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★ PCゲームレビュー★

制圧射撃で敵を釘付けにして撃滅せよ!!
RTSとFPSが融合した新感覚の第二次大戦FPS

BROTHERS IN ARMS
Road to Hill 30

  • ジャンル:アクションシューティング
  • 開発元:Gearbox Software
  • 発売元:Livedoor GAMES
  • 価格:5,980円(日本語マニュアル付き英語版)
  • プラットフォーム:Windows 2000/XP
  • 発売日:4月1日(発売中)


 第二次世界大戦を描いたドラマや映画は数多いが、その中でも筆者が好んで見るのが「Saving Private Ryan(邦題:プライベートライアン)」と「Band of Brothers」の2タイトルだ。著名な映画監督であるスティーブン・スピルバーグが制作総指揮をとっているタイトルだが、筆者が好きな理由はこの2タイトルが戦場記録映画のような雰囲気を持っているということに尽きる。まるで自分が本当にこの戦場にいるのではないか、そう思わせるような雰囲気をこの2タイトルは持っている。

 映画やドラマ、そしてゲームはスクリーンの中にある一定の世界を創造し、視聴者(プレーヤー)をその非日常へと誘うという点で似ている。視聴者(プレーヤー)が能動的か受動的かという違いはあるものの、引き込まれるという点では同じことだ。そして、良くできた作品に刺激され、新たなる名作をつくろうとするのはクリエイターとして自然な反応だろう。

 「ブライベートライアン」に刺激されて開発されたのは、FPSを遊ぶプレーヤーの多くが知っているであろう「Medal of Honer」だ。刺激された作品が良かったのか、それともスクリプトを多用して一種のアトラクションを作り上げようとしたクリエイターの視点が良かったのか、はたまたその両方かはわからないが、「Medal of Honer」は世界最大規模のゲームメーカーであるElectornic Artsが発売するメインタイトルのひとつとして、PCに限らずあらゆるプラットフォームで多くのプレーヤーに楽しまれる名作となった。

 今回紹介する「BROTHERS IN ARMS: Road to Hill 30」は、「Band of Brothers」に刺激を受けたというより、「Band of Brothers」における第101空挺師団の死闘の一部をゲーム化しようとしたタイトルだ。

 プレーヤーは、アメリカ軍の第101空挺師団第502パラシュート歩兵連隊の分隊長マット・ベイカー軍曹として、ノルマンディ上陸作戦前後の激戦地となった「Hill 30」を巡る、8日間の任務を体験していくことになる。ちなみに本作は、ワシントンD.C.の国立公文書館に保管された当時の戦闘詳報などを徹底的に調べ上げた上で作られており、登場するのは当時、Hill 30で展開していた第502パラシュート歩兵連隊所属の実在の人物だ。加えて部隊となる戦場の地形や建物も当時のものを再現したと言うから、そのリアリティはかなりのもの。果たして本作が「Medal of Honer」ほどの名作となりうるのかどうか、そこを中心に見ていこう。


■ Gearbox初のオリジナル作品は、FPSにRTSの要素を加えた新システムを採用

 本作を制作しているのは、Gearboxという北米に本拠を置く独立系の開発スタジオだ。ちょっと古いFPSファンならば、どこかでこの名前を一度は聞いているだろう。古くは「Counter-Strike」のβ版の制作に携わり、「Half-Life」の追加パック、「Halo」のPCへの移植、「Counter-Strike Condition ZERO」の開発など、数々のタイトル制作に関わっているチームだ。そんな彼らが世に送り出す初めてのオリジナル作品が「BROTHERS IN ARMS」だ。

 数々のタイトルに関わった彼らが作る初のオリジナルタイトルだけあって、「決められたマップを進み、現れた敵を皆殺しにして、マップ最後まで行けば終了」という安直な作り方はしていない。本作最大の特徴は「分隊指揮」、「制圧射撃」、「遮蔽物」という3つのキーワードで語ることができる。

