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★DSゲームレビュー★

Wi-Fiやアイテム、多彩なモードで
気軽にいつまでも遊べる一作

「テトリスDS」

  • ジャンル:パズルゲーム
  • 発売元:任天堂株式会社
  • 価格:3,800円
  • プラットフォーム:ニンテンドーDS
  • 発売日:発売中(4月27日)



多数のモードが追加されたDS版
 「テトリス」……このゲームが移植されていないハードウェアってどれぐらいあるの? というぐらい、全世界的に有名なパズルゲームだ。筆者がこのパズルゲームに初めて触れたのは、15年以上も前になる。当時、IBM/PC互換機で動く「テトリス」は、1列以上ブロックを埋め尽くすことで消える、という基本ルールは同じだが、テトリミノ(『テトリスDS』表記に準ずる)を横へ移動させることと、回転させること、そしてスペースキーを押すことで瞬時に落下させることだけが可能なタイプで、後にBPSがファミコンで発売したものに非常に近いものだった。

 しかし、それでも当時在籍していた某編集部のゲーマーはおろか、普段あまりパズルゲームに触れない多くの人たちが、仕事の合間の息抜きに遊びまくり、なかなかPCをシャットダウンしないものだから、ブラウン管モニターには背景が焼きつき、しまいには「テトリス」禁止令が出たほどの人気ぶりだった。

 筆者はあまりパズルゲームが得意ではない。しかし、空いた時間はこれに没頭していた時期があった。単純だからつい何度も遊んでしまうし、ごっそりとラインが消滅するときの爽快感、そしてレベルが上がると高速に落下するテトリミノと自分の思考速度の織り成す緊張感。本稿をご覧になっている方はもちろん周知の「テトリス」の魅力は、当時からずっと受け継がれて現代に至る。

 とまあ、昔話はこれぐらいにして、この「テトリス」が、昨年から日本では飛ぶ鳥を落とす勢いでリリースされている「Touch! Generations」のラインナップに加わった。「nintendogs」や「東北大学未来科学技術共同研究センター 川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のDSトレーニング」など、従来のゲームユーザーだけでない新しい客層にもウケるタイトルをリリースしてきた任天堂。

 任意の高速落下、そして着地後一定時間ボタン操作を許容する独特の操作感などで一世を風靡した日本での「テトリス」ブームの一翼を担ったゲームボーイ版「テトリス」を作り上げた任天堂が、満を持して送り込んできた「テトリスDS」。当然、単なる「テトリス」にはなっていない。そのあたりを中心にレビューをお届けしたいと思う。ただし、先ほども述べたように、筆者自身はプレーヤーとしてはスタンダードを200ライン消せる程度のまさに末端レベルであるので、その点を含みおきいただいて読み進めてもらえると幸いだ。


■ テトリミノを「ホールド」できるようになった「スタンダード」

 まず、従来の「テトリス」を踏襲していながら、このゲームのメインとして遊べるモードが、この「スタンダード」だ。画面が2つに分割されており、上画面と下画面の背景には「スーパーマリオブラザーズ」からスタートし、「スーパーマリオブラザーズ3」や「ゼルダの伝説」、「メトロイド」、「アイスクライマー」など、レベルが上がると変化する演出が加わるなどビジュアルが大きく表示されているが、基本的に従来の「テトリス」をベースとしたゲーム内容になっている。

 操作はボタンで行なう。十字ボタン上で瞬間にテトリミノを落下させるハードドロップ、そして十字ボタン下を入力している間だけ落下を加速する高速落下、左右で位置移動、A、Bボタンでテトリミノの回転、といったあたりはGB版のころからあまり変わらない操作系で馴染み深い。しかも、落下してくるテトリミノが6つ先まで表示されており、加えて、落下地点が表示されている(設定で変更可)のはうれしい仕様だろう。

