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ゲームポット代表取締役社長植田修平氏インタビュー
アイテム課金ビジネス大手の2007年の事業戦略とは!?

1月17日収録

会場:ゲームポット本社

 ゲームポットは、オンラインゲームパブリッシャーとしてガンホーに続いて株式上場を果たしたゲームメーカーだ。その特異性は、同社の代表作である「スカッとゴルフ パンヤ」において、当時はまだまだ珍しい存在だったアイテム課金を採用し、大きな成功を収めたメーカーだというところにある。

 正確にいうと、2004年10月に発表された当初の計画では月額課金+アイテム販売というハイブリッド課金でスタートする予定だったものの、土壇場で基本プレイ無料のアイテム課金1本に切り替えた。これにより、オープンβテストからのコアユーザーを余さず囲い込み、大きな成功に結びついたと言われている。

 今回はその牽引者として知られるゲームポット代表取締役社長植田修平氏に、ゲームポットのこれまでの歩みとこれからの展望を語っていただいた。


■ ゲームポットのマスコット“U田さん”に見るゲームポットの基本スタンスと事業戦略

ゲームポット代表取締役社長植田修平氏。社長室はガラス張りになっていてスタッフの様子がよく見える。植田氏によれば「スタッフに見張られている」とのこと
ゲームポットの代表作「スカッとゴルフ パンヤ」の公式サイト。ゲームとは直結しないお楽しみイベントを定期的に開催するなど、ユーザー定期的に足を運ばせるように工夫を凝らしている
「U田さん」について「僕はぜんぜん構わない」という植田氏。この屈託のなさが、同社をポジティブスパイラルに導く原動力になっている気がする
編: いきなりですが、全社員とひとりずつミーティングをされたと伺いましたが?

植田氏: 3日間、朝から晩までずっとミーティングでえらい疲れました(笑)。会社が軌道に乗り始めたとき、社員はまだ10人未満でした。その時は日ごろからコミュニケーションをとっていたのですが、今回もその延長線上なのです。

 今は社員が80人強になったのですが、現場は常に見るようにしています。それを怠るとオンラインゲームの流れの早さについていけなくなる。ちょっとした運営の不手際がユーザーの不信感に繋がってしまいます。場合によっては不買運動を起こされてしまうことすらあります。ですからこの点はおろそかにはしたくありません。

 昨年は1年間で飛躍的に社員の数が増えました。当然コンテンツも増え、「君主」、「ファンタジーアース ゼロ」、「CABAL ONLINE」とあります。まだ立ち上がっていないコンテンツも「モンスターファームオンライン」、「トキメキファンタジー ラテール」など準備をしているところですので、人が3倍くらいに増えているのです。無理をしてでもその人がどういう仕事をやったかということを把握し、会社がどういう方向でやっていきたいのか理解させないと本当にばらばらになってしまいます。心がけてコミュニケーションをとる気持ちで全員と面談を行ないました。

編: ゲームポットは外部から見ている限りでは自由な社風だと感じています。それは各タイトルの公式サイトにおける4コマ漫画であったり、GM日記だったりしますが、その中で植田さんは「U田さん」という名前でたびたび登場しますよね。結構ネタにされてておもしろいんですが(笑)、あれは植田さんとしてはアリなんですか?

植田氏: あのおかげで、「パンチラ好きなんですか?」なんて言われることもありますが、僕はぜんぜん構わないんです(笑)。あの4コマ漫画を始めた時とは、会社の規模も立ち位置も大幅に変わりました。3年前に始めた当時は小さい会社でしたが、今は上場会社になりました。上場会社の社長がそんなことをやってもいいのかという意見が内部にはあります。しかしそれを規制してしまうとゲームポットらしさがなくなると思っています。

 今うちがやっている事業は、基本的に自社で作ったゲームではないのです。「パンヤ」や「CABAL」はそうですし、「君主」もローカライズの部分で企画を提案していますが、所詮は他社さんが作ったゲームです。その中でゲームポットらしさをどこで出していくか。これをゲームの中で出すのはなかなか難しいのです。企画を大幅に変えたりキャラクタを変えたりすることはできません。ですから、我々は各種イベントやGMがユーザーとチャットをする雰囲気ですとか、Webを使った仕掛けなどに特徴を持たせています。

 とりわけWebでの企画には力を入れています。「パンヤ」がスタートした時からやっている4コマ漫画もそうです。単にゲームのストーリーを追いかけるものではつまらない、ゲームと関係なしに面白ければ良いではないかという気持ちで作りました。それから「教えてカディエ先生」があります。もともとの目的は「パンヤ」のFAQの役割をそれでやろうとしていました。Webで言葉を入力するとそれに対して自動的にカディエ先生が返信してくれます。「バーディーは?」とユーザーさんが入力すると「パーより1打少ないスコアでホールアウトすることね」と説明してくれます。

 最初は形式ばってやっていたのですが、もう少し面白くしようと、とにかく何でも言葉という言葉をすべて羅列してがーっと入れまして、なんでも反応できるようにしました。「3サイズは?」と聞くとちょっといやな顔をしたり、「エッチ!」とかね(笑)。他に2ちゃんねる用語を入れると、たとえば「ぬるぽ」とか入れると「そんな言葉使わないでください」と返ってきたり、そうした遊び心をWebの中で仕掛けとして入れて、公式サイトに来ている時は何か面白い仕掛けがあるように工夫しています。

