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★Xbox 360ゲームレビュー★

魔女は華麗に残酷に。
物理演算が爽快感を加速させる次世代アクション

「バレットウィッチ」



 2013年、目の前の近未来に人類は滅亡を目前にしていた。超大型地震、戦争、ウィルス、異常気象による食糧危機が立て続けに世界を覆い、世界中の機能が麻痺した頃「ガイスト」と呼称される怪物の軍が殺戮を開始した。人類は滅亡を目前にしていた……。

 このようなハードな設定を舞台にしたのが、本稿で紹介するXbox 360用タイトル「バレットウィッチ」だ。程近い未来を時間設定にしていながら、人類の終焉を誰しもが予感している世界が描かれている。そこに現われたのは、ホウキのシルエットをした巨大な銃を持つ黒衣の魔女「アリシア」。プレーヤーはアリシアとなって、様々な災厄を引き起こし、ガイストを生み出している「悪魔」と戦う。

 バレットウィッチは、銃と魔法を駆使する魔女と現代に蘇った悪魔、そして生き残っている人類の戦いが繰り広げられるアクションタイトル。センスが光る美麗なグラフィック、コンシューマータイトルとしては珍しい物理演算への力の入れ様と扱い方、そして主人公である魔女アリシアの魅力などなど、筆者が本作に感じた魅力は多い。本稿ではこれらを軸に紹介していこう。


■ 4種類のガンロッドフォームと“魔法”を駆使するキャラクタ後方視点アクション

ステージによって夕闇、夜、朝など、様々なシーンが展開される。いずれも光と闇の表現がうまく美麗だ
 本作は銃と魔法を駆使して、人型をはじめとしたガイストたち怪物、そして強大な力を持つ悪魔と戦う、サードパーソンビュー(キャラクタ後方視点)のアクションだ。

 主人公のアリシアはホウキ型をした巨大な銃「ガンロッド」で敵を殲滅する魔女。その精神にはダークネスという名の肉体を持たない悪魔が憑依しており、その魔力によって魔法を発動する。アリシアがなぜこのような境遇にいるのか、そして悪魔と戦っているのか。魔女という謎めいた存在をよりミステリアスにしている。

 全体の流れは、人型のガイスト兵をはじめとした並み居る敵を倒しつつ各ステージを踏破する形式。近代兵器で武装したガイスト兵の攻撃は強力で、さらに部隊を編成しているため囲まれるとハチの巣にされてしまう。移動しながら、瓦礫や車などの物陰といった優位な立ち位置を利用しつつ応戦して突破口を開いていくことになる。

 立ち回りの動作では、左アナログスティックの押し込みによる「しゃがみ」、身を翻してジャンプ移動する「回避アクション」、ガンロッドで近距離の敵を殴りつける「格闘」を駆使する。また、右アナログスティックを押し込むと、引いた視点のアクションビュー、照準を拡大したシューティングビューを切り替えられる。文字通り、移動にはアクションビュー、安全な位置での射撃にはシューティングビューが適している。

近代兵器で武装したガイストたちと生き残りをかけた戦いを繰り広げる。画面のようにレジスタンスが戦闘に参加してくれる場面も多い
 体力と魔力は、時間と共に回復する方式。ただし魔力は回復上限がゲージ内に存在していて、魔法を使用すると上限が下がる。回復の上限は敵を倒すことで最大値へと戻っていくため、魔法を次々に駆使してスピーディーに華麗に立ち回るには、的確に敵を倒していくことが必要だ。

 ガイスト兵にはそれぞれ耐久力があり、タフなタイプには弾を数発浴びせても倒れないものもいる。共通するのは、射撃する部位によって効力が異なることだ。FPSのように頭を撃つヘッドショットが最も有効だ。他の敵にも弱点となる箇所や攻撃方法があるため、それを考えるのもプレイのコツになる。

 続いて、以下にメインの攻撃方法、防御方法となる「ガンロッド」と「魔法」を紹介していこう。

・「ガンロッド」:4種類のフォームを状況によって使い分ける攻撃の基本

 最もベーシックな攻撃方法はガンロッドによる射撃だ。右アナログスティックで照準を操作し、自動ロックのような補助的なシステムは用いられていない。弾薬の概念は存在するが、弾は魔力によって生成できる。魔力は、敵を倒すことで吸収できるので、敵をコンスタントに倒していけば十分に回復できる。弾薬の生成では、魔力ゲージの回復上限は減少しない。

