【Watch記事検索】
最新ニュース
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【11月27日】
【11月26日】
「Def Jam Fight for NY」
~ 発売記念スペシャルインタビュー ~




和洋折衷「Def Jam Fight for NY」

グラフィックは洋ゲーテイストだが、中身は純日本アキ風味
 2月24日発売された、PS2用格闘アクション「Def Jam Fight for NY」。ヒップホップ・カルチャーを背景にした本作は、先行発売された北米で高い評価を獲得。そのせいか、筆者のまわりでは「あれ洋ゲー(外国産ゲームの俗称)でしょ? そういうの苦手だから」といった意見を少なからず耳にした。

 だが、それは大いなる誤解だったりする。なぜなら、本作のアクションパートを制作しているのは、日本のゲームメーカー「株式会社アキ」なのだ。アキといえば、エレクトロニック・アーツ「Def Jam FIGHT for NY」、「Def Jam VENDETTA」のほか、アスミックエース「バーチャルプロレスリングシリーズ」、バンダイ「キン肉マンジェネレーションズ」などが代表作。プロレスゲームマニアのあいだではつとに有名なメーカーだが、そっち系にうとい人には、いまいち浸透度が薄いのかもいれない。

 今回、GAME Watchでは本作のディレクションを担当された矢野要二氏にお会いする機会を頂戴した。レビューを担当した筆者ゆえ「これを逃す手はない!」ということで、ゲームにまつわるさまざまな質問をぶつけてみた。すでにゲームをプレイした人も、そうでない人も、それぞれ目を通していただければ幸いだ。


E3で大好評 キーワードは“脱プロレスゲーム”

矢野要二氏:ゲーム企画部アシスタントディレクター。今回はプロレスではなく“ストリートファイト”にとことんこだわるナイスガイ
-- 一昨年のE3では大好評でしたが……その点、制作にあたってプレッシャーになったのでは?

矢野: 「ベスト・ファイティング・ゲーム賞」をいただきまして、非常にありがたいなぁと。そのぶんプレッシャーが……かなり(笑)

-- 外よりも社内のほうがきつかったのでは? 受賞したことで社内的な期待感もグッと上がり「こ、これはいいものを作らなくては!!」とか。

矢野: そうですね。前作「Def Jam VENDETTA」から“プロレス”ではなく“格闘”ゲームを作ろう……“脱プロレスゲーム”ということになったんです。格闘ゲームとして、ストリートファイトや対戦が楽しめるゲームにしようというのが、クライアントであるエレクトロニック・アーツ(以後EA)さんと弊社(アキ)の共通認識でした。それが実現できて「プロレスゲーム」ではなく「格闘ゲーム」として評価していただけたのは嬉しかったですね。社内では、これがどうってのはないんですけど。今までプロレスゲームを作ってきて、いざ格闘ゲームとなったときに……プロレスだけではなく総合格闘技も好きなスタッフが揃っておりますので、比較的(開発の)移行には苦労してないんですね。ただ、“突き詰めた格闘ゲーム”として、どうするかはEAさんと綿密に打ち合わせをしました。

-- 突き詰めた、と申しますと?

矢野: たとえば3D一軸格闘ゲーム(いわゆる“既存の格闘対戦ゲーム”)にするのか、「PRIDE」、「UFC」のように総合格闘技にするのか。それとも違うところにいくのか。そのあたり、EAさんと打ち合わせで「違う方向でいきたい」と。ストリートファイトということで、それらとは一線を画したゲーム。総合格闘ゲームのように細かすぎて色々と面倒くさいものはやめて、かといって既存の格闘ゲームのように単純に打撃を与えて体力がゼロ=KOではなく“特定のやり方で勝てる!”っていうゲームにしよう。だけど、パンチ/キックをちゃんと分けたり、そのレスポンスを良くするといった部分は、既存の格闘ゲームにならって構築したいと。その辺りをまとめあげるのに苦労しました。

-- 開発期間はどれくらいかかったのですか?

矢野: 「Def Jam VENDETTA」が終わった瞬間「もう、次いくよ」という話がきて(笑) クライアントのEAカナダさんが用意をしていたんです。こういうコンセプトで、ストリートファイトがやりたい、作りたいということで(続編をイメージした)ムービーが来ました。で、EAカナダさんの方でユーザーさんをスタジオに呼んで「こういうのだったら、『Def Jam』のゲームとしてどう?」という話をしたら「これだったら絶対買う!」、「これこそボクらが求めていた『Def Jam』のゲームだ!」いうことになったそうです。EAカナダさんからの「これを実現できますか?」というリクエストに対して、弊社は「できますよ!」と。そこから始まって1年。開発を1年でやろうという話になったんですけど、ボリュームがハンパなくふくらんでしまって(笑)、お互いに1年でこのボリュームを詰め込むのは絶対に無理だという話になって、その分いいものを作ろうということで1年半かかってしまいましたが、延びた分だけいいゲームができたと思います。

-- 前作は“リング”が戦いの中心でしたが、今回ストリートファイトになったことで制作に対するアプローチは変わりましたか?

