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会場:Grand Hyatt Taipei会議室
今回のインタビューでは、台湾ビジネスに限らず、SCE Asiaという他のエリアとくっきり境界線を分けた大きな枠組みの中で、どのようなビジネスを展開しているのかを伺った。インタビュー中、たびたび安田氏の補足をしている川内史郎氏は、SCE Asiaで中国以外のアジア地域を担当する1部の部長を務めている。 昨年同様、メーカーのトップにはなかなか口にできない過激な発言を連発し、こちらが冷や冷やするほどだったが、独特のイントネーションで機関銃のように繰り出される言葉は、抗しがたい吸引力があり、この20年間、日本のゲーム業界の誰もが二の足を踏んできたアジアビジネスを決定的な成功に導くかもしれないという期待感を抱かせてくれる。
■ Sony Computer Entertainment Asia設立の経緯と中国展開について
また、プレイステーション 2(PS2)、プレイステーション・ポータブル(PSP)も台湾で順調に売れております。今回は、オープニング時に行政院の何さんや工業局の陳さんが来られました。そういう方々とは今後もコミュニケーションをしっかりとりながら、じっくり展開していきたいと考えています。 台湾もモノづくりで世界を極めたわけですが、ソフト開発の分野ではまだまだ立ち遅れているといわれています。ゲームという分野でも、コピー製品を作るばかりじゃなくて、日本人ともっと交流を含め、いつかオリジナルを作りたいという強い意志を持っています。 そういった点で我々と意識が一致して、3・4年前から協力関係があります。経済部の部長とももう3代ほどお付き合いをさせていただいている状況です。経済部の部長というのは経済産業省の大臣です。今日スピーチをしていただいた何さんという方は前の通産大臣です。今は政府で言うところの国務院というのかな。おえらいさんになってしまいましたが、そういう方々がSCEを応援していただけるという状況になっています。 私は月に一回程の割合で台湾に来るのですが、一生懸命ネゴシエーションをして場を作っているという状況です。以前は台湾に商品を持っていくだけで税金が3割4割とられている状況だったのですが、現在はゼロということで奨励をしていただいて、販売させていただいている状況です。 同じことを中国でもできればいいのですが、「お願いできますか?」というと、「いいよ」といわれて、「でもね」と、来るわけです(笑)。なかなかしぶといという状況です。 編: 昨年7月にSCE Asiaが設立されましたが、その目的と目標をお答えいただけますか 安田: 日本以外のアジアを、ひとつのテリトリーとしてがんばって伸ばしてくれということですね。日本に言いたい事はいっぱいあるのですが、とりあえずお受けしました。目標としては、日本(SCEJ)、アメリカ(SCEA)、ヨーロッパ(SCEE)、アジア(SCE Asia)という4極の中でナンバーワンになることです。今のところ約1兆円のビジネスのうちの5%強くらいが我々のビジネスに当たるわけですが、今後、10%にし、15%にしていくというのが我々の仕事だと思っております。 編: 最大のターゲットとしてはやはり中国市場ということになるのでしょうか? 安田: 中国市場を目標と考えてはいるのですが、いろいろな障害物がありますので、それが取り除かれるまでまだまだ時間がかかるというのが正直なところです。ソフトがいっぱい売れてソフトで利益が上がるという状況がこのビジネスの基本なのですが、それがなかなか難しいということです。 ハードとソフトの割合を1対1くらいにキープしながらやりたいとは思っているのですが、今回1ドルが120円近くのような円安になってしまうと、ドッと日本からソフトが流れてきてしまいます。そうでなくとも、他の通貨とのバランスが悪くなれば、またどこからか流れ込んできてしまうような状況ですので、一瞬たりとも気を許せない市場といえます。 編: 昨年の時点では中国ではソニーが代理販売をしているような状態でしたが、SCE Asiaの設立により、こうした状況は変わったのでしょうか? 安田: これまで中国ではSony Chinaの中にPlayStation Company(PSC)を作っていただいて、そこでやっていました。しかし、Sonyに任せられるほど簡単な仕事ではないんですよね。この仕事は。たまたまSo-net Taiwanに優秀な日本人がいたので、SCEの4周年パーティの席で「一緒に中国やろうぜ」と声をかけて引き抜いて、中国の社長に据えまして、去年の10月1日から一緒にやっています。 現在中国は15人くらいの所帯です。これまで入っていたビルは出てもらって、デパートの上に小さい事務所を借りていただきました。