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AQインタラクティブは10月1日に設立された、新しいゲームパブリッシャーだが、グループ内には、これまでデベロッパとして数多くのゲーム作品を発表してきた株式会社キャビア、株式会社アートゥーン、株式会社フィールプラスの3社を抱えている。この3社で開発要員は総勢約350名で、他の大手ゲーム会社と肩を並べる開発体制を有していることになる。今後、この3社はこれまで通りデベロッパとして他社のタイトルを手がけながらも、全くの新作を製作していき、AQインタラクティブからパブリッシュしていくことになる。 冒頭、同社の株主であり、元セガ・エンタープライゼスの代表取締役社長を務めた中山隼雄氏が挨拶を行なった。中山氏は海外スタジオが躍進している現状や韓国のネットワークゲームが市場を席巻している事例を話しながら「なぜ、日本のコンシューマ業界だけが沈滞して自信を失っているのか?」と問いかけ、「ひとえに対応能力の欠如と言うしかない。やろうという気力がなく、危機管理がなっていない」と厳しく指摘。「欧米向けのソフトが作れない言われるが、面白いものは世界共通。現地のスタッフを使いこなしていけばいいのに、やるべき事をやっていない」と語った。 そんな中でも「ニンテンドーDSやPSPで斬新なソフトが登場してきた」とし、「いくらでもチャンスはある。チャレンジが足らない。では、『おまえの所はできるのか?』と聞かれるかもしれないが、やってみなければわからない。企画会議で『実録鬼嫁日記』が提出され自信はなかったが、でも、やってみなければわからない」と、“やりたいことをやる”という作家性を前面に押し出し、チャレンジ精神で挑んでいく姿勢を示した。 さらに、「資金面でも思い切らなければならない」とし、「最近ヒットするかどうかとびびって少ない予算だったりするが、『CRY ON』では10億円の予算をとる。映画ではファンドがたくさんあるのに、ゲームファンドがないのは信用がないから。業界として信用を作っていかなくてはならない」と制作面でもあらゆる面からバックアップしていくとした。 中山氏がこれまで築き上げてきたアミューズメント業界での経験からの提言をもとに、AQインタラクティブの進むべき方向性と意気込みの表明からスタートした戦略発表会だが、続いて壇上に上がったのは、同社取締役社長の石井洋児氏。「AQ」の由来が「Artistic Quality」の略と「永久」を重ね合わせたものとする説明がされ、傘下の各社紹介を行なっていった。さらに今後は、経営基盤を強化するため株式の公開を予定していると語った。 AQインタラクティブからはすでにタイトルが発売されている。それはXbox 360の本体発売と同時発売となった「テトリス ザ・グランドマスターエース」。さらに、すでに弊誌でもお伝えしているXbox 360用「通信対戦麻雀 闘龍門」、PSP「実録鬼嫁日記 ~仕打ちに耐える夫の理不尽体験アドベンチャー~」の製作が進められている。 石井氏に続いて壇上に上がったのは代表取締役副社長の星野直彦氏。今後、発売タイトルとして、製作中のタイトルを数タイトル発表。具体的なタイトル名は明らかにされなかったが、プラットフォームはプレイステーション 2、Xbox 360をはじめ、ニンテンドーDSからPSP、さらにはレボリューション(仮称)、プレイステーション 3までと多岐にわたる。