矢野: ひとつはグラフィック面ですね。画面を見ていただければおわかりいただけると思いますが、前作とは全然別物です。単純にポリゴン数が違うのもありますけど、エフェクト表現も変わっています。EAさんのライブラリが非常に強力なので、グラフィックは圧倒的にパワーアップしています。じゃぁ、それと比較して「ゲームの中身はどうなの?」ってなったときに、今回はリングが極力ない形で、あっても、プロレスのリングではなく“ボクシングのリング”というイメージ。プロレスゲームとしてやりたい人は、そこでやればプロレスっぽいファイトもできるけど、ほかにストリートファイトなどを楽しみたい人は違うステージを使えば、両方の楽しみ方ができて“より美味しい”んじゃないかなと。で、今までは全てのステージにリングがあって、その周囲に柵があったから、いってみれば楽だったんですね。

-- その点、前作とはまったく違いますね。

矢野: 今までは柵があっても壊れない、ただ寄りかからせたり、ガツンとぶつけたり、ゲームとしてとしてそれほど役に立たない程度のものでしたが、でも今回は違います。柵なら壊れたり、観客なら触れると殴ってくるし、突き飛ばしてきたり、羽交い絞めにしてくるといった“インタラクティブ性”を持たせなければならない。観客も壁としてだけでなはく、バトルシステムとして影響を与えるようなものでなければダメ。そこが難しかったところではありますけど、他の格闘ゲームと一線を画すウリにもなってます。

-- 実際ゲームをプレイすると、キャラ単体で戦うよりも“観客”を使ったほうが有利になります。これは意図的な調整ですか?

矢野: 意図的な調整です。ただの殴り合いでもいいけど、環境をうまく利用すると、より効率的、効果的な勝ち方ができる。それをアピールしたいということで、ダメージ量も調整しています。構造物にぶつけて寄りかかったところに組むというのは、それほど操作の敷居が高いわけではないと思うんですけど、“観客を使う”というのは、上手くやらなければいけない。そういうところをきちんとクリアできた人には、それだけのボーナスを与えなければいけないってことですね。

-- 今までプロレスゲーム的なアプローチで作られてきたわけですが、これまでの“人間対人間”の戦いにプラスアルファ要素が入ることに抵抗はありませんでしたか? もっと人間同士の戦いで決着をつけようよ、みたいな……

矢野: それはないです(キッパリ)。人間対人間だけで終わってしまうと、既存の格闘ゲームとなんの変わりもないので。物を利用した特殊な攻撃がある。その点はしっかり作りこんであるし、表現もきちんとしてる。このステージには何があって、どれが使えるってことの面白さですよね。使う・探す楽しみとか、そちらを優先したい。それに関して誰か文句があるっていうのは、全然なかったですね。使えるんだから、ガンガン使おうぜ! って。

周囲の観客は、単なるヤジウマじゃない。うまく利用すれば味方になるが、もちろん敵にもなる
-- CPUが観客や背景を積極的に使ってくるのも、意図的?

矢野: 意図的にやってます。“環境攻撃”って呼んでるんですけど、ストーリーモードのなかにあるチュートリアルでは説明してくれない。それを“ゲームプレイの中で教える”ということです。「こういった攻撃があるんですよ。これが決まるとダメージがでかいですよ」と。具体的な出し方はCPUがやってくるんで、チュートリアルにはないんだけど“バトル中にチュートリアル”みたいな感じ。ストーリーモード、特に最初の3戦くらい(FOUNDATIONステージ)は意図的にやる(そちらへ誘う)ように思考を組んであります。

-- 環境攻撃ですが、実際ゲームに盛り込めなかった幻の技みたいなものはありますか?

矢野: アイデアで止まったものも結構あるんですが。あとは、入れてみたんだけど「ステージの構造が変更になったから入れられなくなった」とか。でも……絵コンテをあげていただいて、作ってみたけどボツになった、入れられなかったというのは1~2個程度ですね。企画段階で「あ~、これはもう無理」というのは無かった。ただ、作るんだけど、システム的に難しくて見送られたというのはありましたね。それはEAさんから許可を得て「外そう」とか、ステージ構造をちょっと変更する程度。全体的に考えても、ボツになったのは作ったうちで1割あるかないか、ですね。

-- そうしたボツネタで「これは入れたかった」というものはありますか?

矢野: 個人的にはですねぇ……バー(BAR)のカウンターテーブルってありますよね。長いやつ。映画でよくあると思うんですけど、あそこをザーッと滑らせて、グラスとかビンがガチャガチャと割れていく。前作を作ったあと、弊社とEAさんでお互いに「これやりたい」と言ってたんですけど、技術的なハードルが高くて。やってやれないことはなかったと思うんですけど、ステージの構造が変更されたこともあって見送られました。

-- 製品にもグラスやビンが割れるシーンはありますが、あまり数が多いと……。

矢野: それをどうするのかっていうのが問題なんです。たとえば、ビンは一度落とせばなくなっちゃう。あとは、カウンターテーブルは長いから、ひとつのモーションでは表現できない。それを組み合わせなければならないし、やるにしてもどこからどこまで、方向も右から左とは限らない。カウンターの端でやれば滑る余地がないとか、そのあたりを判断させるのが難しい。ビンにしても、どの場所に置くかで、どれが倒れたり、倒れないとか。ただ、できないわけではないんで。実際には、なんていうのかな……スケジュールの問題ですね(笑)。

-- 手間暇かければできた?

