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「SAGA8~戦歌の大地」では、前回の天使族タイタニアの世界に続き、悪魔族ドミニオンの世界への入口が開かれる。この世界に行くとプレーヤーキャラクタのレベルは1に戻り、ドミニオンの世界での“戦い”を体験できるという。そこではさらに「第4の種族」との邂逅も待っている。 ドミニオンの世界の最大の特徴は“PK可能な世界”ということだ。フィールドであればプレーヤーはいつでも他人を攻撃できる。「エミル・クロニクル・オンライン」(以下、「ECO」)のこれまで築き上げてきた「やさしく、簡単で、楽しい」という要素と全く異なる世界が展開しそうである。
本稿では、運営担当の制作担当のガンホー オンライン事業部サービス運営本部ゲームサービス部二課 水落貴嗣氏と、宣伝担当のオンライン事業部マーケティング本部第二マーケティング部企画課 平原智子氏に、「SAGA8」の各要素と、今後の展開、そしてなぜ「PK要素」を取り入れたのか、というところを質問してみた。
■ 次元転生によりレベル1からの出発となるドミニオンの世界。PvP可能という新環境と新たな種族の影も
ドミニオンの世界へは天まで続く塔から行くことができるが、プレーヤーはこの世界に行くためには「次元転生」をしなくてはいけない。ドミニオンの世界そのものはプレーヤー達が普段生活しているエミルの世界とは次元そのものが異なっており、ドミニオンに行くためにはプレーヤーは“来訪者”としてこれまでとは別なルールに支配される。具体的にはキャラクタの容姿、名前、習得スキル、ジョブはそのままでレベル1のキャラクタとしてドミニオンに降り立つことになるのだ。 考え方としては、キャラクタの外見と名前を引き継いだ新キャラクタで、ドミニオンを舞台に新しいゲームが始まる、というところだ。エミルの世界でレベル制限のある装備をしていたキャラクタはそれらのアイテムを装備できなくなってしまうし、習得レベルの制限がかかっているスキルは使えなくなる。 職業はそのままで1レベルのキャラクタとして“再スタート”となる。実を言うと現在、「ECO」ではタイタニアの本当の世界にはたどり着いていない。今後タイタニアに行くときも、「次元の壁」が関係してきそうである。ちなみに、この世界のレベルなどは元の世界とは全く独立したもので、元の世界に戻ればキャラクタは今まで通りである。 ドミニオンの世界には友人に天まで続く塔に連れて行ってもらえればレベル1のキャラクタでも行くことができる。しかし水落氏はドミニオンの世界は“上級者向けフィールド”だと語る。ドミニオンにはどんなレベル、どのような職業のキャラクタも行くことができるが、「転職」といった概念が存在しない。このため転生前のキャラクタの力量が重要になるということだ。 ドミニオンの世界の最大の特徴が「PvP」、もっとはっきりいってしまえば、他のキャラクタをお互いの合意無しに攻撃できる「PK(プレーヤーキラー)」が可能ということである。この要素に関しては同作における極めて大きな地殻変動であり、別項でピックアップして紹介したい。ドミニオンはお互いですら攻撃することも可能な殺伐とした世界であり、プレーヤーは「今までとは全く違う世界」ということを思い知らされることになるという。 その設定から翻ってみて考えると、エミルの世界にいるタイタニアやドミニオンは次元転生をしている存在となる。異種族の彼等はエミルの世界に「修行」に来ているという設定がある。修行が必要なほどドミニオンの世界は過酷な闘争の世界なのだと水落氏は語る。 ドミニオンの戦いに大きく関わっていくのが、ドミニオンの世界で明らかになる「第4の種族」の存在だ。ドミニオンの世界の住人はこの世界に進入してこようとする第4の種族との戦争を繰り広げている。この種族は実はエミルの世界にも関わった過去がある。エミルの世界は一度文明が滅んでしまったという過去があるが、その事件にも第4の種族は関わっているらしい。 「SAGA8」では彼等の姿を見かけることもある。今回、彼等のスクリーンショットを見ることができたが、全身金属のロボットのような姿を持つ種族だ。現時点では、彼等がエミル世界から来たプレーヤー達にとって敵なのか、そもそも何のためにドミニオンと争っているかの全貌は明かされない。彼等の存在を意識し、考えさせられることになりそうだ。 「SAGA8」で最初に実装される地域は天まで続く塔と、ウェストフォートその周辺となる。大体5~6マップ程度で、1レベルのプレーヤーが冒険をし、強くなっていく地域として設定されるようだ。「SAGA8」実装直後はドミニオンでのキャラクタにはレベルキャップがかけられていて、実装時はレベル30までとなっている。
ストーリー要素としてはプレーヤー達を引っ張っている「エミル」もまた、このドミニオンの世界で大きな変化を体験するという。冒険者の代表としてエミルがどのような活躍をし、そして彼と仲間の冒険がどのようにプレーヤー達にフィードバックしていくかも注目したい。
