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会場:チュンソフト本社
ところが「アミーゴ・アミーガ」では、有料アイテムを販売するアイテムモール実装後も、立て続けに「メインクエスト」と呼ばれるストーリーを導入し、マーケティング提携しているハンゲームでも新規入会キャンペーンやテーマソングの公開、そして3月23日からはテレビCMの放送を開始するなど、新規ユーザーを増やすための施策を断続的に打ち出している。こうした結果、1日あたりの登録者数、同時接続者数も倍増傾向にあり、ゲームサーバーは活況を呈しているという。 その一方で、同作は昨年11月24日の正式発表を皮切りに、わずか2カ月弱で正式サービスを始めてしまっただけに、開発側のメッセージがゲームファンに十分に伝わっているとはいいがたい。そこで今回は、改めて「アミーゴ・アミーガ」の開発経緯と今後の展望について、同作プロデューサーを務めるチュンソフト代表取締役社長の中村光一氏と、同作ディレクターのゲームズアリーナ ネットワークゲーム開発部部長の山口尚氏のおふたりに話を伺った。
■ 「アミーゴ・アミーガ」とチュンソフト中村光一氏の関係について
その時点ですでに「アミーゴ・アミーガ」のかなりの部分が作られていまして、そこからもう一度チュンソフトの企画チームで煮詰めて、チュンソフト側から私や企画チームが監修やアドバイスをさせていただいて、ストーリーなど大掛かりに変更しました。そして現在に至っています。 編: 年末にディレクターの山口さんとお話した際に、「アミーゴ・アミーガ」はゲームクリエーターである中村さんの“想い”がふんだんにこめられていると伺いました。そこで私からこのインタビューをご提案させて頂いたんですね。まず中村さんの「アミーゴ・アミーガ」の関わり方を教えてください。 中村氏: 私というよりは、チュンソフトの企画チームが直接関わっていまして、私はシナリオやインターフェイスに突っ込みを入れたぐらいです。 山口氏: インターフェイスは最初に中村さんが口火を切りましたよね。当初「アミーゴ・アミーガ」のインターフェイスは何の疑問もなく画面の左端全部がボタンでした。そのボタンにギルドやメール、スキルといったコマンドを割り当てていたんですね。僕らは何の疑いもなく過去やってきたとおりのデザインをしたのです。すると中村さんが「わかりにくい、わからない」と。結果としてすっきりしたインターフェイスに仕上がったと思っています。現在、また膨らみつつあってどうしようかと考えているのですが(笑)。 中村氏: チュンソフトはコンシューマゲームを作ってきた中で、マニュアルを読んでいだだけないという前提で、ゲームの導入部分をいかにわかりやすくするかにこだわってきました。ゲームの導入部分では、システムを理解するプロセスをストーリー的に導入して、ユーザーがストーリーに入り込んでいきながらシステムや操作方法を理解していただくことは、昨今のコンシューマゲームでは当たり前に行なっています。この点は特ににこだわって監修してきたつもりです。 オンラインゲームを日頃からやっている人は、オンラインゲームを理解されてプレイしている人が多いという印象はあります。しかし、「アミーゴ・アミーガ」の持っている、女性受けしそうな印象に惹かれて、ちょっとやってみようかなというユーザーが入ってきたときに、「わからない」という形にならないようにしたいな、という想いがありました。結果的に企画チームが大掛かりに変えてしまいました。 山口氏: 私が言うのも変ですが、まったくの別物のように、見違えた感じがしますね。 編: ゲームの主役である「アミーゴ」に関しては、どのようなアドバイスをされたのでしょうか? 中村氏: 基本的にはゲームズアリーナが持ってきたコンセプトどおりに作ってきました。僕らが最初アミーゴを見たときにモップとかイスとか仲間になって楽しいなと思って、たまたまそばにデカい家があって、「これ仲間にならないの?」とね。どうせだったらそこまでやったほうが面白いよねと。本当に採用されるとは思いませんでしたけど(笑)。 山口氏: 家を動かしたいなと思って、一応動くようにはなっていたのですが、どうやって動かそうかなと。家のアミーゴはまだ実装できていないのですが、テストでやる限りではものすごくインパクトがありますね。将来的にこれはやらなければいけないなと思って、今の段階からマップの街中を広くしたりメイン通りを非常に大きく作ったりと工夫しています。 編: 一度デモを見たときは、家がドカドカ動いたのにはびっくりしましたが、最終的にやはり実装する形で決着したんですね。 山口氏: 近々やります。
