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コーエー、Wii「オプーナ」
開発したアルテピアッツァ眞島真太郎氏、杉村幸子氏インタビュー
「オプーナ」の誕生からゲーム制作への想いまで

発売中

価格:7,140円

CEROレーティング:A (全年齢対象)

 株式会社コーエーのWii用RPG「オプーナ」が発売されて約1カ月となる。制作はこれまで錚々たる名作RPGを生み出してきたアルテピアッツァ株式会社。

 シンプルでありながら非常にキャッチーなデザインのキャラクタと、暖かみのある世界観で最近では少なくなった王道のRPGに仕上がっている。また、プレーヤーキャラクタのオプーナたちの持つエナジーボンボンを弾くようにして敵にぶつけることで攻撃するアクティブボンボンバトルもアクション要素の入ったシステムとして注目される。

 今回は制作を担当したアルテピアッツァの開発プロデューサー・眞島真太郎氏と開発ディレクター・杉村幸子氏に、「オプーナ」の誕生からシステムの裏側、バランス調整の苦労、そしてゲーム制作への想いなど広範囲にわたって伺った。




■ 「オプーナ」誕生。社内で流行っていたドッジボールからシステムが形成された

開発プロデューサーの眞島真太郎氏
―― まず最初に「オプーナ」が生まれたキッカケのお話をうかがいたいと思います。本作には“アクティブボンボンバトル”などWiiに特化している部分がありますが、まず最初に「オプーナ」の企画があって、そこからWii向けに開発を進めたのでしょうか?

杉村幸子氏(以下:杉村) 「オプーナ」に関しては、まず“キャラクタ”なんですよね。

眞島真太郎氏(以下:眞島) キャラクタが……(最初に)きまして。夜、寝てたらですね、こうキャラクタが出てきまして。お風呂に入って湯気で曇ったガラスに描いてみたら「あっ、そのままできた」っていう感じで、わりとスッとできたんです。当初、これをどういうふうに転がそうかなというのが、その瞬間にも色々とあって。キャラクタを含めて世界を広げて暖めていくなかで、ボンボンのシステムみたいなものも上手くいけるんじゃないかという形で、具体的な企画として固まってきたイメージですね。まず最初に、コイツ(オプーナ)がいたっていうのもあるんですけどね。

―― たぶん「ポンッ」と脳裏に浮かばれたんだと思うんです。その前から「こういったキャラクタを生み出そう!」などと思っていたわけではなく、いきなりこのキャラクタのグラフィックイメージが「きた!」という感じですか?

眞島 ですね。ここ10年ばかりの傾向として、とにかくハードが高精細な方向を向いているというのがあって。そのせいもあるでしょうし、あとは“商品の差別化”みたいなことを考えたときに、みんながもっと細かく描く方向に……「微に入り細に入り」っていう方向に向かっていった流れがあると思うんですね。結果的に、全体を見渡してみたら(みんなが)わりと同じ方向を向いていた感じがあって。

 そういったなかで、そういうものではない幅の広げ方はいくらでもあるんじゃないかと、ずっと思っていたんです。だからといって、色々試行錯誤をして、マーケティングをして、こういったキャラクタが出てきたってということではないんです。ただ、そうではない切り口で、何か表現していく手段というのは、常に頭の中で考えているので。そういうなかで、こういったキャラクタが出てきて、このキャラクタに向いたメディアというか、どう転がそうかなってずっとやっていた。

 うちもまぁ、これ以外の企画もありますけども。どちらかというと、1個1個「この作品なりのもの」っていう発想をしたという意味では、ちょっと変な作り方をしているところはあるかもしれないですね。いわゆる、一般的に「こういったものが流行っているから」みたいなことで作っていくというやり方は一切なく、出てきたキャラクタですので……。

―― でも、メインの“柱”となるものがあったから、逆にいえばそれに対して「どういったものがいいのか」を膨らましていけた感じですか?

眞島 こいつが先にコアとして出てきましたから、そこから世界観的なものとか、敵も含め、全部膨らんでいったという感じではありますね。

杉村 そのとき、ちょうど「ドッジボール」が社内で地味に流行ってまして(笑) ボンボン投げて敵にぶつける、そういうのもいいんじゃないの? みたいな話が出ていまして。それで「アクティブボンボンバトル」というのが一緒に出てきたんですけど。

―― 一番初めに眞島さんの方から言われた時は、「オプーナ」のキャラクタがコアとしてあって、そこから「ドッジボールが流行っている」のでシステムも……といった進み方だったのですか?

杉村 (武器が)剣じゃなくても、まぁいいんじゃないの? みたいな話がありまして。

眞島 球を当てるというのは、残虐性がないですよね。かなり派手に当てたとしても、剣を刺したり刻んだりというのとは違いますし。このキャラクタの表現としては (この戦闘シーンが) あっていると思いますし。あとは「身体を動かす」というイメージ。球技的なイメージを持たせることで、アクティブな印象を持たせられるかな? ということがありましたので。

杉村 「ドラゴンクエスト」シリーズでは剣がメインでやっていて、「トルネコ」も少しお手伝いしたのですが「不思議のダンジョン」シリーズなので、ひとつの武器を育てていくタイプのゲームじゃないですか。そのどちらも面白いなぁと思ったのですが、剣は「ドラクエ」でやっていますから、やっぱり別のものがいいなという考えも元々ありましたし、ちょうどそれらが偶然合致したという感じです。考えに考え抜いて「とにかく違うものをやらなきゃ」で至ったわけではないんです。

―― 話は少し戻りますが、杉村さんが初めてキャラクタをごらんになったときの印象は?

