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会場:エレクトロニック・アーツ本社
アメリカでは「Ultima Online: Mondain's Legacy」として先週ワシントンD.Cで行なわれたユーザーを集めたイベントで発表された本作。アメリカでは8月末、日本では9月1日の発売が予定されている。 今回の拡張パックの目玉は「エルフ」の追加である。いままでUOでは人間のキャラクタしか作成できなかったが、ゲームがスタートして7年、初めて種族の異なるキャラクタを作成できるようになるのである。他にも超上級者向けダンジョンの追加など、さまざまな要素が追加される。 今回のカンファレンスではビデオ会議システムを使用し、アメリカから直接開発者がゲームの説明を行ない、オンライン事業部のバイスプレジデント 正田 純二氏が通訳と解説を行なうという形で開催された。 出席した開発スタッフはマーケティングマネージャーのアーロン・コーヘン氏、プロデューサーのジェシカ・ルイス氏、リードデザイナーのマリア・ハミルトン氏、そしてデザイナーのジェニファー・レイン氏の4名である。 ちなみに前回の拡張パック「武刀の天地」でお話をお聞いたプロデューサーのアンソニー・カストロ氏と、リードデザイナーのジョナサン・ルクラフト氏は現在は別のタイトルを手がけているとのこと。ジェシカ氏は以前「シムズオンライン」のプロデューサーを務め、「武刀の天地」からUOに関わっているという。
■ 新種族エルフ、超上級者に向けた新ダンジョンなど盛りだくさんの追加要素 本作は日本のチームとの密接な打ち合わせによって生まれた作品である。さまざまなアイデアの中から日米のユーザーの声を反映してコンセプトが練り上げられていった。ユーザーからの声が大きかったのは、UOのルーツであり伝説的な存在である初期の「ウルティマ」シリーズを元にした世界観への興味であったという。このためスタッフは初期の「ウルティマ」を見直し、制作が進められることになった。 今回導入される「エルフ」は、もともと初期のウルティマに登場していた種族。「ウルティマI」ではこの宝珠を我がものにしようとした邪悪な魔術師モンデインが勇者に倒され、幕を閉じる。このUOの世界の1つ1つの“シャード”は宝珠の中の世界が砕かれ、その破片の中に生まれた世界なのである。エルフはこの宝珠の守護者だった存在。モンデインが持っていた不死の宝珠が砕かれた際に消滅してしまったと思われていたのである。 しかし、彼らの存在は消えていなかった、今回の追加パックにより彼らの存在が明らかになっていくというのが本作の根底に流れるストーリーである。エルフの多くは不死の宝玉の破壊と共にこの世から消えたが、若いエルフ達は人間社会にとけ込み、消滅を免れたエルフの数人は自分たちの世界を作った。また何人かのエルフはこの世界を恨む邪悪な存在になってしまった。 今作でUOは新たな時代を迎えることになる。魔術師モンデインが倒されたことで止められていたように見えた世界の災厄、汚染と腐敗と堕落をもたらす存在がこの世界に現れ始めたのである。エルフはこの災厄に呼応するかのように、調和と自然の体現者としてこの世界に再び出現する。「宝珠の守人」はこのバックストーリーを元にさまざまな要素が盛り込まれる。 ■ UOならではのアレンジが加えられた新種族、エルフ 自然との調和を好み、弓を得意とする知的な種族。彼らはUOの世界に調和をもたらすべく活動する。プレーヤーは新規にこの新しい種族のキャラクタを作成可能になる。開発中のバージョンではペーパードールを見ても「そういわれると耳がとがっているかな?」という程度でキャラクタのモデリングそのものは大きな違和感がないが、肌の色に緑色や青色、灰色といった今までの人間キャラクタにはなかった色が選択可能になっている。 さらに髪型はかなりエキセントリックなものが用意されており、UOならではのエルフ、というイメージはこの髪型にありそうだ。筆者は、「ダークエルフ」的な外見が多いのかな、という感想も持った。肌の色などは日本のユーザーの好みも考慮されて変更が加えられる可能性があるという。 能力的にはナイトサイトという特殊能力で隠れたものを発見しやすかったり、人間に比べ重いものがもてないといった特徴がある。技能に特別なボーナスがあったり、能力値の上限に制限が加わるような形になるのだろうか。 エルフは専用の魔法とスキル体系を持っている。ゲームのルール的にはネクロマンサーや忍者などの新しいスキルシステムが導入された時と同様に、アイコンが記された本を使ったルールで導入されるようだ。興味深いのは「スペルサークル」という概念。複数の人でこのスペルサークルに参加すると強力な魔法を繰り出す事が可能になるという。また、弓が得意な種族として、アイテムを含めた形で弓技能の見直しが計られる。 エルフという存在そのものにも斬新な解釈が加えられている。エルフは新しいキャラクタとして作成できるほか、既存のキャラクタをエルフへと変換できるのだ。現在の人間の中には人間界に混じっていったエルフの血を受け継ぐ人たちがいて、いくつものクエストを経験することでそのキャラクタはエルフである自分に「目覚める」のである。クエストを経てエルフになったキャラクタは、その持っているスキルはそのまま種族が変わる。また、エルフから人間になるクエストも用意されるという。
