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会場:ガンホー本社
今回の座談会の司会を務めるのは、ガンホーのECO宣伝担当小島幸博氏。座談会の参加者はガンホーからはECO制作担当岩田容賢氏、小島氏と同じ宣伝担当でイベントではタイニー(ゲーム内に登場する熊のマリオネット)の着ぐるみでも活躍した山本征幸氏、ヘッドロックからは主にECOのゲーム内のイベント関係を手がける下郷藍子氏、ブロッコリーでECOの宣伝を担当する中田知宏氏。小島氏の軽妙な司会で、様々なテーマを語っていった。 ECOは8月19日からオープンβテストを開始している。10月14日からは大規模アップデート「SAGA 1:白き大地と無限の回廊」が実装され、マップやエピソードを拡張し、大きな変化を迎えた。12月の正式サービス前に、11月中にも大規模なアップデートを予定しているとのことである。 本作はオープンβサービス中にも、スキルのリセットや大幅なバランス調整が行なわれているなど、他のゲームと比べても日々大きく内容が変化している。小島氏が座談会の中で本作を「壮大な実験作」と評したが、現状、まさにあらゆる点で「テスト中」の印象を受ける作品だ。 座談会ではまず、「エミル・クロニクル・オンライン」の名前の秘密が明らかにされた。「エミル」はこのゲームのイメージキャラクタの名前であり、「エミル・オンライン」になるところを、中田氏の提案で間に「クロニクル」が入ったという。「ECO」という略称が注目されて、Cの頭文字をもつ単語を辞書で探したりもしたそうだ。 「憑依システム」、「マリオネットシステム」、本作を代表する2つのシステムはヘッドロックが考えたシステムだ。まず、「自分がプレイできないとき、他の人の力になることで自分も経験値を貯めたりできないだろうか」というところから、新しいパーティーシステムを考えて、2人羽織や、「ど根性ガエル」から発想し、考案されたのである。 ガンホースタッフは開発当初このシステムを説明されてもイメージがわかず、実際に動いている物を見て初めて納得したという。実際に遊んでみると、自分が憑依した武器を他の人が使うのを見ているのが大変面白い。ヘッドロック内では他の人のプレイをただ観察するだけのプレイを「ご主人様オンライン」と呼んでいるそうだ。 現在、スタッフを驚かす使い方をするユーザーもいて、人に運んでもらう間、心おきなくチャットを楽しむ人や、「ノーザンまで連れていってくれ」というメッセージと共にアイテムに憑依し、ヒッチハイクのように利用しているユーザーまで出てきている。 「マリオネットシステム」は“変身できる”というところから発想されたシステムだが、現在ユーザー達はインスマウスに変身すると移動速度が速くなるというポイント以外は、商売をするための売り子として使っているくらいで、現状メーカーとしてはもっと使ってもらう方向性を模索中だ。憑依システムと共に今後システムの新しい使い方も提案していく予定だ。 次に話題を上がったのが、デザイナーの羽々キロさん起用である。羽々さんは、ブロッコリーのイラスト部門などを担当する甑(こしき)ひとみ氏が「絶対にこの人は絶対ブレイクする!」と発掘してきた新人で、ECOの担当にはなったが、岩田氏などは最初にイラストを見せられたときは正直「かわいいね」という簡単な気持ちだけで、そう強い印象を受けなかったという。 岩田氏の羽々さんへの評価が一変したのは、羽々さんの「1次職」のイラストが完成した時だ。羽々さんへのイラストを依頼した時に渡した資料は簡単なスキルと職業イメージのみ、羽々さんはここからECOならではといえる統一した世界観と豊かなイメージのキャラクタが描き出した。「ごめんなさい、という感じで、惚れ込みましたね」と岩田氏は語った。 ECOのデザインに関しては、羽々さんが関わる前からヘッドロック社内では基本的なものはデザイナーが手がけていて、当初はその人のイメージが強かったが、羽々さんのイラストが増えて来るにつれて、世界観も大きく影響を受けていった。現在では、羽々さんとヘッドロックスタッフの合作としての世界観ができあがっている。 現在、ECOでは羽々さんの1次職のイラストは各職業男女どちらかしか描かれておらず、それに合わせて性別で特別な装備が限定されてしまっている。現在、その部分を充実させるため、羽々さんに依頼中とのことである。 話題はそこから「ハートフルオンラインRPG」という本作のテーマに。