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★PCゲームレビュー★

凍てつく極寒の惑星で強大な敵に立ち向かえ
Xbox 360の大ヒットアクションをPCで楽しもう

ロスト プラネット
エクストリーム コンディション

  • ジャンル:アクションシューティング
  • 開発/発売元:カプコン
  • 料金:7,340円
  • 対応OS:Windows XP/Vista
  • 発売日:US版 6月26日(発売中) / 国内版 7月12日



 2007年1月にXbox 360用ゲームとしてリリースされ、世界的な人気を博しミリオンセラーを記録した大ヒットアクションシューティングゲーム「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」を、PCで遊べる日がやってきた。最新グラフィックステクノロジーに支えられた圧倒的な表現力で描かれる、極寒の惑星。凍てつく極限の環境で生き延び、明日への希望を掴むため、強大な敵に立ち向かう主人公の戦いを描く大作アクションシューティングゲームだ。


■ 世界で認められた純国産アクションシューティングゲームの実力

本作は、洗練されたグラフィックと重厚なストーリーに裏付けされた骨太のアクションシューティングゲーム
ステージ構成は多彩で、雪原や洞窟、都市などで多彩なゲームプレイが楽しめる
 吹きすさぶ寒風、凍てつく冷気。心まで凍りついてしまいそうな、人が住まうにはあまりにも厳しい環境。住み慣れた土地を離れた人類はこの惑星「EDN-3rd」への入植実験を開始していた。そこで人類が遭遇したものは、「エイクリッド(AK)」と呼ばれる生命体である。人類は、この極冷下の環境に適応した危険な生物種から「サーマルエナジー(T-ENG)」と呼ばれる生体エネルギーを発見、新たなエネルギー源としての活用を始めていた。本作はそんな極限環境下で展開される壮大なストーリーが特徴のタイトルである。

 本作のゲームプレイは主観視点ライクなカメラアングルにリアルな銃器によるアクションシューティング、そして写実的で重厚なグラフィックによる洗練された演出が特徴。欧米のゲームに多いFPSスタイルの作品であるがゆえに画面から漂ってくる雰囲気には和のものとも洋のものともつかない独特のものがあるが、本作はカプコンの誇る「MT-フレームワーク」という最新ゲームエンジンにより実現された純国産の製品だ。カプコン自身が「海外市場を狙った」と表明しているとおり、FPS的な3Dシューティングのゲーム性が前面に押し出されてはいるものの、ゲームの根底を流れる多彩なゲーム展開やセンスのよい演出による絶妙なプレイ感覚は、まさに日本のコンシューマーゲームシーンで培われたテイストが小気味よく光っている。和洋の文化が完璧に融合したこれまでにない完成度のアクションシューティングゲームといえるだろう。

 Xbox 360版のリリースから約半年という短い期間でこうしてプレイすることができるようになったことはPCゲーマーの筆者としてはうれしい限りだ。Xbox 360で話題を呼んだ次世代ゲームテクノロジーのショウケースとも言われるグラフィックエフェクトが、最新スペックのPC上でも遺憾なく発揮され、すぐれてハイパフォーマンスで動作する。入力装置としてはマウス・キーボードへの対応も万全であり、「WSAD」スキームに慣れたPCゲーマーにとってはXbox 360版以上にプレイしやすく進化したといえるだろう。もちろん Xbox 360コントローラーをPCに接続すれば、Xbox 360版と変わらぬ操作も可能だ。


「アンカー」を使えば、高い段差や陥穽を飛び越えて移動することが可能だ
 本作のゲームプレイ上の特徴を紹介しよう。まず、主人公は「アンカー」と呼ばれる射出型の鉤ロープを装備しており、これを使って壁を登ったり、段差を乗り越えることができる。タイミングよく使えば敵の攻撃をかわすことにも使える。地形を立体的に使えるようになることで、戦術の幅が広がっているのだ。もうひとつの特徴は、「バイタルスーツ(VS)」というパワーローダー的な戦闘用マシンの存在だ。VSにはたくさんの種類があり、それぞれに変形や飛行など固有の能力あるほか、マップ中に落ちている武器を拾えば武装を付け替えることが可能。ゲーム中の要所要所でVSをうまく活用することが攻略のカギになっている。

