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マージ・ダルを治めるファクションは、まず、プレーヤーが力を貸せる「ブレード」、「コイン」、「トゥルース」の3つがある。これに加えて魔法の絨毯に乗り空から街を監視、行き過ぎた争いを止める「Sha'ir(シャイル)」というウィザードガーディアン集団。さらに街の下層にある貧民地域を支配する非公式の派閥「ティアーズ」の合計5つが存在する。これらを総称したものがマージ・ダルを統治する「コート・オブ・マージダル」である。 捉え方は千差万別ではあるが、空の上から街を監視して、彼ら自身の定める法でプレーヤーや他の派閥を押さえつけるウィザードガーディアン「Sha'ir(シャイル)」たちを、ケイノスとはまた異なる形のGood。貧民地域を支配して他の派閥の争いの中うまく立ち回り利益を出しているという「ティアーズ」をフリーポートとはまた異なるEvilと考えてみるのも面白いかもしれない。 さて、マージ・ダル内でのプレイにおける中心となるのは、プレーヤー自身が選択して力を貸せる「ブレード」、「コイン」、「トゥルース」の3つの派閥だ。ブレードは青、コインは黄、トゥルースは赤と、それぞれにパーソナルカラーを持っていることから、この三つの派閥抗争をマフィアやカラーギャングたちの抗争というイメージに重ねているファンも多いだろう。
ただし、3つ全ての派閥を友好な状態に保つことはできない。ひとつの派閥の信頼度を上げると、他のひとつ、もしくは二つともの信頼度が下がる。派閥の信頼度が下がると、プレーヤーを認識すると襲い掛かる状態、アグローになってしまうこともポイント。街中に点在する敵対する派閥の拠点や詰め所はもちろん、巡回している派閥のガードが危険な敵となるのである。 Evil側の私のキャラクタが協力することに決めたのは、青をパーソナルカラーとしている「ブレード」だ。この派閥争いには「参加する」というようなシステム的なアプローチや区切りは設けられていない。最初にマージ・ダルに訪れた状態で、プレーヤーキャラクタの情報にあるファクションの欄にブレード・コイン・トゥルースといった派閥の項目が確認できるはずだ。 各派閥の初期の信頼度は全て「敵対者」という、ギリギリ襲い掛かることはない状態。盗賊の街マージ・ダルにおいて、外からきた訪問者をすぐに信頼したりはしないのだ。ここから基本的には2つの方法を実行して信頼度を向上させてゆくこととなる。ひとつはシンキングサンドの桟橋にいる各派閥の特使から始まる派閥からのクエストを達成することだ。派閥から依頼されるクエストは信頼度が上がることで、より重要で難度の高いものが出現するようになる。そしてもうひとつは、各派閥に所属するNPCを倒すとドロップする「トークン」をマージ・ダルの月の塔にいるNPCに渡すことだ。 まずは派閥クエストに挑戦。桟橋のNPCから依頼を受ける。この時に依頼されたクエストは「複数のワニを倒し、ワニの巣を破壊する」というものだ。シンキングサンドの桟橋近くにある「クロコダイルの洞窟」に向かい、ワニを撃退する。この洞窟は、地形的にはシンキングサンドの砂漠の地下に広がる場所だ。洞窟には地下水脈が通り、広大に長く続いている。 DoFから登場した新アクション「壁のぼり」によって、ダイナミックな高低差のあるフィールドが構成されているのが、DoFのエリアの特徴だろう。この「クロコダイルの洞窟」も、低い場所からはすんなりと歩いて入ることができるが、別の入り口は壁のぼりで昇り降りして行き来する作りになっている。「壁のぼり」がシステム的に用意されていない状態でプレーヤーが高低差を乗り越えるためには、緩やかなスロープや、ワープといったシステムがどうしても必要になる。壁のぼりによってプレーヤーの想像を超える複雑なフィールドを実現しているのだ。 さて、クロコダイルの洞窟内でワニを撃退し、途中に点在するワニの巣を破壊したところで、派閥のNPCに首尾を報告。NPCに達成を告げると、通常のクエストとは異なる報酬が現われる。今回はブレードの派閥クエストを達成したので、ブレードの信頼度に+2,500、他の派閥には信頼度-2,500が課せられた。
