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★PS2ゲームレビュー★

日本でも流行るのか?
超過激なプロレスが日本に上陸
「バックヤードレスリング」

  • ジャンル:アクションゲーム
  • 発売元:アイドス株式会社
  • 価格:7,140円
  • プラットフォーム:PS2
  • 発売日:発売中(4月15日)



■ 「バックヤードレスリング」とは?

 いきなり「バックヤードレスリング(BackYard Wrestling:BYW)」といわれても、何のことやらサッパリという人のために、一応説明しておこう。「バックヤードレスリング」は、米カリフォルニア州のBackYard Wrestlingが運営しているエンターテインメントプログラム。直訳すると「裏庭プロレス」といったところ。語感から胡散臭い印象を受けるかもしれないが、アメリカではケーブルTVでの放映開始以来、300万本以上のビデオを売り上げている立派な人気コンテンツだ。

 「BYW」は、アメリカの子供たちがやり始めた“プロレスごっこ”がルーツ。今や日本でも多数のファンを擁する米プロレス団体「World Wrestling Entertainment(WWE:2002年にWorld Wrestling Fedrerationから名称変更)」が、'90年代に全米で大ブレイク。かつての日本でもあったように、好きなレスラーを真似て子供たちがプロレスごっこをやり始めるわけだが、日本と大きく異なるのは、子供たちを中心とした“プロレスマニア”の自我と旺盛なバイタリティ。

 日本のように、ちょっと暴れたところでドアやテーブルにぶつかる心配のない住宅環境。ケースバイケースではあるが、条件が揃っていれば、観るだけでは飽き足りないプロレスマニアが「プライベート団体」の設立に走るのは、もはや時間の問題。アタマに皿をぶつけて割ったり、ベニヤ板に体当たりするだけのプチハードコアレスラー、裏庭にマットレスを敷いただけのチープなものから、本物のリングを購入して自宅に設置する本格派まで、多種多様なプライベート団体が乱立する。

 こうしたプライベート団体は、一時全米で社会問題として取り上げられるほど注目を集めた。いくらプロレス好きが嵩じた(もしくは暴走した)とはいえ、彼らマニアからすれば一生懸命やっているわけで、競合団体が増えれば「もっと目立ちたい!」、「俺たちのほうが凄いってことを世間に知らしめたい」など、徐々に内容がエスカレートしていく。必然、試合内容も過激になり、なかにはプロ顔負けの離れ業をやってのける連中も出てくる。特に注目されたのは、机、椅子、梯子などを駆使する「ハードコアマッチ」が好きな連中が集まって作られたプライベート団体。彼らは、蛍光灯、有刺鉄線、釘バットなど、プロが使っても危険極まりないアイテムを平然と手にとり、鮮血ほとばしるハードコアマッチを展開。これをPTAが放っておくはずがなく、当然「なんですかこれは! 危ない! けしからん!」といった非難や批判を浴びせる。

プロレスごっこの領域を飛び越えて、もはや違うジャンルのパフォーマンスに到達しそうな勢いさえあった。国民性の違いなのだろうか……


 だが、シロウトが本気でやる珍プレイほど一般人にとって面白いものはないわけで、ここに目をつけたBackYard Wrestlingが、米インディー団体で活躍中のレスラーなどを起用し、投稿作品とあわせて本格的なエンターテインメントコンテンツを展開。ケーブルTVのPPVで人気に火がつき、現在にいたる……というのが、非常に大まかではあるが「BYW」が誕生する前後の流れだ。ビジネススケールでは、全米唯一といっていいメジャー団体「WWE」とは比べるべくもないが、一挙手一投足にいたるまで徹底的に演出がほどこされる「WWE」にはない“混沌”とした内容が、BYWの魅力。混沌という表現は、自由、奔放、過激といった単語に置き換えてもいい。

 それでは、こうした基本事項を押さえたうえで、ゲーム本編をご紹介しよう。


■ シンプルでわかりやすい操作系

 一般的なプロレスゲームはマニア向けの複雑な操作系を採用しがちだが、「BYW」の操作系はかなりシンプル。方向キーまたは左スティックでレスラーの移動、ボタンは、□がパンチ、×がキック、○がつかみ、△が落ちている武器を拾う、R1ボタンが相手に向かってダッシュ、L1ボタンがピンフォール、R2または□と×同時押しでノックダウン攻撃(ハードコアアタック)となっている。

 パンチとキックは、連打するとコンビネーション攻撃が連続で繰り出せる。○でつかんだら、方向キーまたは左スティックで相手を引きずりまわせる。この時、方向キーまたは左スティック(上下左右)+□でつかんだ相手に打撃が、同じく上下左右+×で投げ技が、同じく上下左右+○ボタンでキャラクタが向いている方向に相手を走らせることが可能。ハードコアアタックは、相手をつかんだ状態でR2または□と×を同時に押せば発動する。

