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任天堂株式会社は6月7日、都内ホテルで経営方針説明会を実施した。記者会見には、岩田聡社長、宮本茂専務、竹田玄洋専務、波多野信治専務、森仁洋専務、永井信夫専務の同社代表者6名が出席した。 岩田 聡代表取締役社長は経営方針についてのプレゼンテーションをおこない、ゲーム業界の現状について、「日本市場における減少傾向に歯止めがかかった。また一方で、米国の市場は健全な市場に見える」としながらも、「E3で発表されたソフトは似たようなソフトが多く、米国市場についてもかつての日本の市場がたどった(減少)傾向への道程と同じ傾向が見て取れる」とし、こういった危機感の中で「任天堂の方針」を明らかにした。 それは、「ニンテンドーDS」の発表会や「エレクトロプランクトン」の発表会などでも語られてきたが、「初心者でも誰でも楽しめる」ことと、「(今はゲームと呼ばれないかもしれないが) ゲームの幅を広げる」といったソフトを制作していくこと。同氏は同社の方向性として「従来のゲームを好きなお客さんを満足させながら、ゲーム人口の拡大させる」と語った。
この点については「ニンテンドーDS」が国内で250万台とヒットを記録し、犬を育てる「nintendogs」の約4割が女性で、「東北大学未来科学技術共同研究センター川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のDSトレーニング」のユーザー比率が高い年齢層で構成されているといった例を挙げ (両データともクラブニンテンドー登録会員) 、一定の成果として確かな手応えをつかんでいるようだった。 任天堂内部では、2004年夏に部署を横断する形で、これまでゲームをしてない人をどう引き込むかを検討するプロジェクトが発足し、12月頃から猛烈に動き始めたのだという。そういった成果が「“脳年齢”で新しいコミュニケーションが芽生える」と岩田氏が形容した「脳を鍛える大人のDSトレーニング」や「DS楽引辞典」、「やわらかあたま塾」へと続いていく。
こういった方向性の展開が「ニンテンドーDS」である一定の効果を上げたことで、次の展開としてあげられるのが、E3前に弊誌でも取り上げた“WiFi戦略”、そして新据置型ゲーム機「REVOLUTION」へと続いていく。
■ 「REVOLUTION」のコントローラなどの発表は年内に実施 2006年の発売を表明している次世代機「REVOLUTION」については、任天堂の「ゲーム離れ」に対する答えとなるポイントが隠されている。岩田氏は「家庭にはゲームをする人だけではなくゲームをしない人もいる」と定義。「家族のメンバーの中でゲームを敵視している人がいないだろうか?」、「家族のメンバーの中で自分とは関係ないと思っている人がいるのではないだろうか?」と問いかけ、ゲーム機と家族の関係を考え直すことにしたのだという。 こういった経緯から、「新しい技術をチップの性能向上などに向けるのではなく、電力消費を小さくする方向に向ければ、筐体を小さくする」ことに向けられている。筐体を小さくすることへのこだわりについては「すでにたくさんゲーム機があるので、もう1台もほしくないと言うお母さんもいる」というマーケティングからきているようだ。コントローラがコードレスなのもコードが絡まないため。そして、これまで発売されてきた同社のハード用ソフトをすべて遊べるようにする「バーチャルコンソール」の構想も、ある意味「これまでのハードをすべて『REVOLUTION』に置き換えることができる」、そして「子供は最新のゲームで楽しむ一方で、ゲームから離れた人も昔のゲームを楽しめる (つまり家族の誰もが『REVOLUTION』と関わり合える)」という点にある。 他社の新世代ハードが多かれ少なかれ技術革新の発想に立脚しているが、「REVOLUTION」はこういった家族のあり方からハード設計思想がスタートしているのはおもしろい。しかし、開発にコストをかけないと言うことではないという。これに関連して、宮本茂氏は「インターフェイスにはちょっとお金をかけようと思っている」と発言。つまり任天堂が一番大切にしている「コントローラ」について、かなり練り込まれたものになることである。現在、機能について“将来にわたって必要と思われるもの”と“難しくなりすぎると煩雑になるため取り除くもの”などの取捨選択などを進めているという。岩田氏は「『REVOLUTION』のコントローラにはサプライズを感じてもらえると思う」と自信を見せた。 