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★PCゲームレビュー★

アクションと戦術が融合したFPSの新機軸
分隊長としてノルマンディ作戦を追体験しよう

ブラザーインアームズ
ロードトゥヒルサーティー

  • ジャンル:アクションシューティング
  • 開発元:Gearbox Software
  • 発売元:Livedoor GAMES
  • 価格:6,704円(ライブドア直販価格)
  • 対応OS:Windows 2000/XP
  • 発売日:9月15日(発売中)



 今回紹介する「ブラザーインアームズ」は、FPSアクションと戦術的な分隊指揮を融合させた独特のゲームシステムで高い評価を得たGearbox Softwareのコンバットアクションゲーム「Brothers In Arms: Road to Hill 30」の完全日本語バージョン。この9月15日に発売されたばかりの本作は、日本語化されたことでより多くのユーザーが楽しめる作品となった。今回は、独特のゲームプレイを楽しめる本作をこれから日本語バージョンでプレイされる方々に向けてあらためて紹介したい。


■ ユニークなゲームシステムで分隊長の「思考」を追体験

本作のグラフィックは草木など自然物の表現が秀逸で、ヨーロッパの牧歌的な雰囲気をよく表現している
味方チームに敵への突撃を指示。自らも戦いながら複数のチームを操ることで戦闘をすすめていく
 本作「ブラザーインアームス」は、第二次世界大戦のノルマンディ上陸作戦を舞台に、そこで重要な役割を果たした空挺部隊の活躍を主題とするヒストリカルなコンバットアクションゲームだ。

 本作でのプレーヤーは、史実のノルマンディ上陸作戦において活躍した空挺部隊のひとつ、第101空挺師団第502パラシュート歩兵連隊の分隊長マット・ベイカー軍曹となって、激戦地「Hill 30」をめぐる8日間の戦いを体験する。

 PCゲームの世界を見渡すといわゆる「ノルマンディ物」のゲームは、FPSからターンベースシミュレーションまでいろいろあるが、その中にあって本作のアプローチは独特で、注目に値する。

 本作でのプレーヤーの役割は、小規模の戦闘集団を指揮する分隊長。チームの一員として自ら銃を取って戦いながら、数名の戦闘員からなるチームを指揮し、立ちはだかるドイツ軍部隊を倒していく。「メダルオブオナー」のようなFPSアクションと「スペクトラムウォーリアー」のようなチーム指揮が融合したものを想像していただくとよいだろう。あえてジャンル名をつけるならば「タクティカル・コンバットアクション」といった表現になるだろうか。

 本作のポイントであるアクションと指揮という2本の柱は、完全にシームレスな結合を果たしている。AI制御の味方チームに対する命令は、簡単なマウス操作で行なうことができ、主観視点で敵を狙い撃ちながら、そのままの視点で部隊に命令を与えることが可能。操作モードの切り替えのようなものが発生しないので、すべてがリアルタイムに進行する。また、視点が統一されているので、「ゲームっぽさ」を感じることなく、分隊長としての視点に没入できる作りだ。

 この手のNPCを率いて戦うゲームでは、NPCを制御するAIの良し悪しでゲーム内容が大幅に変化するものだが、本作のAIは非常にかしこく、おおむねプレーヤーが期待する動きをしてくれる。操作系もよくできていて、一般的なFPSに比べても操作キーは少なめで習得は容易だ。

 こういったゲームシステムの作りこみがなされているおかげで、本作は個人戦闘と指揮という現実の小部隊長が行なうような戦闘のプロセスをうまくゲーム化することに成功している。映画「プライベート・ライアン」、「バンド・オブ・ブラザーズ」で描かれるような小部隊の戦いを忠実に追体験できるかのようなゲームなのである。

メインメニュー画面。シナリオに沿って展開するキャンペーンがメインのゲームモードだ 味方チームとして戦車も登場。動く弾除けとして、敵を吹き飛ばす砲台として攻防ともに大活躍 敵戦車には対戦車ロケットのほか、取り付いてハッチから手榴弾を投げ込むような対処も可能