VSは二足歩行型の兵器で、本作のストーリー展開にもからむ重要な存在だ
 そして、プレーヤーが随時直面する敵、極寒の惑星に適応した奇妙な生物「エイクリッド(AK)」は、弱点を的確に攻撃しない限り倒すことは難しい。個体毎に異なる戦闘形態の違いも相まって、戦闘の局面毎にプレーヤーに対して的確な判断を要求する。

敵を倒すと地面に落ちる「サーマルエナジー」は主人公のヒットポイント的な存在。欠かさず集めよう
 AKの弱点は「サーマルエナジー(T-ENG)」と呼ばれる生体エネルギーが露出したオレンジ色の部位だ。T-ENGは人類の生命維持装置の動力源でもあり、AKを倒した跡に残るT-ENGの溜まりを回収することでプレーヤーは活動を維持することができる。プレーヤーが負った負傷もT-ENGによる治癒効果で即座に回復し、重傷を負っても死ぬことはめったに無いが、もしT-ENGが枯渇してしまうと徐々に体力が奪われて死に至ってしまうのだ。つまり、的確にAKを倒しT-ENGを回収・蓄積していくことが、ゲームプレイを組み立てる上で戦略上基本的な要素となっている。

「エイクリッド」(AK)は、オレンジ色の部位を攻撃しなければダメージが通らない。正面から戦っては分が悪いので、側面や背後に回りこんで弱点を攻撃しよう

VS用ロケットランチャーを発射したところ。爆発の閃光で何も見えなくなるほどの威力だ
 そこで、敵の特性に合わせて的確な武装を選択していくことが重要な意思判断基準になってくるわけだ。ゲーム中に登場する武器は「マシンガン」、「ショットガン」、「ロケットランチャー」、「スナイパーライフル」、「エナジーガン」、「プラズマライフル」などの個人用携帯火気に加え、VS装着用の巨大な重火器を直接手で持ち上げて射撃することも可能だ。VS用兵器の攻撃力は、その巨大さゆえに絶大で、特に巨大版ロケットランチャーの破壊力は壮絶の一言。人型のターゲットが相手ならばまとめて吹き飛ばしてしまうほどの威力だ。しかしプレーヤーが同時に携帯できる武器は2種類まで。このため局面に合わせた選択を要求される構造になっているが、プレーヤーがゲーム展開を「読む」ことに対して深い意味付けがされたステージのデザインも相まって非常に面白く、ゲームクリアまで中だるみのない展開を楽しむことができる。

タンクは見逃さないようにしよう。破壊すれば大量の「T-ENG」が補給できる
 マップ上に配置されたギミックの活用も攻略要素として外せない。ステージ中でよく見かける自動車などの残骸には武器やアイテムが隠されているので、弾薬不足に悩む前につぶさにチェックして回りたい。また、所々に配置されたタンクはT-ENGを貯蔵しており、破壊すれば大量のエネルギー補給が可能だ。プレーヤーがピンチに陥りがちなボス戦闘などのシーンにこういったオブジェがさりげなく配置されていたりする配慮が心憎いが、戦闘中に目の前の敵だけでなく周囲の地形にも注意を巡らすことで、武器、兵器、環境のすべてを使ったドラマティックな戦闘が否応なく展開する。

 激しい戦闘ではT-ENGの消耗も厳しいものになるので、事前にAKなど敵を多数倒してT-ENGを蓄積しておくなど、攻略の流れを計画的に組み立てる必要があるだろう。本作ではこのように、すべての戦闘が展開上「必要な」戦いとして文脈化されており、このゲームを飽きの来る単調さから遠ざけている。そういったゲームプレイ上の配慮が本作の価値を大幅に高めているのは確かで、海外で主流のFPS系のフォーマットに日本の優れたゲームデザイン技芸を組みあわせたような、すぐれて和魂洋才を感じさせる作品といえるだろう。

AKとの戦い典型例。弱点を狙うために回り込みながら射撃するのが基本
攻撃を受けないように距離をとりつつ、最後はグレネードを投げてトドメをさす
T-ENGを失ったAKは冷気に耐えられず凍結するので、殴って粉砕してやろう


■ ゲーマー心理をくすぐる多彩な展開、そして滋味溢れるストーリー

主人公ウェイン。俳優のイ・ビョンホンがモデルだ
 シングルプレイモードはステージクリア式の構成になっており、合間に挟まれるカットシーンも含めて壮大なストーリーが展開していく。ここでは中盤までの展開をご紹介しつつ、プレーヤーが直面する多彩なゲームプレイの広がりについて見てみよう。