■ 9つの新ダンジョン、上級者も手こずる新モンスターが登場 調和を求めるエルフと同時に現れる災厄をもたらすモンスター。今回の追加パックでは新しい大陸などは追加されず、既存のマップに新しいダンジョンへの入口が現れる。今回アナウンスされたのは「ミノタウロスの迷宮」、「忍者」、「ネクロマンサー」をテーマにした3つのダンジョンである。中には非常に強力なモンスターがぎっしり待ち受けている。新モンスターはギリシア神話をモチーフとしたものが数多く登場する。また、ダンジョンはさまざまなテーマごとにまったく異なる仕掛けが施されている。 今回のダンジョンで気をつけたいのは「ライン」という概念の導入だ。プレーヤーがある地点に到達すると彼を囲むように複数のモンスターが同時にPOPするのだ。プレーヤーもしくはパーティーは瞬時に敵に取り囲まれるようになる。捜索スキルを使っても彼らは探知できず、対処するためには現れる場所を覚えるしかない。ダンジョンに挑むプレーヤー達はじりじりと慎重に進んでいかなくてはならない。 ダンジョンでは新モンスターだけではなく、既存のモデリングで名前と色が違う強力なモンスターが数多く登場する。また、ふつうのモンスターとサイズが同じだが、ボス並に強いモンスターも登場する。既存のダンジョンにも見直しが行なわれる。 追加されるダンジョンには「本当に攻略できるのか?」というくらい無茶なバランスのものも存在する。もしこのダンジョンを攻略できればさまざまなアイテムが入手できるようだ。今回の追加パックでは、さらなる高みを求める人のための、スタッフからの挑戦状という側面もあるのである。
■ 世界観に密接に関係した数百ものクエスト エルフの登場など、今作のストーリーに密接に関係するクエスト。前述したエルフになるためのクエストは完了するまでにかなり長い時間がかかる、本作の中でも特に困難なものになる。まず、クエストに関係するNPCを探すのも大変であるという。 今作ではエルフが代表する「命の輝き」とモンスター達が生み出す「邪悪」との激しい対立がメインテーマとなっている。クエストはもちろん、すべての要素にこのテーマが貫かれている。クエストは大きく分けて4つのものがある。きめられた対象を倒すもの、NPCをエスコートするもの、アイテムを集めるもの、アイテムを配達するものである。ストーリーに沿った形でこれらのクエストをこなしていく。中には時間制限が設定されているものもある。 「Mondain's Legacy」という原題の通り、邪悪な魔術師モンデインに関係したクエストもたくさん用意されている。モンデインとはどういう存在なのかを掘り下げるストーリーや、彼に関連するアイテムなどが登場するようだ。 クエストはスタート時にすでに数百のものが実装されているが、まださらにいくつものクエストが追加される計画が立てられているという。 ■ 家のセキュアの増加や、みんなでアイテムを集める美術館など建築要素も多彩に 拡張版の発売によって既存の家のセキュアやアイテムのロックダウン数が20%増加されることになった。開発者の言葉によればこれは非常に大変な作業だったが、日本のユーザーの強い要望で実現したとのことだ。 まだ詳細は明らかになっていないが、皆でアイテムを収集して作ることができる図書館や美術館の存在もアナウンスされている。クエストアイテムやダンジョンでのモンスターの所持品など、本作では非常にたくさんの新アイテムの登場が予想されている。これらを集めるのか、それともまったく違うアイテムがあるのかは興味深いところだ。 ムーングロウにある動物園のような非常に凝った建物をプレーヤーの手で造れるようになるのだろうか。このコレクションで強調されているのは協力要素である。プレーヤー達が協力してアイテムを集めていくことで展示品が充実していく。協力したプレーヤーには報酬が支払われるという。 コレクションをするために必要となるのは戦闘技能だけではなく、生産技能が必要なもの、さらには高額の寄付をすることで手に入るアイテムもあるという。さまざまな技能や得意分野を持っているプレーヤーのチームワークでコレクションは増えていく。 建築物となると土地の要素も気になるところだ。今作では新しく家を建てられる土地の追加は行なわれない。美術館や図書館はどんな場所に設置できるようになるのだろうか。協力要素から考えると、公共の場所をみんなで充実させていくことも考えられる。詳細が気になるところである。