 ガンロッドは4種類のフォームにAボタンでいつでも切り替えられる。フォームは、初期からある連射性能と扱いやすさに優れる「マシンガン」、近距離の敵に有効な「ショットガン」、兵器の破壊や遠方の射撃に適した「キャノン」、連射性能はダントツだが重く移動速度が損なわれる「ガトリング」だ。

 「マシンガン」以外のガンロッドは、ステージクリア時に獲得する「スキルポイント」を使って獲得する。また、獲得済みのフォームにさらにポイントを消費すると攻撃力を上げることができる。町、都市、地下鉄、森など、視野の開けた場所から狭い場所、高低がある場所など様々なシチュエーションがあり、ガンロッドのフォームを使い分けることがプレイのポイントになる。

ガンロッドのフォームを使いわけるのが非常に重要。左上がマシンガン、右上はショットガン、左下はキャノン、右下はガトリングだ。基本となる攻撃だけにスキルポイントで威力を上昇させるとスムーズにプレイできるようになる


・「魔法」:攻守で活躍する魔女ならではの醍醐味

壁を生成する「エンシェントウォール」。スキルポイントの強化では耐久力が向上する
 ガンロッドのフォーム同様、もしくはそれ以上に重要なのが“魔法”の存在。LかRボタンを押して詠唱リングを呼び出し、A、B、X、Yのボタンで魔法を発動する。詠唱時間といった概念はなく、即座にいつでも発動できる。また、移動しながらでも発動しやすい操作形式が取られているため、プレイのリズムを損なわずにスピーディーに使えるのが嬉しいところ。

 魔法の発動には魔力が必要となるが、消費の小さい魔法で魔力ゲージの5分の1ほど、大きなものでは3分の1を消費する。魔力ゲージの回復上限も消費した分だけ減少するため、魔法だけに頼ることはできない。ガンロットと魔法をバランスよく織り交ぜて使うことになる。

 守備的なものから魔法を見ていくと、目の前に壁を生成する「エンシェントウォール」が最初から使用可能。アリシアを狙う攻撃を防ぐほかに、周囲にいる逃げ惑う人々や共に戦うレジスタンスを守るのにも使っていく。

 防御というより回復用途のものだが、戦闘が激しくなると、ガイスト兵に襲われて瀕死になった人は、魔法「サクリファイス」で自分の血を浴びせて治療できる。血を与えるという演出どおり、使用時には魔力以外に少量の体力を消費する。だが、人々の死亡はステージクリア時のスコアやスキルポイントの獲得量に影響するので、大切な要素になっている。

傷ついた人々を癒す「サクリファイス」。自らの血を浴びせかけるという演出どおり、アリシアの体力も少し減る。強化すると回復効果が広範囲に広がる
 続いて攻撃系魔法を見てみよう。ガンロッドに特定の属性を加える「エレメントショット」は、マシンガンでは炎を加えて攻撃力をアップ、ショットガンは風の力で周囲の敵も吹き飛ばすようになる。キャノンは光の属性により長距離ズーム射撃が可能に、そしてガトリングは雷の力が加わり、弾がヒットすれば敵をしびれさせて硬直させる。ガンロッドのフォーム自体、シチュエーションに応じて使い分けることが重要だが、エレメントショットにより、それがさらに強まるわけだ。

 また、地面から銀のトゲを持ったバラが槍のように突き出る「ローズスピア」は、範囲攻撃になっていて、敵がバリケードなどを築いて守備を固めているような、密集している場所で使うと敵を一掃できる。スピアが突き刺さったガイスト兵は、たちまち炎に包まれて燃え尽きてしまう。残酷な演出だが、華麗に決まると爽快感が高く気持ちいい。

 使い方次第でかなり遊び方の幅が広がるのが「ウィルパワー」だ。物質を吹き飛ばす魔法だが、この吹き飛ばせるオブジェクトがステージ上には豊富にある。道端にある車を吹き飛ばしてガイスト兵に当てて爆発させたり、瓦礫やドラム缶、スキルポイントで強化すると、さらに巨大な物体を派手に吹き飛ばせるようになる。例えば車を吹き飛ばして敵のバリケードを破壊、続けざまに車を乱射して爆発を起こして敵を吹き飛ばす、といったスタイリッシュな遊び方も可能だ。