 主人公「ウェイン」は、特殊ミッションの遂行中、超巨大なAK「ミドリメ」に遭遇。父とともにVSを駆使して戦うものの、巨大生物の圧倒的な威力のまえに屈する。気を失う前に残った最後の記憶は、ウェインの盾となって散っていった父の姿だった。吹きすさぶ雪原の中、ウェインはユーリと名乗る人物に拾われる。ルカ、リックとともに行動するユーリは、惑星に生息するAKの巣を潰して回っているという。ウェインは記憶を失い、ただあるのはVSを操縦できるという戦闘の本能、そして父を殺したミドリメの記憶だけであった。成り行きに身を任せ、ユーリたちと行動をともにすることになったのだが……。

ユーリ、ルカ、リックの3人組に拾われたウェイン。記憶を無くしていたが、VSを操縦する技術は保っていた
 冒頭のストーリーはこのようにはじまっていく。カットシーンはすべてリアルタイムの3Dレンダリングで表現されるが、本作の優れたグラフィックエンジンの表現力や、細かな表情の動きまで行き届いたキャラクタの演技が見事だ。主人公はAKの巣を潰すための実行要員として、これからのステージを戦っていくことになる。

 序盤のステージ構成としては、雪原、洞窟、廃屋、廃墟となった都市などだ。第2ステージ以降の廃墟となったビルディングなどは「アンカー」を使った移動が必須。3次元空間をフルに使ったゲーム展開が楽しめる構成だ。ゲームが進むごとに多種多様なAKが登場するだけでなく、「雪賊」や謎の組織「Nevec」の戦闘員といった人間キャラクタが登場。戦いはVS同士のド派手な戦闘にも発展する。

 1ステージ内の構成としては、日本のゲームらしく最後にボス戦が用意されており、これがゲーム展開に華を添えているのだ。各ステージに登場するボスキャラは多種多様。第1ステージで巨大ダンゴムシ型AKと戦わされたと思えば、第2ステージでは高機動型VSとの戦い、第3ステージではストーリーに密接に絡む人物と狭い空間でVSを駆使した戦いが展開される。

第1ステージのボスは昆虫型の巨大AKだ。動きが速く、生身の体ではなかなか手がだせないのでこちらもVSに乗って戦う
敵が高速回転攻撃をしている間は距離をとり、動きが鈍った瞬間に後ろをとって攻撃。T-ENGが枯渇すると凍結して砕け散る

VSを破壊されてしまっても、T-ENGに余裕があれば体ひとつでなんとかなってしまうことも
 VSに乗って戦う場合、主人公自身のT-ENG残量だけでなく機体の耐久度にも注意を払う必要がある。機体は深刻なダメージを受けると爆発してしまうが、その直前に脱出しないと主人公まで巻き込まれ、その場でゲームオーバーだ。もし主人公のT-ENGの残量が十分なら(例えば残り5,000以上)、ボス戦闘も生身ひとつで対応することができる。火力の面で「マシンガン」などの携帯火器では心もとないが、VS用の兵器を取り外して直接持ち運び射撃することができるので、「ロケットランチャー」や「ガトリングガン」などの大型兵器を駆使すれば高性能な敵VSとも互角に渡り合えるだろう。

高性能VSはホバリングやスライド移動のテクニックが重要になってくるので、早めに慣れておきたい
 ゲームが進行して利用可能になる高機動型VSも魅力。特殊攻撃ボタンを押すと多足型から戦車型に変形できるVSは非常に戦闘能力が高いのでうまく活用したい。ジェット噴射により飛行できるタイプのVSでは、ヒットアンドアウェイを意識したアクション性の高い戦闘を楽しめる。また、その場に応じた敵キャラクタの構成もうまく練りこまれており、利用可能な武器やVSなどの資源を活用して攻略する流れがゲームとしてよくまとめられているので、最後まで楽しくプレイできるのだ。

 惑星の温暖化計画を推進する組織「Nevec」。ユーリは組織と取引をし、ウェインら仲間達の前から忽然と姿を消す。その「Nevec」の計画の裏には、危険な人物が糸を引く罠が隠されていた。誰が味方で、誰が敵なのか。ウェインの記憶と、T-ENGにまつわる彼の特殊能力が明らかになっていく中、父を殺したあの「ミドリメ」との対決が再びやってくる。今度は父の愛機に身をおいて戦うことになるのだ。