星野氏は「我々の使命は、幅広いユーザーにそれぞれにあったコンテンツを供給すること」とし、コンテンツに合ったプラットフォームと言うことで、アーケードや携帯電話、PCでのソフトのリリースがあり得るとした。そしてそれらのコンテンツが小説や玩具など違ったメディアへ影響したり、影響されたりする中で、クロスメディアとして発展していけばと語った。さらには、グローバルに通用していくコンテンツを育てていきたいと抱負を述べた。 ■ 近未来のリアルと魔女のファンタジー「BULLET WITCH (バレット ウィッチ)」 今回の発表会において、AQインタラクティブから発表された新規タイトルは3タイトル。そのトップを切って紹介されたのが、2006年春の発売を目指してキャビアが製作中のアクション・アドベンチャー「BULLET WITCH (バレット ウィッチ)」。プラットフォームはXbox 360。 舞台は、人類滅亡の危機を迎えた2013年。近未来というリアルな世界観を舞台にしている一方で、悪魔との戦いを描き、登場する主人公は魔女というファンタジックな要素も持つ。プレーヤーは巨大な箒のシルエットを持つ銃を持つ魔女・アリシアとなって戦いを繰り広げる。ディレクタを務める岳 洋一氏は、「リアルな世界にファンタジックな魔女という要素を入れることで際だたせることができるのではと考えた」と説明。 アクション・アドベンチャーと言うことで、銃撃戦を中心としたアクションが中心の展開となるが、ストーリーは謎めいた展開となりそうだ。アリシアという影のある業の深い謎のキャラクタを中心に、暗い過去をストーリーに編み込んでいき、厚みの増した骨太なストーリーになっているという。 一方で、魔法という要素が存在する。戦略性の高いものだと言うが、その効果は絶大。天変地異で敵をパニックに陥れるもので、画面を覆い尽くすカラスの群れを呼んでみたり、巨大な竜巻で車両や戦車などを巻き上げることもできる。さらには隕石を雨のように降らせてステージ丸ごと火の海にしてしまうことも可能だという。岳氏は「今まで映画でしか見ることができなかったものを、インタラクティブに手のひらで実現することができる」と表現している。 Xbox 360のグラフィックスパワーを存分に使い、300mはあろうかというドラゴンのような悪魔や、ビルのあいだをズシン、ズシンと巨大な音を立てながら歩く巨人などインパクトは絶大な敵が登場しそうだ。製作状況は40%程度。描画エンジンは位置から製作されているため「(スケジュール的には) 苦しい」と言うことだが、「Xbox 360のスケールの大きなスペックを活かしたスケールの大きな世界観を描き、トータルバランスの大きな作品にしたい」と岳氏は抱負を語った。
公開されたのはまだまだ製作途中の映像だったが、それでも迫力は十分。近未来であるため高層ビル群が舞台となっている中で、グロテスクな悪魔や魔物とド派手な魔法を使用して戦う様は魅力的だ。グラフィックス的にも渋い出来で、大人こそが楽しめそうな質感まで描かれている。これからどのようにバランス調整までされ、仕上げられていくのか楽しみなところだ。
(C)AQ INTERACTIVE 2006
■ 本当に恐いバンパイアの復活! 「VAMPIRE'S RAIN (ヴァンパイア レイン)」 次に紹介されたのがアートゥーンの大島直人氏が手がける「VAMPIRE'S RAIN (ヴァンパイア レイン)」。タイトルの通り、ヴァンパイア (吸血鬼) との戦いが描かれる。雨の降ることがほとんど無いはずなのに、雨が降るロサンゼルス郊外のある街。長年の調査からそこにはヴァンパイアが潜むことが明らかになった。プレーヤーは、そのヴァンパイアを殲滅するべく特殊部隊のジョン・ロイドとなり街に潜入し、ヴァンパイアを抹殺していく。プラットフォームはXbox 360として製作されているが、プレイステーション 3での製作も決定している。発売は来冬を予定。 大島氏は「Xbox 360のものすごいパワーの上で何をやったらみんなに凄いと感じてもらえるだろう」と考えたという。そこから導き出されたのが“雨”。ここから、誰もが知っていながらも表現の難しい“雨”の中での戦いを描くこととしたのだという。 発表会場では雨の中を歩く美女……実はヴァンパイアなのだが、それをリアルタイムに実際に動かして見せた。光と影の表現に力を入れていると言うことで夜の街を舞台にしており、雨が流れ落ちるアスファルトが非常にリアル。あちこちにはネオンが妖しく光り、そのライトアップされた裏の薄暗い影がより強調されて見える。 また、映画好きな大島氏は、主人公が特殊部隊と言うことで、リアルな現代兵器で武装したジョン・ロイドがライフル銃を持ちたたずんでいる様を表示して見せ「『24』に凝っていて、こういうシーンはワクワクします」とコメント。映画的なグラフィックス表現にも力を入れているようだ。 さらにネットワークゲームのシステムにも言及。「誰がヴァンパイアなのか? 自分がヴァンパイアになったら……」とアイディアの一端を披露。心理戦をうまくシステムとして取り込んだ、これまで以上に楽しいネットワーク対戦を実現してくれそうな予感だ。