 相手がダウンしているときは、近くで□または×を押せばダウン攻撃、○は頭側で押せば引き起こしてつかみ、足側は、足をつかんだ状態から方向キーまたは左スティックで相手を引きずりまわせる。このとき、引きずられている相手は少しずつダメージを受ける。

 屋根の上など、自分が相手より高い場所にいるときは、□または×でジャンプ攻撃が繰り出せる。R1でダッシュしながら□または×でダッシュ攻撃。拾った武器を使うときも、□または×を押す。このように、使うボタンは少ないが、攻撃バリエーションは豊富。技の派生も系統だてられており、プレイするうちにすぐ慣れるはずだ。

シンプルかつ良好な操作性。必要性は感じなかったが、ボタン配置がオプションで変更できたら良かった気がする



■ 箱庭タイプのフィールド ~攻防のカギは“武器”と“返し技”~

 操作を理解したら、あとは相手レスラーと戦うだけ。ここで、初めてプレイする人の多くが「これ、ホントにプロレスゲーム?」と感じるであろう「BYW」ならではの特徴がある。それは“プロレスゲームなのにリングがない”ことだ。これまで国内でリリースされてきたプロレスゲームは、当然ながらリングのうえで戦うのが常。一部例外はあっても、相手レスラーとの間合いをはかりながら、ジックリと試合を進めるものが大半を占めていた。

 これに対して、「BYW」のフィールドは箱庭タイプになっているのが特徴。フィールドは広々としており、いたるところにオブジェクトやギミックが仕掛けられている。落ちている武器を拾って投げたり、あるいは手にもって殴ったり、つかんだ相手をオブジェクトめがけて投げつけることも可能。なお、落ちている武器は一定時間が経過すると自動的に復活する。

 ゲーム展開は非常にスピーディで、これまた一般的なプロレスゲームのイメージで戦うと大変なことになる。対CPU戦であれば、CPUレスラーは足を止めることなく常にフィールド内を走り回り、隙あらば落ちている武器を拾って投げつけてくる。飛んでくる武器はある程度ホーミングするため、横移動などをキチンと行なわないと、わかっていても回避は難しい。

 こう書くと「なんだ、じゃぁ武器を拾って遠くから投げてりゃいいのか」と思われるかもしれないが、そうではない。武器を拾って投げつける際は動作モーションのぶんだけ隙が生じるため、近ければ間合いを詰めて反撃されるし、遠すぎれば回避されやすくなる。隙あらば武器を使うのは常套手段だが、基本的には、パンチ、キック、投げなどを積極的に仕掛けていかないと勝つのは難しい。

 ここで重要になってくるのが“返し技”の存在だ。パンチやキックのコンビネーション攻撃、つかみからの投げ、地面から引き起こされるとき、キャラクタが一瞬“点滅”するときがある。このとき、方向キーまたは左スティック+□or×or○ボタンを押すと画面に「REVERSAL」と表示され、相手に対して逆に技を仕掛けられる。

 点滅するタイミングは仕掛けられた技ごとに異なり、光る前にボタンを連打していると失敗する。ここぞ! というタイミングで入力する必要があるため、難易度はかなり高い。後述のトークショウ・モード後半ステージでは必須といっても過言ではなく、早いうちから確実にモノにしておきたいテクニックだ。

 この“返し技”が使えるようになると、ゲームが俄然面白くなる。本作のCPUキャラクタは実にちょこざいな動きをしてくるため、後半ステージでは技の返しあいといった展開も珍しくない。逆にいえば、「BYW」のCPU戦は、アクションゲームに不慣れな人には厳しいかもしれない。デフォルトの難易度が「HARD」に設定されていることもあるが、「なんだそりゃぁ!」とCPUの猛攻に辟易している人は、オプションメニュー内にある難易度を下げておくといいだろう。

 勝敗は、相手の体力ゲージをゼロにする(ノックアウトする)か、ピンフォールを奪えば勝ち。体力ゲージのほかに3つの気絶ゲージ(小・中・大)があり、それぞれ受けた攻撃の種類ごとに増加するゲージが異なる。各ゲージとも、MAXになるとキャラクタが気絶。気絶している時間は、小~大それぞれに比例する。

とりあえずは、相手をあちこちに投げつけてみるべし 投げられた武器はホーミングしてくる。慣れないうちは回避が難しい
これは塀に叩きつけられそうになったときのREVERSAL。投げられる直前、一瞬身体が点滅する。このとき、ジャストタイミングで方向キーとボタンを入力すればREVERSAL成功。技を切り返して即反撃できる。ただし、この切り返しを、さらにREVERSALで返されることもある