 最後は多数のカラスを呼び出し敵を襲わせる「レイブンパニック」。カラスに襲われた敵は、パニックを起こして行動不能となる。敵の数が多く、移動や回避ではさばき切れない状況で使うのが効果的な魔法だ。

ガンロッドのキャノンフォームに魔法「エレメントショット」を追加。こうすることで長距離射撃に適したズーミングが可能になる。エレメントショットを強化すると、それぞれの属性による付加効果が強力になる
ガイスト兵が密集する場所に魔法「ローズスピア」でバラを投げる。すると地面からバラの槍が突き出て敵をまとめて葬った。使用タイミングが難しいが使いこなせるようになると、ぐっと華麗なプレイの完成度が高まる。強化するとスピアの範囲が広がる
本作の魅力をぐぐーっと高めている魔法「ウィルパワー」。物体を吹き飛ばす能力があり、画面のように爆発するものを吹き飛ばすと大爆発を巻き起こすこともできる。強化することでより強い力で物質を吹き飛ばせるようになる
大量の敵を相手にする時に有効なのが魔法「レイブンパニック」。多量のカラスを仕向けて混乱させる。強化することで、より多くの敵を行動不能にできる



■ 豊富なオブジェクトを巻き込み、爆発と破壊のハーモニーを奏でよう

爆発性のオブジェクトが多く、うまく利用すると思いがけない攻撃方法になる
 本作のステージ上にある構造物(オブジェクト)は非常に豊富だ。ステージの行動範囲を区切っているもの以外は、多くのオブジェクトが破壊可能、自由に移動可能となっている。それらは立ち回りの中で盾として利用もできるが、魔法の力で攻撃方法に活用することもできる。

 例えば、一見、背景にしか見えないような、ビルの屋上にあるタンクを打ち抜いて地上に落とし、「ウィルパワー」で吹き飛ばして車にぶつけて大爆発を引き起こす、といったことも可能だ。物理演算で制御されているオブジェクトたちは固定されたリアクションが用意されているわけでは当然なく、爆発物を撃つだけでも、撃つ位置、周囲にあるオブジェクトとのぶつかりによって予想外な反応が起こることもある。

 1度目のプレイでは射撃と魔法を駆使することが中心になり、そうしたオブジェクトの反応をなんともなしに楽しんでいた筆者だが、“活用する”という意識で2度目のプレイをすると、とたんに本作の面白さが加速されていった。よくよく見渡してみると、ステージ上には射撃で爆発を起こせるもの、「ウィルパワー」で吹き飛ばすことで攻守に活用できるものなどが大量に配置されているのだ。それらを動かすことでさらに別のオブジェクトが反応、繰り返していくと風景が様変わりしていた、ということもある。それが楽しくなってからは、射撃で敵を倒すことよりもより面白い倒し方、爽快な倒し方を模索する楽しみができた。本作の本当の魅力はこのあたりにあると言ってもいいだろう。

 物理演算のエンジンを用いてオブジェクトを豊富に破壊可能にしているタイトルは増えてきたが、攻撃方法に活用できるものや攻略性に関係させているものはあまり多くはない。ゲーム性に直結したテクノロジーの使い方として、本作は上手い方向性を見出している。

 物理演算による反応の魅力を高めているのは、爆発を引き起こすオブジェクトが多く、派手な反応が見られること、そしてオブジェクト同士が連鎖反応を引き起こして、思いがけない結果に繋がることがあることだ。普通にガンロッドと魔法を使ってガイスト兵を倒すという楽しみ方を堪能した後は、ステージ上のオブジェクトをいろいろと活かして楽しみたい。特にアリシアを十分に成長させた2周目以降に、こうした発見や活用を模索してみるのはオススメだ。

 ちなみにオブジェクトの攻撃判定は敵だけでなく自分にも及ぶため、近距離での大爆発に巻き込まれたり、瓦礫に激突するとゲームオーバーになるというシチュエーションも起こる。画面外の死角から飛来してきたオブジェクトなどへの考慮も必要だ。リアルな反応が得られる物理演算を用いているためなのだが、アリシアが死亡した瞬間、何が起こったのかよくわからない状況になることもあった。このリアルで無骨なままを望む人も多いかもしれないが、なんらかのゲーム的なフォローがあってもよかったかもしれない。

