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【連載第212回】 あの、おもちゃを徹底レポート




豪華クリエイターによるムシキングのLCDゲーム
セガ「そだてて! 甲虫王者ムシキング」

「そだてて! 甲虫王者ムシキング」
発売 セガ
価格 2,667円
電源 ボタン電池CR2032(内蔵)
発売日 発売中



 少年たちの間で変わらぬ圧倒的な人気を誇る「甲虫王者ムシキング」。今回紹介する「そだてて!甲虫王者ムシキング」は、そんなムシキングから生まれたLCDゲームだ。当連載では「たまごっちプラス」をはじめ、さまざまなLCDゲームをレポートしているが、この「そだてて!甲虫王者ムシキング」はいちばんの注目アイテムといって差し支えないだろう。なにしろ、ゲームファンならだれもが知っている豪華クリエイターたちが制作に携わっているからだ。

 ゲームデザインは、「星のカービィ」シリーズや「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズの桜井政博氏。プログラムは、「ランドストーカー」シリーズや「RUNABOUT」シリーズなどで知られる内藤寛氏。サウンドは、「ナイツ」や「ルーマニア」シリーズなどのササキトモコ氏が担当。さらに本体のデザインは、セガの歴代ハードを設計してきたチームが行なっているのだという。

 「子供向けのゲームには興味がないなぁ」とこれまで素通りしてきたあなたも、こればかりは見逃すわけにはいかない。ちなみに先に筆者の感想を述べておけば、「ついに大人も楽しめるLCDゲームが登場した!」と感激している。


さまざまな仕掛けによって虫に愛着がわいてくる

パッケージ。キャッチコピーは「そだてて! きたえて! たたかえ!」
 カブトムシやクワガタを育成し、鍛え上げて、ライバルたちと戦わせる。ゲームの基本的なフォーマットは、この道の先人である「たまごっち」などを踏襲してはいる。けれど、遊び心地は大きく異なる。ありとあらゆるところに“こだわり”が感じられ、だれもが快適に、そして長く遊べるようにという工夫が伝わってくる。何より虫に対する愛着がわいてくる仕掛けが張り巡らされており、遊んでいるうちにやめられなくなってしまうのだ。

 こだわりは、本体のデザインにも現われている。アーケード版「ムシキング」のシンボルであるグー、チョキ、パーのボタンがあしらわれ、ムシキングの精神を継承する意思や、原作への敬意が感じられる。並のLCDゲームであれば、ボタンなどは“ありもの”を使うのであろうが、インターフェイスそのものをデザインしているところに、「まったく新しいLCDゲームを作ろう」という意思が感じられる。

 現在発売されているバリーションは、ぜんぶで4種類。育てられる虫に応じて、カブトムシとクワガタの本体があり、それぞれ茶色と緑色の本体カラーが用意されている。

左がカブトムシの本体、右がクワガタの本体 パッケージにはデコレーションシールが同梱されており、本体を自由に飾ることができる


 ゲームは、カブトムシやクワガタのタマゴを選ぶ場面からはじまる。画面に表示された3個のタマゴから1個を選ぶと、それが孵化し、幼虫となる。3個のタマゴの中から自分の意思で1個を選ぶ、という仕掛けが秀逸だ。成虫してたくましくなろうが弱々しくなろうが、「選んだのは自分だ」という意識があるので、等しく大切に感じられるのだ。

 幼虫にエサを与えると、やがてサナギになり、さらに時間が過ぎると成虫が誕生する。正確に計測したわけではないのだが、成虫になって本格的に遊べるようになるまで3~5分といったところだろうか。電源を入れるといきなりカブトムシやクワガタの成虫が登場するのではなく、タマゴから幼虫へ、そしてサナギへと成長段階を見せられるので、バーチャルな存在であることは承知しながらも、“生命”のようなものを感じさせられるのだ。

タマゴからかえったばかりの幼虫。次第に体が大きくなっていく カブトムシのサナギ。ボタンを押すと、体全体が左右に揺れる カブトムシの成虫。これはヘラクロスオオカブトだった!


 成虫してまず驚かされたのは、そのドット絵の巧さ。カブトムシやクワガタの体を丹念に描き、それぞれの虫の特徴を見事に表現している。筆者は昆虫の種類にはさほど明るくないのだが、詳しい人こそこの緻密な表現を堪能できるのだろうと思うとうらやましく感じる。

これはカブトムシのドット絵。これはエサを食べている場面 こちらはクワガタのドット絵。ハサミや足の繊細な描写に注目してほしい


 LCD画面は、虫の飼育箱の役割を果たす。虫はここで暮らし、エサを食べたり、遭遇する別の虫と戦ったりする。本体の内蔵時計によって、1日24時間の時間軸で生息を続ける。夜になると眠りにつき、朝になれば目を覚まして活発に活動する。そして、プレーヤーの目的は、虫を育て、強く鍛え、ライバルとの戦いに勝利することにある。

 育成の基本となるのは、エサを与えること。エサは、キュウリやスイカ、バナナ、プリン、くろみつなど多数用意され、それぞれに「体力を増強させる」、「テクニックを増強させる」などの効能が与えられている。

 ユニークなのが、エサを与えすぎると腐ったり、虫に好き嫌いがあったりする点だ。作業的にエサを与えるのではなく、愛情を注げば注ぐほど好みの虫に育つ仕組みになっているのだ。

カブトムシのエサのひとつであるモモ。こまめに育てられる こちらはプリン。栄養がたっぷりで、テクニックを増強させる もやもやした効果線で空腹を表現する。このままエサを与えないと卒倒する