■ 制圧射撃で敵を釘付けにし、遮蔽物を利用して回り込み、撃破する

AI制御の仲間たちは賢く、適切な障害物を積極的に使って敵の攻撃をかわしてくれる
チュートリアルより。敵を発見し、拘束し、迂回し、倒すという一連の流れが図示されている
 プレーヤーが指揮する単位は2~4名の兵士からなる戦闘チーム(Fireteam)。チームには装備により役割があり、基本は「射撃班」、「突撃班」の2チーム構成。

 「射撃班」は小銃(M1ガランド)や軽機関銃(M1917 Bar)で武装しており、遠距離から大量の弾幕を投射して敵を釘付けにする「制圧射撃」に向いている。「突撃班」はサブマシンガン(トンプソンM1)が主武装で、回り込んでの接近戦を挑むのに最適。場合によっては「突撃班」が戦車に置き換わることもあるが、その場合も基本的な考え方は共通だ。

 本作のフィールド上には植え込みや塀や土嚢など、「かがめば身を隠せる障害物」が多く配置されており、これが戦術的に非常に重要な要素となっている。障害物は銃弾を通さないので、敵も味方も遮蔽物を利用して隠れていれば射撃で倒されることはない。

 チームは敵に遭遇すると近場の障害物に身を隠し、時々顔を出しては敵に向かって発砲しはじめる。敵も同様に、チーム単位で障害物に身を隠しつつ攻撃してくる。これがまた、NPCのAIに任せるだけでは互いになかなか隙を見せないためサッパリ命中しないのである。

 プレーヤーだけは敵が頭を出した一瞬に精密射撃して敵を仕留めることも可能だが、普通のFPSに比べて照準がかなり揺らぐので遠距離から仕留めるのは至難のわざ。これで単に撃ち合っていても勝負がつかないので、プレーヤーはチーム戦術によって状況を打開していく必要が出てくる。

 チーム戦術の基本は、言わば「遮蔽」→「拘束」→「迂回」→「打撃」。典型的には下のような流れになる。

1.遮蔽 - 敵を発見したらまず適当な障害物の裏に隠れ、安全を確保する

2.拘束 - 射撃班に命じて大量の弾幕を敵に向かって投射、敵を動けない状態にする

3.迂回 - 敵が動けないのを確認して、突撃班が敵の側面や背後に迂回する

4.打撃 - 突撃班が敵への射線を確保して射撃し、敵を倒す

 これを実行するため、プレーヤーには各チームに対して「移動」、「射撃」、「突撃」、「集結」、「散開」を命令する手段が与えられている。複数のチームに対して命令というといかにも難しそうに聞こえるが、実際のところ操作はまったく簡単。

 デフォルトのボタン割り当てであれば、任意の地点を右クリックで「移動」、またはそこに敵がいれば「射撃」となる。また、「射撃」を指定する状態で左クリックすると「突撃」を指示できる。Zキーで「集結」、Xキーで「散開」。命令を与えるチームはフルキーの1と2、またはシフトキーで切り替えできる。

 このようにチームの指揮に用いるボタン数は決して多くないので、数十分もプレイすれば熟達することができるだろう。

 具体的な操作としては、敵を発見したらまず遮蔽物の陰に隠れて身を守り、右クリックで各チームに「移動」命令を出し、敵の攻撃をかわせる場所に導く。チームが移動を終えたらいずれかのチームに敵への「射撃」を指示。

 すると、指令を受けたチームは可能な限り全力で敵に向かって弾をばら撒き始める。集中射撃を受けた敵チームは障害物から頭を出せなくなり、拘束状態となる。プレーヤーはそれを横目に地形を確認し、迂回ルートを選定。その場で突撃班に移動を指示するか、プレーヤー自ら遮蔽物を利用して迂回し、敵の側面や背後から攻撃。基本はこの繰り返しとなる。

移動命令を出すと、ポイントした位置にこのようなサークルアイコンが出現 移動命令と同じ操作を敵を狙って行なうと射撃命令となる 突撃命令を出すと味方チームはいっせいに飛び出していく。リスクの高い攻撃だ

 敵が1部隊だけならば話は簡単なのだが、たいていの場合、同時に複数の敵部隊を相手に戦うことが多い。敵が複数いるということは、制圧射撃で拘束できる敵戦力が限られることを意味する。そうすると、迂回ルートも別の敵の射線に入ってしまうことが多くなるわけで、プレーヤーは周囲の地形を詳しく吟味し、安全なルート、安全なタイミングをはかって作戦を組み立てる必要が出てくる。