背景の一部に見えるものも撃ってみると反応する。画面のようにビルのタンクらしき物を打ち落とし、ウィルパワーで吹き飛ばして大爆発、というシーンも。いろいろと探してみるのが楽しい


・「大魔法」:驚愕の威力と画面効果を誇る本作のクライマックス的攻撃

 本作の物理演算力を堪能できるのは、なんといっても大魔法。大魔法はストーリーの進行度合いによって使えるものが増えていく特殊な魔法だ。通常の魔法とは異なり、その威力は絶大。ただし、魔力ゲージも9割、10割がなくなり、回復上限が1割、ゼロとなってしまうため、ガンロッドの弾薬生成に回す魔力も枯渇する。プレイ中は、完全に弾薬もなくなってしまい攻撃方法が格闘だけになるような心細いシーンは起こらなかったが、使うタイミングには気をつけたい。

 まず「サンダー」は、主にガイスト兵の乗り込んだ戦車を簡単に撃破するのに活用する。発動すると、アリシアがガンロッドを振りつつ、セリフを放って手を振りかざす。細い雷が周囲に走り、最後に巨大な落雷が轟音と共に落ちる。いかに戦車であってもひとたまりもなく、大爆発を起こすほどの威力だ。その光景を見た周囲のガイストは恐怖におののきひるむなど、芸も細かい。

 さらに中盤で使用可能になる「トルネード」は秀逸。巨大な竜巻を発生させて、破壊しづらいガイスト兵輸送ヘリを倒すのに有効な大魔法だが、これがすごい。ガイスト兵はもちろん、ヘリコプター、周囲のドラム缶や車、果ては建造物の屋根などを巻き込み、竜巻の中でそれらが激突して破壊されていく。その光景たるや圧巻だ。中盤の森のステージでこれを使用すると、木々が次々にメキメキと折れて、倒れた木に巻き込まれて森に潜んでいた敵が壊滅状態になる。

 極めつけは大魔法「メテオ」。これは空より無数の隕石を飛来させて全てを破壊しつくすという、とんでもない威力を持った究極の大破壊魔法だ。隕石が当たったビルなどの建造物は粉々に砕けて瓦礫の山へと姿を変える。もちろんこれら建造物の瓦礫もしっかりとした判定を持っており、「ウィルパワー」で動かすことができる。瓦礫に巻き込まれたガイスト兵や戦車は跡形も無く壊滅となる。同時に降り注ぐ瓦礫に当たるとアリシアもやられてしまうので、場所によってはプレーヤーも危険に陥るほど。

 演出としての見せ方、そして強大な魔法の威力をゲーム内で表現するものとしても、とにかくド派手な大魔法。物理演算によって生まれたリアリティは、その威力が強大すぎるゆえに併発した二次災害で自らも危険に陥る可能性を生み出しているあたりが面白い。ただリアルさを増す意味合いだけでなく、ゲームとしての新しい面白さ、方向性に物理演算エンジンを用いていること。ここに次世代の力、そして魅力が感じられた。

大魔法「サンダー」。巨大な落雷を起こすもので、単体の敵に有効だ。ガイスト兵の乗り込む戦車を破壊するのに最適
大魔法「トルネード」。竜巻を起こして全ての物、ガイスト兵、ヘリコプターなどを空高く巻き上げる。強い風で普通では破壊が難しいような建造物の屋根なども巻き込まれ、竜巻の中で激突して破壊されていく
究極の破壊魔法「メテオ」。無数の隕石を空から降らせ、前方の広範囲を破壊し尽くすという強大な魔法だ。隕石があたり、崩れ落ちるビル、飛散する瓦礫など、とにかく強烈なインパクトのある魔法だ



■ 人間よりもむしろ人間味を感じるガイスト兵、筆者を震え上がらせたワームマン

邪悪な人間の魂で作られているという悪魔の先兵「ガイスト兵」。ブラックユーモアの効いた台詞を活発に話す
 いずれのステージでも大量に押し寄せる人型のガイスト兵たち。彼らは悪魔ではなく、邪悪な人間の魂をもとに悪魔に作られた存在だ。彼らは人間から奪い取った近代の兵器で武装しており、さらに組織化しているため軍隊のようになっている。これらのこともそうだが、悪魔の手先、異形の怪物というイメージで湧き上がるものとは少し異なっており、個別の意識をはっきりと持って殺戮を行なっているようだ。