 昨年末に「シーズン3」が始まったときもカウントダウンがありました。3といえば長嶋さんということで、本当はミスター長嶋さんを使いたかったのですが(笑)、さすがにご本人は難しいと言うことでプリティ長嶋さんにお願いしました。単なる思い付きで「シーズン3」の3にちなんだキャンペーンで3,333人に当たるプレゼントなどに加え、もう一押しほしいなと思ったんですね。

 1日限定で公式サイトを替えてカウントダウンをしました。こちら側のスケジュールの見込みが甘くて3日前くらいにちょっと延期しますとあったりもしましたが(笑)、楽しんでもらえてナンボというのを基本にゲームとは別のところでユーザーを楽しませるのがゲームポットらしさなのかなと考えています。

【U田さん】
「藤島じゅん『スカッとゴルフ パンヤ』4コマ劇場」より。ゲームポットユーザーなら誰でも知っている人気マスコット「U田さん」。モデルは言わずとしれたゲームポット代表取締役社長植田修平氏。上場企業のトップとは思えないほどに、パンチラ好きのエロ社長として徹底的にいじられている。伺った感じとしては「まんざらでもない」雰囲気である

編: 2005年末に上場されて、2006年はチャレンジの年になりました。振り返ってみていかがでしょうか。

植田氏: 2006年を前半と後半に分けますと、前半は意外とゆったりとしていました。会社的には新しいコンテンツを調達するために種まきの時期でした。前半はライセンス獲得に動いた時期で、去年だけで4つのコンテンツを調達しました。後半はそれを実際ローンチさせる時期でした。それがえらく大変で10、11、12月に重なってしまいました。

 さらに「パンヤ」のシーズン3も重なりました。これはただのアップデートではなくて、データベースの構造が変わるなど目に見えない部分で膨大な変化がありました。それで11月、12月は大変でしたね。朝出社するとトドのように社員が寝ていることもありました(笑)。

編: 2006年6月には個人情報流出のトラブルがありました。タイミングとしてはたまたまなのかもしれませんが、これを境に2006年後半は、オンラインゲームパブリッシャーとしてぎっしり内容が詰まっていたように思います。

植田氏: あれはすごく反省すべき点で、ユーザーに対してもすごく不安感を与えてしまいました。上場企業として株主さんに対してもすごくご迷惑をおかけしました。しかし、良い意味で転機となってきちんと管理をしようという体制ができました。さらにサーバー管理のセキュリティをきっちりできる場所に移しました。良い意味でもまともな会社になるきっかけになりました。

編: 「パンヤ」に関しては、シーズン3突入前に150万ID突破が発表されました。シーズン3実装以後のユーザーからの反応と手応えについてはいかがでしょうか?

植田氏: シーズン3になってからこのひと月で一気に5、6万人くらい増えました。もう2年半経つタイトルで、これまでも右肩上がりでずっとユーザー数を伸ばしてきましたが、シーズン3でさらに1段階そのペースが上がりました。同時接続者数も今までの数割増えました。具体的な数字に関しては言えませんが、良い数字はキープしています。

編: 見込み以上の成果だったのでしょうか。

植田氏: はい。もちろん期待はしていましたが、不安なところはありました。なにぶんすでに150万人も獲得して、2年半以上運営しているタイトルです。どこまでユーザーを取りきれているか正直計りかねている部分がありました。見方によってはすでにユーザーを取りきってしまっているのではないか、新規参入してくるユーザーがさらに増えることは考えられないのではないかという意見もありました。

 シーズン3では、プロモーションにもかなり力を入れ、ゲーム性以外の点では一番弱かったコミュニティ機能を強化することによって、これまで我々が考えていた層とは違ったユーザー層に関心を持ってもらうことができました。特に最近では女性が増えてきています。Wii版の「パンヤ」が発売になったのも追い風になっています。シーズン3が始まって、Wii版が出て、テクモさんが力を入れていただいたこともあり、「パンヤ」の名前がメジャーになってきたと思います。

編: 一方、新規タイトルである「CABAL」と「ファンタジーアース ゼロ」は、それぞれ20万人、10万人という実績を挙げました。この数字をどう見ていますか?

植田氏: 定期的に何十万人突破というリリースを出していますが、私自身はそこに重きを置いていません。うちの場合は無料ゲームなので重要なのは会員登録した人がどれだけプレイを継続してくれるかなのです。ですから一番重きを置いているのは同時接続者数とアクティブユーザー数になります。それに関しては両方満足している結果が出ています。

 2006年に経営的な課題として挙げていたのは、「パンヤ」に続くもう1つの柱を違うジャンルで育てていくことでした。その意味で「CABAL」にしても「ファンタジーアース ゼロ」にしても「パンヤ」とは違うタイプのゲームです。「CABAL」は完全にMMORPGで、「ファンタジーアース ゼロ」はMMORPGであるけれどもTPS、MO的な要素があります。そこでもう1つ柱を作りたかったのです。

 オンラインゲームの会社で2本3本とヒット作を続けて出すのはすごく難しいことだと言われています。そこをなんとか実現したかったのです。いつまでたっても「パンヤのゲームポット」と呼ばれ続けるのは凄くシャクだったので(笑)、「CABAL」と「ファンタジーアース ゼロ」には力を入れています。接続者数を見る限り「パンヤ」に続く柱としてもおかしくないくらいの位置づけにできるのではないかという手ごたえです。「パンヤ」追いつくかなと思ったのですが、シーズン3で一気に伸びたので、また引き離されてしまいました。しかしかなりいいところまで来ていると思います。

編: アイテム販売の売り上げ的にはいかがでしょうか。

植田氏: 売り上げ的には2月9日の決算発表を越えると出せるのですが。それまで緘口令が引かれているのでごめんなさい。ただ、我々の見込みどおりで順調に推移しています。当初会社として出した数値に対してはすごく順調です。


