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会場:泉ガーデンタワー
タウンホールミーティングは、ワシントンDC、ポートランド、ロサンジェルス、サンフランシスコといった北米の都市のみならず、ロンドン、ベルリンでも開催された。日本では、コミュニティーの中心となっているユーザーと抽選で選ばれたUOプレーヤー集まり、開発者との交流が行なわれた。残念ながら台風の接近時期と重なった悪天候のため、来場を見送ったファンもいたようだが、それでも多くのプレーヤーが会場に集結した。
今回のイベントで開発者達の言葉を通訳したオンライン事業部バイスプレジデントの正田 純次氏は「なぜ我々がこういうイベントを開いたかといえば、やはりプレーヤーのみなさんあってこそのUOだからなのです。先日アンケートをさせていただいたところ、プレーヤーのみなさんの平均プレイ歴は2.5年という長い期間でプレイをしていただいています。もちろん、この会場に来ている方はそれ以上だと思います(笑)。 UOはそういった長い期間プレイをしてくれているファンの声で拡張されています。ほぼ毎日、日本のチームを通じてみなさんの声は届いています。今日のミーティングではみなさんに感謝を伝えると共に、みなさんの意見を直接お聞きできればと思います」と挨拶をした。 正田氏の挨拶の後に、会場が一瞬真っ暗になり、黒いローブを着たBinky氏が登場、預言を告げる魔術師として、雰囲気たっぷりに「宝珠の守人」のバックストーリーを語り、ファンからの喝采を浴びた。Binky氏はローブを脱ぎ、「宝珠の守人」のプレゼンテーションをするときも身振り手振りを激しく加え、時にジョークを交えつつ、PKプレーヤー向け説明の時などはニヤリと笑ってみせるなど、非常にサービス精神たっぷりのトークを披露、会場を沸かせていた。 Maria氏は時に冷静に、時に笑顔を見せてきびきびとファンの質問に答え、Jennifer氏は最初ちょっと内気そうに両手でマイクを握り、緊張した表情で話していたのだが、時間が経つごとにとてもうれしそうに、自分のこだわりの部分をファンに説明していた。特に歓談会での、試遊台を前にして、ファンに囲まれながらポイントを説明するときの笑顔が印象的だった。 来場を見送ったファンが出てしまった悪天候は残念だったが、イベントは大きく盛り上がった。ファンは他のゲームイベントに比べると20代後半以上といった方が多く、プレイ期間の長さを伺わせた。女性も多く、「オフ会」として顔見知り同士話をしている人もたくさんいて、メーカー主導の発表会とは少し違う、「ベテランUOプレーヤーならではの集まり」といった、和やかな雰囲気があった。 英語に堪能なユーザーも多かったようで、正田氏の通訳を待つまでもなく開発者達の言葉に反応し笑顔を見せる人もいた。筆者も実は4年以上のUOプレーヤーであった。会場のユーザーと一緒に古参プレーヤーならではの質問に思わず苦笑したり、新要素や開発者の解答に話し合うプレーヤー達の会話を聞いていて、会場の「UOプレーヤーならではの連帯感」にいつの間にか同化してしまい、個人的にもとても楽しかった。 EAは過去に日本でRichard Garriott氏が来日した時や、昨年の「武刀の天地」のカンファレンスなどでファンサイト運営者などコミュニティーの中心となるユーザーをイベントに招待しているが、今回のような一般ユーザーを多く招き、ユーザーに向けたイベントを開催したのは初めてだという。 歓談会ではEAは通訳スタッフを会場に多く配置、積極的に開発者とユーザーの橋渡しを行なっていた。通訳スタッフの存在のおかげで、開発者に話しかけようというファンも多く、3人の開発者は熱心なファンに囲まれて非常に楽しそうだった。Chris氏は特にノリノリで、ファンと何度もハイタッチを決めていた。 会場ではファン同士でこだわりのコスプレ衣装を披露したり、女性プレーヤーが「メインで使ってるのは赤ネーム(PKキャラクター)ですよ、とっても楽しいです」といって周囲を驚かしていたりと、交流を楽しんでいた。大会場で一方的に情報を提供する発表会とも、少人数での質問会とも違う独特な雰囲気のあるイベントだった。
イベントは説明、歓談も含めて2時間ほど。正直もう少し長い時間開催してファン同士の交流をもっと楽しめれば、と感じた。退場の際、「今日はほんとにありがとう」と言葉をかけるファンにスタッフがうれしそうに向けた笑顔がとても印象に残った。UOでは初めてとなった今回のイベントだが、今後もこういったイベントの機会は増えてもいいのではないだろうかと思った。