 ガイスト兵は、元が人間だけに戦闘中にも様々な台詞を発する。発見時には「お前ら残らず狩り尽くしてやる」、「ごちそうしてやる、いてぇやつをな!」、「はぁい、痛いお注射しますからねぇ」など。倒したガイストは「楽しかったぜ」や「やられちまったぁ」などの捨て台詞を残す。ガイスト自身も細身のもの、太めのものなど体型に色々なタイプがあり、所持している重火器も異なる。それに応じて声質は野太いものや、かん高いものなど多彩。また、部隊の隊長らしきガイストは妙にインテリ的というか典型的なホワイトカラー口調で「全員、ターゲットはあいつだ」、「残らず駆逐してやろう」などとのたまう。総じてブラックジョークと殺意が効いたセリフばかりだが、妙に雑魚テイストが溢れているというか、ある種の面白さがある。

 ステージが進むと、スナイパーライフルを持った狙撃兵のガイスト兵も登場。赤いレーザーサイトがアリシアの頭部を追い、一定時間狙いをつけられると確実に頭を撃ち抜いてくる強敵だ。これはレーザーサイトを確認したらすぐに物陰に隠れて狙いを外すか、エンシェントウォールで身を隠すことで回避できる。倒し方は様々だが、ガンロッドのフォーム「キャノン」に魔法「エレメントショット」を組み合わせた狙撃モードで逆に狙撃しかえしたり、身を隠しつつ近づいて撃退するといい。

 面白いのは超近距離まで追い詰めたときのスナイパーのリアクション。両手を上げて「俺の負けだ、そんな物騒な物はしまいなって」や「家には妻と3人の子供が居るんだぁ」など、様々な降伏の台詞を発しアリシアを拝みはじめる。だが、そのまま倒さずに離れると「と、見せかけてぇ!」と言いつつ攻撃を再開してくる。やっぱり典型的な情けない雑魚テイストを感じるところ。こだわりのプレイとしては、やはり追い詰めて降伏させて面白セリフを聞いたあと、一度離れて性懲りも無く攻撃してこようとしたところを振り向きざまにサラリと葬りたい。

ガイストのスナイパー兵に狙われた。物陰やエンシェントウォールを駆使して追い詰めると、命乞いを始める


 ステージの各所には結界が張られており先に進めない場所がある。そうした場所の結界を作り出しているのが、見た目にも気持ち悪いウォルナッツヘッドだ。これもある意味人型のガイストなのだが、巨大化した脳がむき出しになり、宙に浮いて奇妙なうめき声のようなものをあげている……。これを倒すことで結界が解けて、先に進めるようになる。ウォルナッツヘッドは、念動力のような力で周囲のオブジェクトを引き寄せ、アリシアに向けて飛ばしてくる。これもまた物理演算によるたまものだ。

 ステージが進むとさらに凶悪なガイスト、そして悪魔も出現。要所で登場するのは巨大なギガース。邪悪な魂が数百人分あわさって生まれるというその体はとてつもなく巨大で、腕には機関砲が埋め込まれている。正面からまともに撃ち合っても銃撃は通用せず、逆にハチの巣にされてしまう。その巨大な体をよく見て弱点をつくことが重要だ。ユニークな倒し方としては、ウィルパワーで瓦礫や車を弱点の部位に当てるというものがある。

 筆者が何度相手にしても思わず声が出そうになるのは、中盤から出現する敵の、スクリーマーとワームマン。怨念を持ちながら死んだ女性の魂から生み出されるというスクリーマーは、負の感情の塊である「怨霊魂」を放出する。スクリーマーも不気味な笑い声を発し、見た目的にも十分気持ち悪いのだが、さらにグッときたのはワームマンだ。怨霊魂が取り付いて怪物へと変貌した人間であるワームマンは、奇声をあげつつ、人の動きとは思えない速さで動き回る。動きも人のそれではなく、関節がありえない方向に捻じ曲がり近づいてくるのだ。はじめて目にしたときは、深夜遅くだったため、思わず身震いしてしまった。

画面左は結界を張って人間を逃げられなくしている「ウォルナッツヘッド」、画面右は圧倒的な巨大さがインパクトの強い「ギガース」だ
画面左は怨霊魂を放出している「スクリーマー」、そして右が、筆者を身震いさせた本作の気持ち悪さナンバーワン「ワームマン」
巨大な空を駆ける悪魔「ドラゴンバッツ」。その体は並の攻撃を受け付けず、無数の目玉を放って襲い掛かる