矢野: 今の環境攻撃にプラスして、あれがあれば「おーっ! 何これ滑っちゃってるよ!!」と驚いてもらえたんじゃないかと。あれができたら、より映画っぽいというか。それができたら、より映画っぽいというか。今作が「ギャング映画」をイメージしたような作りなので、より雰囲気が増すというのはあります。たとえば、ゲームの中で地下鉄の線路に落として轢かれるシーンがありますが、実際の映画で似たようなシチュエーションがあるんですよ。こういうのってアンダーグラウンドとか、ストリートファイトとか、ダーティなイメージがすごく強いよねってことで、EAさんからリクエストをいただいて。「どうやったら実現できるかな」って。あれは衝撃が強かったみたいですね(笑)

-- 衝撃シーンですが「もっと盛り込みたかった」なんてことは?

矢野: 盛り込み方としては……地下鉄のほかにふたつ、ストーリーの終盤で火に囲まれるステージがあるんですが、そこで一定の条件を満たせば、割と残虐というか「キッツイなー」っていう勝ち方ができる。最後の戦いも、窓から落として勝つという決着方法がある。バトルモードからも「ウィンドウマッチ」とか「サブウェイマッチ」を選べばプレイできますので「盛り込みが少なかった」というイメージではないですね。逆に「これだけのことをやれましたよ」という気持ちのほうが強い。

-- それで3人死んでる、と(笑)

矢野: 生死は不明なんです(笑)。特にラストのCrowに関しては、何ともいえません。Stickyに関しても、特定の勝ち方じゃなければ……地下鉄もそうですけど、ただ倒れただけっていうKOもありますし。まぁ、死んでると思うか生きていると思うかは、プレーヤーさんの勝ち方と感覚次第ですね。

-- 残虐表現ですが「どの程度まで許されるか」みたいな制限は?

矢野: 「この程度までだろう」みたいなものはありますよね。流血とかアザの表現は、あれ以上やっても意味がないというか。それだと造形が崩れちゃうことになると思いますし。あそこまでやれば、実際見た目がボコボコになってるじゃん、ということですね。あと、基本的に「死ぬ」っていうことを直接表現するのはアウトなんです。これはEAさん側で明確な基準が設けられていますので、そこは守る。たとえば、地下鉄で轢かれるシーンですけど、はねられてグチャグチャになるようなところは表現されない。

-- 「たぶん轢かれてる」にする?

矢野: 「アー!」って叫びながら上を通過されるから、たぶん轢かれてる。でも、轢かれたキャラの映像が出るわけじゃない。炎のステージも、特殊な勝ち方をすると天井の梁(はり)が落ちてきて下敷きになる……ように見えるんだけど、下敷きになった瞬間が映ってるわけじゃないし、潰れたキャラが見られるわけじゃない。最終ボスのCrowにしても、窓から落ちるけど下で大の字になってるだけで、死んでるかどうかは不明。もしかしたら、落ちたけど、もしかしたら……ってことがあるかもしれない。そうしたところで表現には気を遣ってます。


お国柄を反映したレーティング基準

北米は日本よりも暴力表現に対する年齢制限が厳しいという
-- これ、日本だと15禁(CEROレーティング)なんですね。てっきり18禁かと……

矢野: 北米ではMature(ESRB:Entertainment Software Rating Boardによるレーティング。この場合は17歳以上)ですね。EA初Mature(笑)。

-- 北米と日本で、同じバージョンなんですか?

矢野: まったく同じです。倫理規定の違いというか。北米のマーケットでは、流血表現があると絶対にMatureなんです。

-- 赤いのが見えただけで即アウト?

矢野: このゲームは流血する、と。同じEAさんのゲームでも、たとえば「銃で撃たれるんだけど血が出ない」ゲームにはTeen(13歳以上)のレーティングが与えられる。

-- 実際やってることは「銃で撃つ」ほうがよほど直接的なんですけどねぇ。

矢野: もう、死んじゃってますからね(笑)。

-- ある意味「痛みが伝わっている」ということで、成功していると思います。

矢野: そうですね。より“リアル”に。とにかく、バトルシステムでストリートファイトを表現できた。あと、殴られたんだから当然アザもできるし血も出るよねっていうことになるんですが、それに関しては、EAさんの倫理規定というか、今までMatureタイトルを出したことがなくて、全部、Everyone(6歳以上)かTeenで抑えてきた。「じゃぁ今回どうする?」ってことで、初めてMatureタイトルの決断をしていただいて。血も出そう、血痕もステージに残るようにしよう、と。そのあたりも含めて“リアル”を追求しています。それがないと、どんなに服装が変えられますとか突き詰めてがんばっても、細かいところのリアルさが足りないことで、ゲーム全体の質が落ちかねない。それはEAさんのプライドとして許されないし、弊社としても開発するうえで大きなチャレンジになるし、ゲームがよくなって技術も向上する。そういった意味では、大きな決断をしていただいたなぁと思います。まぁ、日本で15禁なのは、よくわからないんですけど(笑)

-- まだ“ブレ”があるみたいですね。

矢野: まだ(CEROが)できたばかりで、規定が明確じゃないんでしょうね。日本はどちらかというと“エロ”に厳しいんですよ。アメリカは“暴力”に厳しい。そのあたりの違いなのかな、と。

-- 先ほど「血痕が残る」という話が出ましたが、そういった表現で技術的に難しかった部分はありますか?