 本作のストーリー展開はやがて惑星全体の運命を巻き込む流れになっていくのだが、それを評するにただ「壮大」といって片付けられないものがある。主人公ウェインと、関係する数人のキーパーソンとの関係を通じて描かれる物語は、悲劇的で繊細、それでいながら力強い温かみを感じることができる。エンディングまで味わいつくして、筆者はこのゲームをとても気に入ってしまった。素直にオススメできる良作だ。

父のVSは雪に埋もれて生きていた。ウェインはこの機体を駆って、父のカタキを取るための戦いに赴く
「ミドリメ」再び。ボスキャラとして別格の強さで、中盤最大の山場になる戦闘だ。弱点の面積が狭く攻撃も強烈なので、攻略法を見つけるまで何度か再挑戦することになるかもしれない


■ 「次世代」を感じるハイクオリティのグラフィックにド肝を抜かれた!

高度なグラフィックエフェクトは、リアルタイムでレンダリングされるカットシーンでも有効活用されている
 本作を語る上で映像表現の完成度を避けて通るわけにはいかない。画面写真をひとめ見てわかるほどに、従来の3Dゲームとは一線を画したクオリティで描かれるグラフィックス。これはカプコンの誇る新世代ゲームエンジン「MT-フレームワーク」の実装によるものだ。複数のプロセッサを搭載しマルチスレッド処理に優れる次世代ゲーム機をターゲットにした同エンジンは、Xbox 360用ゲームとして大ヒットを記録した「デッドライジング」で使用されたのが初めての例。2作目となる本作では、より特殊効果に重きをおいたカスタマイズが施され、極めて印象的な絵作りに成功している。またPC版の特徴として、利用できるメモリ量が多いことなどから、テクスチャの詳細化などリソース面でのグレードアップが図られているようだ。

洞窟のシーンでもHDRライティングが効果的に使われている
 まず当然のようにフルスペックのHDRレンダリングが実装されている。光があふれ出すブルーム・グレア効果は特に本作のメインテーマである極寒の雪原を表現するに多大な効果を発揮。本作のHDRはFP10-32ビットバッファ(10ビット浮動小数点数32ビットバッファ)を用いた本格的なもので、PCゲーム界では「Half-Life 2: Lost Coast」技術デモ以降流行の技術となっているトーンマッピングによる露出光調整の機能も盛り込まれているのだが、これが本作のド派手なエフェクトと調和してすばらしい効果を発揮しているのだ。PCでプレイする場合、GeForce 7系カードではFPバッファ使用時にアンチエイリアシング機能が使用不可になるという制限があるため、完全なクオリティで楽しむにはGeforce 8系のハイエンドモデルか、もしくはATI系の最新チップを搭載したビデオカードでプレイしたいところだ。

モーションブラー効果は本作の映像表現を特徴付けるもっとも重要なエフェクトだろう
 そしてなんといっても本作の絵作りにおいて決定的な役割を果たしているのがモーションブラー効果だ。カプコンが「2.5D モーションブラー」と呼ぶこの効果は、動きによる映像のブレを、ユニークな手法でゲーム画面を構成する全要素に適用しようとする試み。リアルの映画フィルムは一般的に秒間24フレームで記録・上映されるが、自然な動きに見えるのは撮影されたフィルムに残るモーションブラーのためだ。3Dゲームではピクセル単位で正確な映像を作るため低フレームレートではぎこちない動きになりがちだ。このため、自然な映像を作り出すためにこの問題をどう解決するかがひとつのテーマとなってきた。

爆風表現にもモーションブラー効果が応用されている。こういった使い方を見ると汎用性の高さがこの方式のポイントでもありそうだ
 これまでのタイトルでは一部の画面要素に対して、過去レンダリングされた2Dイメージを重ね合わせることで擬似的なモーションブラーを適用するという方法がよくとられていたが、本作では全画面要素に対してジオメトリレベルで運動量を計算し、それをもとにブレのあるイメージをレンダリングするという手法をとっている。この手法のおかげで、キャラクタの動きやエフェクトが、実際のフィルムのように前後のフレーム間で発生した動きが補完された映像となり、実際のフレームレート以上に滑らかな感触を実現。カットシーンではこの技法を応用し、運動方向のブレだけでなく、空気の震えや、キャラクタに迫ってくるような迫力あるムードを表現している。漫画では運動線や集注線で表現されるような絵をモーションブラー効果で作り出し、非常に印象的な効果を発揮しているのだ。