■ 過酷な世界に直面して見つめ直す「ECO」の楽しさ。大きな挑戦となるPK容認の方向性
このランキングシステムはプレーヤー達の戦いの結果が記録され、ランキングされていく。現在、フィールドでのPvPはキャラクタレベルが20以上離れている場合は攻撃できなくなる予定だが、ランキング上位になったプレーヤーはどのプレーヤーからも攻撃されるようになる。 一方、敗れたプレーヤーはデスペナルティとして経験値が減少し、レベルダウンする可能性もあり得る。もちろんレベルダウンはドミニオンのキャラクタだけであり、エミル世界のキャラクタにはフィードバックされない。PKをされても所持品を奪われる、といったこともない。もちろん倒されれば経験値を失ったり、復活させてもらえなければ、セーブポイントに戻されるといったペナルティは課せられる。ちなみに、レベル4までのキャラクタは他キャラクタを攻撃したり、されたりはできない仕様となっている。また、セーブポイントはエミルの世界よりも多く作られる予定だ。 このシステムが導入されることで、いち早く成長したプレーヤーが街の入口に陣取り、初期レベルのプレーヤーを次々とPKしていくことや、プレーヤー同士、プレーヤー集団同士での確執が生まれることは確実だ。PKやPKKといったことを積極的に行なうプレーヤーも出てくるだろう。データ的な関係性はなくても、エミルの世界にもこの感情の影響は波及していく。水落氏は「それもありではないか」と語る。「そんな時にこそ、エミル界で培ってきた絆の力で乗り越えてほしい」という。「ドミニオンの世界は1人で頑張るだけでは生きられない過酷な世界であることを認識してもらいたい」ということだ。
「ECO」を好むプレーヤーの多くはドミニオンの世界は「ないもの」と考えて、行かないのではないか。PKを好むプレーヤーだけが暮らすような世界になってしまうのではないか、という疑問も生まれる。「なぜこのシステムを入れるか」という筆者の質問に水落氏は「今後の展開」を理由に挙げる。 お互いが争うドミニオンの“修羅”の世界ではそうまでして戦う力を高め、対抗しなくてはいけない敵がいる。それが、第4の種族だ。彼等との戦いはドミニオンだけで完結するものではなく、もしドミニオンが敗れてしまえばエミル、タイタニアの世界も再び戦いに巻き込まれる。この戦いの結果は、世界全体に波及していく。全てのプレーヤーは世界の平和と安定を求めて、否応なしにドミニオンの世界の問題に直面しなくてはならないという。プレーヤーはどう行動していくか、今後、「ECO」は「世界の危機」に直面していくストーリーになっていくとのことだ。
「SAGA8」後半には新しい「攻防戦」の実装も考えており、これはこれまでのMMORPGに見られた攻城戦のような、城の所有権を奪い合うものではなく「防衛戦」要素が強いものになる予定だ。過酷な世界の中でそれでも繋がりを持って世界のために戦う、という非常にハードなテーマを今後訴えかけていきたい方向性だという。「ECO」のほのぼのとした明るくてかわいらしい世界の奥に、こんなテーマが隠されていたのかと、改めて驚かされた。「みんなでつくろう」というテーマを改めてより深く感じさせる作品にしていくために、この世界とシステムの導入は必要不可欠だと水落氏は強調する。
■ 新ジョイントジョブ「庭師」。「SAGA9」には企業の広告も兼ねた遊園地も登場 「SAGA8」ではこの他に新ジョイントジョブの「庭師」(ガーデナー)が追加される。「ジョイントジョブ」システムは特別なアイテム「シンボル装備」を装備することによって、従来の職業に加えて新たなスキルを獲得できるもの。庭師では、プレーヤー達が持っている「飛空庭」での庭を育てることができる職業だ。 庭師とはその名の通り、飛空庭を飾り立てることができるジョブだ。ファーマーのように“育てる”という要素に注力しているようで、庭師しか作れないアイテムがあり、育て方には攻略要素もあるという。そのアイテムを販売することで他のプレーヤーも自分の飛空庭を飾り付けることができるようだ。飛空庭は他プレーヤーを招待することもできる。これまで以上の「自分の庭」をアピールすることができそうである。 「ECO」では年末までに「SAGA10」の実装を目標としている。「SAGA9」は8月位を考えているという。「SAGA9」では再びタイタニアの世界がピックアップされる。今後ドミニオンとタイタニアの世界はより掘り下げられていくという。エミル、ドミニオン、タイタニア3つの世界に対して、ユーザーがどのように解釈していくかも楽しみである。 また、ユーザーに非常に人気の高いネコマタに関するストーリーも「SAGA10」で一区切りつくという。「SAGA8」では「エミル・クロニクル・オンライン ビギナーズパッケージ」の限定アイテムだったネコマタ(緑)がゲーム内アイテムとして入手できるようになるが、この他にもネコマタ関連のアップデートも予定しているようで、今後も注目である。 