矢野: あー、もう今いった「血痕が残る」が難しかったですね。血が出た座標を正確に特定して、ずっと残していなければならない。あとは“破壊表現”が、やっぱり難しいですね。基本的にモデルの差し替えって形になるんですけど、じゃぁそれが今どういう段階で、っていうのを覚えておかなきゃならない。環境攻撃の出し方は1種類(寄りかからせて組むだけ)じゃないので、それによって技も違う。で、技は基本的にランダムで出るから、「今は何回目だから」という管理を行わなければならないとか。色々大変でした。


ヒップホップ・カルチャーと市場性 ~日米の違い~

ゲーム中に登場するファッションアイテムの豊富さんはトコトン驚かされる
-- 本作には多彩なヒップホップファッションが登場しますが、だれか特定のデザイナーさんにコーディネイトなどを委ねられたのでしょうか

矢野: すべて実在のストリートファッション・ブランドで、彼らとEAカナダさんのグラフィックデザイナーさんとで協力して、「コレを入れたい!」というものを選定していただいて。あと、ブランドさんとしても「発売前の新製品をプッシュしたいから、これを入れて欲しい」といったこともあったと聞いてます。それを弊社が作成・チェックして……といった形ですね。ただ、あまりにもおかしいものは入れないようにしました。まぁ、中には“道着”とかありますけど(笑)。特殊なのは、カンフーシャツやシューズ……ボクサーパンツがある程度で、これは格闘ゲームっぽくしたい人向け。極力ストリートファッションを“COOL”に決めるのがコンセプト。

-- あまりにも数が膨大なので、てっきり専門の人に依頼したのかと思いました。

矢野: これに関しては、実際の製品が登場して、各ブランドに専門家の方が当然いらっしゃるわけですから、全てお任せしていました。ブランドの名前がついてないものに関しては、恐らく新規にデザインされているとは思うんですけど。あとはもう(北米では)ヒップホップのストリートファッションが当たり前になってますから。

-- そういったファッションを身に付ける登場キャラクタですが、本作には「Def Jam」レーベル所属アーティストが全員……

矢野: 今回は「Def Jam」レーベルにこだわらず、「Def Jam」さんが窓口になって声をかけていただいて。大物では「SNOOP DOGG」であったりとか。

-- そうやって声をかけたときは、やはり「俺、出たい出たい!!」みたいなノリなんでしょうか?

矢野: そうですね。向こうのヒップホップ・アーティストさんって、ゲーム好きな方が非常に多いんですよね。たとえば有名なのは「Def Jam」レーベルのREDMANとMETHOD MANで、以前にも北米で自分たちのキャラクタゲームを発売していますし、「やるんだったら俺も参加しちゃうぜ」っていう感じで。Blazin'技も、「俺、こんなの出してぇなぁ」といったアイデアをいただいたりとか(笑)。

-- アーティストさん側からのインプットは多いのでしょうか?

矢野: ありますね! 要望は非常にあります。作ったキャラモデルが似ているかどうかの承認はもちろん、要望を聞いてファイトスタイルを決めたりとか、Blazin'技を作ったりとか。

-- そうした要望が、ゲームのシステム部分など“根っこ”に関わってくることはあるのでしょうか?

矢野: そこまではないです。とにかく“COOLな格闘ゲームがやりたい”ということで。それをアーティストさんに打診したところ「それいいよね」ってことで参加していただいてます。アーティストさんはゲーム好きですけど、実際のゲーム制作を知っているわけではないので、「あとはもう任せたから、できたら見せて」みたいな(笑)。

-- 役柄は、どうなんでしょう。「俺、悪役なんてヤだよ!」とか。

矢野: あ~、それはいたんじゃないかなぁ、と思いますけどね。今回のストーリーモードのコンセプトは「ギャングものの映画を見ているようなストーリーを楽しめる」というのがあるので、本当の意味で“配役”がある。そこに関しては、ちゃんとOKをもらって。たとえば、DANNY TREJOっていう俳優さんがいるんですけど、この方はストーリー中に地下鉄に轢かれ (可能性がある) んですけど、それについても「俺はアクターだから、与えられれば演じるし」という返事をいただいて。「俺は絶対正義じゃないとヤダ」というダダっこみたいなのはないですよ。むしろ、それよりはヒップホップやストリートのアンダーグラウンドな雰囲気であるとか、格闘ゲームとしての良さを見たい、ということですね。

-- ストーリーモードは基本的に一本道ですが、分岐するスタイルは検討されなかった?

矢野: ストーリーモードに関しては、実はEAカナダさんの管轄なので答えにくいんですが……。前作で、「ストーリーが一本道」というのが評価を下げていた部分があるんです。「そうじゃないものにしたい」というのはEAカナダさんでも言ってたんですけど。弊社としてもそれはあったんですが、そうじゃなくても1年半かかってるのに、分岐を作ってこれ以上(スケジュールが延びるのは)っていうのが一番大きいところですね。前作と比べてもファイト数が増えてますし、プレイ時間も長いですしね。

-- そのあたり、もう少しリピート性を高めた作りにしたかった?

矢野: そうですね。前作……今作もそうなんですけど、個人的には“負けたら負けたなりに進んで欲しかった”というのが、正直あります。ストーリーが一本道 (終着点が同じ) でも、別にいいと思うんですよ。ただ、たとえばゲーム中にトーナメントが入っているんですけど、「負けたら負けたでトーナメントは終わり」にして、そのまま先に進んで欲しかった。拠点を守りにいくシーンでも、負けたら負けたでそれなりに、っていうのはあります。勝てなきゃダメなんじゃなくて、負けても先に進む。それでストーリーを進めていくと、結果的に(隠し要素の)一部がアンロックできなくなる。「俺ストーリークリアしたのに、全然解除できてないじゃん!!」みたいな。そうして2周目、3周目のモチベーションを上げるというやりかたはあったと思うんですけど。ただ、アメリカには“レンタル”という市場があって……

-- それを前提に作らざるをえない?