■ ゲームポータル「プチコミ」の今後の展開について

「プチコミ」は、それ単体でビジネスとしては考えておらず、コミュニティサービスとして収益は度外視しているという
ゲームポットのコミュニティポータルサイト「プチコミ」。いわゆるゲームポータルではなく、ゲームコミュニティの活性を目的としたコミュニティサイトだ
「プチコミ」にはGMがモデレータを務めるクラブも複数存在する
編: ゲームポットのコミュニティサイト「プチコミ」についてお尋ねします。サービス開始から現在まで無料サービスを継続していますが、今後の事業戦略を聞かせてください。

植田氏: 収益は度外視でやっています。プチコミの中にはゲームポットが目指す構想の1つとしてオンラインゲームとコミュニティの融合が図られています。プチコミに会員登録している人は、「君主」のゲーム内でキャラクタを右クリックするとこのブログサイトが立ち上がって、この人が普段書いているブログ内容がわかるようになっています。ゲームの中で出会った人のひととなりがわからないケースが多いですよね。たとえばゲーム内のキャラクタの性別と実際の性別が違う人もいますし。プチコミに登録してブログを書いていると、その人のブログも閲覧することができてひととなりを知ることができます。それによってより密接にコミュニケーションを取ることができます。

編: 私が見た限り、「君主」のコミュニティサイトかなと思うくらい「君主」ユーザーが多いですよね。

植田氏: うちのコンテンツの中でもっともプチコミでの活動が活発なのが「君主」です。特に「君主」はユーザー自治を目的としたMMORPGですので、ユーザーにもイベントを起こすことができるなど多くの権限があります。そのためユーザー同士の議論がとても活発なのです。プチコミを通してユーザー同士がコミュニティを作って「君主」の世界をどう良くしていこうかということが盛んに話されています。

編: ユーザー数はどれくらいいるのでしょうか。

植田氏: プチコミはまだ発展途上ですね。10万人という単位にもなっていません。ただ、ユーザーのアクティブ率は高いので、ゲームをやりながらブログを書いていただくなどうまい循環ができていると思います。「君主」でプレイしている人がプチコミでプレイ日記を書いたりとか、ギルドメンバー同士のコミュニティを計ることで、プチコミで友達になって一緒にやってみよう、という流れを作り出せていると思っています。

編: ただ、アバターは無料のままですし、ビジネス的には厳しいですよね。

植田氏: 単体で見ると事業として採算は取れていません。しかし、オンラインゲームを考えるときに一番重要な要素はユーザーコミュニティになります。ユーザーコミュニティができればゲームができる新たなきっかけになりますし、たとえゲームを辞めようと思ったときにとどまる抑止力になると思います。辞めようかなと思ってもこのゲームも好きだし、このコミュニティが好きだ、ゲームを楽しむばかりでなくこの人たちに会いに来ているのだという意味で、コミュニティとの連動はすごく効果があります。

編: プチコミは単体でポータルビジネス化する予定は無いのでしょうか?

植田氏: 今のところは考えていません。ですからコスト面でも最小限にとどめています。将来的にはアバターの有料化なども考えていますが、そこに重きを置くつもりはありません。

編: なるほど。2006年は各社からゲームポータルが生まれ、特にアバターで収益を上げましょうという動きが活発化しました。その点では、ゲームポットさんは、とても静かでしたね。

植田氏: 去年はコンテンツを作ることに重点を置いていました。ポータルを作るからにはコンテンツが無いとできないということがありましたので、昨年はそういった取り組みをしました。うちも個々のコンテンツのバリューが出て来ましたので、その辺についてもそろそろ考えてもいいかなと思っています。

 しかし、これは僕個人の基本的の考えですが、ゲームは個々の魅力を強めないことにはユーザーは獲得できないと考えています。極論からすれば100個のタイトルより1個のキラーコンテンツの方が強い。うちがポータルやったとしても個々のゲームをいかに良いサービス、コンテンツにしていくかに力を入れていくと思います。

編: それは今年、プチコミの姿が激変を遂げると言うことを意味しているのでしょうか?

植田氏: 難しい質問ですね。僕の心を見透かされているようだ(笑)。あるかも知れませんとしか言えません。ただ、他社さんと同じような、アバターをメインにするやり方では無いと思います。

編: ポータルの土台はあくまでプチコミがベースでしょうか?

植田氏: それもわかりません。単純に面白いものをやりたいのです。たとえば、いまさらハンゲームさんと同じことをやってもかなわないと思います。ですからうちがやる場合はまったく違うものをやっていくだろうと。それをすぐやるかというとそうではないです。まずはゲームを、ということですね。

編: なるほど、他社さんとは逆の発想を行くわけですね。

植田氏: ミニゲームを何百種類集めてアバターで勝負、などとはまったく考えておりません。今年は「ラテール」、「LEVEL-R」そして一番期待しているのは「モンスターファームオンライン」です。キラーコンテンツを複数タイトルきちっと作っていくことがベースに無いと、ポータル事業云々はお話にならないと思います。


■ 自社開発部隊を擁するモバイルビジネスの今後について

モバイルで大作をリリースする計画を明かした植田氏。アイテム課金のノウハウを活かしたコンテンツになるようだ
2006年8月からサービスがスタートした「パンヤモバイル」
編: 現在、いくつかの携帯コンテンツをリリースされていますが、あれはすべて自社開発なのでしょうか?