 こういった戦術の考案と実行には、敵と味方と障害物の関係を利用するため、周辺の地形を把握し、作戦を思考することがゲームを進めていくうえで重要なポイントとなっている。

 本作ではVキーを押すことで、ゲーム中いつでも上空からの俯瞰視点を開くことができる。この視点では味方や敵の位置を確認でき、地形の特徴も一目瞭然。敵が多く厳しいなと感じたら、ちょっと立ち止まって俯瞰視点を眺め、地形を把握しつつ作戦を練ってみよう。いい作戦を思いついたとき、このゲームを心底面白いと感じている自分に気づくかもしれない。

ゲームの序盤では一名の部下のみを指揮する。徐々に慣れていくことができるだろう カカシの上に表示されているのは「制圧インジケータ」。これが灰色になると敵は全く動けない状態である 俯瞰視点ビューは敵味方の位置関係や地形状況を調べるのに役立つ

制圧射撃中。チームは特に指令しなくても攻撃をしてくれるが、明確に指示したほうが扱いやすい 敵との距離が離れ過ぎている場合は、身をさらしても移動命令を出す価値がある。移動しながらも威嚇射撃をしてくれるのがうれしい ほかに方法のない場合は突撃して力ずくで片付けることも。ある程度のダメージをもらうのは覚悟


■ RTS的プレイとともにアクションゲーム的プレイも許容するふところの広さ

機関銃座に向かって突撃命令を出したら、瞬く間に全滅。こんなときはFPSプレイも悪くない
 本作は戦術ゲームであると同時に、FPSとして個人技を駆使するプレイスタイルも重視しており、突撃班が担当する迂回攻撃の役割をプレーヤー自身が行なってもOKだ。つまり、チーム戦術がうまくいかなくても、FPSの腕前に自信のあるプレーヤーならば、ある程度力押しで進めることが可能となっている。

 むしろ難しい状況で的確な射撃を行なえるのはプレーヤーだけともいえるので、地形が複雑であるほど、状況が難しいものであるほど、迂回と攻撃をプレーヤー自ら行なうことのほうが多くなるかもしれない。

 たとえば、敵がリロードしている瞬間を利用して遮蔽物を渡り歩き、迂回して接近戦で仕留めたり、あるいは敵が射撃のため顔を出した一瞬に遠距離から仕留める、といったこともテクニックとして有効であり、「自分は作戦っぽいものは苦手なんだよな……」というプレーヤーでも安心。

 そういったアクションゲームとしてのスキルも決して軽視していないゲームバランスが本作の良いところでもある。指揮官としての不足がいちかばちかの射撃テクニックで救われるような状況は、実際の戦場でもありそうな話。こうしたゲームスタイルの柔軟性によって、プレーヤーの戦場経験がより生々しいものになっているわけだ。

 しかしさすがにすべてをアクションゲームスキルだけで進められるわけではない。筆者の体感では、チームを活用せずに個人スキルだけでミッションをクリアしようとする場合、ゲームの難しさは大幅に上がる。敵も味方も実際の兵士がするように堅実な戦い方をするので、地形や敵の数によっては、チームを活用しない限り「死角なし!」という場面も多く出てくるからだ。

 といったわけで、本作では上手なFPSプレーヤーにとってもチーム戦術が重要であることに変わりはないが、単なる戦術ゲームに終わることなく、両者のおいしいとこどりを見事に成し遂げたゲーム性を高く評価したい。

1人でもうまく立ち回れば敵の背後から襲える。死角を見つけて行動しよう 家屋の中など狭い場所では、どうしても単独行動になる場面もある。FPSの腕が試される場面だ でもやっぱりチーム行動は大切。なによりも、絵になることだし