矢野: そういうゲームの進め方を採用すると、当然プレイ時間が短くなりますよね。プレイ時間が短くてクリアできちゃうと、レンタルで終わっちゃうんです。そういうのを避けるために、勝たなきゃ先に進めないけど、結果的にプレイ時間が長くなるからレンタル期間内では終わらない。突き詰めたクリエイトプレーヤー機能も入ってますので「これをやりたいから手元に置いておきたい、だから買う」というのをマーケティング的に狙ってます。今後……もし次回作があれば、の話ですけど。こういったところも協議していきたいなぁと思います。

-- 市場の違いが、大きく影響しているんですね。

矢野: 日本は、そういうところがないですから。アメリカはレンタルシステムが確立されてて、CDもそうなんですけど、レンタルの売上に応じたパーセンテージでメーカー側にも収益がある。ただ、売上的には落ちてしまうので……たとえば「100万本!」と言われれば驚くけど、その内訳が問題で、結果的に利益率も変わってくる。北米は、「とにかく凄く作りこんであって、プレイ時間が長い」これ必須。そういう文化の違いを知っていただけると嬉しいなぁ、と。

-- 日本の一般ユーザーは、そこまで知らない人が大半のように思われます。

矢野: そうですね。自分もEAさんと一緒に北米市場向けの作品をやるまでは、レンタル市場が確立されていることを知らなかったですし。北米はレンタル市場を許容して、なおかつ収益があがるようにシステムが作られているので、もし日本が将来そうなっていくとしたら、ゲームの作り方も変わっていくんじゃないかな……と、あくまでも個人的に(笑) 思いますけど。

-- そうした違いを、ローカライズする際に“日本向けに作り変えてしまう”といった手法は検討されたのでしょうか?

矢野: 今回は、してないですね。あくまでも「Def Jam」の中にあるヒップホップ・アンダーグラウンドのカルチャーを、日本の格闘ゲームファンに伝えたい、満喫していただきたいということで。ロゴ、パッケージも、あえてそのままにして……手抜きローカライズじゃないですよ(笑)。

-- そのあたり、前作は北米版から一部キャラクタが削除されて、そのぶん日本のアーティストが追加されましたが?

矢野: それ、物凄く叩かれたんですよ。弊社はバトル部分やキャラモデルなどを作ってますけど、ストーリーはEAカナダさんが作られているんです。単純にキャラを増やすだけならできるけど、そうするとストーリーモードが変わってしまう。EAカナダさんの作業が増えてしまうので、そういったところを考えると厳しい。だから、前作ではキャラを入れ替えたと。モデルを替えるだけなんで作業としてはキツくないけど、それをやったことによって物凄いブーイングを浴びちゃったわけですよね(苦笑)。それがあったから、余計な作業はしないことにしました。

-- そうなると、ゲームに登場する日本人はひとりだけですねぇ。

矢野: 「マサ」ですね。ボイスはアキのスタッフで「クレイジーペン・ハヤマ」が担当してます (もちろん日本人です) 。

-- ドスのきいた声ですね。「日本人なめんなよコラァ!」とかいいますし。

矢野: いいますね(笑)。実は前作から同じスタッフが担当してます。

-- 念のため……外見とか、オリジナルキャラクタですよね?

矢野: オリジナルです。実物がいたら応援したい(笑)。特殊な黒いモデル“SUSPECT”を抜くと、総登場数が69体。そのうち44体が実在の人物で、残りの25体がオリジナル。半分以上が実在の人物ですね。オリジナルに関しては、前作に登場したキャラもいますし、新規に作られたキャラもいます。

-- 前作にいたキャラクタは、全員登場する?

矢野: 削除されたキャラクタもいます。たとえば、道化師っぽいキャラクタの「CHUKKLEZ(チャクルズ)」。これはアンダーグラウンドの雰囲気に相応しくないというか。前作はプロレス的なゲームだったので「道化師っぽいキャラがいてもいいだろう」ということで笑いの要素として入れたんですが、今作はそうした要素は排除して“リアルな雰囲気”を追求していこうと。

-- あくまでもシリアスに、と。

矢野: そうですね。中は本当にマジメでシリアスに作ってます。

-- ……女性キャラクタも?

矢野: そうですよ!? もちろんです!(笑)。女性キャラクタは、たとえばLIL' KIMさん、SHAWNNAさんとかは、実在する女性アーティストです。CARMEN ELECTRAさんは女優で……色々とエロイほうのニュースでにぎわせておりますが。女性キャラクタに関しては、恐らく実在しないキャラクタって、ほぼいないと思います。ボイスをあてている方とキャラクタの名前が一緒で、モデルがちょっと違うとかっていうのはありますけど。せいぜい「ガールフレンドゲットイベント」で負けると出てくるブッサイクなやつくらい。仲間に「オイオイ、オマエ女なら何でもいいのかよ」って言われてしょぼーんってなる(笑)。

-- ゲームに登場する女性キャラクタのヒップホップファッションは、男とずいぶん違います。実際、ああいうものなんでしょうか?