杉村 私は、とにかく「カワイイ!」と思って。老若男女、みなさん印象は違うと思うのですが、社内の女の子は「何コレ? 何これ!」みたいに言ってました。よく眞島が“ヘナキャラ”をふざけて仕様書に描くことがあるんですよ。そのなかのひとつにたまたまコレがあったんですけど、異様に女子社員にウケがよくて。私も凄く好きだったので「これ、どんなキャラ?」みたいな話をしていくうちに「いや、実は兄弟がいて……」とか「仲間にジャイアントがいる」とか。これ独特でいいんじゃないの? みたいな。この世界がゲームにならないかな、という印象は受けましたね。

―― では当初、いくつかあるキャラクタのひとつではあったわけですが、そのなかで生き残るというのは、やはり思い入れもありますか?

眞島 一番シンプルに「わかりやすい」っていうところだと思うんです。「頭の上にオレンジ色の丸いのがついてるやつ」っていうと、それでもう説明できちゃうじゃないですか。特にボクのパートはグラフィックスなので。「絵」っていうのは、言葉で表現するのは難しいじゃないですか。それが、パッと一言でいえてしまうようなシンプルなグラフィック表現も、それはボク正しいと思うんですよね。ニュアンスみたいなものは、もちろん描いていくなかで色使いやタッチなどの違いは出てくるのですが、ただパッと一言でいえるくらいの絵としての特徴は「ゲーム」というメディアを考えたとき、凄く大事だと思うので。そういう意味で、これはとてもわかりやすいと思いましたね。他のキャラクタも色々描いたのですが、一言で説明できるのか、あるいは「電話口で説明して相手がそのとおりに描けているか?」みたいなところでいうと、一番シンプルだなっていう気がします。

―― 先ほど「兄弟がいて……」という話がありましたが、一番最初にオプーナが出てきたとき、すでにグラフィックと一緒に設定なども浮かんでいたということでしょうか?

眞島 そうですね。まず「ひとりっ子じゃ寂しいだろうな」みたいな(笑)。友だちもいるだろなとか、そのへんもわりと「ポンポンポーン!」と出てきましたね。

【キャラクターイラスト】
一番上の兄のオプーナ オプーナの妹のポリーナ 弟のコプーナ


―― そうやって進んでいったところで、敵キャラクタのグラフィックもオプーナを中心に「それだったら、こんな敵キャラクタだろう」という感じで作られたということですか?

眞島 なんていうのかな……「この文法で語ると、モンスターってこうだろう」みたいな感じですね。英語なら英語、フランス語ならフランス語みたいな切り口で考えていくと「こいつらはこうだろうな」と。生物なんだろうけど物っぽくもあり。そういうのが原型になってますね。

―― 敵キャラクタも、凄くシンプルだけど、なにかひとつグッとくるようなところがある。あまりに違うと、オプーナとは離れてしまうからでしょうか?

眞島 線の多さで魅せるキャラクタたちではないと思うので、色とフォルムが基本になります。そういった意味では“丸いオレンジ”っていう発想は同じです。基本の形、記号として取り出していったときに、もの凄くシンプルな形に落とし込めるっていうことを考えてきました。従来のモンスターでしたら、トカゲやライオンの化物とか、既存のものを誇張したり発展させたりして作っていくことが多いですけど。もちろん、イメージとして植物的とか、そういったものはありますけど、「オプーナ」では具体的に「コレってなんのモンスター?」と聞かれたとき、特にないものが非常に多いと思うんですね。元になるものは、別にない。イメージを抽出して、それを丸や四角といったシンプルなシェイプに落とし込んでいくふうに作りました。

―― 杉村さんに質問ですが、やはりゲームのシステムを作られる方から「(モンスターが)何体欲しい」とか、そういったやりとりもあったのでしょうか?

杉村 そうですね。基本、色が違うタイプとか。全部を個性のある種類別にすると、さすがに数が……描くのが大変なので。だいたい基本形が何体かあって、それのバリエーションが何体あれば、このぐらいのボリュームを持たせられるというのがあるんですよ。だから眞島にも「最低でも170くらいは描いてもらわないと、ボリュームがもちません」という話をして、それだけは描いてもらったという感じですね。

―― そのあたりは、随分と作りなれていらっしゃるから眞島さんの方も「だいたいこれくらい作らなきゃなぁ」みたいにわかっている部分もあるのでしょう?

眞島 でもやっぱりね、“波”がありますよ(一同笑)。最初の段階で何10体か、もう相当量描きためたものがありましたけど、やっぱりゲーム1本構成していくとなると「後半に出てくるものとして、これくらいのものが欲しい」とか、「小さいものと一緒に出てくるなら、大きいものも欲しいだろう」とか、そういうシチュエーションみたいなものがおのずと見えてくるので。そこに割り当てるのにいいキャラクタを考えるというのが必要になってくるんです。

 そういう意味では、描いたんだけど「こいつはこのラインナップのなかで居場所がないな」と外しているやつとかも何体かいますし。

―― それはもう、結果的に日の目を見なかったりしたのですか?