 虫たちは意外と繊細で、汚れた飼育箱を嫌う。すぐにケガをしたり、病気になったりもする。そんなときに有効なのが、“おせわコマンド”。ボタンを押すだけで、飼育箱を掃除したり、病気を治療したり、そのときに応じた行動を取ることができる。この「ボタンを押すだけ」というのがポイントで、ときには症状が重く、何度“おせわコマンド”を使おうとも病気が回復しないことがある。この演出が巧い。意表をつかれ、心が揺さぶられるのだ。

おせわコマンド。ほうきで汚れをはいたり、薬箱から治療箱を取り出すなど、さまざまなアニメーションを見られる 病気になってしまったカブトムシ。おせわコマンドを数回使えば、回復できる


 虫を鍛える場合は、“とっくんコマンド”を使う。“とっくんコマンド”を選ぶと、さまざまなミニゲームや対戦を楽しめる。ミニゲームのひとつ「いあい」は、反射神経を試される。画面に「!」マークが表示されたら、その瞬間にグー、チョキ、パーのいずれかを押す単純な内容だが、熱くなれる。ときどき爆弾マークが表示され、このときにボタンを押すと、その時点でゲームオーバーになってしまうのだ。そのため、指をすばやく動かすだけでなく、瞬時の判断も必要となり、1回1回が真剣勝負になる。

 もうひとつのミニゲーム「ずんずん」は、画面の右側から流れてくるグー、チョキー、パーのパネルに応じて、対応するボタンを押すゲームだ。こちらもシンプルなルールが、パネルの並びが単調かと思いきや突然複雑になったりして、息つく暇のない内容になっている。

ミニゲーム「いあい」。爆弾マークのときにボタンを押すとゲームオーバー ミニゲーム「ずんずん」。流れてくるマークに応じて、対応したボタンを押す


 ミニゲームと同様に、対戦も2種類用意されている。「チャレンジ」は、いろいろな虫と戦うことができるモード。練習試合のようなものだ。「かちぬきバトル」は、いろいろな虫と戦い、どこまで勝ち進めるかに挑戦できるモード。勝つほどに強い虫が登場するので、自分の虫の成長具合を確認できる。

 対戦は、アーケード版「ムシキング」のおもしろさをそのまま体験できる。グー、チョキ、パーのボタンを押して、じゃんけん勝負。じゃんけんに勝てば、攻撃をくり出すことができ、相手の体力を減らすことができる。

 グー、チョキ、パーにはそれぞれひとつずつわざを装備することができ、これにより勝負の駆け引きが格段に深くなっている。グーに強力なわざを装備していたのに相手の出したパーにあっさり封じ込められたり、弱々しいチョキが意外と相手の体力を奪って驚かされたり、とさまざまなドラマを喚起する。

バトルシーン。グー、チョキ、パーのいずれかのボタンを押して勝負! わざが炸裂したり、相手が吹っ飛んだりと、派手なアニメーションが展開する


アダーの魔法を受けてしまったクワガタ。能力値が変わり、寿命も縮まってしまう
 ミニゲームや対戦を行なうと、ごほうびとしてエサやわざが手に入る。こうして自分の虫を育て、強くしていくのだ。

 ……以上が基本となる遊びかただが、予想外のハプニングもひんぱんに起こる。そのひとつが「エサ争奪戦」。虫にエサを与えていると、どこからか別の虫がやってきて、そのエサを横取りしようとする。別の虫は対戦をして追い払うのだが、とくにいいエサを与えているときに限って来るような気がしてならない。そのために、「相手を倒して、このエサを食べて~!」と通常のバトル以上に力が入ってしまう。

 「アダー来襲」は、虫がおばけに憑依されるイベントだ。虫からの呼びかけに応答して追い払えばいいのだが、そのままにしてしまうと虫の寿命が短くなってしまう。筆者はアダーのおかげで2回も虫を死なせている。それゆえに虫の状態を気にかけ、画面を注意深くチェックする回数がどんどん増えている。

赤外線通信機能を使ったバトル。手塩にかけて育てた虫をぶつけてバトル!
 ここまでの説明を読めば、とかく単調になりがちな育成や対戦の要素に意外性を持たせ、虫への愛情が深まる仕掛けが十重二十重に張り巡らされていることがわかるだろう。

 その最たるものが、虫との別れだ。寿命が来たり、家出をしたり、病気で死んでしまうなど、このゲームには虫との別れがいくつも用意されている。遊びはじめのうちは、すぐに虫との別れがやってきて、困ってしまった。しかし、何度か虫との別れを経験するうちに、自然に虫を大切にする気持ちがわいてきて、深い愛情を注げるようになった。

 赤外線通信を利用して、同じ「そだてて!ムシキング」を持ったプレーヤーと自慢の虫を対戦させることも可能だ。反応は早く、快適にプレイすることができる。筆者は事務所のスタッフに負け越しており、それが「そだてて!ムシキング」に夢中になる理由のひとつになっている。

 発売日直後は、トイショップの店頭で在庫を見かける機会も多かったが、人気上昇中につき品切れの告知もたびたび目にするようになってきた。もし、販売されているところを目撃したら、迷わず購入することをおすすめする。

(C)SEGA ,2006


□セガのページ
http://www.sega.co.jp/
□「ムシキング」のページ
http://www.mushiking.com/
□「そだてて! ムシキング」の製品情報
http://www.mushiking.com/news/sodatete.html


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(2006年3月9日)

[Reported by 元宮秀介]


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