矢野: 違いますねぇ。女性のファッションは、やはりセクシーさが一番だと思うんで。自分は男なんで、女性の方はそんなに詳しくないんですけど(笑)。クラブとかに行っても、肌の露出が多ければいいというものではないんですけど、セクシーかつ可愛く見えるようなファッションをされている方が多い。登場される実在アーティストさんからも「私いつもこんな格好してるし、こんなのがいい」ってリクエストが、当然あると思うんですね。KIMORA LEEさんなんて、着物っぽい衣装で登場します。あれも、本来のヒップホップ、ストリートファッションではないんですが、彼女なりのアピールというか“自己演出”ですよね。「他の人とは違うのよ、こういうセンスを持ってるのよ」っていうことだと思います。

-- 私、実はあまりヒップホップに詳しくなくて……このあたり、とても興味深いですね。

矢野: 私もそうですよ(笑)。

-- え~! じゃぁ、元々好きな方ばかりじゃなくて、改めて勉強されたりとか……

矢野: そうですね。元々好きだったスタッフもいますけど。自分なんかは前作から開発に携わってますけど、まず洋楽は「英語が聞き取れないからわからない」って感じだった(笑)。洋楽って時点で敬遠しちゃってたんですよね。でも、言葉はわからなくても楽曲としての良さは際立ってるんで、そういう部分から聴くようになりました。今社内についてるFMなんかは、常に洋楽やヒップホップがかかるようになりました。ファッションについても、そうですよね。ファッションに興味がなかったわけじゃないですけど、最初はこういう格好なんてしてなかったんですよ。ジーンズも1~2本しかもってなかったのが、今はストリート系だったり。そういうところから、勉強も含めてストリートカルチャーを吸収してみよう、と。今まで自分になかった“引出し”が増えたのは、この作品に関わっててよかったなぁと思うところですね。

-- 作りながら、作品の雰囲気に少しずつ感化されていく?

矢野: それはありますね。中身を少しずつでも理解していかないと。やっぱり、単純にバトルシステムだけ作って、ストリートファイトができればそれでいい、というものではないと思うんです。その中にも、自分の持っているイメージというか、そういうものが漂ってくると思うんです。それを表現するのに、自分があまりにも無知ではしょうがない、と。そういったところで、企画職として知識の幅を広げたいなぁというのがあります。個人的なことでアレですけど、今後の企画に対して表現の幅も広がっていくと思いますし。ですから、非常に実のあるプロジェクトに参加できたなぁ、と(笑)。

-- 日本ではヒップホップ=ヤンキーっぽいイメージがありますが、北米では日常生活になってるというか。そういった認識レベルの違いは大きいですからね。

矢野: 音楽のメインストリームも、北米ではヒップホップやストリートカルチャーが主流。それを抜きにしては語れないというか“大衆化”しちゃってるんですね。日本と違って一部の人がストリートファッションが好きだってことじゃなく、みんなそれが“当たり前”になってて、好きとか嫌いとかって話じゃない。そういうところで、日本とは感覚が全然違うと思うんです。あとは、先ほどお話しした市場のシステムもありますし、ゲームそのものに対する嗜好も全然違う。北米のユーザーさんって、ハイスコアを競うとか、意外とチマチマしたことが好きなんです。データ大好き。

-- そういう傾向はあるみたいですね。

矢野: あとはシステマチックというか、理論理屈でできるものが好きらしい。そういうところも含めて作りましたし、そういうところを味わっていただけたらなぁ、というのはあります。

-- 日本の格闘ゲームファンのプレイスタイルは“相手を倒すこと”に主眼が置かれますが、本作には細かいハイスコアとかランキングデータがたくさん出てきますよね。

矢野: そういうことを“やり込んでいく”っていうのが、凄く好きな国民性というか、そういった嗜好が強いみたいなんですよ。

-- プレイスタイルといえば、本作は4人同時プレイが可能です。作り手側としては「4人でワイワイやってほしい」という感じですか?

矢野: う~ん、個人的には、やっぱり1対1。ただ、シチュエーションによると思うんですよ。友だちがいっぱい集まったときは「4人でやろうぜ」ってパーティゲームのノリ。ふたりのときは1対1を突き詰めてやろうよ、と。もしくはCPUをふたりでボコるとか、疑似タッグマッチとか、色々な楽しみ方ができると思います。

-- 「ふたりで突き詰めて」という話が出ましたが、対戦システムを作るうえで苦労した部分はありますか?

矢野: まずは「脱プロレスゲーム」ということで、パンチとキックを分けるところから始まる戦略性の違いですね。あとは、打撃コンボを出しながら“組む”こともできるので、そこを組み上げていくのが大変だった。まぁでも、特別大きな苦労は……ないのかなぁ?

-- 個別に技のエディットができないぶん、バランス調整や差別化という面では?

矢野: パラメータに関しては“ファイトスタイル”である程度決まっている部分があります。あとはキャラがアーティストなのか、そうじゃないのか。ストーリーでどれくらい重要度があるのか。さらには「ファイトスタイルが同じなら中身はみんな一緒じゃん」というのはマズイので、同じスタイルだけどパンチ力の強弱などを調整をして……戦っていく中でもキャラクタの違いを打ち出していく。そこは苦労した点ではありますね。

-- 選べるファイトスタイルが5種類というのは、最初から決まっていたんですか?