■ アクションの魅力は水準以上。物理演算オブジェクトを生かした遊びの探索も良質

美麗なグラフィックス。画面に映る瓦礫は物理演算によって構成され、ゲーム性の向上に生かされている
 魔女に銃を持たせ、魔法の力を物理演算エンジンで表現、程近い近未来世界にファンタジーな悪魔、といったように、モチーフ的な視点でも面白い試みとなっている本作。基本的に難易度は高めで、1周目はとにかくトライ&エラーを繰り返す印象だ。このタイプのタイトルは、プレーヤー自身の腕前の向上もキーとなるため、敷居を高く感じる方もいるかと思うが、修練の末に華麗なプレイができるようになったときの面白さ、完成形の美しさが重要。本作はその点においては非常に高く評価できる。

 本稿でも紹介していったオブジェクトの利用による遊び方など、探求の奥深さも十分。筆者も当初は真っ向からガイストたちと銃撃戦を展開して苦労していたが、ふと目をやると存在している多量の車や瓦礫といったオブジェクトを利用すると、まったく別のゲームのように楽しめるようになった。「ウィルパワー」を筆頭に、スキルポイントで成長させることで楽しみの幅が広がり華麗なプレイができるようになっていく。

 全体的な難易度として、縦横無尽に乱射して敵をなぎ倒していくようなプレイは、慣れてくるとできるようになるが、スタート当初は難しい。ガイスト兵の銃撃は激しく、部隊編成で挑んでくることが多いため、多数の敵を同時に相手するシチュエーションが多いためだ。体力の回復は自然回復するが、連続的に銃弾を浴びると瞬間的に大量の体力が削られる。プレイ難易度は「イージー」、「ノーマル」、「ハード」と最初は3種類から選択できるが、もう1段下の難易度が用意されていたもよかったと感じる。

 残念な点をあげるとすれば、作りこみに微細な雑身を感じる瞬間があることだろうか。操作感が特に大きいと思うのだが、プレイ感を左右するあと少しの丁寧さが欲しいとは感じる。たとえば、回避アクションがジャンプ動作を兼ねているが、それとは別に小気味のいい移動としてのジャンプも欲しかったかもしれない。とはいえ、操作に慣れて大胆に立ち回れるようになった2周目以降には、以前に感じた細かな荒さは気にならなくなった事柄だ。

 全体的なセンスは好印象。これは好みもあるとは思うが、光と闇の陰影を効かせたグラフィックスはふと操作を止めて見入るような場面すらある。一見、海外タイトルのような風合いだが、ガイスト兵の台詞など、日本人好みな色合いや演出を感じるところが多い。ハードな世界観や、主人公のアリシアというモチーフの魅力も本作を語る上では欠かせないだろう。今後、Xbox Liveによるアリシアのコスチュームや特殊なコンセプトを持ったミッションの配信も予定されているようなので、そちらにも期待したい。

(C)AQ INTERACTIVE 2006

□AQインタラクティブのホームページ
http://www.aqi.co.jp/
□キャビアのホームページ
http://www.cavia.com/
□「バレットウィッチ」のページ
http://aqi.nct.jp/bulletwitch/
□関連情報
【7月27日】AQインタラクティブ、Xbox 360「バレットウィッチ」
発売初日にディレクター岳洋一氏がクリアのコツを解説
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060727/cavia.htm
【6月23日】AQインタラクティブ、Xbox 360「バレットウィッチ」
TVCMに井上和香さんを起用
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060623/bullet.htm
【6月7日】AQインタラクティブ、Xbox 360「バレットウィッチ」
7月27日に発売延期。公式サイトではムービーを公開
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060607/bullet.htm
【5月24日】AQインタラクティブ、Xbox 360「バレットウィッチ」
新キャラクタ「マクスウェル」や新たな大魔法を紹介
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060524/bullet.htm
【4月10日】AQインタラクティブ、「魔女」対「悪魔」のアクションアドベンチャー
Xbox 360「バレットウィッチ」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060410/bullet.htm
【2005年12月20日】AQインタラクティブ、戦略発表会を開催
坂口博信氏の新作、Xbox 360「CRY ON」など3タイトルを一挙発表
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20051220/aqi.htm

(2006年8月11日)

[Reported by 山村智美]



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