眞島 (日の目を)見てないです。あとはもう単純にポリゴンを食いすぎてダメとか。シンプルな形だからポリゴンが少ないのかというとそうではなく、柔らかなシェイプをキレイに見せるものほどポリゴンを食うので、モデルを作った人間からは文句をいわれましたね。「眞島さん、もっとデコボコしているほうが意外と面数少なくていいです」と言われ、「ポリゴンを食ってもいいから丸くしろ!」みたいな感じで(笑)。輪郭線そのもののキレイさっていうのは、単純にポリゴン数によってしまうところがあるので。無茶ではなく、なおかつシェイプができるだけキレイに出る面数っていうのを出さないといけませんし。

杉村 うちの場合、そういうところはかなり割り切っていますけどね。プレーヤーがサクサクプレイできるくらいの処理にしないと、重いですし。とにかくツルツルなめらかにすることよりも、プレーヤーの遊びやすさを重視しています。

―― グラフィックスと(処理の)せめぎあいみたいなところがあるですね?

杉村 どちらかというと、アルテピアッツァの場合はグラフィックスのメンバーが「遊びやすいほうがいいよね」と思っておりますので。

眞島 全体としてパンクしちゃうよりは「ここは割らないとボロが出るから、どこかでそれを一生懸命稼ごう」という感じですかね。たとえばアタマの丸なんていうのは一番目がいくところなので、そこには面数を使いましょう。でも、足の裏に面数を使ったってしょうがないので、そこは稼ぎましょうねみたいな感じで、そこは一生懸命つじつまを合わせていく感じですね。

―― みなさんバランス感覚をお持ちになっているから(コンセンサスについては)大丈夫ということですね。

杉村 結構、大作RPGばかり何本も作ってますので、作り始める段階でみんな物量がダーン! とアタマに浮かぶんですね。ひとつの画面に出る情報量の大きさと、サクサクプレイするために必要なもの……そこは毎回苦労していますねぇ。

【敵キャラクターイラスト】
ダークローグのジャミン ダークローグのフラウア ダークローグのサンノブサン
ダークローグのビフォアザマスク ダークローグのスペイスバルブ ダークローグのツリー



■ ユーザーに見えにくい部分での制作での苦労

開発ディレクターの杉村幸子氏
―― Wiiとの出会い、と申しますか。アクティブボンボンバトルは社内でドッジボールが流行っていたからという話でしたが、その時点で「Wiiでやるぞ」と決めていたんでしょうか?

杉村 そのときはまだハードは考えていなくて、ただ「アナログスティックがないと遊べないな」とは思っていました。必ずアナログスティックのあるハードにしようとは考えていました。

―― プレイステーション 2、Xbox 360でもできないことはなかったと思うのですが、最終的に「Wiiにしましょう」と決めた要因は?

杉村 ヌンチャクですね。ずっと「片手でRPGをやる」というのが、凄く楽で、私だけではなくてスタッフもみんないいと思っていたんですね。HORIさんの「片手コントローラー」でしたっけ? あれが「ドラクエ」メンバーとかも、キーの割り振りとか、なるべく片手で遊べるように考えたりはしていたんですよ。それだったら、最初からコントローラーが片手なら、オプションを買わなくても遊べると思ったんですね。ヌンチャクとリモコンはつながっていますけど、リモコンは置いておけばいいですし。

―― そういう理由で、Wiiで行こうみたいな感じですか?

杉村 そうですね。ハードはコーエーさんの決定が必要ですので、うちが独自に決めたわけではないですけど。

―― その前にコーエーさんとの出会いがあったわけですね。その経緯はどういったものだったのですか?

杉村 (コーエーの)襟川名誉会長が、コーエーでRPGを作りたいというお考えから、堀井雄二さんに「お弟子さんを紹介してほしい」とおっしゃったそうなんです。それで堀井雄二さんからこちらに連絡をいただきまして。その頃ちょうど「オプーナ」の企画を進めていましたので「是非やらせて欲しい」とお願いしました。それで直接お会いして、「オプーナ」を開発させていただけることになりました。

―― その時点では、もうアウトラインを決めながらという段階だったのでしょうか?

杉村 そうですね。「アクティブボンボンバトル」というシステム、こういうキャラクタと世界観、RPGとしてのシステムは決めていました。あとは、実際に制作する中でコーエーさんとやりとりしつつ「こうしたらいいんじゃないか」ってことで、今の形になりました。

―― 「こうしたらいいんじゃないか」といわれた部分は、どういったところでしょうか?

杉村 うちは作り手ですので、作り手側だけだと見えない部分があるじゃないですか。遊んだときに、やりやすいとか、やりにくいとか。そういったところはコーエーさんのモニターの方とか、色々なご意見をいただいて調整していった感じですね。

―― プレイさせていただいて、先ほどおっしゃっていた「サクサク」というのはとても実感できました。ストーリーがサクサク進むというのもあるのですが、メニューをいちいち出して設定するとか、そういったところも気が行き届いているなぁと思いました。そのあたりも凄く苦労されたのでは?

杉村 まだ作りこみが足りてないとは思うのですが、まず「広いところを素早く動く」というのは、前からやってはみたかったんですよね。「ドラクエ」はマップが箱庭のようなつくりになっていて、町全体を把握しやすいという利点がありました。一方、「オプーナ」は広いマップを作って、そこを猛スピードで歩けるっていう。そういうのも凄く気持ちいいなぁというのがありまして。ただ、広いと迷うので……「あぁ、広いと(やっぱり)迷うのかぁ」というのは、作ってみてわかったという(笑)。

―― 少々話は反れますが、では「ドラゴンクエスト」はわざと狭く作っているということですか?