矢野: そうです。ストリートファイター、キックボクサー、レスリング、マーシャルアーツ、サブミッション、これについてはもう決まってました。ストリートファイターに関しては、最初ボクサーみたいなイメージがあったんですよ。純粋なボクシングじゃなくて、ジムに所属していたけど、今はドロップアウトした“ボクサーくずれ”。言い方だけなんですけどね。

ファイトスタイルは組み合わせがキモ
-- それ以外に「これは入れたかった!」というスタイルはありますか?

矢野: そうでうねぇ。今は武術が「マーシャルアーツ」で一緒くたになってますけど、中国拳法とか、合気道とか……。ただ、それを細分化すると“5大スタイル”を掲げる意味がなくて、ただ組み合わせの数が膨大になるだけでゲームバランスとしてはどうなの? って考えると、今のところ5つくらいが適当かと思います。でも、プレーヤーにしてみれば「俺はカポエラが使いたい」、「俺は蟷螂拳」、「俺は空手」といった要望が、当然あると思うんですよね。もし今後があるとすれば、汲んであげたい部分かなぁとは思います。

-- ストーリーモードでファイトスタイルを組み合わせれば、バリエーションが増えますけど……気づきにくいですよね。

矢野: そうですね。組み合わせが途中で行なわれるようになるので、そのあたり組み合わせを把握していくのが難しいですね。あとは、同じマーシャルアーツでカポエラや合気道があったりするけども、それはストーリーをやっていく中で、ある程度“どんな順番で組み合わせていくか”で決まってきます。

-- ファイトスタイルですが、ぶっちゃけ選んだもので難易度が違いますよね? 勝ちやすいものがある一方で、厳しいものもある。

矢野: そうですね。ファイトスタイルを分けたのは、ひとつは“出す技が違う”とか、打撃系と組み技系のスタイルの違いが明確になり、さらにはバトルの根本的な部分、つまり「相手をKOする条件」がファイトスタイルごとに違ってくる。それによって、多少勝ちやすいとか、勝ちにくいとかっていうのはある。特にストリートファイターは、「殴って良し、組んで良し」なんで、初心者が扱うにはいいスタイルだと思います。ただ、それだけで勝てるってわけでもないし、ファイトスタイルを組み合わせることで違った楽しみ方が生まれる。自分が好きなのは、キックボクサーをメインにして、他のスタイルを組み合わせるやりかた。首相撲からヒジとか膝を叩き込むわけですよ。“組み打撃”って呼んでるんですけど。それに違うスタイルを入れて……これまた“ハイブリッドスタイル”と呼んでいるんですけど、こうすることで組み打撃から違う組み技にいけたりするんです。たとえば、レスラーと組み合わせれば、強(Lボタン)で組んでキックボタンを押すと膝蹴りが出て、そこからパンチボタンを押すと投げ技が出る。つまり、組み打撃で体力を削っておいて、さらに投げ技で追加ダメージが与えられるわけです。これはBlazin'技でも同じことができるんですね。もう少しで「DANGER」になるキャラに強で組んで、組み打撃でダメージを与えてDANGERにしてからBlazin'技を出せば、確実にKOできる。

-- 組み合わせで戦い方が“より深く”なるわけですね。

矢野: 打撃系なら、組み合わせたとき、基本的にパンチやキックが優先されます。打撃を出すにしても、スタイルごとにコンボの上限が決まっていて、最大4発まで可能なんですけど、組み技系のレスリング、サブミッションに関しては2発しかない。でも、打撃系と違って最後までヒットさせても相手が倒れないから、最後に組むこともできる。こういうところでバランスを取ってます。打撃系とハイブリッドすれば、打撃が優先されてコンボが増えます。組み技系をハイブリッドすれば、より強い投げ技や関節技が使えるようになります。

-- 組み合わせの内部処理で、優先順位が決まっている?

矢野: そうですね。一番最初に選んだものはあくまでもベースで、それにキックボクサーを入れておくと、強で組めばキックボタンで組み打撃が出せるようになる。ただ、それにレスリングとサブミッションといったふたつの組み技系スタイルをハイブリッドしちゃうと、レスリングの投げ技とサブミッションの関節技が優先されるので、組み打撃が消えちゃうんです。そこまでこだわって作ってます。

-- それ、マニュアルに書いてないじゃないですか。もったいないですよ!! もしかして、ゲーム中に出てくる「カッコいいファッションをキメろ!」にも、具体的なメリットがあるんですか?

矢野: そうです。ヒップホップのストリートカルチャーは“凄くわかりやすい価値観”なんですよね。いいものを着て、いい車に乗って、いい女を抱く。そういうところをゲーム内でもちゃんと表現して、なおかつバトルシステムにも影響のあるものにしたいと思ったんですね。カリスマというパラメータがあって、これがが上がると……同じ技を出しても、「モメンタム」と呼んでいる精神力の上昇量が増えます。結果的に、Blazin'状態になりやすく、Blazin'技が出しやすくなる。。……で、そのカリスマが何に影響されているかというと、服装、タトゥーといった見た目と勝率。これ、前作ではジムにいってポイントと取り替えて上昇させていたんですけど「ジムで汗流しても、人気は上がんねぇだろ?」ってことで、このような仕様になりました。

-- 極めて正論だと思います(笑)

矢野: 人気は何であがるの? っていったら、そいつのカッコ良さで上げるしかないわけで。ネックレスにしても、マテリアルが違うと値段が全然違う。同じネックレスをつけてても「あいつシルバーだよ(笑)」の一方で「あいつダイヤだよ! スッゲー!!」から、いい物を身につけているほうが「やっぱあいつカッコイイわ!」となる。

-- 決定的な要素は、金額? それとも組み合わせ?

