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壇上に上がった岩田聡代表取締役社長は、ニンテンドーDSが9月末の時点で国内360万台を突破したことを明らかにし、「日本市場においては、100万台から150万台までは順調にいくが、200万台、300万台と超えて初めて普及したと言える」と、ニンテンドーDSが普及する段階に入ったという同社の考えを示した。 岩田氏は発売当初、ニンテンドーDSに対する意見として賛否両論があったことを明らかにし、それゆえに任天堂自らがマシンの特長を生かしたソフトを制作しなければならないという使命感を持ち、さらに店舗などへの試遊台の設置、同社の史上最大規模のイベント展開を実施。ゲーム好きなコア層のみならず一般層にもアピールしたと分析。 ここでひとつの例を挙げて、これまでのゲームとの違いを説明。9月19日の敬老の日前後にニンテンドーDS本体と「東北大学未来科学技術共同研究センター川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のDSトレーニング (脳トレ)」が爆発的に売れ、なんと発売週の週販を超えたのだという。この例から岩田氏は「ゲーム人口の拡大にまで手応えを感じた」と自信いっぱいに語った。
このライトユーザー層に対するアプローチをここで終わらせては、ムーブメントが単発で終わってしまい、またゲームから離れてしまうとして、同社は今後も同様のソフトを継続的に発表していくという。今回その例としてあげられたのが、トランプゲームなど手軽に楽しめるゲームを多数収録したテーブルゲーム集「だれでもアソビ大全」、そして「脳トレ」の発展系となる「もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング」と、どこでも英語の訓練が可能な「英語が苦手な大人のDSトレーニング えいご漬け」だ。 「英語が苦手な大人のDSトレーニング えいご漬け」は、まさに「脳トレ」と同様のスタイルで作られており、ユーザーはヒアリングして手書きで英語を入力していき、手書き認識で読み取りそのまま添削といった流れ。このほかにもマイク入力を使った訓練も収録されている。PCでも発売されているが、マイクデバイスを使っている点や毎日の成果がグラフなどで表示されるといったニンテンドーDS用に数々のカスタマイズがなされている。岩田氏はスリープ機能で、ちょっとした時間でどんどん訓練できるとアピール。2006年1月に3,800円で発売される予定となっている。
「脳を鍛える大人のDSトレーニング」はすでに80万本を販売しているが、岩田氏によれば、多くのユーザーから「もっと多様なトレーニングをしたい」という要望が寄せられたのだという。そこで開発されたのが本作だが、前作と重なるトレーニングはごくわずかだという。今回追加されているものとしては、漢字の書き取りや、四字熟語の穴埋め、新しいスタイルの計算トレーニングなどが用意されている。このソフトの位置づけはあくまでも前作をプレイした人を対象としており、初心者用として1作目のソフトの販売も続けていくとしている。発売は12月29日を予定しており、価格は2,800円。 ■ 「ニンテンドー Wi-Fi コネクション」はソフトの発売と同時にサービス開始 ここで話題は「ニンテンドー Wi-Fi コネクション」に移った。年末に発売される2作品、「おいでよ どうぶつの森 (11月23日)」と「マリオカートDS (12月8日)」の発売と同時にネットワークサービスを開始するわけだが、1,000店舗の店頭に置かれることが予定されている「ニンテンドー Wi-Fi ステーション」は順調に設置が進んでおり、ソフトの発売と同時に楽しめる予定だという。さらに、3,000カ所のフリースポットからも楽しめる。 これまでから岩田氏は、ことあるごとにネットワークゲームをプレイする事に対して、障壁が高いことを上げていた。それは技術的であったり、心理的であったりするわけだが、任天堂の考え方として「カンタン、あんしん、無料」に徹底的にこだわったという。 “カンタン”という点では、技術的障壁を下げるために「ID、パスワードの入力を行なわない」といったところから検討に入ったという。