まずは街中を巡回しているガードのグループに挑む。メインタンクが攻撃を仕掛け、筆者はシャドウナイトというクラスの立場上、またレベル的な側面もありタンクのサポートをする。ここ半年のプレイを経て、このMTのサポートをしつつ、いざというときにはサブタンクとして行動するというスタンスにだいぶ理解が進んだ。本連載の前回分「ブラッドラインクロニクル」のレイドシーンでも取り上げたが、メインタンクにHP吸収の効果を付与して、HP回復の補助をするアーツや、ダメージを肩代わりするインターセプト系のアーツを駆使して、MTとヒーラーの負荷を軽減する。ちなみに肩代わりして自分に与えられたダメージは自らHP吸収のアーツを放って自己回復する。この直線的ではないが、一風変わった役割が私にはとても楽しく、満足している。 さて、街中での戦闘は特に戦う場所に気を使う。まず第一に考えるのが範囲攻撃で街の住民を巻き込まないように注意する、ということだろう。街の住人はこれまたレベルが高い。平均的に見て50といったところだ。また、一見グループを組んでいないように見える住人は、襲われている住人を見ると連鎖的に戦闘に参加してくる。 第二に「シャイルに見つからないようにする」ということが挙げられる。空飛ぶ絨毯に乗り街を監視するウィザードガーディアン「シャイル」はレベル的には61ヒロイックのカッコ付き。とても太刀打ちできる相手ではない。街中には彼らの監視が届かない場所がいくつかあるようなので、戦闘する場所をあらかじめ確保しておきたい。
派閥のNPCは、倒すと確実に「トークン」をひとつドロップする。これをマージ・ダルの入り口ほど近くにある「月の塔」にいる各派閥のNPCに渡すことで、派閥の信頼度が変化するのである。例えば、ブレードの特使にコインのトークンを渡せば、コインの信頼度が下がりブレードの信頼度が向上する、といった具合だ。先ほど派閥クエストで得た信頼度が2,500ポイントだったことを踏まえて、トークン1枚あたりのポイントを想像すると、およそ100ポイントほどではないかと思われる。また、派閥の施設を利用できるようになる状態「好人物」までは、これまた想像だがポイントにして50,000から60,000ポイントほどが必要ではないかと思われる。
派閥争いに参加してまず感じることは、街中特有の安堵感を得られる雰囲気の中で、戦闘が可能という新鮮さと不思議な違和感だ。街の中でガードを倒していると最初のうちは「いけないこと」をしているような背徳感も感じた。だが、それもすぐに慣れてしまうと、今度はアクセスのよい街で戦闘できる気軽さが嬉しく感じられるようになった。 最初に訪れたときには一部のシーフやアサシン以外は襲ってくることがなかったNPCたちが、自分の選択した行動によって敵に変化する。街中には特定の派閥クエストに必要となるのか、もっと高レベルなネームドの市民も存在しており、たまにそれに挑んで壊滅しているグループを見かける。日常の中で争いが茶飯事に起こるマージ・ダルという街は、これまでの「EQ2」には見られない世界観と雰囲気を持っていてユニークだ。また、派閥に協力することで、自分の安全かつ便利な居場所を作ることができるというのも面白い。
レベル50付近のプレーヤーは、DoFエリアを開拓するにあたりマージ・ダルの施設を利用可能にして、拠点を構成することが有用な道筋になるだろう。もちろん、クエストをこなしたり、レベル50オーバーのNPCを相手に戦闘を重ねていれば、レベルアップも見込める。また、マージ・ダルには本稿の後半Good編で紹介している「アリーナ・チャンピオン」という、通常のプレイとは異なる楽しさがあるコンテンツも用意されており、気分転換にはもってこいだ。
ティアーズのNPCから受けるクエストはレベル可変式になっており、筆者のキャラクタレベル47でクエストを受けた場合にはクエストレベルは47となっていた。クエストの内容は複数の種類があるようだが、いずれもソロで可能なものだ。派閥からのクエストや派閥NPCの撃破はプレーヤーによるもののほとんどの場合グループでの行動が基準となるが、このティアーズからの依頼に関してはソロで達成可能なのが嬉しい。 内容の多くは、貧民地域にある住宅に押しかけて、住民を暗殺したりといったものだ。住宅の中は小規模なインスタンスになっており、クエスト全体は手間取っても30分ほどで完了することができる。
なによりこのクエストで嬉しいのは報酬だ。これだけ手軽かつ簡単にこなせるうえにレベルが可変式なものでありながら、結構な金額と各派閥のトークンを数枚もらうことができるのである。このトークンを月の塔の特使に渡せば、もちろん通常通り信頼度が上下する。ただしこのクエストには30分ほどの時間制限が設けられており、連続しては受けられない仕組みになっている。感触的にはスプリットポゥのソロ用コンテンツを想像させるものだ。ちょっと時間のあるときに達成することができるクエストの最たるものだろう。こうした手軽なアプローチも用意されている心遣いは嬉しい限りだ。
● 海の孤島で短気なランプの精霊と対決!