■ アイテム課金モデルに対する手応えと感想
中村氏: 元々まったくコンセプトが違うゲームですし、直接の繋がりはないですね。 編: 開発に携わっているスタッフは、同一のメンバーもいるのでしょうか。 中村氏: まったく異なります。スタッフもコンセプトも異なりますので繋がらないでしょう。「ホームランド」のオンライン部分は、RPG本編に加えて、さらにネット環境があればこういう遊び方ができるよというオプション的な要素でした。どちらかというとMMORPG的な面白さではなく、もっと少人数で遊ぶことを前提としています。 編: MMORPGとしては今回初めての試みになりますが、開発に携わってみてどのような感想をお持ちになりましたか。 中村氏: 僕はMMORPGというよりは、PCのMMOのオンラインゲームという捉え方で考えると、頻繁にバージョンアップができていいなと思いました。アイデアもどんどん追加できるし、ユーザーの意見も取り入れられていいなと思いました。その反面、ユーザーの意見に流されて平凡なものになってしまうかもしれないな、と感じる点もあります。 話は外れてしまいますが、最近基本プレイ無料のアイテム課金モデルが普通になってきています。ユーザーにβ版のお試しプレイをやっていただく部分のコストが、メーカー側としてはサーバーを置いておくだけなので、それほどかかるわけではありません。ディスクメディアをプレスをするわけでもありませんし、流通に乗せるリスクもありませんが、ソフト作りました、宣伝しました、売りました、面白かったです、という世界とちょっと違いますよね。ビジネスのやり方そのものも一緒に考えていかなければいけないビジネスなのだなと思いますね。 それはお金の回収の仕方も含めて考えなければならない。昨今ゲーム内に広告を載せることによってお金を取る手法も出てくるなどいろいろありますよね。ライバルメーカーが無料でどんどんベータテストをやってきていて、単純に面白いゲームを突き詰めるだけではないところもオンラインゲーム作りなのかなと感じています。 編: 「アミーゴ・アミーガ」で採用されたのはアイテム課金です。これについてどのような感想や手ごたえをお持ちでしょうか。例えば回復薬を有料で売る点はアイテム課金ビジネスの中では珍しいですよね。 中村氏: 正直なところ、アイテム課金に関して、まだまとまった報告を受けていないので、手ごたえを語れるほどの情報を持っていません。 編: たとえば、「アミーゴ・アミーガ」は序盤がとても充実していて、タダで遊ばせるには惜しいと思うほどの要素が盛り込まれています。この辺りはさすがにパッケージでずっとやってこられたメーカーならではのクオリティだと思うのですが、メーカー側として無料提供していることをどのように捉えているのでしょうか。 中村氏: 実際どうなんですか、アイテム課金の収益は? 山口氏: 収益でいくとよくはない(笑)。3月末に報告しなければいけないのですが。アイテム課金は、ゲーム作りと相反する部分がありますよね。 編: 「アミーゴ・アミーガ」ではゲームのストーリーを進めていくと、一定のタイミングでどうしても回復薬が欲しくなってきますよね。回復薬は有料アイテムですから、ゲームプレイの延長線上に課金アイテムが存在することになるわけです。これをえぐいと見るのかうまいとみるのかは、人によってはそれぞれだと思いますが、こうしたゲームデザインはどのようなポリシーから生まれたのでしょうか。 山口氏: その当たりは意図的にかなりえぐく計算した部分ではありますね。 