最低限のオペレーションから、再スタートしています。 アジアにきて一番考えたのは、最初売る商品が無かったんですが、商品があったとしても為替の問題がある、並行輸入の問題がある、不正コピーの問題があると。非常にアジアって影響を受けやすい地域なんですよ。 じゃあどうすればいいのかといえば、会社は通常10%程度の経費をかけるのですが、そんなことをしたら赤字になってしまう。しかたないから広告代理店を使わずに「自分でやれ」と。香港では、サンプル版を一枚もって媒体周りをさせていただいて、せいぜい1枚差し上げて読者プレゼントにして、記事を書いてもらうというようなことをしていました。 そうしたところ、今度は広告代理店が入り込めないほど現地の宣伝担当が力を付けていきました。今はスポンサーさんがおられて、協賛金をいただきながらゲームショーに参加させていただくというところまで来ています。普通、宣伝で使っちゃうようなお金を使わずに、自力でやれるような状況ができており、SCE Asiaのビジネスは非常にミニマイズできていると思っています。しかし、露出ができてないのかということも無く、ご協力をいただきながら、やらせていただいているという状況です。 その辺のことは社員が非常によく頑張ってくれたところだと思っています。SCEのビジネスをミニマイズすることによって、為替に合わせて値段を調整させるというような対応策をとりながらやっています。売り上げとしては、香港で最初に作ってから9年でアジア全体で500億強になったわけです。これを1,000億とかに1,500億にしたいというのが目標です。しかも相変わらず経費についてはミニマイズしながらやっていこうと。 川内史郎氏: ご質問につきまして多少補足させていただきますと、中国は販売に関して色々ややこしいところがありまして、ハードに関しては従来通りSonyChinaのPSCから販売しています。ソフトに関しては別のルート、つまり現地で出版権があるところを通さざるを得ない。という言い方がいいかどうかわかりませんが、そちらを通して販売しています。 安田: 相当大変ですよ。並行輸入版に対抗するためには、ソフトを同時発売しないといけない。並行販売しないといけない。しかし、検閲を受けてるだけで3カ月くらい時間が掛かってしまう。こっちのルートがあるよと言われても、やってみたらやっぱり2カ月かかる。これでは商売できないだろうと。 また所得を考えると、依然として相当低いです。沿岸部には高所得者が出てきましたが、平均して見ればそれなりの所得水準です。ですから、そもそもソフト1本5,800円にするのも無理な相談なんです。じゃあどうしたらいいかというと、値段を4分の1くらいにしないといけないわけです。それも同時発売にしないと意味がない。あらゆる部分で手かせ足かせがあって前に進めない実態があります。 だけど年がら年中どこかをつっついて、どこかしらを崩していかなければいけない。文化部や国務院とお付き合いしながら徐々にチャンスを広げようとしています。しかし、あくまで正規の商売をしているので、違法なのがわかっていて前に進むわけにはいかない。そこらへんは慎重にやっていますよ。 編: 中国でもPSPの発売は始まっているのでしょうか? 安田: 中国はまだ発売していません。しかし、3カ月ほど前に広州に行ったらPSPが山積みになってました。でも、品番見ればどこからきたかわかりますからね。「あ、日本から来てるじゃないか!」と。香港の代理店と一緒に見にいったのですが、「なんで日本からいっぱい入ってるんだ!」って怒ったら、「貴方が我々に並行輸入はダメだと言ったからじゃないか」って、可愛そうな顔して言ってたんです(笑)。 編: アジア全体を見ますとPSPは好調ですね。各地域でどれくらい出ているのでしょうか? 安田: 数に関してはあまり言えないのですが、2005年の12月の発表で全世界で1,500万台。10月はアジア含むSCJで300万台くらいだったはずです。今は400万台くらいでしょうか。このうちの大体2割くらいですね。発売時期が半年ずれれば並行輸入版がドッと入るし、特に去年は円安でずいぶん入りました。大体400万台のうち2割くらいがアジア、このうち正規品が1割くらいでしょうか。 編: 昨年のインタビューで、PSPの目標台数として最低60万台という数字を挙げられた、ギリギリでしょうか 安田: 鋭いですねぇ。話しましたよね(笑)。ただ、今現在という話になりますと、12月から2月にかけてクリスマスや旧正月がありました。ですから売り上げの分布としては4月を区切りに上下に分けて、上4割、下6割ですね。数字に関しては、2月末の数字を見ないとよくわからないと思います。 編: PS2の売れ行きはいかがでしょうか。 安田: 来年の出荷量も今年より増やしています。万が一売れ残っても、周囲に販売できる国が控えているので、かついで持っていってもいいかなとおもっています(笑)。 アジア地区の数字は、あんまりカッチリしたものがないんですよ。ただ、おおよそという感じで、取り方によっては多いんじゃないの少ないんじゃないのというような数字にどうしてもなっちゃうので、数字的な話はご勘弁いただければと思います 川内: 進捗でお話しすると、昨年度と今年度で比べると、2割ちょいくらいアップです。来期は伸び率は落ちますが今期を上回る出荷量は確保できると思います。