植田氏: 自社もありますし、他社がやっているものもありますが、半分くらいは自社です。売り上げでいくと、全社の売り上げに対する比率は決して高くないです。しかし、モバイルはすごく有用なツールです。誰でも持っています。現在「パンヤモバイル」をやっていますが、オンラインゲームとモバイルとうまく連動させた企画は今後ともどんどんやっていきたいと思います。

編: モバイル分野に社内唯一の自社開発部隊を置いている理由を教えてください。

植田氏: 元々ゲームポットは、「パンヤ」をやる前はモバイルが収益の柱でした。その当時の部隊が継続して事業を行なっている、というのが大きな理由の1つです。また、携帯事業は今後もっともっとメガアプリ的な感じで、表現の仕方が変わってくると思っています。近い将来オンラインゲームも、モバイルゲームができるような形になると思います。実際自社開発しているものの中には、オンラインゲームのネットワークのライブラリを開発しているものもありますので、将来に向けた研究開発となります。

編: なるほど。モバイルゲームはオンラインを大前提としているので、本来はオンラインゲームパブリッシャーの土俵だと思います。しかし、日本の現状を見ますとコンシューマメーカーの土俵となっている感が強い。これはなぜでしょうか?

植田氏: 開発力の問題というよりは、携帯ゲームの場合容量の制限があります。1つのアプリケーションを作る際に何KB以内といった制限があり、表現が難しい。どうしても昔のファミコン時代のタイトルを移植するのが手っ取り早くなります。ただ、これからは表現方法も自由になってきてネットワークの回線も使えるようになり、まったく新しいタイプのゲームが出てくるのではないかと期待しています。

編: 私も期待していますが、本来の意味で「らしい」タイトルが見えてきませんね。

植田氏: コンシューマが強いと言われるのは過去の資産がありますので、その点が決定的に違います。うちは過去の資産がありません。モバイルとPCのオンラインゲームで言うと、モバイルのほうはどうしてもベンチャーはやりにくいと思います。1つのプラットフォームに乗っかって仕事をする時は、1つのコンテンツをサービスするのに、auにしてもDoCoMoにしてもSOFTBANKにしても企画を申請してキャリアから承認を得られないとできません。これは任天堂にしてもSONYにしても言えることで、ある意味での許認可が必要なのです。

編: 開発文化としてPCよりコンシューマゲームに近いと?

植田氏: 少なくともうちのやっているオンラインゲームとはまったく違いますよね。企画承認が降りたものに対して検証をして、それだけでローンチまでに半年以上かかってしまうことさえあります。ベンチャーが目指しているスピード感あるサービスはなかなかしにくい。かたやPCのオンラインゲームでは胴元みたいなのがいて、許認可がなければできないかといえばそうではない。うちなんかまさにそうです。ぱっと立ち上げた10人足らずの会社でも自由に運営サービスができるわけです。そうした意味で一番やりやすいのです。もちろん自主規制はしますが、どこかから規制を受けるわけではありません。その点が決定的に違います。

編: 開発という点では、昨年安田会長が開発本部長に就任しました。これは何を意味するのでしょう?

植田氏: 元々安田が開発部門とネットワーク周りを見ていました。しかし明確に役職としてついていなかったのです。組織が大きくなったことに加え、将来への礎として開発本部と管理本部、エンターテインメント事業本部としっかり区分けをして責任者を決めて明確に体系化する流れで起きた人事です。内部で何か起きたわけではありません。

編: 開発本部は何を担当している部署なのでしょうか。

植田氏: 課金システムやゲームデータベースの開発がメインです。ネットワークの部門ではシステム構成を作ったりそういった部隊です。オンラインゲームの企画・運営はエンターテインメント事業本部になります。モバイルはエンターテインメント事業本部の中にモバイル事業グループがあり、開発と企画を含めています。

編: モバイルビジネスの今後の展望を聞かせてください。

植田氏: 春先にRPGの大作をモバイルで出します。今年はそれを中心にやっていきたいと思います。将来的には課金方法も含めてオンラインゲームで積み上げたノウハウを活かせるようなゲームを開発していきたい。うちはアイテム課金を得意としています。頻繁にアップデート、ゲーム内イベント等を通じてユーザーから支持を得ています。今後は、ダウンロードして終わりのような垂れ流しではなく、オンラインゲームに近い形のビジネスに成長させていきたいと思います。

編: 業界的に見るとモバイルゲームは、古くからオンラインゲームが存在しますが、テクノロジーの進化は2000年頃からほとんど見られないように思います。この点についてはどのようにお考えですか?

植田氏: これはゲーム業界全体に言えることだと思いますが、日本のオンラインゲームが立ち遅れている理由として、モバイルゲームの影響があると思います。PS2が出た2002年頃からゲームの技術が飛躍的に上がったというイメージがあるでしょうか。僕は無いと思います。2002年頃はゲーム業界全体がクラッシュしはじめてきたときで、PS2が出た少し後から出すタイトルがぜんぜん売れなくなりました。開発会社さんはどうしたかというと携帯ゲームの開発に流れていった例が多いのではないでしょうか。ただ携帯のゲームはいかに小さく作るかが勝負になりますので、詰まるところテクノロジーの進化ではないのです。かといってオンラインゲームやるかといえばそうではない。確かに日本のゲーム業界の進化がここ何年か止まっていたと思います。