杉村 わざと狭く作っているというよりは、把握しきれる広さというものを重要視した上で、そのマップの面白さを表現しています。結果としてコンパクトなサイズに抑えられているという感じですよね。

眞島 RPGってやはり(プレイ時間が)長いですから。情報をある程度うまく集約してあげないと、ユーザーがついていけなくなってしまうという部分があるじゃないですか。その表現の方法として全体の規模をコンパクトに押さえるやりかたもありますし、情報を整理して提供するというやりかたもありますし、それはさまざま。それが「ドラクエ」と「オプーナ」は違うアプローチをとったけど、狙いは一緒ですよね。どうやればユーザーが遊びやすいか、そのために情報をどういうふうに扱うかの差でしかない。

杉村 そういった意味では、広いところをウロウロ歩いているうちに、ひみつキーとか「ここにも部屋があったのか!」とか、そういうのを楽しんでもらえればと思って、わざと広く作っている部分はあります。

―― ユーザーさんの冒険心を煽るような仕掛けを作ることに腐心されたということですね。

杉村 はい。そう思って、マップもユーザーさんの興味を引くものであれば……面白そうなマップがあれば「この先どんなことがあるのか」と感じてもらえるかと思いまして、各ドームごとに全く違う雰囲気にしたり。あとは、天井ですとか……「普段見ないだろう?」というところまで、相当作りこんではあるんですよね。

―― 一番初めに、わざわざ「Cボタンで周りを見て?」といわれますものね(笑)。そのあたりのデザインは大変でしたか?

眞島 そうですね。やはり「ドラクエ」と根本的に違うのは、客観的にマップを捉える距離感がある一方で、「オプーナ」は主観的に捉えるみたいなところがある。パッと目を動かしてみたときに、その空間を“自然に受け入れられる”要素というのを、色々作りこみながらやっていったというところですね。天井であるとか、目の高さ以外のものも凄く影響していることが、なんとなく見えてきたんですね。

 そういう意味で、建物がちゃんと「建物らしく」あって、そこに私が入っているんだ、という感じを見せていく。特に、天井の光の扱い方。どういう光を当てるのか? どっちから当っているのか? そういうのをきちんとやることが、このマップを見せるには有効だなというところがありましたので。確かに、かなり手間をかけて天井とか作ってありますけど、あれを全部とると、また違ってきちゃう。あの感じにはならないんですね。

杉村 PS2「ドラゴンクエストV」を作ったときに……開発スタッフは“スケルトンセーブシステム”と呼んでいるのですが、マップを回して手前にきたとき、手前の壁だけを消しているんですよ。壁を全部消すと箱庭っぽくなってしまうので、柱ですとか内部の構造体をわざと別モデルで作ってありまして。それは全部、手前にきても残すようにしてあるんですね。それが作り手として凄く大変なのですが、面白かったんです。「オプーナ」では「この部分は残して、この部分は消して」とか凝って作ると、天井まで含めて建物の中身を丸ごと作れるので、そこにはかなり手を入れてますね。ユーザーさんのためというよりは、作り手のこだわりが大きい部分ではありますけど。

―― たしかに壁は消えますが、エレベーターのあるところで後ろにいくと、エレベーターは残るんですよね。

眞島 結構そのあたりは、どれを上手く残して、どれを消していくのか。結果として「ドラクエ」よりはるかに苦労することになりましたよね。ああいったプレーヤーキャラクタを後ろから見る視点のゲームっていうのは結構あるのですが、壁にバックして近づいていくときに、カメラも凄く近づいちゃうことがあるじゃないですか。あれってカメラに依存するので、長く続けていくと結構疲れるんですよ。

 今回、弊社がやったのは、カメラが平気で壁を通過しちゃう。でも、壁を通過しちゃうと目の前に壁がありますよね。プレーヤーが見えなくなっちゃう。だから、壁自体も消しちゃう。そのかわり「ここに壁があるんだよ」ということで、構造としてどうなっているというのをハッキリ示すために柱を残す。その柱も、ある距離までくると、今度はスッと消えていってくれる。

 その“2段階に消えていく処理”をやって、カメラをストレスなく、どんな位置でも、どんなに狭くても回せるという作り方をしましたので……まぁハッキリいって自爆しましたね(笑)。現場としては「うわぁ……」って感じでしたけれども。ただ、当初やっぱり思っていた「カメラが不用意に動いてしまうことへのストレス」みたいなのは大幅に解消できましたので、やって正解だったとは思いますが、現場としては「首しめたねぇ」っていう感じはありますけど。

―― 3D作品は、どれもカメラが重要ですよね。裏方の作業ではあるけど、誰もが苦労されている。映画は決め打ちでカメラワークを決めているので……もちろん悩まれるのでしょうけど。ゲームの場合はプレーヤーの操作で動きますし。

眞島 映画と違って、どういう状況が起きるかわからないという情報量が、はるかに多いですから。あと、3Dのゲームも「プレーヤーの目そのものから見た視点」というのは、カメラ=プレーヤーになりますから、そういった壁にめりこむといった問題は起きませんが、キャラクタを後ろから見るようなシステムの場合、「あ、これが俺だ」みたいな感じというよりは、もっと動き回るものになりますので、またゲームとの接し方が変わってくると思うんですね。本当に、そういったものを含めて「カメラをどう扱っていくのか」というのは、今後もまだまだ試行錯誤があるんじゃないかと思います。

―― 今回、そのひとつの答えとして、大変ながらやってみたということですね。何段階で消えていくとなると、データ量が倍増するんじゃないでしょうか?