■ 香港、台湾、中国以外のアジア展開について
安田: ブリックスですか、最近よくいわれてる国なんですが、よくよくみてみると関税だとかそういう部分の話が抜けてる場合があります。関税を5、6%も払わなければいけないとか。所得が日本の4分の1しかないのに、法人税が3割・4割かかったりしたら高く売らなきゃいけない。まだまだ調査する必要があるので慎重に考えていきたい。 SonyMusicはインドでレコードを出していますが、大体1枚500~600円で売っています。それでは儲かんないんじゃないかと思うのですが、10倍売れるからいいんですと。ただ、必要不可欠なのは同時発売なんです。同時発売して安く出すと、10枚売れるはずのものが100枚売れちゃうわけで、そうするとなんとか採算が合うんです。 実際インドにいくとあんまりコピーって置いてないんです。みんな正規品を買っているんです。つまり、レコードくらいのところまでは正規ビジネスができているわけです。ただ、今度ゲームとなると、ローカライズなどの話も出てきますから、もう少し先かなと思います。 編: SCE Asiaでは10カ国も展開しているそうですね。 安田: 香港でやって次の年に台湾でやったんですよね。ただこれは勢いでやっちゃったんです。出してから気がついたのは、「儲からないじゃないか」という。「こんなに税金高いじゃないか」と。当時、我々も若かったんですが。我々もどうしようということで、関係当局などともお話を続けていきまして、何年かしてやっと関税がクリアになったんですね。 もし同じことができる国があったらそこではできるわけですよね。ただ今の段階でベトナムとかで正式にやりますといっても、正式にやりようがないんですよ。フィリピン、タイとかもですね。タイとマレーシアは関税が30%、40%なのですが、これも若気のいたりでやっちゃったんです。でも結果としてリーガルアクションをとるためにやらなければならなかったのですよね。 生産工場を香港で叩いていたら、香港からタイ・マレーシアに移っちゃったんですよ。タイ・マレーシアで活躍するためには、正規の商売をしているのが原則なんです。正規商売してなかったら叩く意味がないと。ですのでタイとかマレーシアはしょうがなく始まったというのが正直なところです。 シンガポールあたりでも最近町を歩いてみると、コピー製品はなりをひそめているんですが、車を一時間くらい走らせるとジョホールバルというところに国境がありまして、まるで料金所を通る感覚でマレーシアに行けるわけなんです。そしてその国境越えたらコピーの天国なんですね。そこで友達の分までいっぱいコピー製品を買って戻っていくというのが今の傾向なので、まあいたちごっこといえばいたちごっこなんでしょうかね。だからシンガポール、香港、台湾というところは税金の問題を国の協力でなんとかクリアして普通の商売ができている地域です。 韓国でもやってますが、一足飛びにオンラインのほうにいってしまって、ゲーム屋さんがあんまりないんですよ。ヨンサン (竜山) 地区というところがありまして秋葉原みたなところですが、この地区をよくみてみると、隣に米軍基地があるじゃないかと。米軍基地にあった商品が滲み出て、それを売ってたのがヨンサン地区なんですね。7、8年前に調べにいったときはもうPS売ってるじゃないかと。それも日本製じゃなくてアメリカ製なんです。 日本の流通品というのは、韓国ビジネスに携わってる日本の流通の方から持ち込まれる部分もあって、米日の並行輸入で成熟しちゃったマーケットなんです。並行市場で成熟したマーケットというのは厄介で、正式に商売をしない、できないわけです。コピー中心の文化になってしまったんです。 そんな状況から韓国がスタートして、ディスカウンターつまり日本で言うダイエーのようなところに売り場を構えていたんです。しかし、いきなりそんなところで売っても、私も日本のマーケットでやっていたからわかるんですが、最初はつば飛ばしながら説明してくれるおじちゃんがいないとゲームってわかんないんです。セルフで売れるようになるのは時間がかかるんですよ。ただいきなりそんなところにポーンと商品を置いてしまったので説明してくれる人がいない。キャンペーンやろうとしても、その説明をしてくれる社員もいない。そういうことでなかなか沈黙してるというのが今の状態ですね。 PS3の時代になって、コピーを使っていたお客さんがダウンロードでゲームが遊べるようになると、コピーよりは倍、3倍の値段になるかもしれないけども、これくらいだったら正規品を買えるというお客さんが出てくるだろうと思います。ここでコピー店はアウトになると思います。中古屋さんもそうですね。5,800円じゃなくて最初からダウンロードで半額で提供できるとしたら中古屋さんは成り立たないですよね。パッケージとダウンロード、どっちで走ったとしてもです。PS3が発売されるとゲームの流通は2、3年でガラッと変わっていくでしょう。日本についても店頭に置いてある物も多く変わってくるだろうと思うし。アジアについても海賊版業者はずいぶん淘汰されるのではないかと思っています。
