|
会場:San Jose McEnery Convention Center
このセッションで語られるカジュアルゲームとは、アメリカなどで大きな人気を獲得しているダウンロードして専用クライアントやwebブラウザでプレイできるゲームである。「だれでも簡単にプレイできて、寛大であり、プレイ時間が短く、何度でもプレイでき、安価であること」を特徴としているこのゲームビジネスは、アメリカでは市場規模が年々大きくなっていて、2008年には10億ドル規模になると予想されている。セッションでは最初にSteve Meretzky氏をはじめとした数人のパネラーによって多角的な視点から「カジュアルゲームとは何か」が語られた。 ゲームの進化史からカジュアルゲームを見れば、ゲーム創生期は「ポン」などのカジュアルゲームしかなかったが、'80年の最初に「パックマン」がカジュアルゲームに、「ウルティマ」や「ウィザドリー」がハードコアゲームとして分岐し、カジュアルゲームとハードコアゲームの2つの流れが生まれ、Windowsの「ソリティア」等が新しいカジュアルゲームの潮流として出現。現在は、ハードコアからカジュアルゲームまで様々なゲームが発売されることとなった。 昨今では、カジュアルゲームは従来のゲームビジネスを変え始めている。ゲーム制作者からパブリッシャー、流通業者、小売店を経てユーザーの手に届いていたゲームが、ダウンロード販売によって直接制作者や、パブリッシャーからユーザーの手に届くようになった。また、ユーザーが直接お金をかけてゲームを楽しむ「Skill-Based Gaming」というジャンルや、アイテム課金制や従量課金制をとった「小さな取引」のゲームも生まれ始めている。 カジュアルゲームを販売するJoju GamesのJuan Gril 氏は「カジュアルゲームデザイン」というテーマで、ヒットするゲームのための3つのヒントを明らかにした。1つ目は“暴力的でないこと”、2つ目は“90秒でルールが把握できること”そして3つ目が“思った時にすぐに実行ができ、同時に3つ以上の事をさせないこと”である。 彼は自社で販売する作品を例に出し、ゲームルールに関して必ずしも独自性がないことを語る。ゲームは、自身の語った3つのヒットするルールを守りつつ、プレイして楽しくなったり、快適な気分になることを心がける。ゲームのルールそのものには独自性がなくても、世界観や、キャラクタ性などに気を配ることで優れたゲームは生まれると語った。 また、PopCap GamesのGeneral Manager を務めるDave Rohrl氏は、カジュアルゲームは昨今の大人数のチームにおける大作志向のゲームに対し、3~5人という少人数のチームで、制作者が自主性を持ち、短期間で、きちんとしたスケジュール管理の下、ゲームが制作できるという点を紹介した。 こういった定義を行なった上でサミットでは、数人のパネラーで様々なテーマでの議論が行なわれた。「ゲームクリエーターと流通業者の発展した関係」では、マーケットでの展開の上でパートナーは必要か、という議論となり、「ダウンロード販売を行なうことで世界に対してすぐに販売できる」という意見に対し、「ゲームは紹介されなければユーザーの目に触れることができない、ローカライズも含めたパブリッシャーとの協力体制が必要だ」という反論が出たり、「オンラインコミュニティーに対する働きかけも行なわれるべきだ」という意見が出された。 「カジュアルゲーム開発のプラットフォーム」といったテーマでは、コンシューマ機などのプラットフォーム論ではなく、「Dance Dance Revolution」といった大型のゲーム機を例に取り、ゲーム性に直結したハードウェアが必要かという議論がなされた。ゲーム性にあったデバイスが成功を収めたという意見がある一方、そういったゲームはハードコアゲームに限られていて、女の人や幅広い層に受け入れられるためには、ダウンロード販売におけるカジュアルゲームが向いている、という意見も。メカニックと共に発展してきたゲームの文化を認めつつも制作者にとってもハードルが高い点などが指摘された。 また、「新しい北米ユーザーの到達点」の中で、Microsoft のXbox Live Arcadeを担当するGreg Canessa氏は北米でのサービスの状況を紹介した。Xbox Live Arcadeは、Xbox Liveのネットワークを利用したゲーム配信サービスだが、北米ではXbox 360に向けたXbox Live Arcadeの場合、通信を行なっているXbox 360のユーザーの内60%がXbox Live Arcadeを利用しており、神秘的な宇宙空間で戦うシューティング「Geometry Wars 」や、迷路に玉を転がしていく「Marble Blast Ultra」といったタイトルが人気だという。Greg氏はサミットのカジュアルゲームのダウンロード販売が盛んな北米市場の動きを、Xbox 360がきちんと取り入れている事をアピールした。 各ディスカッションの終了時には質問コーナーが設けられ、来場者は積極的に質問を行なっていた。興味をそそられたのは、「日本で『脳を鍛える大人のDSトレーニング(北米タイトル:Brain Age::Train Your Brain in Minutes a Day)』が人気で、ユーザーの年齢層をどう思うか」という質問に対し、「Brain Training?」と、登壇者は顔を見合わせGreg氏が、「Xbox Live Arcadeは子供だけでなくその親にも人気だ」と答えていたことだ。 セッションを受けていて感じたことは、アメリカの開発者と筆者の間での「カジュアルゲーム」に関する定義のずれだ。講演者の構成にもよるとは思うのだが、北米でGBAやDSは人気のはずだが、そういった携帯ゲーム、及びモバイルゲームに関する言及がほとんどなかった。彼らの定義するカジュアルゲームは、ダウンロード販売によるPCゲームという限定された意味合いを強く感じるのだ。 さらに今回、講演者の関わるゲームの紹介として「Facuty Choice Award」のノミネート作品が紹介されたのだが、作品のグラフィックス、ルールともに込み入ったものになってきており、Juan Gril 氏の「カジュアルゲームデザイン」からはずれていくように思える作品もあった。 「パックマン」といったゲームはかつてはメインストリームを担っていた作品であり、高度なゲームがメインになるにつれ、日本では「ナムココレクション」といったリバイバルされたゲームや、携帯機向けゲームに「カジュアルゲーム」という呼称がつけられた動きがあると思う。また、韓国ではMMORPGというメインストリーム以外のゲームを指し示す言葉として生まれたと言えるだろう。
昨年末からの日本での携帯ゲームの爆発的な人気や、北米でのヒット、韓国での状況など世界各地で定義によって微妙に変わる“カジュアルゲーム”が今後どういった動きを見せるかは興味のあるところである。
□ガマニアデジタルエンタテインメントのホームページ (2006年3月22日) [Reported by 勝田哲也]
また、弊誌に掲載された写真、文章の転載、使用に関しましては一切お断わりいたします ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|