眞島 極端な話、さっきいったような“この目線のカメラ”であれば、壁の外って何も作ってなくていいんですけど、今回うちは壁の外にさらに柱が立っているところがあるわけですから、そのぶんは確かにデータ量が増えてしまいますね。

杉村 通常はプログラマーが3Dシステム表現について模索するところかもしれませんが、うちの特徴はCGデザイナー本人がそこを悩んで、自分の作業でなんとかしようとするので、CGデザイナー個人としての仕事の範疇は越えるかもしれませんが、ちょっと変わったことはできますね。たとえば、消える部分と消えない部分で実際のCGモデルをただ分割するのではなくて作りわけるっていうことは、CGデザイナーが自分で考えるので、どれを残したらいいのかが凄く考えやすい。一律で壁っていうシステムが消えるということではない。

眞島 たとえば、壁のそとに大小ふたつの物があったとします。小さいものは残っていても気にならないといったとき、実は壁の外にある柱とかにも1本1本「消え始める距離」と「消え終わる距離」、「消え終わったときに何パーセントまで透明にするか」みたいな数値を、ひとつひとつのものが全部もっているんですよ。その仕込みもCGデザイナーが全部やってますね、近づいていったときも、大きいものは邪魔なんで早々にスーッと消えていってもらう。小さいのは、もっと近づいたら消えるみたいなものを全部データで仕込んじゃう。

 実際、一律プログラムでやろうとすると……プログラムっていうのは良くも悪くもシステムですから、完成評価ってできないじゃないですか。でも、これは早く消したほうがいい、これはもう少し見えててもいいねっていう完成評価に関わるものを、CGを作っている人間が全部入れちゃいますので、かなり細かく調整できるし、場合によっては意図的に残すこともできる。ある意味、演出家的な判断も必要にはなりますけど。

杉村 そういったなかでは、非常に地道な部分。プレーヤーは恐らく、あまり気付いていない(笑)。

―― 気付いていないけど凄く重要なところで、これがないとプレイの感情移入が違ってくるということですね。

眞島 まぁ、我々が苦労している部分というのは、ユーザーに気付かせないためにするような苦労ですので。「気付いてなければバッチグー!」みたいな感じでしょうか。「そうだよねぇ。お互い苦労したけど……酒、飲もうよ!」そういう努力といえなくもないですけど(一同笑)。ただそれは、社会インフラがうまく整っていると歩いている人たちはなんの苦労もないけど、そのためにどれだけ苦労している人がいるか、みたいな。そういうのと近いところはありますけど。

―― ゲームは、ひとつの世界をすべて作り上げるっていうことですものね。

眞島 駅で切符を買うときに、いちいち駅員さんが手渡ししていたら手間がかかってしかたないので、券売機でパッとやっちゃえばいいのにっていう考え方もありますけど。でもやっぱり、手で描くところの良さみたいなところもあったりしますし。それがユーザーのためなら「苦労しても手で描こうよ」みたいなところもありますね。デジタルな世の中といえども、合理的に全部できるかっていうと、そうじゃないですから。


■ ゲームバランスの調節は苦労の連続

―― ゲームの序盤ですが、何度も「シミュレーター」で戦う練習ができたり、親切な作りになっていますよね。そういった部分と「やりこみ要素」のバランス取りは、結構大変だったと思うのですが?

杉村 そうですね。どこまで説明して、どこから突き放すのかっていうのは、本当に何度も何度もテストプレイをして、やればやるほどバランスが整っていくんですよね。いつまでやっても完成しないので、どこかで切らなきゃいけないって感じですよね。

―― 先ほどメニュー周りで「まだまだだよね」と仰っていたのは、たとえばどういった部分でしょうか?

杉村 本当なら、なるべくメニューは開きたくないんですよ。バトル中もなるべくメニューは開きたくないのですが、そのためにはたとえばボタンに機能を振りわけるとか、そういったことをしなきゃならないじゃないですか。はじめてゲームを遊ぶような人が、どのボタンを押せばいいのか覚えきれない。そうすると、やっぱりボタンは1個で、ヌンチャクで上下の決定とキャンセルのみで操作しようとすると、どうしてもメニューっていうものが出てきますよね。ただ、それはどんどん突き詰めて考えていけば、また別の解決策も出てくると思うんです。でも、100パーセントのところまで考えられる余裕があったかといえば、たぶん新作1作目で、この規模で、なかなかそこまでいけてなかったと思うんですね。そういう意味で言ったんですけど……。

眞島 正直な話、戦闘で「たたかう、アイテム」というコマンドがあったとしますよね。これを「アイテム、たたかう」の順番に入れ替えただけでも、ゲームってやってみるとまるで変わっちゃうんですよね。ワンステップ入るっていうことのストレス。特にRPGは繰り返しの回数が多いですから、ボディーブロー的に効いてくる。

 そういう調整っていうのは、やっていると本当にきりがない。変な話、戦闘システムを変えずゲームのバランスだけをちょっと変えました、と。ある程度こちらが呪文を使うシチュエーションが多くなったとすると、たとえば「たたかう、じゅもん」の順番を逆にしたほうががやりやすいね、ということになったりする。そこは全部からみあっているものなので、ちょっとした差がえらい違いになることはありますね。