中村氏: 基本プレイ無料なのだから、いつかのタイミングで払ってもらわなければいけないのは逆に言えば当然です(笑)。例えば「不思議のダンジョン 風来のシレンDS」では、風来救助隊用にサーバーを置いています。これはランニングコストがかかっていますが、無料でサービスをしています。このサービスを有料にできないかと考えますよね。 たとえば、救助した人とメーカーに半分ずつ分配できる仕組みを設けられれば、積極的に助けてあげようなんて思うかもしれない(笑)。救助する料金などもその難易度によって設定できたりとかね。でも、これはゲームの外側の話ですよね。本当にオンラインゲームはそうしたゲームの外側も含めて楽しめるものを作るところが今までと違うと思いますね。 編: ゲームデザインの中に課金アイテムを盛り込むというアイデアに対して、ユーザーはどのような反応を示していますか? 山口氏: すっきりハマっているわけではありません。我々としてはビジネスとしてゲームを作っているわけですから、最終的にはお金をいただかなくてはならない。ゲームとして重要なところにひっかけたほうが過去の例を見てもよく売れているのです。ただ、遊ぶたびに毎回お金払うのがいいのかというのは毎回悩みますね。 遊園地ではかつて乗るごとに300円払っていたわけではないですか。しかしディズニーランドのような成功しているモデルでは、最初に払うとタダですべて乗ることができます。今のシステムが良いのかと考えたときに、遊園地を見る限りでは、アイテム課金として毎回お金を払っていくモデルは廃れていっていると思います。これを考え直さなければいけないなと思いますね。 中村氏: ディズニーランドはフリーパスでお金を払って遊ぶけど、お客さんは帰りにものすごくたくさんお土産を買うでしょう。そこが大きな収益源になっています。そうした意味では月額プラスアイテム課金ですよね。 山口氏: 回復薬に課金をするにあたり、敵の強さとのバランスを取るわけです。通常、敵の強さやドロップ率を計算して、死ぬかどうかの瀬戸際で回復薬をちょっと落とすように設定するわけですが、今回はそこから間引いてしまっているわけです。でも本当に間引いて良いのかと。そこは日々悩んでいます。
■ 「アミーゴ・アミーガ」序盤は、「ドラゴンクエスト」的なアプローチを採用
山口氏: メニューの中にあるアイコンは画面内にショートカットとして配置できるのですが、オンラインRPGをやられていた方は、その点に気づいて活用していただいています。女性の方に数多く遊んで頂いているのですが、その点で効果が高かったのではないかと思います。たとえばゲームズアリーナの女性のスタッフは全員やらされていて、経理のスタッフなんかもプレイしているのですが、黙って後ろから見ていると普通に入って来られていますね。中村さんをはじめ、チュンソフトの方にとっては普通のことだったのですが、我々にとってはああそうなんだと思って、新しい発見でした。 編: マウスインターフェイスもチュンソフトさんとしては新しい試みになるかと思いますが、これについてはいかがですか。 山口氏: かなりいろいろな人に意見をもらいました。開発側はインターフェイスはだめなんですね。開発初期の段階からずっとやってきているので、その辺の感覚が麻痺しているのです。今回そういう意味では非常にありがたかったです。一通り3~4回触ってもらうということをチュンソフトさんの開発の中でぐるっと行ないました。そのフィードバックを元に3カ月くらいかけて煮詰めていきました。 編: 中村さんからどのような意見はあったのでしょうか。 山口氏: 最初のところですね。「いっぱいアイコンがあってどれが何なのかわからない」と言われたのを最も印象深く覚えています。言われることいっぱいあるなと思ってプレゼンしたのですが、そこなのかと。私にとっては普通だったのでわからなかったのですね。 中村氏: ゲームを作っている側はそうですね。「ドラゴンクエスト」を作った際に、ラダトームのお城と街からスタートしますが、最初は、街とお城の真ん中くらいに主人公をポッと登場させ、ゲームスタートさせていました。