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会場:シマンテック渋谷事業所 株式会社シマンテックは6月4日、同社渋谷事業所のプレゼンテーションルームにてオンラインゲームメディア向けセキュリティ・セミナーを開催した。シマンテックはアンチウィルス・インターネットセキュリティソフトの「ノートン」を販売しているメーカーである。
ゲームメディアへのセミナー開催はシマンテックでは初めての試み。今回は、企業ではなく、ユーザーを対象にした情報提供を行ない、メディアを通じてオンラインゲームユーザーへ“ゲームを安心して楽しむ環境”を提案していくという、製品のアピールとしてユニークなアプローチである。さっそくセミナーの模様をお伝えしたい。
■ オンラインゲームが直面している危険。これからの「ノートン」はよりプレイ環境を考慮したものへ
他のユーザーのコンピュータにウィルスを感染させようとする攻撃者の手口は、メールでの添付ファイルから、偽装メールを使ったフィッシング詐欺と変化していった。現在は有名サイトなどを悪用し、そこを閲覧したユーザーにウィルスを感染させるといった手口が盛んになっているという。攻撃者はwebサイトの欠陥性を積極的に探し、ウィルスを仕込む方法を研究している。 現在、世界の人々とインターネットは非常に近い関係になった。多くの人はPCに触れてまず最初にインターネットブラウザを開く。脅威はPCに限らず、携帯電話やPDAなど、インターネットに接続できるデバイス全般に広がっている。 攻撃者の目標はより細分化し、特定の情報を狙う手口も多くなってきている。日本人にポルトガル語で詐欺を行なおうとしても通じないが、ブラジル人には有効、というように言語を特定した手口や、特定のサービスを対象にしたケースが増えてきている。 このケースの1つとしてあげられるのが、特定のオンラインゲームを狙った手口である。セキュリティレスポンスシニアマネージャの浜田譲治氏が紹介したのが「InfoStealer.LingLing」というプログラムを悪用したケースだ。LingLingと呼ばれるツールをダウンロードさせるスクリプトがスーパーボウル(アメリカンフットボール)の公式ページで書き込まれた。 LingLingは「World of Warcraft」を対象としており、ユーザー名やパスワードを盗み、スクリプトを仕込んだ攻撃者に情報を送る。攻撃者はその情報を使ってゲームにログインし、キャラクタが持つアイテムを奪い、RMTサイトを通じて盗んだユーザーのアイテムを売ってしまう。こういった事例が報告されているという。 浜田氏はさらに日本国内でもオンラインゲームの公式ページが改ざんされ、トップページを閲覧したユーザーが「Trojan/Dropper」に感染させられた事例があったことを報告した。このウィルスは「Hacktool.Rootkit」と「Infostealer.Gampass」というスパイウェアをインストールさせる。
この2つのツールによって、「パーフェクトワールド」、「World of Warcraft」、「Legend of Mir」、他複数の中国国内専用のオンラインゲームのアカウントやパスワードなどが攻撃者に送信されたという。中国国産、および中国で盛んなゲームが対象というところが興味深い。中国国内の被害状況もうかがい知ることができる報告である。
webブラウザからの感染などは、セキュリティソフトを導入していれば防げる可能性がある。しかし、オンラインゲームユーザーの多くはセキュリティソフトに不満を持っているという。「ファイアウォールでゲームがブロックされる」、「検索画面が出てきてゲームが中断された」、「PCのパワーをセキュリティソフトにとられる」……。 コール氏は2009年版のセキュリティソフトには、オンラインゲームユーザーのニーズに応えた製品を作ると語る。より動作が軽く、ユーザーが気づかない軽さのセキュリティ機能を目指す。検索の効率を上げ、インストールも手軽になるという。 さらにゲームの場合は、「ゲームモード」を用意する。これは、フルスクリーンで動作するソフトウェアがある場合、自動的に移行し、セキュリティソフトの動作を感じさせない“サイレントモード”だという(もちろん手動の切り換えも可能)。現在よりニーズにマッチした環境を提供するために、開発が進められているという。 続けて浜田氏から、最新ウィルスの動向と、シマンテックのセキュリティ対応が報告された。ウィルスの解析と対策は、東京、アイルランドのダブリン、アメリカ・カルフォルニア州のカルバーシティの3つのオフィスにいるスペシャリストチームが365日、お互いをカバーすることで24時間体制で情報を収集し対策を行なっている。