こすってみると、ランプからポワーンと煙が出て、みるみるうちに精霊の姿になった。これはもしかして願い事を叶えてくれるのでは!? と期待して精霊に話かけると、思いもよらない言葉が飛んでくるのである。 精霊は、数百年もの長い間、自分を解放してくれるご主人様が現れず、ランプの中に囚われ続けたことに怒っているということなのだ。あまりに怒ったランプの精は、次から自分を呼び出した主人を殺害することに決めたという。実際のアラビアンナイトとはまったく話が違う。願いを叶えるどころか、解放してくれた人を殺してしまうとは。期待に膨らんでいた胸が戦闘の予感で別の高鳴りをみせる。だがそれと同時に、そんな筋が通っているのかいないのかよくわからない話で殺されたのではたまったものではないという思いも頭によぎる。ここで落ち着いて会話を進めて行くと、ランプの中に実際に入れるのか証明させろ、というように会話が流れていく。まずはランプの中に飛び込んでみよう。
ランプの中は豪華な内装になっており、従者もいれば、美女もいる。なんとも贅沢な暮らしをしている精霊のようだ。短気なランプの精はこう続ける。「実際に我の力を証明してみせたので、次はお前の番だ」と。どうやらランプの精は、部下であるモンスターと順々に戦わせてプレーヤーを死亡させたいらしい。
ここまでで察しのよいEQ2プレーヤーは勘付いたかもしれないが、ここはアドベンチャーパック「スプリットポゥ・サガ」でも楽しめたソロ用の闘技場に近い場所なのだ。ランプの精が次々に呼び出すモンスターと戦うことができる。敵のレベルは可変式になっているようで、筆者のキャラクタレベルである47前後に敵の強さが整えられていた。 早速モンスターに挑戦! ランプの精に準備が整っていることを告げ、中央の絨毯の上に立つ。現れたのはレベル46のサソリのモンスターが4匹。しっかりと敵のレベルが可変になっているようだ。サソリを難なく撃破する筆者。HPとパワーの回復を待って、次の相手に挑戦する。お次の相手は先ほどのサソリとは一回りも二回りも巨大なサソリが現われた。敵のレベルは47カッコ付き。私のキャラクタはこれに大苦戦し、最高の攻撃力を誇る15分アーツ「マレフィックタッチ」を使ってなんとか勝利を収めることができた。 スプリットポゥの闘技場との違いは、途中でやめても報酬が出たりはしないということ。また、2回目以降のチャレンジでは前に倒した敵は現われないところも異なる点だ。この風変わりなランプの精とのやりとりは最終的にどうなっていくのか? 筆者ももう少しアーツのランクや装備の性能を上げてチャレンジするつもりだ。
マージ・ダルのアリーナでは、「アリーナ・チャンピオン」という、モンスターに変身して、3つのルールのプレーヤーVSスタイルのゲームを楽しむことができる。その楽しさや魅力は、通常のEQ2で得られるものとはまったく異なる。というよりもMMORPGで楽しめるものとしても異質なものだ。
このアリーナの楽しさは、Xboxで発売されている「HALO」シリーズや、「バトルフィールド」シリーズのようなFPS的な面白さだ。EQ2という世界観やインターフェイスを利用した、通常の冒険とはまったく異なる楽しさが味わえるのである。
アリーナでは、まずプレーヤーがルームを作成する。ルーム作成時には「チームデスマッチ」「キャプチャー・ザ・フラッグ」、「デストロイ・ジ・アイドル」というルールが選択可能で、いずれも、赤と青のチームに参加プレーヤーがわかれてポイントを競うものだ。 チームデスマッチは単純に敵チームのプレーヤーを倒してポイントを競うもの。キャプチャー・ザ・フラッグは敵の陣地にあるフラッグを自陣のフラッグまで持ち帰るとポイントが入るというものだ。このときに自陣のフラッグが敵に奪われているとポイントが入らないため、フラッグを奪うプレーヤーと守るプレーヤーにわかれるなど、戦略が必要になる。 さて、筆者とギルドメンバーがお気に入りなのが、3つ目のルール「デストロイ・ジ・アイドル」だ。これは敵の陣地にある石造をアーツや呪文を駆使して破壊するというシンプルなゲームだ。 実際に遊び込んでみると、EQ2のシステムはこのFPS的なゲームに非常にマッチしていることがわかる。中でも重要なのは、アーツや呪文を発動させる距離や視界の概念だ。基本的な攻撃方法となるアーツや呪文を発動させるには、まず対象が有効な範囲にいること、そして、キャラクタの視界内にターゲットが見えていることが前提となる。 そんな最中、筆者は、敵陣地の奥深くまでなんとか潜入し、敵陣地の真後ろにあたる場所から、こっそりと相手チームの石像を攻撃する作戦に出た。これは他のFPSタイトルでも筆者がまず試してみるやり方だ。死亡した敵のプレーヤーが復帰する場所にむしろ近く、敵陣地の後方である心理的な死角から遠距離の武器で攻撃するというものだ。この思惑は見事に成功し、前方の相手陣地を気にしている相手チームは混乱し、こちらの存在がバレるまで成果をあげることができた。プレーヤーVS形式であることと、戦略の自由度の高さ、個性の異なるチャンピオンのおかげで、プレイスタイルは無数にある。特にこのゲームでデメリットやペナルティが発生することもないので、自由にワイワイと楽しみたいところだ。