 その間、お隣韓国ではオンラインゲームマーケットが急にできて、開発会社も次々に立ち上がってできて、政府も開発会社に援助して、どんどんゲームの質も高くなるしネットワークの技術も高くなっている。気づけば、韓国のオンラインゲームの人気に驚かされるものがあるわけです。うちの立ち上げが2001年で、そのとき韓国のゲームを見たときにこんなゲームが日本で売れるわけがないだろうと思うことがほとんどでした。正直当時韓国で大人気になっていたタイトルを見たときに何か感じるものは無かったのです。しかし、そうしたタイトルが日本に上陸し、国内でも多くの支持を得ているのを見ると、韓国のゲームに対して日本のメーカーは軽視していたということが言えると思います。その間に韓国のゲームはどんどん進化して「グラナド・エスパダ」や「リネージュ II」といった大作まで作れるようになってきています。

編: 日本の開発力が停滞した理由としてモバイルにいったからというのは、おもしろい見方だと思います。

植田氏: 大手さんは違うと思いますが、体力の無い中小の下請けをやっている会社はやはり食うことを考えなければならない。PS2のタイトルが減って売れなくなってきたちょうどそのタイミングでモバイルが順調に来ていたところで、だったらそっちの方に下請けいってやろうよという考えがあったと思いますね。


■ 「わくわく感を絶対に失いたくない」植田氏のゲーム哲学

植田氏はゲームメーカーの代表としてゲーム哲学を語ってくれた。意外にも韓国タイトルにどちらかというと否定的な印象を持っているようだ
編: 昨年テクモさんからリリースされたWii版の「パンヤ」は、おっと思った出来事でした。

植田氏: Wiiは良く考えられているなと思います。どうやって遊びを提供するのかを任天堂さんは考えられていると思います。日本人が一番得意なのはそこではないかと思います。

編: つまりゲームプラットフォームとしての汎用性の高さでしょうか。

植田氏: そうとも言えますし、もう少し原点に立ち返ってゲームの面白さは何なのだろうなということを任天堂さんは考えさせてくれました。元来日本人がこれだけゲームを作ってきて、クリエイティブな発想はすごく豊かにあるはずです。今期待しているのはその発想のオンラインゲームでの活用です。オンラインゲームは遊びの幅をどんどん広げられるゲーム。日本人が今まで培ってきた発想力を活かしてもっと日本型のオンラインゲームを作れる時代にしたいなと思っています。

 正直、韓国のゲームは昨年のG★ 2006でも思いましたが、どれも同じゲームだなという感想です。一昨年も、昨年もそう思いました。オンラインゲームに関しても、そろそろ日本国産で「こんな遊び方もあったのか」というタイトルが出てきてほしいなと思います。それがもっともっと市場も大きくさせていくのではないかと思います。

編: “こんな遊び方”という点では、アメリカでは「Second Life」が人気です。ユーザーの創作に著作権を認め、現金取引も認める形で自由なトレードをシステム的に保証しています。ユーザーが自由に世界を作りかえることができる部分は、日本人の好みに合っているのかなと思います。植田さんがおっしゃっているのはそれに近い発想なのでしょうか。

植田氏: それとはちょっと違いますが、そういう要素も必要だとは思います。ゲームを自分で作れるのはいいのですが、それ以上にゲームの中の世界観はすごく大事だと思っています。ユーザーさんは通常の日常とは違うものをゲームの中に求めます。ユーザーがすべていじれるようになってしまうと世界観もへったくれもなくなってしまいます。世界の根幹になる部分は開発会社のクリエイターさんがしっかりコントロールしなければ面白くないものになると思います。単なる溜まり場ではなくあくまでゲームですから。

編: つまり、メーカーがユーザーに対して積極的にエンターテインメントを提供するのがゲームだと?

植田氏: そうです。これは将来的にも変わらない僕個人としての根本的な考え方になります。今話題になっているUCC(ユーザークリエイテッドコンテンツ)やWeb2.0などありますが、そういった形から入るものも多分今後出てくるとは思うのです。でもゲームってそうではないと思うんです。感性で面白いか面白くないか、何かわくわくするという感覚を絶対に失いたくないなと。その時々によってさまざまなビジネスの手法はあると思います。しかしゲームとはワクワクするものを見せていかないとダメだと思います。「Second Life」に関しては今流行っているとのことで僕もやってみましたが、ピンとは来ませんでした。

編: 確かに「楽しんでください」ではなくて「お金も稼げますよ」という方向性が含まれていることに違和感を感じますね。

植田氏: あれはあれですごくビジネス的に参考にすべき部分はあるので、そうした部分はうまく盗んでいきたいと思います。しかし私個人からすると心ときめきませんね。私はゲームに対するときめきに近い気持ちを大事にしたいと思います。

編: ところで昨年So-netと業務提携されましたが、このパートナーシップは今後どのような発展を見せるのでしょうか?

植田氏: 個々のコンテンツには大きな影響はありません。しかし会社としてみた場合のゲームポットのバリューはすごく上がりました。So-netさんの資本が27%ほど入っていて関連会社と位置づけられています。ソニーのブランド力は非常に影響力がありまして、投資家さんに対する会社の信用力であったり、海外出張の際にSo-netが資本参加している会社ということで信用力が上がりコンテンツ調達などに非常に有効に働いています。

編: ユーザーに対するメリットが出てくるのはいつくらいになるのでしょうか?