ウィルス、サイトの脆弱性、スパイウェア、フィッシング詐欺をはじめとしたオンライン犯罪など各部門に専門家を配置し研究を重ねているという。シマンテックは80カ国のオンライン状況を監視し、匿名でのユーザーからの報告を受け付け、それに対して審査を行ない対策しているという。
風間氏は実際にあったアカウントハッキングの手法として、ユーザー掲示板に、「このツールは便利」と書き込み閲覧者にインストールさせる行為や、パッチを装ってインストールさせる手法、そして小出氏が指摘し公式ページをハッキングして閲覧者にスパイウェアをインストールさせるといった方法を挙げ、これらの手段に対抗するためには、高度な技術を備えたセキュリティソフトが必要だと語った。 風間氏は続いて、現在行なっているオンラインゲームメーカーとのタイアップを報告した。現在、シマンテックはセキュリティソフト「ノートン」とガンホーのオンラインゲーム「ラグナロクオンライン」のタイアップキャンペーンを2008年~2009年に実施しているという。2008年前期では、2月20日~3月31日と4月22日~5月13日に行なわれた。 期間中「ノートン インターネットセキュリティ 2008」と「ラグナロクオンライン」のゲーム内アイテムである「黄色いリボン」、プレイチケットを同梱したパッケージを発売したところ、これまでのシマンテックのタイアップキャンペーンと比べ3倍もの売り上げを記録したという。 「ラグナロクオンライン」はアカウントハックツールが作られたこともあり、過去の調査で、アカウントを不正利用されたユーザーの90%がセキュリティソフトを導入していなかったという報告もあるという。改めてオンラインゲームユーザーのセキュリティ対策に関して考えさせられる報告だ。シマンテックはガンホーに限らず、ゲーム会社との協力も必要と考えているという。その為の企業向けシステムも準備しているとのこと。 BOT問題、ハッキングなどゲームメーカー側に目がいきがちなセキュリティ問題だが、ユーザー自身の対策も考えていきたい問題だ。筆者は2000年くらいの大きなウィルス騒ぎ以降、セキュリティソフトの導入は当たり前だと感じているが、そういった経験のない若いユーザーもいるかもしれない。 スペックぎりぎりで動かしているユーザーの中には、ゲーム中セキュリティソフトを切る、というユーザーもいるかもしれない。アップデートや検索でプレイを中断されるユーザーも多い。しかし、そこでセキュリティソフトを止めてしまうのは楽しんでいるオンラインゲームの環境そのものを危険にさらしているという意識は持っておきたい。セキュリティソフト側もユーザーに対してよりよいプレイ環境を考え始めた点は評価したいところだ。 一方で、オンラインゲームメーカーと、セキュリティソフト会社のさらなる連携も期待したいところだ。オンラインゲームの中には、メジャーなセキュリティソフトと相性が悪く動作が不安定になるゲームもある。また、ポートをあけなくてはプレイできないなど、現在のユーザーのニーズにマッチしていない仕様のゲームもある。ゲームに付随するセキュリティソフトに対しての信用、ユーザーの不正プログラムによるゲーム環境への被害など、問題は多岐にわたる。
今回のセミナーでは企業と企業、という問題は扱われず、あくまでユーザー自身が不正ツールやウィルスの被害を受けないための、シマンテックのアピールというものだったが、啓蒙活動の一環として、オンラインゲームユーザーをターゲットにした積極的な姿勢は評価したい。今後、世界的なネットワークを持ち、「世界で最も売れているコンシューマ・セキュリティソフト」を制作するシマンテックが、オンラインゲーム業界にどうはたらきかけていくか注目したいところだ。
□シマンテックのホームページ (2008年6月5日) [Reported by 勝田哲也]
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