しかし、ゲームが大分できあがってから、学校の友達が会社にやってきた折に見せてあげたら、その場所からうろうろするだけだったのです。 ゲームを作っている側からすると街やお城に入ると思ったのですが、どうやらその友達はお城に入れると思わなかったのです。うろうろしているうちにスライムに遭遇して、何度かやっているうちに死んでしまいます。僕らにとっては当たり前のことが、初めてやる人にとってはわからないわけです。 そこで堀井さんに相談して、最初は2階の王様の部屋に閉じ込めて、王様に話しかけたり、ドアを開けたり、宝箱を開けたりということを学習しながら下の階に下ろしていくことにし、徐々にコマンドを覚えながら進めていく形になりました。ユーザーが初めて画面を見たときに何をしたらいいのか、何をやらせたいのかを極力わかる作りにしないといけないですよね。 また、コンシューマゲームの場合は、お金を出して買っているので、わからなくてもマニュアル一生懸命読んで理解してやるしかないというところがありますよね。しかし、完全無料で始められるオンラインゲームでは、とっつきの部分でわからないとなると「もういいや」となってしまいますよね。ですから、オンラインゲームの導入部分は、下手をするとパッケージよりも重要ですよね。 一番理想だなと思うのは、コマンドがすごく少なくて、やれることがすごく限られていて、それしかできないのだけどやっていったらどんどん展開していくパターンが理想的です。しかし、そういうわけにもいかないので今の形でストーリーに合わせてクエストをクリアしながら覚えていく形かなと思いますね。コンシューマのゲームはほとんどそうなっていますよね。 編: 確かに「アミーゴ・アミーガ」でも、「ドラゴンクエスト」の序盤のような作りになっており、チュートリアル的な内容をふんだんに含んでいますよね。 山口氏: 企画のスタッフさんには毎回見てもらって、昔のストーリーを忘れるくらい作り変えられています。セリフの1行を変えるのに3週間くらいかかったりしているのです。普通の会話なのですが、ものすごく考えて、後の話がおかしくなってくるので変えなければいけないとかね。普通の会話シーンの部分で5時間くらいミーティングが行なわれています。質より量が大事だとネットワークゲームを考えてやってきましたが、ものには限度があるな、ちゃんと作らなきゃと思っています。 編: 「アミーゴ・アミーガ」の序盤の丁寧さはとても好印象で、あの丁寧さを感じさせるネットワークゲームはなかなかありません。チュンソフトさんとの連携が非常にうまくいったのではないかと思います。 山口氏: 「クロスゲート」の頃はわざと親切にしなかったのです。聞くことによって友達になるのではないかと、わざと入れない部分もありました。誰もがブログを作れる時代ではなかったので、ホームページを作れる人はすごかったのです。そういう人が攻略サイトを作ってくれることで、コミュニティが活性化されたり、その人がヒーローになったりしてコミュニティが育成されていました。今は違いますよね。当たり前のことに気づけたということはあります。
■ 「アミーゴ・アミーガ」のストーリーテリングの技法について
山口氏: 3割か4割ぐらいです。 編: 現在第10話まで実装されていますので、全体としては第30話ぐらいまであると考えていいわけですか? 山口氏: そうですね。大まかのゴールは現場のスタッフと一緒に作ったのですが、そこまでのアプローチは状況を見ながら作っています。将来のアプローチははっきりしています。ちゃんと終わりがあります。しっかりしたストーリーなので、終わったあとどうしようとずっと考えているのです。 編: ストーリーが終わるとどうなるのでしょうか。 山口氏: その時の状況ですよね。もう寿命だったら話が終わるとゲームも終わるでしょうし。テレビの戦隊モノは、人気が出れば続編にいけますが、人気が出なければなかったことになりますが、そういう感じですね。大筋のストーリーがあって、毎週一生懸命作画さんが書いて、途中違うものが流行ると少しそこにずらしたりしながらやっていると思うのですよね。それに似ていると思います。その時がきたらその時に考えようと思っています。 