矢野: 基本的に金額です。ジュエリーは結構上がりますよ。細かいところまではEAさんの管轄だったんで、こちらでも把握できてないんですが……「タトゥーには、組み合わせがある」と聞いてます。種類が統一されていると、カリスマが上がる。全然違う組み合わせだと、ボーナスが得られないという程度。もしかしたら、服にもあるかもしれません。道着にジャージを合わせちゃダメとか(笑)。

-- まさか、体型には……。

矢野: ないです、ないです!(笑)。

-- 安心しました(笑) それにしても、凄い細かいところまで作られてるのに、ゲームの中でヒントが出るだけってのは……。

矢野: でも、前作もそうですけど、日本版のマニュアルって、北米版よりも明らかに質が違うんですよ。北米のマニュアルって、白黒のテキストベースが基本ですから。あんなもん読んでプレイできねぇよ! そりゃチュートリアルも充実するわ!! って(一同笑) ストーリーやバトルの中で、ちゃんとアピールする。ファッションにしてもバトルにしても、やり込み度の高いゲームになってると思います。

-- 裸で最後まで戦う人も、出てきそうですけど。

矢野: それでもいいんですよ。プレーヤーのプレイスタイルを制限することはないんで。カリスマとか気にせず、自分の好きな格好で、戦い方でゲームを進めていくのが一番いいと思うんですよ。カリスマを上げるために必死になって戦えとか、そういうのではないです。

-- そうはいいつつも、アイテムだけでなく“着こなし”まで幅広いバリエーションが……。

矢野: ただシャツとかが一杯あるんじゃなくて、ボタンを全部あけてシャツを着る、着ない、ボタンを上だけ外すとか。

-- 上着の袖とかジーパンの裾まで、たくしあげとか全部バリエーションがあるからビックリしました。

矢野: 北米のユーザーさんとかストリートファッションが好きな人は、そういう着こなしをしてますからね。それが「コレできないの?」っていうことになれば、中途半端な印象になってしまいますし。

-- このへん、あまりにも細かくてボリュームが物凄いせいか、平常時のディスクアクセスが物凄いことになってますよね?

矢野: ロードの長さは、他でも指摘されているんです。でも、モデルを全部PS2のメモリにおいておくのは不可能ですし……質を突き詰めた結果ということで許してください。

-- 世界観がしっかりしてるから「ヒップホップ・アバター」として成り立つくらいパーツがありますね。格闘と別個にしても、それぞれいちコンテンツとして成り立つくらい作りこまれている。日本的な“ヒップホップ”のイメージだけで格闘ゲームファンに拒絶されるとしたら、もったいないですね。

矢野: そうですね。もう、そっちが好きな人はとことんやってもらえれば。なるべく多くアイテムを獲得したいから戦うというのも、もちろんアリだと思います。かたや格闘ゲームファンの方には、対戦を突き詰めていただく。登場アーティストがわからなくても、アメリカのワル、ギャング同士が闘う格闘ゲームと考えていただければ。バックグラウンドを知らなくても楽しめない、ということはないと思います。

-- 最後に、ユーザーさんに向けてコメントをお願いします。

矢野: 格闘ゲームファン、ヒップホップやストリートカルチャーに詳しいとか好きな人、アキの歴代ゲームが好きだとか、どなたがプレイされても、既存の格闘ゲームにはない新しい発見ができると思います。ぜひとも「Def Jam Fight for NY」を手にとって、プレイしてみてください。

-- ありがとうございました。




(C)2004 Electronic Arts Inc. Electronic Arts, EA, EA GAMES and the EA GAMES logo are trademarks or registered trademarks of Electronic Arts Inc. in the U.S. and/or other countries. All Rights Reserved. Def Jam and Fight For NYTM and all associated logos and marks are used under license from DJR Holdings, LLC and Simcoh, LLC. Phat FarmTM is used under license from Phat Fashions, LLC. Def Jam artists appear courtesy of The Island Def Jam Music Group. Developed by AKI Corporation. All other trademarks are the property of their respective owners. EA GAMESTM is an Electronic ArtsTM brand.

□エレクトロニック・アーツのホームページ
http://www.japan.ea.com/
□製品情報
http://www.japan.ea.com/eagames/teaser.phtml?ProductCode=ESPD-7084
□関連情報
【2月24日】PS2ゲームレビュー:ヒップホップ・カルチャーに根ざした格闘アクション
「Def Jam Fight for NY」
http://watch.impress.co.jp/docs/20050224/djfn.htm
【1月12日】EA、PS2「Def Jam Fight for NY」
ユニークなゲームモードや格闘スタイルを紹介
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20050112/defjam.htm
【2004年12月13日】Def Jam所属アーティストによる格闘アクションの続編
EA、PS2「Def Jam Fight for NY」を発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20041213/defjam.htm

(2005年3月9日)

[Reported by 豊臣和孝]


Q&A、ゲームの攻略などに関する質問はお受けしておりません
また、弊誌に掲載された写真、文章の無許諾での転載、使用に関しましては一切お断わりいたします

ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

Copyright (c)2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.