植田氏: 今年はSo-netとの連動の事業はこれからやっていこうと思います。特にSo-netさんはポストペットなどキャラクタ事業が強いですから、それらとうまくコラボレーションしていきたいですね。

編: SonyグループとしてPS3やPSPへの展開は無いのでしょうか。

植田氏: 今のところはまだないですね。So-netさんはプロバイダとして、So-netのエンターテインメント色を出していくことと、大きな会員数をもっていらっしゃって強力な情報発信力を持っています。その辺りのシナジーはすごく大きいだろうということで、両者に接点が生まれました。So-netはゲームポットの名前を使って、ゲームポットはSo-netの名前を使ってということです。So-netさんも独立した一企業ですので、Sonyグループ全体としてという話にはなっていません。

 ただ、元々コンシューマビジネスをやっていた人間なので、将来的にはやってみたいなという気持ちはありますけど、同時に非常にリスクが高いことだということも理解しています。うちがやるからにはきちっとオンラインゲームとしてやらなければ意味が無いと思います。うちがやりたいオンラインゲームは今のコンシューマゲーム市場ではやりづらい。毎週パッチがあたって、ゲームイベントがあって、いろいろな課金手法があってとなると現状のコンシューマのビジネススタイルはあまり向いていない。それができるような環境が整うのであれば、積極的に展開を考えたいと思います。

編: 現在オンラインゲームパブリッシャーのコンシューマへの参入は相次いでいますが、ゲームポットさんとしては慌てていないと。

植田氏: 慌てていないですね。敢えて不得意な市場に参入するのはすごく難しいと思っています。コンシューマを考えるとまずパッケージとして商品を売る形になると思います。その際の流通の部分はどうするのか、営業の部分はどうするのか。当然パッケージにするのであればロムに焼いてやるわけですよね。その生産工程まで含めると、現在の開発スケジュールとはまったく異なるわけです。それを押してやる意味があるのかといえば、今は無いと思います。

編: 元々コンシューマをやっていたメーカーの出身ですから実はコンシューマ展開は宿願なのかなと思っていました。

植田氏: そんなことないない(笑)。一旦僕はゲーム業界を離れたのですよ。ビジネスそのものに対してすごく疑問を感じていたところがあったので。その後ITの業界に入りそしてオンラインゲーム業界に戻ってきました。良いところも悪いところも理解しているつもりです。

編: ゲームポットはクロスゲームズやGPパートナーズという子会社を抱えていますが、現在この2社はどのような業務を行なっているのでしょうか?

植田氏: クロスゲームズは出資比率が低くなりましたので今はうちの関連会社ではありません。クロスゲームズの作ったコンテンツをゲームポットで配信していく形です。基本的には企画デベロッパーとなります。今「オンラインカートステア」というタイトルを夏にクローズドβテストだけやりました。春くらいにはいろいろな問題を修正してオープンテストをする予定です。

 GPパートナーズに関しては今後投資案件が出てくる可能性があります。そのときに機動的に動けるようにうちの事業にシナジーのあるような出資関係を作っていくことを目的とした会社です。


■ アイテム課金ビジネスのメリットは、「メーカー側がプライスリーダー」になれること

アイテム課金について実例をふまえて今後の展望を語れる人は国内にはまだまだ少ない。ゲームポットから今後どのようなビジネスが生まれてくるのかが注目される
編: 昨年、植田さんとの雑談の中で、私は「CABAL ONLINE」は月額課金モデルになると予想していたんですが、違いましたね。

植田氏: 課金方法は最終的にタイトルが目指す方向性によると思うのですが、うちの強みが出せるのはアイテム課金だと思います。ただ、アイテム課金をベースにしていますが、課金の仕組みは多様化してくると思いますし、逆に開発しなければいけないなとも思っています。ベストの課金方法がアイテム課金かといえばそうではないと思いますし、アイテムをたくさん買っている人が有利に進められるようなバランスがゲームとして良いとも思えない。その辺りはきちっと課金方法を開発しなければいけない時期にきているのではないかと考えています。

編: 新たな課金方法とは、ハイブリット課金のようなプラスオンの考え方ですか?

植田氏: 違います。新しい仕組みを生み出していこうということです。ショット課金やゲームセンター方式の課金もあると思いますし、ゲームの種類によって適した課金方法は異なると思うのです。しかし、業界全体一緒くたにアイテム課金に向かっていて、それは問題だなと。

編: なるほど。とても興味深い提言です。アイテム課金に関してはおそらく日本一詳しい植田さんにもう少し話を伺いたいのですが、アイテム課金の将来はどうなると考えていますか?

植田氏: アイテム課金のメリットの部分は良くわかっているつもりです。運営サイドからの話になりますが、アイテム課金は利に適っているのです。それはある程度メーカー側がプライスリーダーになれる部分があるのです。たとえば、任天堂のゲームが2,500円で販売されましたとなると、業界基準が4,800円だったのが一気に2,500円に横並びになっていく。消費者の購買心理としても、ゲームの中身が好きだから多少は高くても買うというユーザーさんもいらっしゃいますが、どっちか迷ったときに安いほうを買ってしまうということはある。小売店でもどこかが安売りをはじめたら、横並びにその値段に下がっていくなど、要するに価格決定権がメーカーにあるようで無いのです。

 アイテム課金の場合ですと、もちろん、常識の範囲内で大まかな値段設定は存在するのですが、他のゲームでは同じようなアイテムが500円で売っているのに、このゲームでは1,000円すると。だからそのゲームを辞めるかといえば辞めないですよ。ゲームの枠の中でしか価格を比較するものが無いので、ある程度メーカー側が価格決定権を持っている点でアイテム課金を採用するメリットは大きいと思います。

 しかし、他社さんの平均客単価を見ると年々高くなっているなという気がします。うちでもガチャをやっていますが、ギャンブル性が高く、レアアイテムほしさにお客さんが払う単価が高くなる傾向にあります。それが行き過ぎると危険だなという感じはします。

編: ギャンブル性や客単価向上の歯止めのなさに対して、アイテム課金の旗手として今後どのような動きをしていくのでしょうか。

植田氏: 基本的にはその人の価値観によって払う金額は変わってくると思いますが、くれぐれも買いすぎには気をつけてほしいと思います。特に未成年の人が親のクレジットカードを使って内緒で買ってしまったといったことがありますので、そうしたことはシステム的に防いでいかなければいけないなと思います。基本的に1人が買える上限や金額を明確に定める方向になるのではないかと思います。

