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Game Developers Conference 2006現地レポート

10億ドル規模にまで成長する北米のカジュアルゲーム市場
Casual Games Summit

3月20~25日開催

会場:San Jose McEnery Convention Center

 丸一日かけてテーマを掘り下げていくチュートリアルセッションのひとつである、Casual Games Summitでは、20名の講演者による講演と、パネルディスカッションによって、アメリカにおける「カジュアルゲーム」を様々なテーマから掘り下げていった。

Floodgate Entertainment のチーフデザイナーであるSteve Meretzky氏
Juan Gril 氏の提示するヒットをするゲームのための3つのヒント
質疑応答は活発に行なわれていた
 講演者はモバイルゲームを開発するFloodgate Entertainment のチーフデザイナーであるSteve Meretzky氏や、PlayFirstという出版社の社長兼CEOのJohn Welch氏、Disney Online の VP.Premium ProductsのSteve Parkis氏など、制作者からパブリッシャーの代表、メディアと多彩な顔ぶれである。

 このセッションで語られるカジュアルゲームとは、アメリカなどで大きな人気を獲得しているダウンロードして専用クライアントやwebブラウザでプレイできるゲームである。「だれでも簡単にプレイできて、寛大であり、プレイ時間が短く、何度でもプレイでき、安価であること」を特徴としているこのゲームビジネスは、アメリカでは市場規模が年々大きくなっていて、2008年には10億ドル規模になると予想されている。セッションでは最初にSteve Meretzky氏をはじめとした数人のパネラーによって多角的な視点から「カジュアルゲームとは何か」が語られた。

 ゲームの進化史からカジュアルゲームを見れば、ゲーム創生期は「ポン」などのカジュアルゲームしかなかったが、'80年の最初に「パックマン」がカジュアルゲームに、「ウルティマ」や「ウィザドリー」がハードコアゲームとして分岐し、カジュアルゲームとハードコアゲームの2つの流れが生まれ、Windowsの「ソリティア」等が新しいカジュアルゲームの潮流として出現。現在は、ハードコアからカジュアルゲームまで様々なゲームが発売されることとなった。

 昨今では、カジュアルゲームは従来のゲームビジネスを変え始めている。ゲーム制作者からパブリッシャー、流通業者、小売店を経てユーザーの手に届いていたゲームが、ダウンロード販売によって直接制作者や、パブリッシャーからユーザーの手に届くようになった。また、ユーザーが直接お金をかけてゲームを楽しむ「Skill-Based Gaming」というジャンルや、アイテム課金制や従量課金制をとった「小さな取引」のゲームも生まれ始めている。

 カジュアルゲームを販売するJoju GamesのJuan Gril 氏は「カジュアルゲームデザイン」というテーマで、ヒットするゲームのための3つのヒントを明らかにした。1つ目は“暴力的でないこと”、2つ目は“90秒でルールが把握できること”そして3つ目が“思った時にすぐに実行ができ、同時に3つ以上の事をさせないこと”である。

 彼は自社で販売する作品を例に出し、ゲームルールに関して必ずしも独自性がないことを語る。ゲームは、自身の語った3つのヒットするルールを守りつつ、プレイして楽しくなったり、快適な気分になることを心がける。ゲームのルールそのものには独自性がなくても、世界観や、キャラクタ性などに気を配ることで優れたゲームは生まれると語った。

 また、PopCap GamesのGeneral Manager を務めるDave Rohrl氏は、カジュアルゲームは昨今の大人数のチームにおける大作志向のゲームに対し、3~5人という少人数のチームで、制作者が自主性を持ち、短期間で、きちんとしたスケジュール管理の下、ゲームが制作できるという点を紹介した。

 こういった定義を行なった上でサミットでは、数人のパネラーで様々なテーマでの議論が行なわれた。「ゲームクリエーターと流通業者の発展した関係」では、マーケットでの展開の上でパートナーは必要か、という議論となり、「ダウンロード販売を行なうことで世界に対してすぐに販売できる」という意見に対し、「ゲームは紹介されなければユーザーの目に触れることができない、ローカライズも含めたパブリッシャーとの協力体制が必要だ」という反論が出たり、「オンラインコミュニティーに対する働きかけも行なわれるべきだ」という意見が出された。