■ さまざまなプレイスタイルをフォローする「宝珠の守人」の新要素 タウンホールミーティングでは、「宝珠の守人」の新要素が開発者達から紹介された。最初にオススメの場所は? と言う質問にMaria氏は「ピアレスモンスター(比類なきモンスター)」と答えた。このモンスターは、多くのプレーヤーが協力をしてようやく倒せるような非常に強力な存在だという。 ピアレスモンスターは今までにない能力を持っていて、例えばひとつのモンスターはプレーヤーを強引に自分の近くに引きつけるという能力を持っている。βテストの時はちょっとしたバグでこのモンスターが酸の海に入ったところでプレーヤーを呼び寄せて全員を溶かしてしまうと言うこともあったそうだ。他にもさまざまな仕掛けが用意されているとのこと。
スタッフが言うには、「とてもきらきらして美しい場所に、血とか死体が散乱しているのがおもしろい」とのこと。結果的に独特の雰囲気を持ったダンジョンができたそうだ。 Chris氏は「パレス オブ プロキシマス」のボスが好きだという。βテストの最終日にやっと、17人のプレーヤーが3時間かけてようやく倒せたほどの強敵で、更にこのボスに挑戦するにも鍵を見つけるといった手順が必要になる。このくらい難しいものが多数取り入れられているので、楽しみにしてほしいという。 新要素の細かい部分は6つのプレイスタイルにわけて紹介された。以下、各ポイントを紹介していこう。 ・冒険、戦闘をするなら。 十数種類のモンスター、9つのダンジョン、新しいパラゴンモンスター、新しいマイナーアーティファクト、更に新しいクエストなどが追加される。特にピアレスボスという6種類の新しいボスにはプレーヤー同士の協力が必要である。 ・生産を楽しむなら アーティファクト並の強力なアイテムが作成可能に。特別なアイテムを作るための“レシピスクロール”を得るためのクエストの追加、伐採採掘の新要素。ピアレスモンスターがドロップするのは、新しいアイテムの材料であり、これを使うためには生産者の協力が不可欠だ。 ・アイテム収集家なら 新しい鎧など多数のアイテムの追加。フェレットやリス、オウム、水槽の魚など多数のペットが追加されているが、これらには「世話」が必要になる。プレーヤー達が協力をして図書館や博物館などを作る“コミュニティーコレクション”には貢献の報酬として特別なアイテムがある。 ・対人戦を楽しむには 抵抗力が強くマナが多いかわりに回復力に劣る、新種族エルフの存在で、戦いはより複雑に。新しいタリスマンと新しい食べ物により多彩な効果がもたらされる。 ・ソロプレイが好きなら 多くのクエスト、より多くのダンジョンの探索など新要素はソロプレイでも楽しい。また、コミュニティーコレクションは一人で黙々と貢献することも可能だ。 ・赤ネームのプレーヤーなら
PK専用のクエストの追加。PK可能な世界、フェルッカにも新ダンジョン9つのうち、5つがミラーとして存在している。この5つのダンジョンはトラメルのものよりドロップ率がいいかもしれないということだ。 ■ 開発スタッフを驚かせた、日本プレーヤーの鋭い質問 Q&Aセッションでは、寄せられた多くの質問から同じ傾向を持った質問が採用された。採用された質問の数は非常に多く、UOプレーヤーの熱心さを伺わせた。Chris氏に感想を聞いてみたのだが、「日本のユーザーは他の国では出なかった質問も出た、とても参考になったよ」とのこと。現在、日本のプレーヤーは全世界のUOプレーヤーの45パーセントを占めるという。日本の意見が、UOのこれからを決める可能性は大きいといえるだろう。
Jennifer氏: 具体的には今は発表できませんが、現在「宝珠の守人」の開発が終わり、次のアイデアを練っているところで、その中には確実にハウジング要素が入ります。 城などのカスタマイズに関しては同じ質問がベルリンのユーザーからもあがりました。私たちは指摘されて、なるほどな、と思いました。すぐできるかはおいておいて、調査研究をして、元々形としてある建物をカスタマイズできるか考えてみたいと思います。 Q. 地下室を作ることはできますか? Maria氏: 開発のアイデアとして出ています。地下1階、2階とか自分でダンジョン風なものを作ってみるのは楽しそうですよね。ここも技術的にできるかを考えています。 Q. アイテムの腐敗時に突然消えるのではなく、徐々に崩れ壊れていくような演出はできますか? Jennifer氏: それぞれに新しいグラフィックスを入れなくてはならないので、それよりも新しいアイデアやクリーチャーなどを入れていきたいですね。 Q. 昨今の追加要素はストーリーに乏しいものが多く、その背景を楽しむことができません。今後世界観を作る上でのバックストーリーを充実させる予定はありますか。これらの世界設定を通じてゲームデザインがなされるということが考慮されていますか? また、新クエストシステムを利用することで、世界にまつわるストーリーを感じられるようになるのではないでしょうか? Maria氏: それはまさに「宝珠の守人」で私たちがやった要素です。たとえばハートウッドの話などはウルティマの歴史を考えて、ストーリーを考えて生まれてきました。