編: 全体のストーリーは誰が考えているのですか? 山口氏: ウチの現場のスタッフが1人で考えています。1人で考えたものが小説のような形で上がってくるので、わかりにくいところを直した上で、ゲームに落とし込んでいます。チュンソフトの企画チームの方と、その流れだったら面白くなるはずだからその方向で行きましょうというところまで一緒に決めました。 編: アップデートの柱としては、今後もメインクエストの実装ということになるのでしょうか? 山口氏: その点はすごく冒険をしています。現在メインシナリオは1人専用にしているんです。これはものすごい冒険だと考えています。どんなに好きなゲームでも、プレイ時間は100時間が限界だと考えています。ネットワークゲームは200、300時間とプレイして頂けることも多く、それは友達がいるからだと考えています。しかし、その一方でユーザー同士がゲーム内で時間を合わせるというのも大変なのです。 メインシナリオは時間をかけて作っていますので、思い切って一人で遊べる部分をメインに持ってきています。もちろんパーティで遊べる簡単なクエストや、時間かけずに字を読まないでも楽しめるクエストはどんどん入れていくつもりです。今月中にはデュエルができるようになります。新しい街ができると新しいオブジェクトも増え、新しいアミーゴが増えるような設定もできていきます。 編: 新しいエリアに関してはいかがでしょうか。 山口氏: 第一段階のシナリオでは4割くらいを実装しています。まだまだ広がっていきます。7割くらいは既に作ってあって、実際に設計しながらもう少し詰めていく作り方をしています。 編: パステルカラーの柔らかい雰囲気や、ストーリーの中での絶妙な会話、すべり気味のギャグというゲームテイストは、どのような過程を経て作られているのでしょうか。 山口氏: これは中村さんもご存知ないと思うのですが、メインのディレクターをやっている溝田は、よしもとのお笑いを目指していた人間なのですよ。今でもM-1グランプリに趣味で出たりしています。そのおかげですべり気味のギャグも何回消しても実装の時には盛り込まれているのです(笑)。 私は「寒いからやめろよ」と言っているのですが。金曜日に一度シナリオを締めて、デバックに移って水曜のアップデートとなるのですが、その間絶対、シナリオの内容はいじってはいけないといっているのですが、そーっと戻っているのですよね(笑)。彼が一生懸命喜んでやっているみたいです。 それから彼と2人で新幹線の中で話していることがあるのです。現在ボス討伐があるのですが、やり方によってボスの強さが変わるのです。例えばゴブリンを倒すクエストがあるのですが、話しかけたゴブリンの数によってゴブリンの強さが変わるのです。5人話しかけると5倍強くなると。そういうことをやりたいといっているのですが、工数がものすごくかかるのです。僕が悩んでいる時にチュンソフトのスタッフさんと話したところ、「じゃあやるか」となりました。現在ボス討伐のクエストには必ずそうした仕掛けが入っています。
■ 「アミーゴ・アミーガ」の今後の展開と、チュンソフトのオンラインゲーム戦略
山口氏: デバッグをお手伝いいただくことはありますね。今は悩んだときに相談に乗っていただく形が多いですね。 編: ユーザーからの意見ではどのようなものが多いでしょうか。 山口氏: 最近はやりつくしてやることがないという意見が多いです。トッププレーヤーは常にレベルキャップに達しています。細かい点ではゲームの奥深い部分の要望が多いです。バラージのスキルの威力は80%くらいに落としたほうがいいとか、仕様書見ているのかと思うくらいの細かい内容のものが多いです。それから職業バランスは永遠の課題ですが、相変わらず多いですね。ただ、最近は同じ意見が固まってこないですね。アップデートが遅いですとか、生産やっている方からですと作れる物のレベルが低すぎるなど、僕らが追いついていない部分への指摘が多いです。 編: 現時点で見えていない部分で新しい試みはあるのでしょうか。 山口氏: デュエルですね。対人戦を今後どのように展開していくかというところはきっちりとやっていかなければならないなと思います。