 それに加えて注目したいのは、爆発にともなう爆炎や噴煙の表現だ。本作ではアルファマッピングを適用した半透明のパーティクルを大量に使い、画面上の3D構造を考慮したブレンディングを行なうことで、量感に溢れたエフェクトを実現している。もちろんパーティクルエフェクトの構成要素にもモーションブラーが適用されいるので、近くで爆発が起きたときなど、爆風の圧力が感じられるほどの迫力がある。

 ここで全てを紹介することはできないので、本作に投入されたグラフィック技術の詳細については西川善司氏の「ロスト プラネット」の記事を参照してほしい。本作の各グラフィックエフェクトの効果は互いに組み合わせられることで最大の効果を発揮するような構成になっており、単なる技術デモンストレーションに終わることなくアートとしての完成度の高さが秀逸だ。キャラクタモーションの作りこみや、全体的な絵作りのセンスのよさも相まって、グラフィック的には間違いなく当代最高の一本といえるだろう。

モーションブラーの効果がよく分かるシーン例。静止画なのに「動き」を感じる表現が見事だ
爆発や煙のエフェクトはこれまでにない出来。背景やキャラクタとのブレンドについてもうまくいっており、不自然さを全く感じないレベルにある


■ DirectX 10への対応は何をもたらしたのか

ゲーム起動時にどちらのバージョンを使うか選択できる。ただしDirextX10はWindows Vistaのみ対応
 さて本作は、DirectX 10に対応した数少ないタイトルでもある。今回のレビューで掲載しているスクリーンショットのほとんどは、本作をWindows Vista上にてDirectX 10モードで動作させたものだ。今回のレビューにあたり、映像と機能両面の比較のため本作をDirectX9でも動作させてみたので、筆者なりの見解をレポートしたい。

 まず、今回使用した筆者のPCスペックについて。CPUはCore 2 Duo E6420(3.4GHzで駆動)、グラフィックカードはGeForce 8800 GTXを1枚、メインメモリはDDR2-800を2GB搭載する構成。OSにはWindows Vista 64 Home Premium EditionおよびWindows XP SP2を利用している。本作のXbox 360版は1,280×720解像度で30fps固定という仕様になっているが、筆者の環境にて本作をアンチエイリアス4x設定、異方性フィルタx16設定を適用してDirectX 10バージョンを動作させた場合、1,360×768やそれ以上の解像度で40~100fpsというまったくストレスのない快適なゲームをプレイできた。

DirectX 10版では「影の品質」を「高」に設定できる
 DirectX 9版とDirectX 10版でのレンダリング機能の違いから触れていこう。セッティング画面で調整できる「影の品質」オプションが、DirectX 9バージョンでは「中」設定までとなっているが、DirectX 10バージョンではここに「高」設定を適用できるというのが、唯一の違いだ。これがどのような映像の違いになって現れるかというと、「中」設定ではXbox 360版と同様の手法と思われるリアルタイムシャドウがレンダリングされるが、「高」設定ではより自然なソフトシャドウとなって現れる。しかしこの設定でゲームを動作させるとフレームレートの低下が顕著だ。筆者の環境では20fps程度でしか動作せず、快適なプレイは不可能。このため現実の選択肢としては、DirectX 9版と同じ「中」設定の影を使用してプレイを進めた。

「高」設定の影にすると、ソフトエッジのシャドウ表現となる。映像品質としては大きな違いといえないが、フレームレートは大幅に低下してしまう

 では、同じ設定下での映像クオリティについてはどうだろうか。ここではまず、リアルタイムに3Dレンダリングされるオープニングのカットシーンから、DirectX9モードで撮影したスクリーンショットと、DirectX10で撮影したものとの静止画を比較したい。