■ PS3のアジア展開はインフラの整備が前提
安田: まずはインフラを整備していかないとなと。インフラがまったくない状態で始めてしまったら、PS発売のときは1台売ったら1万円損していましたよね。あれとおんなじ様な状況がくるとおもいますよね。10年前は、いつか取り返せるなという勢いだけでやってたわけです。でも今は勢いだけでやったら「馬鹿」っていわれちゃいますから(笑)。 これだけは持ち出しになったとしても、このぐらいのタイミングでトントンになって、このタイミングで黒字になりますよというプランを描けないといけない。なんでプランが描けるのといったら、今お話したインフラ次第なんですよ。それを試算するのにちょっと時間かかっていますね。 川内: あとは現地でのマーケティングプランですね。ネットを使って物を買う時代が来ていますが、台湾ではいまだに百貨店さんが大賑わいです。実際にものを手にとって本物か偽者かと見定めるわけです。今までは偽者を買わされていたケースが多いので、本物だということがわかってはじめてお金を払うという買い方ですね。 あとは娯楽ですね。台湾の若い人は映画かカラオケがせいぜい。日本のように、冬だからスノボー、夏だからサーフィンというところまでぜんぜんいってない。ですから、まだ娯楽としての需要の余地は残っているのかと。インフラは各国のマーケティングの状況を総合的に見る必要があります。 編: PS3に関しては、日本人でも本体価格が相当高いのではないかとビビっている部分があります。アジアではさらに割高感がありますよね? 安田: PSやPS2が出たとき、アジアに流れてどんどん売れてました。一般の人たちが買うようになったときに、そんなに高いのかなという気がしますけれども、最初は高くても十分に下がっていくような戦略を取ると思います。ただ、地獄のような値段にはなりませんよ。 編: アジアでは戦略的な価格に設定することもありえるということですか? 安田: 若干考えてますけれども、ただ、そんなに体力はまだないので、あんまり生意気なことはしたくないかなと。ただ、今までずっとそうだったんですが、ウチと契約している正規代理店がたくさんありますが、正規代理店を名乗っていながら発売日がPS2が2年、PSPは半年遅れたわけじゃないですか。その間並行輸入がバンバン入ってきてるわけです。正規代理店ゆえに、その間一切商売はできてないわけです。その悔しさっていうのはなんとか取り払ってやりたい。
■ ソフトビジネスをアジア市場に成立、定着させたPSP 編: PSPについてですが、ポータブルゲーム機を1年間アジアで展開されてみてどのような手ごたえと感想をお持ちでしょうか。 安田: そんな楽にやってるわけじゃなくて、苦しいけれどもいろんな機能を謳うことによって販売を伸ばしていくしかないなと思ってます。「そんなんだったら他にあるじゃないのか」と言われながらになりますが、携帯電話より安いし、画面もデカくて綺麗ですと、丁寧にアピールを続けながらしばらくやっていきたいとおもいます。ちょっと雑な言い方でしたね(笑)。 川内: 若干補足しますと、流通の出荷先のレシオというのはずいぶん変わってきてPS2のときは7割くらいはゲームルートだったんですが、それがゲームチャネルというのは4割くらいに減ってきてる。これはコピーがないというのが1つですね。ここは決定的に違いますね。 PS2の場合は、発売当日に海賊版がでてるというような状況だったんですが、昨年5月に発売したPSPは、今でも昨年5月のタイトルのリピートが入ってくるんですよ。これは日本でも無い現象なんです。 コピーが無いということで、ソフトの販売がインストールベースとしては少ないのですが、それを差し引いてもPS2のソフトと比べてPSPのソフトははるかに上回っている。たかだが数十万台のPSPのソフトが今の250万台のPS2の遙か上をいってるという事実が、アジアでもソフトが十分ビジネスになるということを表していると思います。 安田: だからね。私はひとつだけ後悔してることがあるんです。台湾では地元でアセンブリしたりして15%くらい安く売ってるんです。