 まずは「分隊指揮」。本作では「味方兵士をどの位置につけ、どういった行動を取らせるか」を即時的に指示することができる。プレーヤーは指示を出す分隊を決め、ドラッグで移動位置を決めて指示をだす。分隊長が兵士に向かって「そこの建物の影に隠れろ!」と叫ぶのと同じことを、プレーヤーが抱える分隊にたいして行なうわけだ。インターフェイス自体は「Full Spectrum Warrior」とほぼ同じで、15分ほど触ればすぐに使いこなすことができる。プレーヤーは敵と味方の位置を把握して敵に対して適切な位置へ味方を誘導し、この後に紹介する制圧射撃や突撃といった行動を指示するわけだ。

マウス右ボタンをドラッグすると、青色のサークルが出て移動位置を指定できる。上手く遮蔽物の影へ誘導してやろう AIの頭の上にFireTeamのアイコンが出ている。基本的にはShiftキーで切り替えて指示を出すのだ 敵を発見したら、まずこの見下ろしのビューへと移って敵と味方の位置関係を把握し、どのように進むかをプランニングしよう

 さて、今から記述することを頭の中で思い浮かべて欲しい。狭い路地を渡らなければならないが、路地の奥の土嚢には機関銃が設置され、渡ろうとすると雨あられのように弾が飛んでくるという状況、あなたならどうやって路地の向こうに味方の兵士を渡すだろう。強引に突破を試みる? いやいや、そんな確度が低く犠牲者の出る方法をとる必要はない。ここで使うのが2つ目のキーワード「制圧射撃」だ。

 制圧射撃は文字通り「敵を制圧するための射撃」だ。自分が遮蔽物に身を隠しているとして、その遮蔽物に猛烈な射撃が加えられている時に遮蔽物から頭を出そうとするだろうか、いやそんな間抜けはいない。そして、射撃が止んだとしてもすぐには頭を出すことはできないだろう。これが「制圧射撃」が目的とするところ、遮蔽物越しに味方を狙う敵に制圧射撃をかけ、その脅威を一時的に減少させるのだ。本作においてプレーヤーは、この制圧射撃を使って、遮蔽物や塹壕から虎視眈々とこちらを狙ってくる敵を押さえて、前へ進むことになる。

 そして、このゲームでもっとも心がけなくてはいけないのが3つめのキーワード「遮蔽物」だ。普通、FPSというと針の穴を通すような正確な射撃ができるプレーヤーなら多少困難な状況に置かれたとしても、その射撃能力を存分に活かしたランボープレイで強引にステージをクリアすることが多いだろう。しかし、本作ではそういったFPS的射撃能力のうまさというのはまったく役に立たない。本作では「遮蔽物」に隠れた敵AIを狙う場合、プレーヤーの射撃能力に意図的な修正が入るのだ。

 本作では、敵が遮蔽物に隠れていると判定される場合、遮蔽物の真っ正面から射撃を試みてもまず当たらない。これまでのFPSであれば当然当たっているような距離でも、まるで意図的に弾道が曲がっていると判定されて弾が当たらないのだ。これまでのFPSに慣れているプレーヤーは、ゲームを始めるとかなり面食らうことだろう。

 これは味方だけではなく敵も同様で、プレーヤーが味方の分隊を遮蔽物に隠れさせている限り、敵の弾が味方に致命傷を与えることはまずない。ある程度の距離を持って向かい合った遮蔽物に敵味方が隠れて真っ正面から打ち合った場合、互いに制圧射撃メーターを削り合う以外の変化は起きない。よって、本作において敵を倒そうと思ったら味方に正面から制圧射撃を掛けさせつつ、プレーヤーが遮蔽物側面に回り込むという方法をとることになる。

 以上の3種類の要素が絡み合って本作を構成している。プレーヤーは、とにかく「敵を発見」→「射撃を指示」→「制圧射撃で敵を遮蔽物へ釘付け」→「プレーヤーもしくは別チームが迂回して敵を倒す」の繰り返しでゲームを進めていくことになる。こう書くと単調なようだが、ステージ自体は実際の戦場を参考に作られているだけあってバリエーションも多く「自分が分隊長だったらどうするか」ということを考えつつ、ニヤニヤ笑いを浮かべながら遊ぶことができる。

制圧射撃を浴びせると、メーターが減っていく。赤い部分が無くなると敵は遮蔽物の影に隠れて出てこなくなるので、この隙に進むわけだ 遮蔽物から敵が頭を出したような状況で撃っても、まず当たらない。撃っても明後日の方向に着弾することが多い 敵を倒す場合は、制圧射撃で敵を遮蔽物に貼り付けてプレーヤーが遮蔽物を迂回するように回り込むことになる。写真の位置関係で撃てば必中になる