また、もう少し何回も楽しめる部分は取り入れていかなければいけないなと思います。レベル上げだけではないゲームにしたいです。その要素をチュンソフトのスタッフさんにも相談してアイデアを入れて頂こうと思っています。 編: 「アミーゴ・アミーガ」の基本的なゲーム展開は、「ドラゴンクエスト」シリーズのようにレベル上げとストーリー展開がサンドイッチ型に積みあがっていて、そこにオンラインゲームのテイストを盛り込んでいくと考えてよろしいのでしょうか。 山口氏: そうですね。このゲームはテーマが「友達」なので、もうちょっと友達になる要素や、人に見られる要素を盛り込んでいきたいなと思っています。この間も中村さんに「オンラインゲームではエンカウント型はどうなの」と指摘されたりしました(笑)。 編: それは今からリアルタイムに変えてもいいのではないかという提案なのでしょうか。 中村氏: そこまでは言っていないですけど(笑)。エンカウントバトルだと、オンラインゲームなのに人が戦っているのがわかりませんよね。山口さんは数々のオンラインゲームを作ってこられているので、見えている部分も多いんでしょうが、しかし、見えていないと「世界に一緒にいる意味合いって何なの?」と、大勢が一緒にいる意味合いがわからなくなる。そんなことを2人で議論していました。 山口氏: 中村さんの意見はいつも響くのですよね。自信をもってエンカウントバトルを選んでいるのですが、どきっとしますよね。僕はゲームが下手なので、簡単にする目的でエンカウントバトルにしたのですが、簡単にするがあまりに、みんなができてしまうため1番になれないジレンマがあります。ですから、今後は何らかの形でヒーローになれる要素を入れていこうと考えています。 それから、アミーゴのバランスも調整していきます。これまではコップもイスもあまり能力の差がありませんでした。なぜならゲームのうまい人たちは、こういうケースの時はお茶、こういうケースの時はコーヒーを飲めば簡単に倒せるということがすぐにわかってしまうので、みんなが同じアミーゴを友達にしているという風になってしまうのが怖くて大きな差を付けることを抑えていました。 しかし、能力に差が無いからお茶とコーヒーを両方持たなくてもいいやと思う人もたくさんいて、それが逆に寂しいとユーザーさんが感じるようになってしまいました。チュンソフトのスタッフさんにもプレイして頂いて、意見をまとめて送ってもらうのですがその中にもあり、変更することにしました。昔から悩んでいるのですが、難しいのだけど「みんなができているのが理想的だ」と中村さんも常々おっしゃっています。 中村氏: これは本当難しいことだけど、「俺だけがわかっているよね」とユーザーに思われているのが理想ですよね。「アミーゴ・アミーガ」からは離れますが、オンラインゲームに携わって感じることは、「人と人とが繋がって遊ぶ意義とはなんだろう」と。いったい何を求めてオンラインに繋げるのかということを考えていかないといけないなと思います。 ともするとMMORPGはみんなが知り合いの人とチャットしていれば楽しいとか、共通の話題づくりのためにゲームのシステムがあるとかね。共通の話題があるのであれば掲示板があればよくて、「ゆびとま」のようにものでいいと。そうなってくるとゲームデザインの目的とは変わってきてしまうので、チャット機能を排除するほうがゲームとしての面白さはありますよね。 そうすることによって直接のコミュニケーションはできないけど繋がっているからなんとかコミュニケーションをしようとユーザー同士が努力すると思うのです。そこをできるようなことをシステム的に入れておいてコミュニケーションさせるゲームとかおもしろいと思いますね。 実は「ホームランド」はその辺りを考えて作ったゲームでしたが、MMORPGはどうしても早く長くやったほうが有利になってしまうので、いっせいのせで今日の何時スタートにエントリーさせて、毎日違う展開が楽しめるような形にする。今日はこの人とやって楽しかっただとか、あの人がいたからこんなぐしゃぐしゃになったけど楽しかったとかそういうことできればいいなと思うのです。