アリーナの楽しさとして忘れてはならないのが、普段グループを組まないと話す機会のない、他のプレーヤーとワイワイとチャットをしながら楽しめる点だ。アリーナ内ではアリーナに参加しているプレーヤー全体に聞こえるアリーナチャットと、チームのメンバーに聞こえるグループのチャットを使い分けることになる。FPSに馴染みがあまりない人でも、アリーナを数回遊んでみれば、攻守の役割などを同チームのメンバーと話し合ったほうがより楽しめるのがすぐに理解できるはずだ。チームの勝利に向かって、それまでは見知らぬプレーヤーであった人と共に楽しむと、あっという間に距離は縮む。勝利したときにはやったーと喜び、負けたときには悔しがる。ただそれだけでいいのだ。 ちなみにアリーナ・チャンピオンはアリーナの勝利数を稼いだり、もしくは派閥の信頼度をあげると利用可能になる施設で購入して、様々なタイプを入手することができる。それを探してみるのも楽しみのひとつだろう。マージ・ダルのアリーナは、EQ2のコンテンツとしては最もユーザーイベントが行ないやすいものだとも感じる。今はまだDoFリリース直後ということもあって、レベル上げや新エリアの開拓が活発だが、ひと段落したあとにアリーナにはまる人は増えるはず。今後アリーナを利用したユーザーイベントなどが、登場するとよりいっそう楽しめそうだ。そういった動きにも期待大である。
2005年6月より正式サービスがスタートしたEQ2日本語版。本連載でも正式サービス開始以来その動きを追い、EQ2の楽しさを伝えてきた。この半年で強く感じるのは、サービス当初と比較してゲーム内容が、圧倒的に遊びやすく、洗練されたことだ。ライブアップデート13で適用された戦闘システムの大幅な改修をはじめ、クエストに関するもの、インターフェイス全般にわたって、ほぼすべてが変化したと言えるだろう。DoFでは、待望のギルドバンクも実装され、コミュニケーションを促進させるような要素も整ってきた。MMORPGはサービスの中でアップデートにより進化していく、生き物のようなジャンルであるとは言え、EQ2の正当進化は高く評価できるものだろう。 DoFに言及すると、その魅力が生まれる過程には、評価の高かったアドベンチャーパック「スプリットポゥ・サガ」の存在が欠かせなかったことが感じられる。手軽なものから奥深いもの、簡単なものから大変に難しいものまで幅広くカバーされていた「スプリットポゥ・サガ」の魅力が、より洗練されてDoFの世界に溶け込んでいるのである。 DoFで登場した要素の中でも、マージ・ダルのアリーナなどは、既成概念にまったく縛られていない。すべてのプレーヤーが思っているはずの「楽しければ問題はない」ということだけを考えているわけで、アリーナはEQ2らしい形で、別ジャンルの楽しさを取り入れた試みのひとつといえる。MMORPGとしての作りはガッシリと骨太であるEQ2だけに、プレーヤーの想像を超えた新しい試みや楽しさの登場は嬉しい。もしかしたらその先には、まったく新しいMMORPGの姿が垣間見えるのかもしれないと、大きな期待をしてしまう筆者だ。 筆者の冒険もここ1年で大きく進んだ。最近では魔法展示場やソルセックの眼といった、高レベルの秘境に行ってみたりと、これでもかと奥深く広がっているEQ2の世界とそのボリュームに舌を巻いているところだ。本連載の初期にも書いたが、“エバークエスト”というタイトルどおり、終わりの見えない壮大な冒険が魅力の本作。今後も拡張ディスクやアドベンチャーパックのリリースによって、より一層広がっていくはずだ。それぞれのプレーヤーが綴るノーラスの冒険譚はまだまだ続いていく。終わること知らぬ冒険をぜひ喜びと楽しさで満ちたものにしてもらいたい。
□スクウェア・エニックスのホームページ (2005年12月26日) [Reported by 山村智美/Pomm]
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