制圧射撃の指示する時のようにマウス右ボタンでドラックして敵に照準を合わせた後、ドラックしたまま左クリックで突撃を指示することができる。2チームに指示が出せるようなら、1チームに制圧射撃をさせて、もう1チームを突っ込ますということも可能だ 標準状態だと、FPSでおなじみの照準は表示されない。一応オプションで表示させることはできるが、遮蔽物の補正を考えると余りあてにならない 長距離で必中を狙うならばアイアンサイトを覗き、しゃがみの体勢からしっかり狙いを付けて撃とう。ただ、敵もこちらに向けて撃ってきてる場合はプレーヤーがビビるせいか、弾がプレーヤーの近くを通るたびに照準がぶれる


■ 実際の戦闘詳報に基づいて再現された戦場を追体験

 さて、ストーリーはノルマンディへと向かう輸送機の中からスタートする。プレーヤーは史実通り、翌朝ノルマンディ上陸作戦を展開する連合軍部隊を援護するために、ノルマンディのドイツ軍防御陣地後方へパラシュート降下していくことになる。

 降下作戦では、「Band of Brothers」の名シーンでもよく知られているように、対空砲による熾烈な反撃を受ける。プレーヤーの乗る輸送機も途中で被弾してしまい、機体が四散する前に機外へと放り出される。

 従来の降下地点と違う場所に落とされ、バラバラになってしまう仲間達、そして落下時にプレーヤーは装備をすべて失ってしまう。体一つで敵地に落とされたプレーヤーは、まずは味方と何とかして合流するところからスタートする。この展開、「Band of Brothers」に酷似しているが、本作は実際に当時ノルマンディ上陸作戦に関わった将兵達が記した戦闘詳報を元に作られている。よって、これは実際に起こったことであり、プレーヤーはこういった現実をゲームを通して追体験することになる。

 この後プレーヤーははぐれた仲間達と合流し、ノルマンディ上陸作戦が行なわれる海岸へ向かったり、内陸部の都市の制圧作戦へと向かったりする。同作にはドラマパートというものが用意されており、このパートで、登場するキャラクタたちの交流が行なわれることになる。戦友達は視線を合わせてしゃべり、ドラマさながらの人間模様が展開されることになる。

 ただ、残念なのは本作が「日本語マニュアル付き英語版」であるために、英語が苦手な人には、ドラマパートがほとんど理解できないことだ。一応、ゲームオプションによって英語の字幕を挿入することはできるのだが、セリフをしゃべるスピードが速く表示される時間が短いために、内容を理解するのがなかなか難しい。

 チュートリアル機能とヘルプは適切なタイミングで表示されるため、ゲームの進行自体に大きな問題は無いのだが、同作ではドラマパートにかなりの重きを置いているため、ここが十分に理解できないとゲームのおもしろさは半減されてしまう。日本語版の発売の強く希望したいところだ。

プロローグシーン。ノルマンディ上陸作戦の援護のため、ドイツ軍の勢力下にあるフランス北東部に強行降下する。しかし、対空砲に当たって機内は炎上、プレーヤー以下戦友達は機外へと放り出される羽目になる


■ RTSとFPSのシステムを融合させ、新しい可能性をみせたタイトル

ドラマパートとゲームパートはシームレスに進む。ドラマパートでリップシンクを使ってバリバリしゃべっていたキャラクタモデルがそのままゲームに参加しているのだ
Unreal2エンジンの最新バージョンと思われる3Dエンジンで描かれたフランスの戦場。ソフトシャドウ効果で牧歌的な雰囲気を見事に表現している
 実は本作、FPSという分類で括っていいのか筆者は迷っている。分隊への移動や射撃の指示出しは基本的にはRTSのノリなのだ。そして、本来のFPSの部分では遮蔽物や敵の弾幕によって命中率が大きく変化する。RTSとFPS両方の要素を組み合わせた新ジャンルのゲームといった方がいいだろう。