【DirectX 9バージョン】【DirectX 10バージョン】

 いずれもHDR表現、モーションブラー、被写界震度など、キーとなる表現はまったく同じに機能しているようにみえる。もし細かなところで違いがあったとしても、見てわかる違いではなさそうだ。実際のところ、カプコンでは「MT-フレームワーク」のDirectX10対応に関して、新しいレンダリングパイプラインに対応した最適化技法を用いることでパフォーマンスをアップさせた、としている。となると画面にレンダリングされるイメージの品質には違いがなくとも合点がいくが、では肝心のパフォーマンス、フレームレートについてはどうだろうか。

 フレームレートに関しては、上記のカットシーン内スクリーンショットでも比較できるが、より明確に、ステージ開始時の立ち位置で表示される全く同じシーンでのフレームレート数値を比較してみたい。

【DirectX 9バージョン】【DirectX 10バージョン】
DirectX 9バージョンは約45fps、DirectX 10バージョンは約38fps
61fps対51fps。上記の例と同じくおよそ1割強の差がある。DirextX 10はライティングが強い傾向がある
こちらはプレイ中のシーン。厳密に同じタイミングではないが、ちょっとFPSの差が大きい

 同様の環境でWindows XPを用いてDirectX 9バージョンを走らせてフレームレートの計測をおこなってみたが、これはWindows VistaにおけるDirectX 9バージョンと全く同じ数値が得られた。これに関して、OSの違いは気にする必要はなさそうだ。

 これらの情報から導かれる結論としては、本作をプレイするならDirectX 9バージョンが最適、ということになる。DirectX 10バージョンは全体的に10%程度のパフォーマンス低下がみられ、それによるイメージ品質の向上も見られない。また、DirectX 10バージョンでのみ利用できる「高」設定の影表現は、プレイするに耐えないフレームレート低下という犠牲を払うに値するほど劇的な改善とよべるものではなかった。DirectX 10への対応が本PC版のウリのひとつであっただけに、ユーザーに対して明確なメリットが無かったという事実は非常に残念。改善の兆しがあるのならば、今後パッチのリリースなどを通じて対応がとられることを期待したいところだ。

    【7月19日追記】
     同社によれば、「最新ドライバ(ForceWare 162.22)を使用した場合、DirectX 10バージョンはDirectX 9バージョンと同等、もしくはそれ以上のパフォーマンスが得られます。特にアンチエイリアスを掛けない場合、その効果がより大きくなります」とのコメントを得ましたので、ここに追記いたします。


■ マルチプレイマッチング機能はSteamとの相性の悪さが見え隠れするが……

「Half-Life 2」でおなじみのゲーム配信システム「Steam」。本作のゲームアップデートやサーバーブラウズもサポートする
 これまでのカプコンのPC移植タイトルとは異なり、本作はSteam対応アプリケーションとして動作する。Steam対応ゲームのライセンスはオンライン認証により保証されるのでメディアチェックがなく、プレイするたびにDVDを挿入する必要がないとうのは、たくさんのゲームをプレイする筆者にとって素直にありがたいところだ。

 本作のマルチプレイルールは4種類。ゲームには同時最大16人が参加可能で、チーム戦を主体としたルール構成が特徴だ。

サバイバル: デスマッチ。個人成績を競う。戦力ゲージがゼロになったら負け。
チームサバイバル: チームデスマッチ。倒し倒されによりチームで共有する戦力ゲージが増減。より高いチームが勝利。
データポスト争奪戦: マップ中に配置されているデータポストをより多く起動させたチームの勝利。
フォックスハンティング: 1名の「フォックス」を他全員で倒す。逃げ切ればフォックスの勝ちになる。

本作のマルチプレイは、ゲームホストの待機ロビーに集合して一斉にスタートするという方式。Steamからゲームホストを検索することもできる

 本作の場合、マルチプレイマッチングの方式が特殊だ。ホストプレーヤーが開始したゲームセッションの待機ロビー画面で他のプレーヤーが参加してくるのを待ち、人数がそろったらホストがゲームをスタートするという形式をとっている。このため途中参加や、PCのFPSタイトルでは標準的な専用サーバープログラムのサポートがない。

 そのためか、筆者の試した範囲ではマルチプレイセッションに参加することが著しく困難だった。リリースされて間もないことも要因として考えられるが、ゲーム内のマルチプレイメニューで選択できる「クイックマッチ」や「カスタムマッチ」によるゲームセッションの自動検索は、チャレンジするたびにことごとく「見つかりません」という表示を得る結果になってしまった。