大島氏は「最近はヴァンパイアが恐くなくなってしまった。私たちが子供の頃の本当に恐かったヴァンパイアを復活させたい」と語り締めくくった。
(C)AQ INTERACTIVE
■ 坂口博信氏の“泣ける”新作Xbox 360「CRY ON (クライオン)」 最後に登場したのがミストウォーカーの坂口博信氏。坂口氏はAQインタラクティブの株主でもある。また、マイクロソフトから発売される予定のXbox 360「ロストオデッセイ」の製作をフィールプラスが手がけるなどその結びつきは強い。今回発表された新作「CRY ON (クライオン)」は、ミストウォーカーとキャビアが製作しており、プラットフォームはXbox 360。リリース時期は未定となっている。 坂口氏によれば、テーマは“涙”。涙には悲しい涙だけでなく、嬉しい涙や感動の涙など様々な局面で流すものであり、主人公の少女「サリー」の感情の揺れを大切にしたシナリオを製作中だという。舞台は土の巨人と共存する世界。戦争により土の巨人が蘇り混乱した世界を舞台にしたアクションRPGとなる。 キャラクタのイラストを手がけるのは、「ドラッグ・オン・ドラグーン2」などを手がけた藤坂公彦氏。発表会で公開された映像は、トゥーンシェーダー以上に自然にアニメーションするといった雰囲気で、淡い色遣いが印象的。コプロデューサーの岩崎拓矢氏と坂口氏は「藤坂シェーダー」と呼び、一からグラフィックスエンジンを作り上げ、独特の世界観を表現しようとしている。 岩崎氏によればゲームは、「アクションRPGということで、あれこれ悩んで上ったり下ったりして来たところを、土の巨人でガツンと壊したり突き進んだりと爽快感を出したい」という。また、普通のキャラクタの視点だけでなく、巨人からの視点など、そういった視点の違いも大事にしたいとコメント。 坂口氏は「個人的には初めてのアクションRPG。アクションRPGは、パズル要素で悩み、自分で好きなところにいけるという自由度を非常に大切にしている。でも僕の馴れたやり方としてはシナリオが引っ張っていくようなRPGの展開。そこをうまく融合させ、ちょっとシナリオが引っ張るんだけど、非常に考えさせられるような (自由度の高いゲームをつくる事で)、そういったところで新しい感触を出していきたい」と、「CRY ON」でやりたいことの一端を披露した。 現在シナリオは約半分まで進んでいると言うことで、「藤坂さんのイラストは好きで、寂しげな中にも凛とした芯の強いものを感じる」と表現。このキャラクタをうまく表現できるようにシナリオの製作を進めていきたいという。
なお、音楽は植松伸夫氏が担当。発表会には残念ながら出席されなかったが、ビデオレターで「坂口さんは最近詩を書くのが好きだから、歌が収録されるかもしれませんよ」とヒントを披露した。
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いずれの作品も作家性を前面に押し出したものとなっており、自分の作りたいものを提示していくという意気込みが感じられる発表会となった。すでに今期からそのリリースは始まっているが、来期からは様々な新しい試みに満ちた作品で市場を騒がしてくれるかもしれない。 (2005年12月20日) [Reported by 船津稔]
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