この「REVOLUTION」でどのようなゲームができるのかを決定づけるともいえるコントローラの形状と機能、価格、発売時期、ソフトラインナップについては、年内に発表を行なうとしている。このほかでは、「バーチャルコンソール」で配信される過去のソフトウェアは基本的に有償であるという点を強調。ただし、サービスにはいろいろな方法論が存在するとしており、キャンペーンで期間限定でダウンロードさせると言ったことも検討しているようだ。 そして、その「バーチャルコンソール」でダウンロードした過去のゲームソフトについては、内蔵の512MBのFlash ROMに待避させることになる。もちろんたくさんダウンロードすればオーバーフローしてしまう。この点についてはSDメモリーカードに待避してPCで管理してもいいと岩田氏は説明。もちろん「コピー防止については用意している」という。
このFlash ROMについては、「REVOLUTION」本体の機能拡張やゲームのセーブデータの記録、お試し版のダウンロードなどがメイン用途として設定されており、岩田氏は「コストをかけただけの成果はあった」とコメントしている。また、ハードディスクを使用しなかったことについては「ゲーム機は民生用機。5歳の子供が使用することを考えると、かなり頑丈になったとはいえ落として破損することはあってはならない」とし、「別に否定的なのではなく、時期と信頼性、値段がこなれてくれば (将来的には使用することも考えられる)」としている。
■ 「ゲームボーイ Micro」は“携帯電話”対抗機? 岩田氏はプレゼンテーションの半ばでポケットから「ゲームボーイ Micro」を取り出しかざして見せた。デザインにはかなりのこだわりを持って作られているようで、「任天堂として初めての金属製のボディ」と説明。 「ゲームボーイアドバンスがまだ売れている中でなぜ『ゲームボーイ Micro』を出すのか?」との問いには、「これまで『ゲームボーイアドバンス』にさわっていない人にこそさわってほしい。ゲームボーイアドバンスをしない人でも、携帯電話を取り出してゲームをやっている」とし、iPodが服が販売されているショウケースに一緒に飾られている例を挙げ、ファッショナブルなデザインで「ゲーム専用機の世界と接点を持ってもらうことが大事。ニンテンドーDSとは違うアプローチだが、これもゲーム人口の拡大につながる」と岩田氏は説明した。
こちらは秋に全世界で発売となるが価格については「小さいからと言って安売りするつもりはない」とコメントしている。ちなみに「ゲームボーイ Micro」のフェイスプレートは取り替えることが可能だが、岩田氏はこの点にもふれ、「新しいビジネスにつながると思う。それに、自分ならではのこだわりも出せる」とコメントした。
■ WiFi戦略について “WiFi戦略”についてはニンテンドーDS用ソフト「nintendogs」のすれちがい通信機能を拡充させるWiFiアクセスポイント「nintendogsすれちがいい中継所」を6月21日から段階的に設置していく。これは「人口が少ない地域ではすれちがい通信を楽しむ機会が少ない」という点を補うことからきており、たとえばAさんがアクセスポイントのそばを通ると、Aさんの子犬を預かり、次に通りかかったBさんにAさんの子犬を送る。このときBさんの子犬を預かり次に通りかかったCさんにBさんの子犬を送る。この「nintendogsすれちがいい中継所」の設置場所については「駅や小売店など (岩田氏)」が検討されているようだ。 また、接続の手間については「メーカーの無線ルーターなど (推奨製品を) 使用すればすぐに接続できますよ……といったものは作ろうと思う。それだけではなく、たとえばPCのUSBポートに“棒のようなもの”をさせば、すぐに『REVOLUTION』や『ニンテンドーDS』とWiFi接続できるようなことも考えている」と語った。
このほかのWiFi戦略については、年内に全国で1,000カ所規模のニンテンドーDS用無料アクセスポイントの設置を予定しており、ソフトメーカー25社が参入を表明している。
□任天堂のホームページ http://www.nintendo.co.jp/ □関連情報 「Revolution」記事リンク集 http://game.watch.impress.co.jp/docs/backno/news/revolink.htm (2005年6月7日) [Reported by 船津稔]
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