Steam搭載のサーバーブラウザ画面。参加待機中のゲームセッションのみが表示されるというしくみのため、リストに出てくるのはちょっと少なめ
 そこでSteamのサーバーブラウザ機能を利用しようというわけだが、専用サーバーが常時稼動してプレーヤーの参加を受け入れ続ける他のFPSタイトルとは異なり、本作では参加待機中のホストのみがサーバーブラウザに表示されるため、参加可能なゲームを見つけることがとても難しい。表示を更新してホストを見つけることができたとしても、クリックしてゲーム参加を選び、ロゴ画面を経てゲーム画面が表示されるまでの間に、もうゲームが開始してしまっており参加が不可能ということもある。この点、本作のマッチング方式は壊滅的なまでにSteamとの相性が悪いのだ。もう少しユーザーが増えてくれば多少の改善を見るかもしれないが、現状では本作のマルチプレイマッチング機能に対する不満が大きすぎる。

 できることならXbox 360と同じインターフェイスやフレンド機能を利用できる「Games for Windows - LIVE」に対応してほしかったところだ。欲を言えばXbox 360版とのマルチプラットフォーム対戦も。LIVEとマルチプラットフォーム対戦の両方に対応した「Shadowrun」と比較すると、その差は歴然だろう。「Shadowrun」では少なくとも、マルチプレイのマッチングで不自由を感じることは全くなく、快適に対戦を楽しむことができたのでPC版の存在に大きな価値があった。また「Halo 2」のPC版でも、プレーヤーの絶対数は少ないながら、Dedicated Serverの存在により常に遊べる環境が利用できた点が優れている。

 LIVEならばゲーム内の待機画面にてフレンドを直接招待することができるし、プレイ中のゲームタイトルを確認できるので「お、PC版をやってるのか」とXbox 360ユーザーに知ってもらうことができる。Steamのフレンド機能に関しては、普及率と機能の両面で、ちょっとLIVEと比べることはできない感じだ。この点、本編だけでなくマルチプレイまで「極寒の世界」にならぬよう、パッチで改善が可能ならばカプコンには是非取り組んでいただきたいと強く思う。



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(C)CAPCOM CO., LTD. 2006, 2007 ALL RIGHTS RESERVED.


【ロスト プラネット エクストリーム コンディション】
  • CPU:Pentium 4 HT以上
  • HDD:8.0GB以上
  • メモリ:XP 512MB以上(1GB以上推奨)、Vista 1GB以上(2GB以上推奨)
  • ビデオカード:DirectX 9.0c/Shader 3.0 以上、NVIDIA Geforce 6600 以上 (※NVIDIA Geforce 7300を除く)


□カプコンのホームページ
http://www.capcom.co.jp/
□「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」のページ
http://www.capcom.co.jp/lostplanet/
□「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」PC版のページ
http://www.capcom.co.jp/pc/lostplanet/
□関連情報
【7月14日】カプコン、WIN「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」
ロックマンや「デッドライジング」のフランクがプレーヤーキャラとして参戦!!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070714/lp.htm
【7月6日】カプコン、WIN「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」
Xbox 360版とPC版の違いがわかるムービー第2弾公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070706/lp.htm
【6月27日】カプコン、WIN「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」
北米版ムービーを公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070627/lp.htm
【6月12日】カプコン、米Valveのゲーム配信システム「Steam」に
WIN「ロスト プラネット」など4タイトルを配信
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070612/steam.htm
【5月16日】カプコンとNVIDIA、WIN「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」
無料体験版の配信を開始
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070516/lp.htm
【5月11日】カプコンとNVIDIA、WIN「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」
無料体験版を5月16日より全世界同時配信
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070511/lp.htm
【4月24日】カプコン、Xbox 360で人気のアクションシューティングのWindows版が登場
WIN「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」7月12日発売決定
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070424/lost.htm
【4月13日】米NVIDIAとカプコン、WIN「ロスト プラネット」の開発で提携
DirectX 10や2,560×1,600ドット以上の高解像度に対応
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070413/lost.htm
【1月31日】西川善司の3Dゲームファンのための「ロスト プラネット」グラフィックス講座
Xbox 360グラフィックスここに極まる! 日本発の次世代技術の秘密とは?
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20070131/3dlp.htm

(2007年7月18日)

[Reported by 佐藤“KAF”耕司]



Q&A、ゲームの攻略などに関する質問はお受けしておりません
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします

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