1度接続すると、IDとパスワードは自動生成され本体にセーブされ、次回からユーザーは特に意識することなくアクセスすることができる。 また、バッファローの「AOSS」とNECアクセステクニカの「らくらく無線スタート」に対応することで、家庭の無線LANからの接続を簡略化させる。さらに、ブロードバンドに接続済みのWindows XPパソコンのUSBポートに接続し付属のソフトを実行するだけで、簡単に設定することが可能になる「ニンテンドーWi-Fi USBコネクタ」を開発。ネットワークへのアクセスに対して、徹底的に障壁を下げる方針だ。 キーワードの2つめの“あんしん”について岩田氏は、「これまでは、ゲームに時間を割くことができる熱心なゲームファンがネットワークゲームに参加していたから、あまり問題にならなかったが、心理的な障壁は少なからずあって、ネットの匿名性と表裏一体の難しい問題」と定義。 この点に対する答えとして、任天堂では友人だけがアクセスすることができるシステムと、誰もが一緒に無条件にアクセスすることができるシステムの2種類を用意。このどちらを採用するかはゲームの制作者にゆだねられている。たとえば年末に発売される「おいでよ どうぶつの森」では友人関係でしかアクセスすることはできないという。これはテキストメッセージのやりとりや、他のユーザーの森に行ってかなり色々なことができるため、際限なくいたずらされることなどを避けるためだという。ちなみに、友人とやりとりするためには12桁のフレンドコードが必要となる。このコードをやりとりすることで、双方でアクセスすることができる。 一方、「マリオカートDS」については誰もが一緒に無条件にアクセスできるスタイルを採用。見知らぬ人と対戦することが楽しいのであり、それが魅力のひとつというところからきている。
そして、3つめのこだわりが“無料”である。この点に関してはすでに表明済みだが、あくまでも普及させるための施策であり、他社の有料サービスを圧迫するとは考えていないと説明した。 岩田氏は最後に「ニンテンドーDSの真価を理解するのは難しく、ニンテンドーDSというハードの価値を証明するために、自社ソフト中心の展開となってしまったことは仕方がない。また、ゲームユーザーの枠を広げるために間口の広いソフトを制作してきたこともある。しかし、これまでにも言ったとおり、ゲームユーザーも満足する歯ごたえのあるソフトも発売されて初めて標準プラットフォームといえる。しかし、機は熟しました!」とサードパーティのソフト開発が徐々に進んでいることを表わすコメントで締めくくった。
また、カンファレンスの最後には、ニンテンドーDSの新作ラインアップビデオが流された。そこではカプコンの「バイオハザード Deadly Silence」や「逆転裁判4」の映像も少しながら公開され、今後のラインナップの充実がうかがい知れるようだった。 ■ スクウェア・エニックスがバスケットゲーム「マリオ バスケ 3 on 3 (仮称)」発表 任天堂のソフトラインナップのムービーが流されたあと、スクリーンに上映されたのは、マリオのキャラクタ達による3 on 3 バスケのゲーム映像。これまでのゲームのように十時キーで操作するのではなく、タッチスクリーンには俯瞰画面でコートが描かれており、そこのキャラクタをダイレクトにタッチペンで操作。ドリブルはペンでタップするなど、直感的な操作システムとなっている。 このムービーの最後に表示されたロゴがなんと「スクウェア・エニックス」。ここで登壇したスクウェア・エニックスの代表取締役社長を務める和田洋一氏は「ニンテンドーDSの手触り感のあるインターフェイスにはバスケットボールが合うと提案していたが、さらにゲームとしてワクワクするものをと考えたときに、どうしてもマリオの世界観が必要だと思った」とゲームの開発の経緯を説明。「『マリオRPG』以来のコラボ」と語り、「任天堂さんとはこれからもがっちりとコラボレートしていく」と力強く言い切った。 スクウェア・エニックスのニンテンドーDSタイトルといえばすでに発売を直前に控えた「スライムもりもりドラゴンクエスト2 大戦車としっぽ団」、2006年発売予定の「聖剣伝説DS」など数タイトルが挙げられるが、なんと言っても楽しみなのが「ファイナルファンタジーIII」だろう。ここで同社のエグゼクティブプロデューサー/ディレクタの田中弘道氏が登場。