編: アイテム課金ビジネスで私が懸念しているのは、いわゆる“商材”が本来のゲーム企画に成り代わっていくことです。本来ですとゲームの新要素やGMイベントの企画を考えるはずが、アイテム課金ビジネスでは、この服のフリルはどう可愛く見せようとか、色の組み合わせはどうしようということにリソースを割かざるを得ない。別にそれにリソースを割くことは正常ですが、ゲーム企画とアイテム企画のパワーバランスがひっくり返ってしまうのが怖い。そうなるともうゲーム開発ではないと思っています。

植田氏: アイテム企画は確かにゲーム開発ではないとは思いますが、人とコミュニケーションを楽しむオンラインゲームという点では、アイテムもゲームを楽しむ上ですごく重要な要素の1つだと思います。実際にそれを購入してくれるユーザーさんもいますし、楽しみにしているユーザーさんもいます。

 プレーヤーさんがゲームを進めて上達してレベルアップしたりクエストをクリアしたりすることに喜びに感じるのは当然だとは思いますが、レアアイテムを人に自慢したりですとか、持っている服装を新しくして、みんなに見てもらいたいという欲求もあります。その点でアイテムはユーザーがゲームの中の1つの世界観の中でキャラクタのアイデンティティや存在価値を高めるための大きな要因になると思います。要はバランスということになると思いますが、アイテム企画もすごく大事なことだと思っています。

編: 将来的なアイテム課金の展望はどのようにお考えでしょうか。ガチャやカードによる販売、ネットカフェオリジナルアイテムなど、いろいろな展開が生まれていますが、ゲームポットでは今後どのように発展していくのでしょうか。

植田氏: うちは基本あまり変わらないと思います。他社とのアライアンスによる提供は増えると思います。去年ではレイザーラモンHGとのタイアップ企画ですね。広告でも使ったし、アイテムも販売しました。そういうプロモーションやマーケティングと連動した形でのアイテム販売はいろいろなところと組んで展開していけたらと思います。売り方や見せ方はあくまでシンプルですね。


■ 2007年の一押しは「モンスターファームオンライン」、自社タイトルも

新規タイトルに期待を寄せる植田氏。その語り口は、既存タイトルが好調のためか、いくぶんの余裕が伺える
「モンスターファームオンライン」は2006年2月に発表されたタイトルだが、2007年1月現在まだティザーサイトのみ
編: それでは2007年の事業戦略を聞かせてください。

植田氏: 昨年は種まきの年で、いろいろなコンテンツを獲得しました。今年はその花を咲かせる年ですね。昨年末にサービスしたタイトルもありますが、それをもっと発展させることもありますし、「モンスターファームオンライン」、「Level-R」といった新規タイトルもあります。

 「モンスターファームオンライン」は、テクモさんと業務提携して企画段階から一緒に開発しています。「Level-R」もハンガリーの会社と提携して企画面から取り組んでいるオリジナルのタイトルです。そういう意味では、今年は本当の意味で昨年から目指しているゲームの多ジャンル化がきちっと実現される年で大いに期待しています。

 それからサービス面ではユーザーに対するサービスの質をもっと高めていきたいと思っています。インフラ面も含めたサポートやGMの質などいかに高品質なサービスをユーザーに提供できるか。これだけ日本でタイトルが増えてくると、ゲームの面白さで差別化することはもちろんですが、顧客満足度をいかに高めていくかが課題になります。プレイしてもらうだけでなく、継続していただいてナンボになりますので、それが長い意味での会社評価を高める上でも強化していきたいと考えています。

編: 今年は「モンスターファームオンライン」、「ラテール」、「Level-R」と続きます。まず「モンスターファームオンライン」について教えてください。

植田氏: 一言で言うとすごく癒されるゲームになると思います。育成をメインに作っておりまして、皆さんのイメージどおりCDを入れてモンスターを出してというコンシューマゲームに近い仕組みを取り入れようと思っています。まだ内緒ですが、「おおっ」と思うものになると思います。

編: サーバークライアント型のMMORPGになるのでしょうか。またビジネスモデルはどうなるのでしょう?

植田氏: サーバークライアント型のMMORPGです。アイテム課金を予定しています。

編: 開発はどちらが行なっているのでしょうか。

植田氏: テクモさんです。企画もテクモさんが行なっています。うちが企画する部分はアイテムのショップモールや、どういうアイテムを入れ込むべきかといった部分です。ゲームの根本に関する部分はうちがやるよりテクモさんがやるほうが断然優れていますので。

編: テクモさんはテクモさんで、昨年ゲームポータル「LieVo」を立ち上げました。「LieVo」との協業はあるのでしょうか。

植田氏: 何も決まっていません。

編: 「モンスターファームオンライン」だけゲームポットでやるということですか。

植田氏: そういうことになります。

編: 「モンスターファームオンライン」を契約したときには「LieVo」のことは知らなかったのでしょうか。

植田氏: 知りませんでした。うちの発表は2006年の2月で、「LieVo」が発表されたのは8月ですからね。前々からそういう話は聞いていました。さすがにSeedCさんと一緒にやるのは発表されて初めて知りましたけど。

編: 残る新タイトル「Level-R」、「ラテール」に対してはどのような期待を寄せていますか?