人と人とが繋がって集まっていることの意味合いと、お金を取る方法との両方を考え研究する必要があると改めて思いました。 編: 日本でオンラインゲーム市場は順調な成長を遂げていますが、中村さんの「人と人とが繋がる理由付けが不十分だ」という意見はもっともな話だと思います。もう少し大枠の話で、オンラインゲーム市場に対してはどのような考えをお持ちですか。 中村氏: 日本の場合は、任天堂、SCEというハードメーカーがあり、ゲームはそこを中心に発信されるという文化があります。オンラインはPCが中心ですから、韓国と比べたときに韓国は国策としてPCバンでネットを広げていった経緯がありますが、日本ではそういった流れがないのでPCを持っていてもPCでゲームをやる人はそれほど多くは無いですよね。 もちろんCPUやグラフィックボードの環境の違いはあると思いますし、ネットの環境も違います。その点ではコンシューマゲーム機がネットワーク化されたほうが作るほうは遙かに楽です。動いているハードのスペックが決まっているわけですから。日本は最終的にどちらなのでしょうね。コンシューマゲーム機もネットワークに繋がっていっていますし、PCも伸びていますよね。どちらが先にメイン市場に到達するのか。 ただ、日本のクリエイターは圧倒的にコンシューマゲーム機にいるわけです。そうしたクリエイターたちがもうちょっとオンライン側に来るともっと楽しいものができてくるのかなと思います。もちろんビジネスとして成立しなくてはダメですけどね(笑)。 編: チュンソフトとしてはもう少し様子見だけど、中村さんとしては作りたいなというところでしょうか? 中村氏: それは作り手としては作ってみたいですよね(笑)。アップデートが前提のものづくりも面白そうだなと思いますし。 編: 中村さんが仮にオンラインゲームを作るとなったらどのようなものを作りますか? 中村氏: 大前提としてRPGではないものを作ってみたいですね。その上でどんなものが作れるかをやりたいですね。また、一緒に遊んで時間を共有した楽しさが残るものを作りたいですね。 編: ジャンルとしてはどのようなものに興味をお持ちでしょうか。最近では、RPGだけではなくスポーツやシューティングなどあらゆるものがオンラインゲーム化されています。 中村氏: それは従来のゲームがオンライン化されているだけですよね。どうせ作るんだったらオンラインゲームでなければ実現できないようなものを作りたいですよね。 編: 「ホームランド2」のような動きはなさそうですね。 中村氏: ないですね。社内では、最近「ホームランド」の話題は出てこないですし(笑) 山口氏: もしかしたら僕が作らせてくださいと言うかもしれませんね(笑)。 編: 余談ですが、「ホームランド」は、発表の時の勢いに比べると徐々にトーンダウンしていった印象があります。あれはどういう事情だったのでしょうか。 中村氏: ゲームキューブという対象ハードの問題と、通信カードの普及率と環境を考えるとちょっと難しかったですね。 編: オンラインゲームファンに一言と、今後の抱負をお願いします。 山口氏: 開発中は友達というキーワードで「アミーゴ・アミーガ」を作りこんでいましたが、現在は毎日気になるゲームを開発コンセプトにしています。最近ずっと断り続けていた開発ブログをうちのスタッフが始めるなど、ユーザーさんが日々気になるような運営・開発を行なっていきたいと思っています。今後については先ほど申し上げたように、人と人とがいる意味が少ないという部分に関して作りこんでいきたいですね。 中村氏: 決意というわけではありませんが、新しいジャンルを作りたいなという希望はあります。いまはこれぐらいで(笑)。 編: ありがとうございました。
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□ゲームズアリーナのページ (2007年3月30日) [Reported by 中村聖司]
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