■開発者インタビュー「世界観や2Dグラフィックスへの注力など原点回帰を目指す」 編: 前回は日本要素という感じでUOの世界観そのものからは少し離れた概念を導入しましたが、今回はエルフ、そしてモンデインという初期の「ウルティマ」に見られる要素が導入されます。これは「原点回帰」を狙ったということなんでしょうか? マリア氏: その通りです、オリジナルストーリーに戻ろうと。初期のウルティマを掘り返すことでエルフという存在に焦点を絞りました。ちなみにウルティマには他にホビットやドワーフといった存在も出てきますが、今回はそれは見送っています。開発期間を考えて1つの種族に絞り、日本の意見も取り入れてエルフが追加されることになったのです。 編: UOに登場するエルフはD&Dなどに登場するエルフとどういった部分で異なっているのでしょうか? マリア氏: D&Dの設定に似ていますが、UOのエルフはより知的で細身で、かつては不死の力を持っていました。ヘアスタイルに独特なものがあるので、見てもらいたいですね。彼らは魔法を使いこなす種族で、人間とは違ったルールで社会生活を送っています。 UOの中で彼らは独自の社会を築いています。彼らは決して受動的な存在ではなく、戦士や魔術師などさまざまな職業に就き、貨幣を使わず、物々交換による経済システムを持っています。エルフの社会のキーワードは「共同生活」です。複数の術者が協力して呪文を使う「スペルサークル」彼らを象徴するシステムです。エルフ達は力を合わせて大きな目的へ進んでいく民なのです。 この世界のエルフは宝珠の守護者であり、宝珠がモンデインのものになり彼が勇者に倒され宝珠が砕け散ったときにその多くは姿を消してしまいました。生き残ったわずかなエルフ達は「ハートウッド」という街を作り、ブリタニアとは接触を断って暮らしています。 それとは別に年若いエルフ達は人間と生活を共にし、その血を混じらせていきました。クエストを進めることで己の内なるエルフの血に目覚めるプレーヤーも出現するのです。クエストをクリアしていくことでハートウッドへの道も開かれるかもしれません。 ジェシカ氏: UOのプレーヤーにとってこの世界に追加される存在であるエルフですが、かれらは発売前のイベントでその姿を現し始めます。そのイベントによって彼らがこの世界にいかにして現れるかという謎を解明し、彼らの訪問を体験できるようになっています。 編: 今回の追加パックではグラフィックスをブラッシュアップするといった拡張は行なわれないのでしょうか? ジェシカ氏: 現在私達がエネルギーを向けているのは、「2Dのグラフィックスをきれいにしよう」ということです。テクノロジーも含めて3Dで表現されていて、2Dでされていない要素などさまざまな点で研究を行なっています。日本だけではなく、アメリカでも2Dグラフィックスの人気が非常に高く、今回の追加パックには含まれませんが、2Dグラフィックを充実させる計画が進められています。 もちろん、3Dの要素を切り捨てるということではありません。現在多くのプレーヤーが2Dグラフィックスを気に入っているという意見をいただいているので、この部分を見直そうといしているのです。 編: 素朴な質問なのですが、初代「ウルティマ」はリチャード・ギャリオット氏個人の創作物ですよね。今回原点回帰として初代「ウルティマ」の要素を取り入れるにあたって、彼に相談するということはあったのでしょうか? アーロン氏: 「ウルティマ」の権利としてはEAが持っていますし。スタッフの中には彼と親密な人もいますが、今彼は別な会社で別のゲームを作っていますし、非公式な場で相談をしているということもありませんね(笑) 編: 最後に、「宝珠の守人」でこれは特に見てもらいたい、というところはどこでしょうか? マリア氏: もちろん全部の要素を見てもらいたいのですが、私が特に気に入ってるのはダンジョンですね。今までのダンジョンは洞窟やお城といったイメージでしたが、今回は巨大な木の中を舞台にしたり、沼地や草地で区切られたダンジョンがあります。新しい趣向のダンジョンがありますので、ここは是非見てもらいたいですね。 編: ありがとうございました。 (C) 2005 Electronic Arts Inc. Electronic Arts, EA, Ultima and the UO logo are trademarks or registered trademarks of Electronic Arts Inc. in the U.S. and/or other countries. All rights reserved.
□エレクトロニック・アーツのホームページ (2005年6月7日) [Reported by 勝田哲也]
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