 また、「テトリスDS」では、LおよびRボタンを押すことで、落下して固定されるまでのテトリミノを1つ「ホールド」できるようになっている。ホールドしている最中にLおよびRボタンを押すと、ホールドしているテトリミノと、落下中のテトリミノが入れ替わる。これにより、俗に言うブロックが4つ直列でつながっているテトリミノ=「テト棒」をホールドしておけば、4行消し=テトリスが狙いやすいなどのメリットが生まれる。従来のテトリミノをどう積んで高得点を狙うかという戦略に、さらに「ホールド」が加わることで、初心者には敷居を下げ、慣れた人にはさらにハイスコアを狙っていく楽しさを提供している。

 これに、「スーパーマリオブラザーズ」をはじめとしたおなじみの任天堂ビジュアル、そしてアップテンポチューンされたBGMとともに流れるのだから、見ていて、聞いていて楽しく、ひたすら遊んでしまう。「テトリス」は飽きるぐらい遊んだな、という実感はあるのだが、下手ながらも先のレベルの背景やBGMが見たくて、聞きたくて「あともう1回」と遊んでしまう、そんなリズミカルなプレイが楽しめる。

ハードドロップと高速落下でスピーディに遊べる ホールドすることでテトリスが狙いやすい 上画面と背景、BGMと演出がどんどん変わっていくのが楽しい



■ アイテムの存在がさらに面白さをブーストする対戦プレイ

 さて、本作の最大の魅力はワイヤレスによる対戦、特に「スタンダード」の対戦プレイにあるといえるだろう。対戦プレイは、DSダウンロードおよびニンテンドーWi-Fiコネクションによって複数人で遊ぶことができる。

 対戦では、1Pゲームの「VS COM」と同様、2ライン以上の消したラインに応じて、相手のフィールドの最下部から灰色のブロック(お邪魔ブロック)が隆起して攻撃できるという専用のルールが追加される。隆起予定のブロックは右下に表示され、現在落下中のテトリミノが固定されたタイミングで隆起する。その時、被攻撃側が2ライン以上消すと、そのライン数にあわせて相殺できる。また、3人以上の同時プレイで攻撃対象となる相手は、上画面に表示されているマークの相手になる。時間で切り替わっていくので、うまく攻撃をしかけたい時には、このマークを確認してから使っていくといいだろう。

 そのほか、アイテムのON/OFF、チーム(最大5チームまで)、ハンディキャップなどの設定が可能となっている。上級者とのプレイでも、チームを分けて2対1などで戦えば、アイテム(後述)をうまくタイミングを合わせて使うことで、ある程度たちうちできるようになる。また、負けてしまっても、ゲーム全体の勝敗が決するまでは練習できる。

アイテムの存在が対戦プレイを面白くする
 さて、Wi-Fiの4人プレイ、そして、10台までのワイヤレスプレイの「スタンダード」で登場してくるのが、アイテムだ。これも、「マリオカート」シリーズを遊んでいるプレーヤーには非常にわかりやすい効果を持っている。アイテムは、テトリミノのブロックにランダムで生じる「?」マークをブロックをそろえて消すことで、こちらもランダムで獲得できる。Xボタンを押すことでアイテムを使用できる。「?」マークは、消さないとそのうち別のブロックに移動してしまうので注意。アイテムは1つのみストックできる。

  • 「バナナ」
    ……攻撃対象となるプレーヤーのフィールドに積み上げられているテトリミノの配置をブロック単位で入れ替えてしまう。

  • 「キノコ」
    ……攻撃対象となるプレーヤーのテトリミノの落下速度を一定時間上昇させる。

  • 「こうら」
    ……自分のフィールドの最下段から2行、赤いこうらがブロックを削り取る。

  • 「テレサ」
    ……攻撃対象となるプレーヤーの6つの落下予定テトリミノの表示を隠す。

  • 「カミナリ」
    ……一定時間、攻撃対象プレーヤーのテトリミノの回転を止める。

  • 「スター」
    ……一定期間、相手の攻撃を無効にし、さらに落下するテトリミノが「テト棒」だけになる


バナナ キノコ こうら
テレサ スター


 この対戦の妙味は、なんといってもアイテムによるかく乱の楽しさ、そして1カートリッジで10人までがプレイでき、さっと始められてさっと終われるという気軽さにある。何度も繰り返すようで恐縮だが、ついついアツくなって「もう1回!」と対戦しちゃうことうけあいだ。