 そして、本作のゲームシステムはプレーヤーにRTSのような瞬発的な戦略センスと、FPSの射撃センスの両方を要求する。プレーヤーに「戦場で生き残るためにはどのように分隊を動かし、自分はどういった行動を取るべきか」ということを強烈に考えさせるには最適なゲームシステムだと言っていいだろう。そういった意味ではこれまでのRTSやFPSとはまったく違う、新しい次元の可能性にチャレンジしたタイトルだと言えるだろう。

 加えて、「Counter-Strike: Condition Zero」などで培ったAIの技術は素晴らしい内容で、危険な場所で無謀な飛び出しは絶対しなかったり、敵の射撃が激しい部分に行けと命令してもその命令を拒否するなど、かなり人間くさい行動をとってくれる。おまけにプレーヤーが指示をしなくても敵を発見するとある程度は判断して動いてくれる。1から10まで指示を与えなくてよいAIというのはかなり好印象だった。AIが無駄口ばっかり叩くというところも雰囲気を向上させるという点では重要なポイントである。

 ただ、プレイしていて残念だったのは、こういった新しいゲームシステムや雰囲気を盛り上げるAIが組み込まれている一方で、FPSの魅力であるゲームの自由度そのものが損なわれている印象が強いことだ。

 たとえば、各マップにおける行動はある程度の選択肢の自由度が考慮されているものの、「おそらく正解なのだろう」と思われるルート以外はかなり難易度が高くなってクリアが難しくなるといった点が1つ。次に選択肢として用意されているルートが少なく、マップ内を移動していると透明な壁にぶち当たって「あれ、この先いけないの!?」となる点が2点目。それから、制圧射撃というシステムを取り入れたにもかかわらず、携行できるマガジンの数が少なく、延々と制圧射撃をやってるとすぐに弾が足りなくなってしまう点も気になった。リアルに則したといえばそこまでだが、制圧射撃という新システムを活かすならば、もうちょっと保持できる弾を増やしても良かったのではないかと思う。

 と、いくつか不満を並べてみたが、RTS+FPSというゲームデザインは破綻せずよくまとまっているし、AIも優秀で、英語がわからないとストーリーをつかむのが難しいということを除けば、バランスの取れた良作といえる。PCゲームを遊んでいる人間だったら一度は遊んでおくべきタイトルだろう。

橋を下から迂回しようとすると透明な壁にぶつかって先に進めない。ちょっと残念な要素だ 戦車に乗って進むことも可能だ。戦車に乗ると機関銃が撃ち放題なので、慎重に進んでいけばかなり戦局を有利に進めることができる

敵戦車に肉薄してハッチから手榴弾を放り込むこともできる。手榴弾が放り込まれた敵戦車は、戦車兵の焦りを表すかのように後部を数回振った後爆発する

戦場では終始、迫撃砲が飛んでくる。3発1セットで撃ち込んでくる。こういった迫撃砲をつぶしていくのもプレーヤーの任務だ

(C) 2005 Gearbox Software, LLC. All rights reserved. Published and distributed by UBISOFT Entertainment under license from Gearbox Software, LLC. Brothers In Arms Road to Hill 30 is a trademark of Gearbox Software and is used under license. Ubisoft, Ubi.com, and the Ubisoft logo are trademarks of Ubisoft Entertainment in the U.S. and/or other countries. Gearbox Software and the Gearbox logo are registered trademarks of Gearbox Software, LLC.


【BROTHERS IN ARMS: Road to Hill 30】
  • CPU:Pentium III 1GHz以上(Pentium 4 2.5GHz以上を推奨)
  • メインメモリ:512MB以上(1GB以上を推奨)
  • HDD:4GB以上(5GB以上を推奨)
  • ビデオメモリ:32MB以上(128MB以上を推奨)


□「BROTHERS IN ARMS: Road to Hill 30」のホームページ
http://game.livedoor.com/pkg/bia/
□関連情報
【2004年10月11日】WCG 2004 Exhibitionレポート その2
協賛各社がブース出展、Ubiの「Brothers in Arms」にも注目
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041011/wcg04_ub.htm
【2004年5月15日】Ubi Softブースレポート ミリタリーFPS編
スピルバーグも視察に訪れたWWII FPS「Brothers In Arms」に注目
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040515/e3ubi.htm

(2005年4月8日)

[Reported by 戸塚直太郎]


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