■ 史実に基づいたシナリオと豊かなゲームプレイがほどよく共鳴

「ノルマンディ物」のゲームではおなじみのシーンだが、クオリティはかつてなく高い
実際の資料をもとにゲームの舞台となるマップが作られている
 ゲーム内容を一通り紹介したところで、ストーリーラインにも目を向けたい。本作は1本のシナリオに基づいたヒストリカル・キャンペーン形式で進行していく。主人公マット・ベイカー軍曹が属する第101空挺師団第502パラシュート歩兵連隊は、実際に本作で再現されている地域で戦った部隊だ。ゲームの舞台はノルマンディ上陸作戦開始時に行なわれたパラシュート降下シーンに始まり、フランス カランタン南西に位置する「ヒル30」の激戦に至る8日間を描く。

 米国・国立公文書館に保存されている詳細な資料に基づいて作成されたという時系列的、地理的なディテールは申し分ない。非常に洗練されたグラフィックエンジン(UnrealEngine2のカスタム版のようだ)の映像表現も相まって、プレーヤーは当時繰り広げられた史実に親しくなれることだろう。

 日本語字幕で語られる主人公マット・ベイカーの回想録といった本作の物語は、それだけを見ると全体的にわりと淡々としたものだ。しかし、実在の兵士が体験したものであることを思うと、また、主人公と同じ部隊長としての立場をうまく再現したゲームプレイを通じ、体験を共有する感覚を持つことで、しみじみと、当時の兵士たちの心境に思いをはせずにいられない。

 シナリオベースのため、巨視的に見ればゲーム進行は一本道なのだが、ひとつひとつのミッションの舞台となるマップは一本道ではなく複数の経路があり、作戦行動の自由度は高い。マップだけでなく、多対多の戦いによって刻々と変化する状況が、プレイするたびに異なる状況へプレーヤーを直面させ、直接的には語られない主人公の戦場における軌跡を「追体験」させてくれるのである。そういった意味で、本作は全体が綺麗にまとまっている印象を受けた。

 といったわけで、本作はまごうことなきシングルプレーヤーFPSの傑作の1本に数えられる作品だ。筆者としては珍しくベタ褒めになってしまったが、難易度がちょっと高すぎるんじゃないかなという印象を除けば、本当にコレといった問題が見つからないので困っているほどなのだ。面白いシングルプレーヤーFPSを求めているPCゲーマーの皆さんには、ぜひ一度、プレイしていただきたい作品である。

ストーリー展開はゲームプレイと連続したカットシーンの挿入によって表現される。キャラクタの表情も豊かで、自然な表現が好印象だ

グラフィックスは、自然物の濃密な表現と人工物が違和感なくまとまっているところに注目したい。柔和な空気感が感じられる中、激しい戦闘が繰り広げられるアンバランスさが戦争の雰囲気をよく表現している

(C) 2005 Gearbox Software, LLC. All rights reserved. Published and distributed by UBISOFT Entertainment under license from Gearbox Software, LLC. Brothers In Arms Road to Hill 30 is a trademark of Gearbox Software and is used under license. Ubisoft, Ubi.com, and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the U.S. and/or other countries. Gearbox Software and the Gearbox logo are registered trademarks of Gearbox Software, LLC.


【ブラザーインアームズ:ロードトゥヒルサーティー】
  • CPU:Pentium III 1GHz以上(Pentium 4 2.5GHz以上を推奨)
  • メインメモリ:512MB以上(1GB以上を推奨)
  • HDD:4GB以上(5GB以上を推奨)
  • ビデオメモリ:32MB以上(128MB以上を推奨)


□「ブラザーズ・イン・アームズ」のページ
http://games.livedoor.com/pkg/bia/
□関連情報
【7月22日】ライブドア、ファン待望の日本語版が登場
WIN「ブラザーズ イン アームズ: ロード トゥ ヒル30」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050722/bia.htm
【4月8日】PCゲームレビュー「BROTHERS IN ARMS Road to Hill 30」
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【3月25日】ライブドア、WIN「ブラザーズ イン アームズ」
発売記念イベントをNecca秋葉原にて開催
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050325/bia.htm
【3月22日】ライブドア、ノルマンディー上陸作戦をリアルに再現したFPS
WIN「ブラザー イン アームズ 英語版/日本語マニュアルつき」を4月1日発売
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【2月21日】ライブドア、「Brothers In Arms: Road to Hill 30」を3月に発売
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(2005年9月26日)

[Reported by kaf@ukeru.jp]


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