「SAGA9」で実装される予定のコンテンツで今回明らかになったのが「インゲームアトラクション」の要素だ。具体的には「タイニーアイランド」以上に華やかな、遊園地のようなフィールドを実装し、ここにゲーム内広告と関連づけたアトラクションを設置していこうというアイデアである。このフィールドでは専用の通貨を用意して、例えば広告ムービーを見ることで通貨を得られて、それでアトラクションを遊ぶと言うことを考えている。 ゲームはトランプを使ったカードゲームでシンプルなルールのものを、最初は2~3種類が実装される予定だ。対戦を楽しめるゲームも用意するという。アトラクションに関しては大型のものも構想として持っている。ゲーム広告を希望するメーカーが開発資金をフォローすることで、広告主のイメージにマッチしたアトラクションを設置する、ということを考えているという。 ユニークなチャレンジといえるが、商業よりなにおいも感じ、純粋な「ゲームを楽しむ」というところからはずれてしまいそうな危惧もある。筆者の質問に対して平原氏は「ユーザーの皆さんに楽しんでもらうことが一番大切です」と語る。「通常のゲームプレイとは違う、驚きやサプライズを体験して欲しい」という。
「ECO」の世界は「攻殻機動隊」や「エヴァンゲリオン」の姿をしたキャラクタが歩き回る、その混沌とした世界観が特徴の1つだ。現実のドリンクの形をしたコーヒーカップや、アニメのキャラクタのメリーゴーランドなどがあってもユーザーは楽しむかもしれない。企業との関係をユーザーにどこまで還元できるかは注目してみたいところだ。ちなみに、アニメーション作品とのコラボレーションに関しては今後も積極的に行なう予定で2作品が候補に挙がっているとのことだ。
ここで筆者の意見を言わせてもらえるならば、「SAGA8」のPKシステムには、やはり納得できない部分がある。「ウルティマオンライン(UO)」から生まれたオンラインゲーム世界は、結局、PKを禁止する方向に動いていった。他プレーヤーを自由に攻撃できるPKは、襲う側が絶対に有利であり、襲う側のプレーヤーの都合に襲われるプレーヤーが無理矢理従わされる。 そんな世界だからこそ信じられる仲間が生まれ、人の繋がりができる。それは筆者自身「UO」で体験したのだが、前提としてプレイする前にゲームの特性をある程度理解し、覚悟していたから受け止められたのだ。「ECO」でのプレーヤーにとって、これまでと全く違う関係性を考えなくてはいけないシステムの導入は、どう受け止められていくのだろうか。 過酷な世界を表現することと、他のプレーヤーをいきなり襲うことを許すのは決してイコールではないはずである。他のプレーヤーをだまして数人で襲う、とにかく相手に悪意をぶつけることを目的にゲームをプレイすること、PKを許可するのはユーザーのそうした行動を許可してしまう危険があることをユーザーと、開発、運営で改めて考えてみて欲しい。 こうした懸念に対し、水落氏はこうコメントした。「PvP要素に関しては、実装直後にかなり混乱をもたらしてしまうのではないかという想像もしています。しかし、実際に実装してユーザーのみなさんに問いかけていくと言うことしか私達はできません。ドミニオンの過酷な世界を見た上で、自分はどう生きるかを考えて欲しいと思っています。PvPというところでユーザーさんの懸念ももっともだと思いますが、私達は『ECOならではのPvP』を目指していますし、この過酷な世界で感じたこと、もしかしたら痛みも、その気持ちを大切にしてこれからどのように生きていくか、世界にどう働きかけていくかを考えてください。ドミニオンの世界の脅威とは決して無関係ではいられないことを頭の隅に入れていただければ」。 また、平原氏は「“みんなでつくろう”というのは『ECO』の根幹のメッセージです。様々な要素が入っていく中で色々なことを考えて楽しんでもらえれば、と思っています」とメッセージを語った。 今回はあくまでコンセプトの説明だったが、「世界の一員であることに直面してもらう」という制作側のメッセージは強く伝わってきた。この問題に直面したプレーヤーがどのような社会を作っていくかには興味は惹かれる。 しかし一方で、アイテムを集め、お互いの服装を褒めつつ、楽しい繋がりの輪を作ってきたユーザーに対して、テーマを語るためとは言っても過酷な問題を突きつけるのはどうなのか。この情報が発表された直後から、ユーザーと開発・運営側が「ECO」というゲームの本質をもう一度考え、議論していく大きなきっかけとなるだろう。この試練を越えてさらにユーザーが楽しめる世界への階段を上って欲しい。
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□ガンホー・オンライン・エンターテイメントのホームページ (2008年4月9日) [Reported by 勝田哲也]
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