杉村 「オプーナ」は、プレイする人でかなり意見がわかれたんですよ。フォースをまったく使わないプレーヤー、フォースばかり使うプレーヤー、エナジーボンボンの装備品に「フライングスルー」という突き抜けるものがあるのですが、それをまったく使わないプレーヤーもいたりとか。てんでんバラバラになったんですね。だから「どれがメインなんだ?」っていうところで、いまはわりと誰でも最後まで到達できるようなバランスで作ってますけど、そこが絞り込まれていくと、また違ったバランスにはなっていくと思うんですよね。

―― 私はどちらかというと「エナジーボンボンを投げる」派ですね。最初にさんざん言われるのもありますけど「弾く」というのが楽しかったので。

杉村 私も「エナジーボンボンを投げる」派なんですよね。結構フォース派も多いんですけど。私は貫通しない派。

眞島 ボクは「エナジーボンボンを投げる」派で、なおかつ貫通派ですね。

―― みんなそれぞれ変わってくるからこそ、どこを中心にするかが難しいバランスになるんでしょうね。

眞島 それはそれてまたやりすぎると、フォースをメインにしすぎて「エナジーボンボンを投げる」派が邪険にされているわけじゃないですけど、どこか特化しすぎると他にしわ寄せがきたりというのもあるので……。

杉村 これに関しては1作目なので、バランスに関しては甘めになっています。わりと簡単に、なんとなくやっていれば全部できるようになっています。全滅してしまった時のペナルティも、「ドラクエ」などに比べて非常に少なくなっていますので。

―― RPGはバトルシーンのプレイ比率が高いですから、そこのバランスが一番大変なところということですよね。

杉村 それもそうですが、お金の入手とか。あと、どの辺でどんなアイテムが買えるかとか。バトルも含めて全体に関わってきますので、そこはやっぱり完成してからのテストプレイ時間が長いほど調節できるんですよ。でも、RPGですとテストプレイをするのに20~30時間かかってしまうので、なかなか何度もやっていられない。それでもなんとか納得のいくところまで調整してギリギリで完成する、ということの繰り返しです。これはRPGに限らず、開発者の誰もが感じていることでしょうね。

【スクリーンショット】
社内で流行っていたドッジボールが元となりシステムが形成されていった戦闘システム。時間制限があるところも面白い。社内ではプレイする人によってエナジーボンボンを投げる派とフォースを使う派で分かれたのだとか


―― 一番最初の発表会で拝見させていただいた際、かなり出来上がっていましたし、コーエーさんが「夏頃までには出したい」というようなことをおっしゃっていたのですが、その後お時間がかかったように思えます。やはりバランスを重点的にとりたかったということでしょうか?

杉村 普段のRPG部分ですね。マップが広いのと、CG作成、シナリオにも時間がかかりました。バトルのシステムは、もう最初にかなりできていたので、敵もどんどん作っていたんですね。発表会でお見せしたのはバトルの部分。その他も、わりともっと早くできるはずだったんですけど……想定外の時間がかかって。

―― 世界が広がると作る分量は増えますものね。

杉村 だいたい枠を作って最後にバーッと仕上げるんですけど、とにかく思ったよりもマップとフロア数、広さがあって仕上げに異常に時間がかかっちゃって……。

―― 1作目としての満足度は、どれくらいですか?

杉村 ゲームの規模、制作期間を考えると、個人的には90点くらいです。

眞島 物凄く自分に厳しくいうと70点。普通にいうと、新作としては90点。20点の差は、先ほど「トータルでバランスをとって」という話がありましたけど、バランスをとっていく作業のなかで、もう一度原点に立ち返って「最初に作ったところを直さなきゃいかん」というところで「手をつけきれなかったところ」が残ってしまった。たとえば、ある程度ゲームができてきて、なんとなくタッチがわかったとき「ここはもう少しこうしておこう」、「こういうふうに元に戻しておこう」というのは、既に完成しているいところに手をつけるっていうのはなかなか難しいじゃないですか。そこを、もうちょっと、こう……いくつか押さえたいところがあったな。そういうところがちょっと惜しかったかな、という気はします。

 まぁただ、「ドラクエ」シリーズの制作でも、「もっとこうしたかったから、次はやろう」みたいなところはあるので、自分でやってて100点出たことなんかないですから、やむをえないところではあるんですけど。あえて厳しくいうと、そういう感じではあります。

―― 工数、お金の問題を考えると、なかなかそこまで立ち返れなかったりしますものね。

眞島 でもやっぱり、最後の最後に全部がまとまってきた「この時期」だからこそ見えてくるものがあるんですよ。でも、そこまでくると手をつけるのが難しいところもあって、さっきの時間の話とかに直接的に関わってきちゃうところではあるんですけどね。

杉村 でも当初は、バトルとバトル以外の時間を半々くらいにしたいゲームだったんですね。なぜそう考えたかといいますと、「ドラクエ」はゲーム時間のなかでバトルが長いと思います。そこで、半々くらいのバランスでつくれば違う雰囲気のゲームになりそうだと思いまして、その点は想定通りにできたかなと思います。

―― 70点や90点の残りは「次につなげたいな」という感じですか?