 「カジュアルゲーム開発のプラットフォーム」といったテーマでは、コンシューマ機などのプラットフォーム論ではなく、「Dance Dance Revolution」といった大型のゲーム機を例に取り、ゲーム性に直結したハードウェアが必要かという議論がなされた。ゲーム性にあったデバイスが成功を収めたという意見がある一方、そういったゲームはハードコアゲームに限られていて、女の人や幅広い層に受け入れられるためには、ダウンロード販売におけるカジュアルゲームが向いている、という意見も。メカニックと共に発展してきたゲームの文化を認めつつも制作者にとってもハードルが高い点などが指摘された。

 また、「新しい北米ユーザーの到達点」の中で、Microsoft のXbox Live Arcadeを担当するGreg Canessa氏は北米でのサービスの状況を紹介した。Xbox Live Arcadeは、Xbox Liveのネットワークを利用したゲーム配信サービスだが、北米ではXbox 360に向けたXbox Live Arcadeの場合、通信を行なっているXbox 360のユーザーの内60%がXbox Live Arcadeを利用しており、神秘的な宇宙空間で戦うシューティング「Geometry Wars 」や、迷路に玉を転がしていく「Marble Blast Ultra」といったタイトルが人気だという。Greg氏はサミットのカジュアルゲームのダウンロード販売が盛んな北米市場の動きを、Xbox 360がきちんと取り入れている事をアピールした。

 各ディスカッションの終了時には質問コーナーが設けられ、来場者は積極的に質問を行なっていた。興味をそそられたのは、「日本で『脳を鍛える大人のDSトレーニング(北米タイトル:Brain Age::Train Your Brain in Minutes a Day)』が人気で、ユーザーの年齢層をどう思うか」という質問に対し、「Brain Training?」と、登壇者は顔を見合わせGreg氏が、「Xbox Live Arcadeは子供だけでなくその親にも人気だ」と答えていたことだ。

 セッションを受けていて感じたことは、アメリカの開発者と筆者の間での「カジュアルゲーム」に関する定義のずれだ。講演者の構成にもよるとは思うのだが、北米でGBAやDSは人気のはずだが、そういった携帯ゲーム、及びモバイルゲームに関する言及がほとんどなかった。彼らの定義するカジュアルゲームは、ダウンロード販売によるPCゲームという限定された意味合いを強く感じるのだ。

 さらに今回、講演者の関わるゲームの紹介として「Facuty Choice Award」のノミネート作品が紹介されたのだが、作品のグラフィックス、ルールともに込み入ったものになってきており、Juan Gril 氏の「カジュアルゲームデザイン」からはずれていくように思える作品もあった。

 「パックマン」といったゲームはかつてはメインストリームを担っていた作品であり、高度なゲームがメインになるにつれ、日本では「ナムココレクション」といったリバイバルされたゲームや、携帯機向けゲームに「カジュアルゲーム」という呼称がつけられた動きがあると思う。また、韓国ではMMORPGというメインストリーム以外のゲームを指し示す言葉として生まれたと言えるだろう。

 昨年末からの日本での携帯ゲームの爆発的な人気や、北米でのヒット、韓国での状況など世界各地で定義によって微妙に変わる“カジュアルゲーム”が今後どういった動きを見せるかは興味のあるところである。

北米で好調なXbox Live Arcade カジュアルゲームはアイデアの似たゲームが多いのも確かで、「クローン」が多い現状も報告された パネルディスカッションでは様々な意見が飛び交った

【Facuty Choice Award】
宝石をそろえていく「MAGIC MATCH」、ファンタジーな雰囲気を持った作品だ 毛玉のオバケを消していく「Phuzzle」 船を使って貿易していく「Tradewinede Legends」
ペットの犬と共に迷宮を探索していく「FATE」 各地の謎解きに挑戦する「HUNTSVILIFE」 受賞をしたのは「Phuzzle」。賞品はなぜかタオル

□ガマニアデジタルエンタテインメントのホームページ
http://www.gamania.co.jp/
□「飛天online」のページ
http://www.gamania.co.jp/domo/
□関連情報
【3月7日】ガマニア、台湾産MMORPG「飛天online」体験レポート
濃厚なストーリーや凝った演出など台湾ならではのギミックに注目
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060307/hiten.htm
【2月19日】Taipei Game Show 2006現地レポート
「曙光Online」、「快閃賽貝」など新作タイトルを展開する台湾メーカー
X-LEGEND、IGS、XtraVisionほか
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20060219/tgs_tw2.htm

(2006年3月22日)

[Reported by 勝田哲也]



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