田中氏は「ファイナルファンタジーIII」について、「1回も移植したことがないタイトルで、完全に新しい作品として制作している」と語った。これまで移植されなかった理由について「作らなかったわけではないが、ハードに移植するにあたって1作目から移植作業を始めると3作目を制作する頃にハードが代替わりしたり、制作チームのメンバーが移動したりしてしまう」と説明。田中氏は「ファミコン版が発売され15年経つが、ここまで来たら普通の移植ではユーザーは満足しないと思う」と続け、フル3Dのグラフィックスで制作し直しているという。「完全に作り直していると言うことでオリジナルの要素が壊されるのではと心配する人もいると思うが、オリジナルの制作に関わった私をはじめ、石井氏が監修しているほか、スタッフで本格的に作り直している。まだ時間はかかるけど期待して欲しい」とコメントし締めくくった。
■ ミストウォーカー、ニンテンドーDSに参入。シミュレーションRPG「ASH」を発表
坂口氏によれば謎が謎を呼ぶ物語になるということで、いくつかのキーワードが語られた。いにしえの昔に封印された“炎”に焼かれた人が灰となってよみがえる……しかしその人達は心もあり、記憶も元のまま。しかし体だけが灰なのだという。その謎を解くために、少女が立ち上がるというストーリーに、タイムパラドックス的な設定や古代の謎などが絡まり厚みのあるストーリーが展開していく。 制作には、キャラクターデザインとして皆葉英夫氏が、音楽に崎元 仁氏が参加するという。皆葉氏は「キャラクタデザインは実は初めてで、ワクワクしながら制作に参加している」とコメント。皆葉氏について坂口氏は「『ファイナルファンタジーV』からの腐れ縁。彼の性格が表われているのだと思うが、線が優しく柔らかい。そしてキャラクタにオーラがあるような、魂のあるように感じる。個人的にも大ファンで、今回は参加してくれてありがたい」と語った。 崎元氏は「坂口氏のシナリオに音楽を付けるのは初めて。これまで女の子が主人公の作品に音楽を付けたことがあまりなく楽しみ」と語った。坂口氏は「映画音楽的な作品で、イベントシーンの揺れなどを表現してくれる。ゲームの演技の部分に当たるイベントシーンは重要視しているので、ちからを入れている。私は彼の大ファンで、彼のゲーム音楽のCDは全部買っている」と絶賛。 坂口氏は「一番好きなゲームのジャンルはシミュレーションRPG」と言い切り、「でもこれまで1作も作っていない。20年間、企画書は書いているが実制作には至らなかった。今回は20年間たまったアイディアを注ぎ込んでいる」と意気込みを語った。グラフィックスはこれまでのニンテンドーDSの作品にはないリアルなもので、坂口氏曰く「いい意味でDSらしくない」雰囲気に仕上がっている。
坂口氏は発表会半ばでDSを差し上げ、すでにグラフィックスが表示されていることを示し、制作が順調であることをアピール。システム的にもRPGとシミュレーションRPGの中間を狙い、坂口氏のいう「チームタクティクス」という新しいシステムを搭載しているという。発売時期は明らかにされていないが、楽しみな新作ということができるだろう。 □任天堂のホームページ http://www.nintendo.co.jp/ □「ニンテンドーDS」のページ http://www.nintendo.co.jp/ds/index.html □「Touch! NINTENDO DS」のページ http://touch-ds.jp/ □関連情報 【6月7日】任天堂、経営方針説明会を実施 「『REVOLUTION』のインターフェイスにはサプライズがある」 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050607/ninten.htm 【10月5日】「ニンテンドーDSカンファレンス2005秋」 試遊台レポート&スクリーンショット http://game.watch.impress.co.jp/docs/20051005/ndc.htm (2005年10月5日) [Reported by 船津稔]
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