杉村 ありますね。贅沢になるので、たぶん次もきっと「まだまだ」といっていると思うんです。みなさんそうでしょうしょうけど(笑)。でも、1回「100点でした!」と思ったら「もうゲームを作らなくていいや」とか思うかもしれないですよね。

―― モチベーションではなくなるでしょうね。

眞島 そこは難しいところですよね。ある意味「俺は100点だ!」と思ってまっすぐ突き進んでいる人が、うらやましくもあるんですけど。

―― そういう人たちも、実は「100点だ」といいつつ進んではいるけど、内面での葛藤はあるのではないかと思います。

眞島 「100点」といってしまうことで、前に進もうみたいな。そういうのも、やっぱりあると思いますし。

杉村 自分で作ってて「これは面白い、バッチリだ!」と思うのって、なかなか難しいと思うんですよね。自分で判断できないじゃないですか。でも信じるしかないから作っているわけで。そういうなかでは、デバッグして最後のテストプレイで調整しているとき「オプーナ」はプレイしていて嫌にならなかったんですよ。だから「あれ、これはひょっとして、かなり面白いんじゃないか?」とは思っているんですけど。

―― ある意味、テストプレイしていて「嫌になる」というのもまた、つらいところですね。

杉村 私は社会人としてはダメなんでしょうが飽きっぽい性格なもので、先がわかっていると何度も繰り返す作業が嫌になっちゃうんですね。通常、ゲームは先がわからなくて楽しくてやるので。わりと「オプーナ」は、そういう意味で“わからない”部分が多いというか。ランダム性じゃないですけど、次がどうなるのか(わからない)。バトルもアクティブな要素が入ってますし。そのせいかなと思うんですけど。

眞島 たとえば職業とかも、やってもやらなくてもいいものって随分あるんですよ。1回目と2回目のプレイで、やり方をちょっと変えただけで随分と展開が違いますし。バトルも、どういう隊列で出てくるのかまったく予測がつかない。もちろん制御はしているんですけど、ただ1匹しか出てこないこともあれば、10匹でてきたり。「あぁ、こういうシチュエーションは前もあったね」ということなくプレイできる部分は、ずいぶんあるかなと思います。

 あとはやっぱり「アタマで考えた理屈っぽい面白さだけでなく、できあがってきた作品」は、ボク面白いんじゃないかな、と思ってるんですね。球を弾くにしても、手を動かす楽しさってあるじゃないですか。パチンコって、手を動かす楽しさがあると思うんですよ。物を作るにしても、完成したものがいい云々よりも、作っている最中の、手を動かしていることの楽しさ。そういう意味では、「オプーナ」はアクションゲームではないですけど、アクションゲーム的な手の快感というのがあって、そういうのはシンプルだから楽しいのかな、っていう気はするんです。色々な企画を出すときにも、さっきの「キャラクタが言葉で説明できる」じゃないですけど、できるだけシンプルに「理屈じゃなくて、なんかそれってゾクっとくるよね」そういう部分で発想していきたいな、というのはありますね。「あー、そういうのってあるよね!」っていうところ。

―― では最後に、すでにプレイされた人も多いと思うですけど、これからプレイする人に向けてコメントをお願いします。

眞島 そうですね……とにかくいじって、手を動かして遊ぶっていう。最近ゲームが複雑になってきていますけど、「オプーナ」は凄くシンプルにできているんですよ。とにかく走って、指を一生懸命動かして、人と話して。とても入りやすい切り口で作ったつもりでいますので、今までゲームを敬遠されていた方とか、ニンテンドーDSからゲーム機に触れた新しくゲームを始めた層の方々も多いと思いますので。そういう人たちに、コントローラ1個で指を動かして遊べるゲームになっておりますので「まずいじってみてください」という。見て、考えて、話してどうこうではなく、とにかくプレイしてみてください、という感じです。

杉村 かなり「横に広がっている」ゲームなので「これあとで役に立つのかな? 1回やっといたほうがいいのかな?」と思うところがいくつも出てきますが、それは無駄になることはないので、どんどんやってみてください。


■ 「次はシューティングを作りたい!」ゲームにかける想い

眞島真太郎氏と杉村幸子氏にはゲームのシステム面からゲーム作りの想いまで伺った
―― ありがとうございました。ちなみに、次の企画というのは、まだ無い状態でしょうか?

杉村 一生懸命考えてます。リハビリしながら(笑)。

眞島 実は、なんと11月に、大作RPGが2本も発売されているんです。社内の開発スタッフはもちろんのこと、一緒に組ませていただいている外部スタッフも無尽蔵にいるわけじゃありませんので、クオリティを考えるとあまり数をこなすことはできません。今年はもう本当にヨレヨレでした(笑)。

 ただ、少ない作品を集中して制作することで、「それでできないこと」というか、そのシステムとか、その作品では表現できない「別の切り口」みたいな部分が常にアタマにあるので、「あぁ、これが今度こういうふうにできるな」と。それがいいタイミングでポンと一緒になると、実際に動く企画がひとつあがってくるみたいな感じだと思うので。そういうのは、常にアタマのなかでグルグル回っている感じですね。