今回はダンジョンにもストーリー性を組み込んでいます。「ラバディス」というダンジョンはモンデインに関するストーリーで作り上げられています。ストーリー性を持たせた要素は今後も考えていこうと思っています。 Q. 昼と夜で世界観を変えてはどうでしょうか? Maria氏: これも考えていることですね。モンスターが昼と夜で違ったり、NPCが違ったり、クエストなども考えたいのですが、現在はシステムが対応していません。今後研究していく要素です。 Q. 空は飛べるようになりますか。 Maria氏: グラフィックエンジンの構成上、飛んでるように見せるのが非常に難しくなっています。技術的な部分で難しい問題ですね。今回追加された「レクタイン」というモンスターは飛んでいるように見えますが、本当の意味で飛んでいるかは“微妙”ですね。 Q. 現在も未実装な部分がある「徳」のシステムはどういったスケジュールになっているのでしょうか? Jennifer氏: 「宝珠の守人」では新しい徳のシステムは実装されませんでしたが、開発の優先度の高いものとしてリストに入っています。我々も8つある徳をすべて早く入れたいと思っています。 Q. アクションの追加要素はありますか、例えば何もないところに寝転がる、地面に直接座る、ベッドに寝転がる……UOのプレーヤーはこれらのアクションから想像力でいろいろな遊びを生み出す力があると思います。 Maria氏: それは非常に良いアイデアですね。ただ、何でもかんでも入れるということはできません。例えばみなさんが一番ほしいアクションを5つ教えてくれればそれを検討したいと思います。(正田氏:これは日本チームへの宿題になったかもしれません) Q. 「食」に関する追加要素がほしいです。作る側の楽しさ、食べた側の楽しさ。以前は料理にも現実と同じように手順を踏む楽しさがありましたが、今はボタン押すだけの味気ないものになってしまいました。以前のようなシステムに戻らないでしょうか。例えば小麦粉をふるいにかけ、水と練り合わせ、卵などを混ぜて玉にして、練り、発酵させ、整形するといった手順を楽しみたいです。 Jennifer氏: 実際に以前あったシステムもすてきなシステムだったと思っています。私たちは新規のプレーヤーとみなさんのようなベテランプレーヤーのバランスを考えなくてはなりません。例えばオプションで旧システムに戻せるようなアイデアは考えています。 Chris氏: ただし約束はできません(笑)。 Q. 経済のインフレ、戦闘能力のインフレに関してどう考えていますか? 今後バランスをとる上でのアイデアを教えてください。 Maria氏: 「宝珠の守人」にはこのお金がありすぎるという問題に対応しようと導入した要素もあります。そのためにゲームに出てくるいくつかのアイテムはとても高価にしました。これにより経済システムからお金を吸い上げることができればと思っています。 また、あるダンジョンは入るためにチケットが必要になります。こういった形でプレーヤーはお金を使ってもらえればと思います。他にも何かプレーヤーからのアイデアがあったら是非指摘してください。 戦闘に関しては以前はアイテムを持っていた方が有利になるというような傾向がありました。「宝珠の守人」ではこれらのアイテムがあまりレアではなくなってしまう可能性もあります。生産系の人たちが強力なアイテムを生み出すことができるようになるのでみなが強いアイテムを手にすることができるようになるかもしれません。アイテムによる力が等しくなることで、プレーヤースキルがより重要になってきます。 Q. 現在のシーフはクエストアイテムを盗んだりと、トレジャーハンター的な位置づけが多いようですが、純粋にプレーヤーから持ち物を盗むことに焦点をあてた変更は将来あるのでしょうか。 Maria氏: すみませんかわいそうな泥棒さん達。いろいろな職業に対してどう改善できるかは、日々スタッフ間で議論されています。シーフに関してはデザインのドキュメントもあり、いろいろな視点から調査をしています。 例えばドゥームでのシーフは盗みをするならばパーティーの一員でなくてはいけないというような変更も考えています。これはチームの中でも優先度の高い問題として考えています。 Q. 既存のアイテムにも新アイテムのようなレシピシステムが導入されることがありますか? Maria氏: レシピシステムはスクロールを手にしたプレーヤーが新しいアイテムを作れるようになるシステムです。既存のアイテムにこれを適用すれば、今まで作れたアイテムができなくなってしまうという大きな問題になってしまいます。ここに関してはできないですね。新アイテムに関しては今後もレシピシステムに対応していくと思います。 Q. EAはUOに対して積極的に投資を行なっているのでしょうか? Chris氏: 実際にこのタウンホールミーティングをこうして行っていることが投資を行っているその証明だと思います。