ただ、そうじゃなくライセンシーさんとよく話し合いをして、物価が違うんだよ、国が違うのよと。だから半額で出してよと。たとえば4,000円を2,000円で出してよというマーケティングをするべきだったかなと感じているんです。 もしかしたら、海賊版に変われる状況ができたのかもしれない。しかし、半年近くPSPの発売が遅れちゃってたんで、そういう説得力がソフトハウスさんに対しても無かったような気がしますよね。だから、PS3の時代になったらそういうお願いをしてみたい。半分の金額でも4倍売れますというところを追求してみたいと思います。 編: 台湾や韓国ではPSPをメディアプレーヤーとして活用するユーザーが多いですがこの使い方は想定内なんでしょうか? 安田: 想定内です。ただ、具体的にそういう使い方を率先してやったというのはやっぱりITでとんがってる韓国から伝わってきました。韓国で面白いねという反応が出てみんな真似してるという状況ですよ。 編: ただ、この状況というのはゲームデベロッパーからすると面白くないかもしれません。SCE Asiaとしても、こうした中でどのようにしてビジネスを展開していくのか。来月「P・WALKER」を開始されますが、このメディアプレーヤー的ビジネスをどのようにしてお金に換えていくのでしょうか? 安田: それは課題ですよね。それができるかできないかというところですので、課金についてはまだ検討中です。だってまだいくらお金を取れるかもわかりませんから。実際に繋いでみて不具合がないかどうかテストをしているような段階です。ただ、ビジネスモデルについては韓国サイドでも具体的に検討しています。 編: 各地域オリジナルタイトルがありますが、SCE Asiaとしてのオリジナルタイトルというのは検討していないのでしょうか。 安田: 目指してはいますけれども、まだそんな体力は無いです。来期は何タイトル出しますという所までの話はできないですね。 編: これを作るとしたら自社開発になるのか、XPECのような現地デベロッパーと提携するのでしょうか? 安田: ホントは自社でやらないといけないんだけど、総合的にみると残念ながらまだ、1兆円のビジネスの中の500億円程度のシェアしかないところがやることですから、そこまでは無理だと思います。1,000億までいくと可能になってくるでしょう。 SCE Asiaは寄せ集め所帯ですから。台湾だと100億、タイだったら何億、それが集まって500億になるわけですから。インフラというのはアジア全土で共有しているというわけじゃなくて、国ごとにやってることで、各国ごとに採算をとっていくというため、なかなか簡単にいきません。 また、韓国というのはインフラは進んでいるんだけど、投資した金額を今のビジネス規模で回収できるのかというとなかなか難しいところがありまして、非常にストレスが溜まります。しかし、めげていてもしょうがないので人様に迷惑かけないように先に進めたいと思います。 編: SCE Asiaの2006年度の目標を教えてください。 安田: PS3のインフラ部分ですね。要するにソフトメーカーさんがそのインフラを使ってソフトコンテンツを配信できるようなインフラを整えていきたい。 もちろん全部ネットでということでもなくて、販売方法の1つとしてそういうものがないと、変わっていかないじゃないですか、相変わらず出せばまた改造のチップができたり、コピーができたりといういたちごっこにそろそろ終止符を打ちたいなという。悲願なんですけれども。ソフトビジネスはヒットすれば一気にお金が入ってきますが、ハード1台売って何100円儲けましたというビジネスをしていると、結構ケチになってくるんですよ。まだまだ苦しい状況ですね。 ソフトビジネスもだんだんSCEとしての体制が変わってきています。アメリカで出たタイトルはこれまで1カ月ほど遅れてアジアに入ってきたのが、同時発売できるチャンスがでてくれば、もっと売れる地域が出てくるわけじゃないですか。そうなってくるとソフトビジネスというものを価格の面からもう少し変えていけると。 だけどボタンを押すと180度かわるんじゃなくて1割変わった2割変わったというのをくりかえしてやってかなきゃいけないので、劇的というのはなかなかないですよね。その決定打が無い中で有効なものをちょっとずつ積み上げていかなければいけないというのが相変わらずの我々のビジネスです。ちょっと歯がゆい話、聞いててスカッとしない話なのかもしれませんけども、実は我々が一番スカッとしてないので、もうちょっと我慢してお付き合いください(笑)。 編: ありがとうございました。
□Taipei Game Showのホームページ (2006年2月19日) [Reported by 中村聖司 Photo by 勝田哲也]
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