だな、と感じました。我々としても、ユーザーの皆さんのリアルタイムの意見を反映して、キャッチボールがしていければと思っています。 編: 最後にユーザーさんにメッセージをお願いします。 淺間氏: ユーザーの皆さんには、「SAGA8」実装から1カ月の間、「フィールドチャンプシステム」についてご迷惑をお掛けしております。私達は、やはり面白くなければ実装する意味がない。面白くなければ今回のようにドラスティックにゲームを変えていきたい、と思っていますので、ぜひ今後ともユーザー投稿などいろいろなところでご指摘いただければと思います。よろしくお願いします。 堀氏: 今回の件に関しては、皆さんのご意見をいろいろな面で我々が受け止めさせていただくことができたと思います。これからも皆さんのご意見と想いを大切に学ばせていただきたいと思います。「ECO」をこれからもよろしくお願いします。
編: 今後、良い運営になることを期待しております。がんばってください。ありがとうございました。 (2008年6月7日) [Reported by 中村聖司]
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