ECOのテーマを何にするか、「空想科学冒険奇譚」といったさまざまなアイディアが出てきてから、3カ月間話し合った末に「ハートフルオンラインRPG」に決定した。岩田氏はこのテーマに対してコメントを求められると、「このシステムはハートフルなのか、ハートフルでないのか、ひとつのコンセプトに対して常に問いかける姿勢ができましたね」と応えた。このハートフルか、そうでないか、という話し合いは、現在のユーザー間でも話されている議題である。 座談会の最後で、今後の展開として明らかになったのは、「修理システム」の実装と、「合成システム」の見直しであった。現在のECOは高価な武器でもプレーヤーが憑依していないと簡単に壊れてしまう。合成システムもまた、合成するコストと利益という点から見てデメリットのほうが大きいと言うことで不満を持つユーザーが多い。今回上げられた大きな変更点はどちらも、「現状の見直し」であった。 今回の座談会で筆者が一番印象的だったのは、岩田氏の制作への姿勢だ。現在岩田氏の仕事はゲームをプレイするよりも、いかにユーザーの意見を吸い上げ、そしてゲームに反映させるか、ということだという。岩田氏が提案する意見に対してヘッドロックはYes/NOという無機的な答えではなく、できない場合もどうすればできるだけ意見にそった形で結果が出せるか、代案ができないか、といった形で必ず「反映」されているという。 岩田氏はユーザーへのメッセージも、「とにかく意見を出して欲しい、応えられるように努力する」というものだった。「ラグナロクオンライン」のGMだった岩田氏らしいユーザーとメーカーの橋渡しを積極的にしていくという意気込みが強く伝わってきた。
今回の座談会では、多少なりともスタッフのECOに対する率直な意見を聞くことができたのだが、今後ECOがどうなっていくか、という具体的な情報に関しては物足りないところが残ったというのが正直なところだ。SAGA1で北のフィールドは開放されたが、今後はどこが開放されるのか、そういった情報は公開されなかった。 今回は、少しレポートから外れて、「ハートフルオンラインRPG」というECOの「コンセプト」について少し考えたいと思う。ECOのこのコンセプトの端的な例として、憑依システムが上げられることが多いが、これは本当にハートフルなのか。中田氏は、ECOを楽しんでいるという話の中で、「武器がすぐ壊れちゃうので憑依してもらってます」というエピソードを語った。 ヒッチハイクのエピソードなどの時に、「利用している、という感じもある」という話も座談会の中で出てきた。ECOプレーヤーにとって、憑依システムでは他の人を「利用する」という感覚は誰にでもあるのではないだろうか。「時間がなくても他の人のプレイを通じて経験値がもらえる」こういった方向性で作られたシステムが、はたしてハートフルな体験をするために最適のシステムなのかどうかについては疑問が残る、そもそもハートフルというのは何なのだろうか。 ハートフルコメディ、 ハートフルな恋愛ドラマ、実際にハートフルと呼びうるコンテンツはいくらでも存在するが、その多くは魅力的なエピソードやストーリー、演出などによってドライブされている。修理システムや、合成システム、新しいダンジョンやPvPシステムを実装し、ゲームを充実させるのも、それはそれでありだとは思うのだが、その一方で「ハートフル」というコンセプトから離れていく印象を覚えているのは筆者だけだろうか? ユーザーの意見を吸い上げ、アイテムを充実させ、キャラクタを育てていく。憑依システムもゲームとしては面白いシステムである、しかし、「ECOというゲームは、何があって、何ができるのか、結果としてどのようなハートフルな体験が味わえるのか」という質問に対して、まだ見えていないように思えるのだ。 ゲーム全体を「ハートフル」という視点で一度見直し、本当にプレーヤーにハートフルな体験をしてもらうためのシステムとシナリオ作り。ECOが正式サービス以降今開発側に求められているのはそういうアプローチではないかと思う。 (C)2005 BROCCOLI/GungHo Online Entertainment,Inc./HEADLOCK Inc.
□ガンホー・オンライン・エンターテイメントのホームページ (2005年10月27日) [Reported by 勝田哲也]
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