対戦プレイも気軽に遊べる
 ニンテンドーWi-Fiコネクションによる対戦では、1対1のスタンダードと、4人用のアイテムありのスタンダード、1対1のプッシュ(後述)の3つのモードが選べる。ワールド対戦では、Wi-Fiレーティングを勝利すると獲得、敗北すると失う仕様になっている。フレンドリストに登録した相手と対戦する「フレンドたいせん」ではレーティングのやり取りは行なわれない。

 短時間で遊びたい人は、スタンダードの1対1と、1対1のプッシュがオススメ。4人のスタンダードは4人そろうまでスタートしないので、多少時間に余裕があるときにプレイしたい。ぜひDSを持っている人たち同士で対戦してもらいたいし、Wi-Fi環境をそろえている人は恐れずに参加してみてほしい。遊べるモードはスタンダードだけでなく、ミッション、プッシュ(後述)もある。

 また、「スタンダード」において対戦で勝つためのキーポイントとなるだろう要素がある。「T-Spin」、そして「BACK to BACK」だ。

  • 「T-Spin」

     従来は通常、対戦プレイにおいて、相手に最もラインを送り込むことが可能なのは、4ライン同時消しの「テトリス」だった。今回は、T字型のテトリミノを落下初期状態から回転させて、ブロックの隙間にねじ込んでラインを消すテクニック「T-Spin」がルールとして採用されている。この状態でブロックを消すことで、1列消去で2列、2列消去で4列、3列消去では6列のお邪魔ブロックを相手に送ることができる。

    くぼみにはめ込むようにT字のテトリミノを使う


  • 「BACK to BACK」

     「テトリス」と、「T-Spin」を連続して成功させることでさらにボーナスが起きる。それがこの「BACK to BACK」。通常送られるお邪魔ブロックにさらに1列追加される。ラインが消える際に連続して起こせば成立するので、相手の攻撃を見ながら戦略的に狙っていこう。

これは「テトリス」を連続して「BACK to BACK」にした場合


 この2つのボーナスが追加されたことにより、単にテト棒待ちだけでない、対戦プレイの妙味が追加されている。1人で遊ぶときも、「VS COM」で練習しておくといいだろう。


■ 追加された各種モードも気軽に楽しめる

テトリミノをくっつけ、爆発させて敵やブロックを巻き込んで消していく「キャッチ」
 「スタンダード」のほかにも、2つの画面を使ってブロックを相手の陣地の一番下に押し込めば勝利という「プッシュ」、タッチペンを使って積みあがったブロックを崩して消していく「タッチ」、限られたテトリミノでブロックをすべて消す「パズル」、次々に表示される問題をクリアしていく「ミッション」、テトリミノをくっつけ、爆発させて敵やブロックを巻き込んで消していく「キャッチ」といったモードが用意されている。

 筆者がまずハマったのが、連鎖で一気にタワーを崩していく快感が味わえる「タッチ」。難易度をあげていくと、テトリミノは回転できないというルールが追加されるのだが、これがかえって面白い。ハマって抜け出せなくなったらギブアップできるが、だんだん「これじゃハマって終わっちゃうな」というパターンが見えてくると俄然やる気も出てくる。

 続いて、「スタンダード」の練習にもなる「ミッション」も楽しかった。特定のテトリミノを使って「3列消せ」、スピードアップした状態で「5ライン消せ」といった問題が次々に出てくる。これが、対戦プレイ時のよくあるシチュエーションを想定した問題になっており、自分の弱点がはっきりわかって、実用面でも役に立つモードになっていた。

 「ミッション」ほどではないが、はっとさせられることがあったのが「パズル」。こちらも限られたテトリミノをどの形でどの順番で使えば全消しできるのかを考えているだけで楽しいし、1問クリアするとすぐに次の問題へとスムーズにつながるインターフェイスになっており、なかなかやめ時が難しい。先に進んで行けば行くほど、「なるほど!」と思わせる問題に出会い、思わずうれしくなったりした。