植田氏: 「ラテール」は、あのほんわかした雰囲気を大事にしていきたいのです。うちでは初めて女性のプロデューサーを据えました。女性の方にどんどんプレイしてもらいたい温かみのあるゲームです。運営チームの比率も全員とは言いませんが結構な比率を女性が占めていますから、女性らしい温かみのある運営ができるのではないかと考えています。先日のCBTの際のテスターの男女比は6:4でした。女性4というのはかなり多い数字です。売り方も含めて考えていきたいと思います。

 「Level-R」はうちでははじめての試みで、企画から携わっています。今までのリアル系のレースのオンラインゲームは無かったのです。インビクタスソフトはレースゲームを作るプロ集団で、10年以上レースゲームだけを作っている会社です。車の挙動ひとつにしても、バンパーがヘコむところからすべて計算されつくしていて、FFとFRの車がブレーキをかけたさいのガックンという止まり方の違いまで再現されています。クラッシュした後に走っていると、まっすぐ走っているのに少し車軸がずれて車が傾いていくなど本当にリアルさを重視しています。

 ただ、日本で成功するかどうかはやってみなければわからないところではあります。ターゲットもコア層に絞られるとも思いますが、間違いなくクオリティが高いオンラインゲームになると思います。また、日本だけではなく海外でも展開します。中国・台湾・東南アジアで展開予定です。いろいろな意味で新しいチャレンジのゲームです。海外展開については近々発表できると思います。

編: というと欧米への逆輸出もあるのでしょうか。

植田氏: いえ、欧米に関してはインビクタスソフトがサービスをすることになっています。我々はアジア圏への展開がメインになりますね。

編: 自社タイトルも今年には見えてくるのでしょうか。

植田氏: まだ企画段階ですので、今年中に発表まで行ければいいかなという感じですね。リリースは来年くらいになるのではないでしょうか。

編: 開発は自社で行なうのでしょうか?

植田氏: いえ、オンラインゲームを自社単体で開発することはないと思います。他社のデベロッパーさんと作っていく形になります。昨年ponsbicさんというクロスゲートを運営している会社に出資しています。そういった部分も今後強化していきたいなと思います。

編: オンラインゲーム以外ではどのようなビジネスが見えてきますか?

植田氏: オンラインゲームのアドバゲーミング(ゲーム内広告事業)がアメリカでは結構マーケットができていますが、それにも着手していきます。ゲーム内広告についても日本型のゲーム内広告はこういうものだというものを見せる年にしていきたいです。

編: ゲームポットさんのアドバゲーミングはどういった形になるのでしょうか。

植田氏: 世間のアドバゲーミングに対する意識とはちょっと違います。ただ単にゲームの中に看板を貼り付けるということは考えていません。広告自体も楽しんでもらえるようにします。そうでなければ何が本業のビジネスなのかがわからなくなってしまいます。「パンヤ」ではコースの中に看板を置くことはシステム的には既にあって、やろうと思えば簡単にできます。しかしそれで広告収益を得てユーザーに何のメリットがあるのでしょうか? やるからにはゲームの要素として必要なものでユーザーの方にも楽しんでいただけるような形を作っていきたいです。

編: アイテム課金の仕組みはアドバゲーミングと相性良さそうですね。

植田氏: そうですね。しかしそれだけだと今度は広告らしさが出しにくくつまらない気がします。もう一工夫二工夫できればなと思います。

編: Windows Vistaへの対応はいかがでしょうか。

植田氏: 一部未対応のゲームもありますが、将来的には対応する予定です。現在まさにテスト中です。Vista独自のフォントへの対応など細かい部分で調整しているところです。個人的にVistaには期待しています。動作環境がガラっと変わるはずなのです。普及するのは来年再来年の話になるでしょうが、基本的に3Dグラフィックスカードが無いと動きませんから、PC環境の底上げにつながり、うちにとってもメリットになります。いまだにユーザーのうちの何割かはオンボードで3Dグラフィックスカードが無い環境です。大きなアップデートが入った途端ゲームができなくなったという方が中にはいるのですよ。すごく悪いことをしてしまったなという気持ちになりますし、Vistaの普及でそういった理由でプレイができないことが無くなっていくと思います。

編: 最後にゲームポットのユーザーさん、オンラインゲームファンのユーザーさんに対して一言お願いします。

植田氏: まだまだオンラインゲームをやられている方は少ないと思います。醍醐味はやはりコミュニケーションです。これからオンラインゲームをやる人や、オンラインゲーム暦が短い人にお願いしたいのですが、とにかく怖がらずコミュニケーションをとっていただくとゲームの楽しさの幅が広がっていきますので、ぜひ実践して欲しいなと思います。

 うちのゲームに関しては、顧客満足度と質の高いサービスを念頭においていますので、皆さんの率直なご意見をお寄せください。それを常に改良に活かすことにより質の高いサービスを提供していきたいと考えています。ゲームポットのサービスにご期待ください。皆さんの度肝を抜く面白い企画を常に練っていますのでよろしくお願いします。

編: ありがとうございました。

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□ゲームポットのホームページ
http://www.gamepot.co.jp/
□「プチコミ」のホームページ
http://www.puchikomi.jp/
□関連情報
【2006年11月2日】ゲームポット、「スカッとゴルフ パンヤ Season3」体験レポート
キャラクタが走り自由に歩き回れるチャットルームを筆頭に、新キャラ、新コースなど新要素満載
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20061102/pangya3.htm
【2006年8月21日】ゲームポット、「CABAL ONLINE」プレスカンファレンスを開催
9月1日よりクローズドβテスト開始、ビジネスモデルはアイテム課金に
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060821/cabal.htm

(2007年2月1日)

[Reported by 中村聖司]



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