ロンドンやベルリン、そして東京で意見を聞くというのは、EAの姿勢の現れです。 今後、カナダやコリアを含めた5カ所以上のこうしたイベントを予定していますし、EAがそれだけUOというタイトルが非常に重要なタイトルだと理解をしているし、投資をしていると思っています。 Q. クライアントに関して質問します。グラフィックスの改善予定はありますか。2Dのドッター改善を、3Dの全般的な改善を、2D、3Dの統合などを計画していますか? UOを継承しつつ、完全に作り直した新しいクライアントを作る計画はありませんか? Maria氏: この問題は私が何かコメントをすると誤解されてしまう可能性もあるので、深くお答えしない方がいいと感じています。ただし、「宝珠の守人」の開発でも2Dグラフッィクスに関するフィードバックを非常に受けて、これに対するいろいろな改善をしていこうと思っています。例えばグラフィックチームのツールをもっといいものにしたりとか、作業の効率化とクオリティー向上を図っています。 大きな問題は、フォトショップなどで作ったデーターが一見きれいに見えても、ゲームの中で不自然に見えてしまうことが多いことです。例えばデータ上ではエルフのとがった耳がよくできたと思ったのですが、実際に街で走らせてみると耳だけ不自然に大きく動いてしまい修正しました。 アートパイプラインの改善は行なっていますが、統合されたクライアントなども誤解を招くおそれがあるのでこれ以上はいえませんが、私たちも議論し、考慮しています。 Q. 海に関して質問したいです。UOでは広大な海がありますが、あまり注目されていません。船でしか行けない海上都市や、大砲などを積んだ船の武装、戦艦建造、艦隊の組織などできないでしょうか。 Maria氏: 実は、拡張版のアイデアとして真剣に海の冒険を考えていた時期がありました。船に武装させるとか、海賊を出したりとか、水中都市を考えてもいました。実はオウムもこのとき考えられたもので、これは実装されました。しかし、UOの海の構造自体にテクニカルな問題があり、さらにサブサーバーの構成として船が境界線を跨いだ時に大変なことになるのがわかりました。キャラクタと船自身のデータ以上のものが通過すると技術的な問題が起こってしまうということで今回は断念しました。 Q. リージョンごとで特色のあるサーバーなどを作る計画はありますか? Chris氏: 現在新しいシャードを増やす予定はありません。サーバーによっては人の少ないものもあるので、もっとシャードを人でいっぱいにしたいし、フェルッカでも遊んでもらいたいというところにフォーカスを当てています。ユーザーが増えてくればそれに対応したシャードも考えていきたいと思っています。
「技術的な問題が多い」という回答は、他のゲームでも開発者から出されるものだが、特に今年8周年を迎えるというUOの場合、基幹システムの古さが、新要素を導入する上でのネックとなることが多いことを感じさせられる。空を飛ぶ要素や、海の要素など、UOのクライアントの「限界」に、開発者自身がジレンマを感じていることも伝わってくる。 UOでは、3Dクライアントで新しいシステムを模索しながらもファンの強い賛同を得られなかったり、さらに新しいUOの姿としてUO2やUXOといった作品の制作を試みながらどちらも開発を中止したという経緯がある。進化を続けるMMORPG業界を横目で見ながら、UOユーザーは現状のデータを継続した、より新しく自由度のあるクライアントシステムを望んでいるのではないか、と思った。 「Ever Quest II」は世界観を前作の500年後に設定し、キャラクタデータがまったく関係しないという形での続編として発売された。UOのユーザーはキャラクタデータやコミュニティーを継続しつつも、新しいシステムにより生まれ変わったUOを望み、開発スタッフもまた、その方向性でのシステムを模索している印象を受けた。 後はEAが、これまで築き上げてきたユーザーという資産をどう活用していくかに気づくだけにも思える。ファンの質問にあった「投資」という意味はまったく新しいクライアントを作るだけのスタッフの注力が欲しい、という内容も含んでいるのではないだろうか。現在のUOはやはり古さと、クライアント的な行き詰まりをどうしても感じる部分がある。MMORPGという革新をもたらしたUOは、データを共有する新作として生まれ変わることで、再び新しい「常識」を生み出すことができるのか、期待したいところである。
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□エレクトロニック・アーツのホームページ (2005年8月26日) [Reported by 勝田哲也]
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