 また、「プッシュ」では、テト棒をキープしていても、相手が隙間を埋めてくれない限りはテトリミノが貫通してしまって意味をなさないのがユニーク。L字型のテトリミノや、T字型のテトリミノをうまく使ってどんどんラインを消していき、相手をガンガン押しまくれるようになると一気に面白くなってくるだろう。

 反面、ちょっと面白さがわからなかったのが「キャッチ」だ。テトリミノをくっつけ、大きくして起爆、巻き込んだ敵やブロックが多い方が高得点というルールなのだが、先を読んで起爆タイミングをはかっていくところがなんとなくじれったい。また、一気に巻き込んで消すという感覚を狙ったものなのだが、個人的にはすっきりしない演出だったりしたこともあるかもしれない。

タッチパネルを使った「タッチ」。1度のアクションで連続してテトリミノを消していくと「CHAIN」になり、スコアが上がる お題にあわせてプレイする「ミッション」。対戦時の練習にもなる パズルは解けたときの爽快感と、じっくり取り組めるテンポがお気に入り 相手のフィールドまでどんどん押していける感覚が魅力の「プッシュ」



■ 対戦を盛り上げる仕掛け、そして丁寧な作りがこのゲームの価値を引き上げる

「オプション」ではBGMを自由に聞くことができる。ゲームの進行に合わせてBGMも増えていく
 いろいろ書いてきたが、とにかくこのゲームは「わかりやすい」うえに「熱中できる」ようにいろいろ工夫が凝らされている。ルールはご存知のとおりだし、操作もシステムもシンプル。さらにパッと始められてパッとやめられる。ロード時間なんてものは当然のことながら皆無だ。そしてアイテムやボーナスの追加による、単なる実力だけでない、「久しくテトリスから離れていたプレーヤー」から、「対戦プレイをあまりやったことのないプレーヤー」には非常に魅力的に映る多数の新要素が付加されている。難易度設定やルール変更など、各種設定も細かく変更できるので、対戦相手とレベルを変えて楽しめる丁寧なつくりになっている。

 それに加えて、ほかのソフトメーカーから「ずるい」と声が上がっても不思議ではない任天堂キャラクタの見事なアテンド。BGMを聞きたい人にはうれしいオプションなど、価格に対しての満足度はかなり高いタイトルになっているのではないだろうか? 単なる1人プレイの「テトリス」に飽きている人は、一度このソフトを友達と遊んでみてはいかがだろうか? ファクトリーチューンの丁寧さ、細やかさが感じられる1作になっている。一度飽きても、また始めてしまう。個人的には、発売から1カ月以上が経つが、いまだにほかのゲームと併用して遊べる、そんな「いつまでも持っていたい」タイトルになっている今日この頃だ。

Tetris (R) & (C) 1985~2006 Elorg, a Tetris Holding Company. Licensed to The Tetris Company. Game Design by Alexey Pajitnov. Logo Design by Roger Dean. ALL Rights Reserved. Certain new game elements developed by Nintendo, and any characters, sounds and video games originally owned by Nintendo: (C) 2006 Nintendo.

□任天堂のホームページ
http://www.nintendo.co.jp/
□製品情報
http://www.nintendo.co.jp/ds/atrj/
□関連情報
【5月1日】任天堂、「お台場学園2006 ~文化祭~」に
「テトリスDS」をはじめ「Touch! Generation」シリーズを出展
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060501/nin.htm
【3月8日】任天堂、マリオなどが登場する定番パズルゲーム
DS「テトリスDS」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060308/tetris.htm
【2月15日】「ニンテンドーDS カンファレンス! 2006.春」公開スクリーンショット
「テトリスDS」、「しゃべる! DSお料理ナビ(仮称)」など
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060215/nin2.htm
【2月15日】任天堂、「ニンテンドーDS カンファレンス! 2006.春」で
好調なDSの今後について岩田社長語る
「年内のできるだけ早い時期に1,000万台の普及を達成したい」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060215/nin3.htm

(2005年6月9日)

[Reported by 佐伯憲司]



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