杉村 そういえば、たまにはシューティングゲーム、作りたいんですけどねぇ。誰も「作ってくれ」って言ってくださいませんね(笑)。

眞島 最近、ビックカメラのゲームコーナーなんかにいくと「シューティング」っていう棚、ないんですよね。時代の流れを感じますね。

―― アーケードとかで、一部頑張っていらっしゃるメーカーさんがいらっしゃいますが……。なかなかメインストリームになりませんね。

杉村 面白いシューティングっていいと思うんですけど「シューティング、どうですかね?」で通るパブリッシャーさんはないだろう、と。

眞島 でもあの、なんていうのかな……DSとかああいったシンプルなところで、1回ゲーム機に“ちょっとリセットがかかった感じ”ってあるじゃないですか。あれはボクいい傾向だと思うんですよ。新規ユーザーさんがポンと入ってくる大きな機会というのは、ここ20年を見たときにDSで大きく動いた。これは大きかったと思うんです。今までなかった。おばちゃんとかが「DSって面白いんでしょ?」って買ってくるみたいな。おばちゃんが買ってるよ、ゲーム機!! みたいな。それは本当にチャンスだと思うので。そういうリセットがかかった機会っていうのは、なかなかないので。シューティングみたいなプリミティブなゲームっていうのはチャンスなのかなーっていう気もしなくもないです。

杉村 シューティングっていっても、名作もあるから、難しいですよね。「じゃぁ、どういうシューティングをやる気?」とかいわれても、なかなか出てこないですからね。

―― 今のところは「シューティングをやりたいな」というところですか? 何かアイデアとかイメージがありますか?

杉村 台詞のないゲームを作りたいな……と(笑)。今までの慣れと使命感から、やっぱりRPGをやろうというのもあるんですけど。

―― では、誰かから「作ってくれ」といわれたら、違うジャンルも制作してみたいですか?

杉村 違うジャンルのものにも挑戦してみたい気持ちは、もちろんあります。

眞島 じつは「メトロイド」が大好きなんですが……プレイして腕が上がってきたときに、「こんなことが、俺できるようになっちゃったんだ!」っていう感じ? ちょっと難しいんですけど。でもやっぱり、ユーザーが今ゲームをやったときに「ウキウキできる」っていうか「いい気分になれる」というみたいなところも必要かなぁという気がしているんです。あのゲームで上手くなったときは、気分いいですよぉ!

―― ほかのゲームでも「ユーザーさんに発見してもらいたい」という話が出ていましたね。クリアできないのは困りますけど、最近はどうしても簡単にしなきゃいけないとかあるじゃないですか。ある程度「やってる感が欲しいよね」みたいな話しがありましたね。それは皆、制作者さんも我々伝える側も、若干感じているところがあるのかもしれないですね。

眞島 ユーザーに能動的に動いてもらうことを、あまり期待しないゲームが多いっていうか。でもRPGだと主人公=自分が苦労だけして、イベントは勝手に動くみたいなことになりかねないので、そういう意味では能動的に動く部分を楽しくユーザーにやってもらえるのがいいのかな。最近はゲームに限らず、あんまり能動的に動かなくても済んじゃう世の中になってきちゃって、困ったもんですけどね。

杉村 人に話しかけなくても、チュートリアルを開いたりしてわかるようになってて、便利だと思うんですけど。人に話しかけて欲しいなーと思う反面、それにはプレーヤーの行動ひとつひとつにすべて対応するフォローを用意しなければなりませんが……。

―― 現実的に、コンビニにいっても物を出せば一言もしゃべらずに買えますし。

眞島 レジの人も、一言もしゃべらずに打ってたりしますからね。

杉村 (そういう世の中なのに)ゲームのなかで人に話しかけるっていうのは、なかなか不思議なことだとは思いますね。

眞島 ボク、外国の空港でひとり置いていかれたことがあるんです。チケットの不備でですね、帰れなくなっちゃった。ひとりだけ置いていかれて、どうしたらいいんだろう。「あ、これがRPGだ!」と思いましたよ(一同爆笑)。

―― リアルRPGですね(笑)。

眞島 本当、何したらいいだろうって考えたとき、やっぱり歩き回るしかなかったんですよ。話が通じそうな人を、まず探さなくては。航空会社のカウンターにいったら閉まってるとか。「すいません、Can You Speak English?」とかいって。なんかこう、必死になって色々やってるんですけどね。

 昔のゲームってそういうところがあって、勝手のわからないところに放り込まれて「さぁどうしよう」みたいな。それを面白くできれば、本来の“体験する”というところまで持っていけるんだろうなぁという気はしました。

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□コーエーのホームページ
http://www.gamecity.ne.jp/
□アルテピアッツァのホームページ
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□「オプーナ」のページ
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□関連情報
【9月21日】「東京ゲームショウ2007」コーエーブースレポート
PS3/Xbox 360「真・三國無双5」に注目が集まる
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070921/koei.htm
【6月29日】コーエー、Wii「オプーナ」
発売日が9月27日に決定。予約特典も公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070629/opna.htm
【5月25日】コーエー、Wii「オプーナ」
アクティブボンボンバトルの仕様等を公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070525/opn.htm
【4月17日】コーエー、Wii「オプーナ」
新キャラクタなどの新情報を公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070417/opn.htm
【3月19日】コーエー、Wii「オプーナ」スクリーンショットを公開
ゲームの流れや世界観を紹介
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070319/opoona.htm
【3月14日】コーエー、今の時代を現わすRPGを目指す
アルテピアッツァ開発のWii初のオリジナルRPG「オプーナ」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070314/opoona.htm

(2007年12月12日)

[Reported by 船津稔 / 豊臣孝和]



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