■ 隠し要素が盛りだくさん ~ボーナスゲーム、レスラー、ムービー~

 「BYW」のゲームモードは、シングルプレイ用の「Talk Show Mode(トークショウ・モード)」、シングルまたはプレーヤーふたりで対戦できる「Exhibition Mode(対戦モード)」、3種類のゲームが楽しめる「Bonus Game(ボーナス・ゲーム)」、オリジナルレスラーが作れる「Create Wrestler(クリエイトレスラー)」、特典映像が閲覧できる「Media Room(メディア・ルーム)」が用意されている。

 初めてゲームをプレイするときは、レスラーは9人、ボーナスゲームは1種類、メディア・ルームの特典映像(Unlocked Movie)は1本しか、それぞれ選択できない。これらの隠し要素を出現させるには「トークショウ・モード」をプレイして、各ステージごとに設定された条件を満たす必要がある。条件は各ステージ開始時の画面に表示される。最終的に、使用可能なレスラーは31人、ステージは7種類、ボーナスゲームは3種類、特典映像は9本(うち1本はCredits)まで増える。

 隠しレスラーは、デフォルトの9人がマトモに見えるほど強烈なキャラクタの持ち主ばかり。いずれも実在のBYWレスラーで、メリケンテイスト全開の脂っこい奴から、レスラースメルが微塵もしないカジュアルな兄ちゃんまで、よりどりみどり。好き嫌いがハッキリとわかれそうなビジュアルばかりだが、アメプロやインディー系のレスラーに抵抗がなければ特に問題ないだろう。

 ひととおり隠しキャラを出現させたところで「よし、俺も負けないような濃いキャラを作るぞ!」といきたいところだが、ここで残念なのが「クリエイトレスラー」の仕様。15種類の基本モデルに、各12種類のコスチューム、15種類の攻撃スタイル、つかみからの打撃、投げを各4種類それぞれ組み合わせるという、実にシンプルな内容。他社からリリースされているプロレスや格闘技ゲームでは、パーツはもとより体型にいたるまで事細かにエディットできるものが少なくないだけに、最低限パーツごとに選択できるくらいの作りこみが欲しかった気がする。

 特典映像は、ゲームにもレスラーとして登場する「Insane Clown Posse」など、参加アーティストの楽曲と実写映像をビデオクリップ風に編集したムービーが閲覧できる。アメリカで発売されているビデオ作品からの映像がふんだんに使用されており、試合中の過激なパフォーマンス、アマチュアによる破天荒な投稿作品、美女軍団「バックヤード・ベイブ」のセクシーな姿が拝見できる。

 なお、PS2版をプレイしていて気になったのが、ロード時間の長さ。日本未発売のXbox版に比べると、正直かなり長い。ステージ選択後のロード時間は、平均すると約20秒前後。各モードから抜けるときのオートセーブも、やや鬱陶しい感がある。次回作も検討されているようなので、このあたりはぜひとも改善していただきたいポイントだ。

登場するレスラーは全員実在する。カッコいい人もいるが、基本的には濃いキャラのほうが多い エディットはシンプル。手間はかからないが、選択肢が少ないのが残念 特典映像の一部。一応補足しておくと、セクシーなシーンばかりではない



■ 箱庭的な楽しさが理解できる人にオススメ

 リングがなく、フィールド内を自由に動き回れるというシステムから、本作は既成概念にとらわれたプロレスゲームファンからそっぽを向かれる可能性がある。これは筆者の主観も入っているが、日本におけるプロレスゲームのステレオタイプとは、団体やレスラーのキャラクタがきちんと表現され、技の攻防があり、受けがあり、流れがあるものではないだろうか。また、システム自体もそれらを再現すべく作られているため、プレーヤーが意識してやらない限りは、初手から大技やラリアット連発といった展開にはなりにくいよう調整されているのが常だ。

 その点「BYW」は、団体やキャラクタはともかく、それ以外の要素が完全に欠落している。プロレスの名を冠してはいるが、攻防自体はフィールドタイプのアクションゲームに近い。さらには、単に「相手を倒す」という1点にプレイの目的を絞るなら、やること自体はそれほど多くない。ガチンコの対戦ツールとして見るなら、地面に落ちている蛍光灯や有刺鉄線バットなどの武器でさえ「持って使うもの」と「投げるもの」の2種類でしかない。

 だが、キャラクタ単体だけでなく、箱庭的なフィールド全体を含めて考えれば、やれることはたくさんある。あちこちに仕込まれた、馬鹿馬鹿しくも楽しいギミックの数々。裏庭でバーベキューをやってる親父に相手をぶつければ、グリルに頭を突っ込んで激怒のあまり近づく奴を片っ端から殴り始めるし、ガスステーションのスタンドにぶつければ、スタンドが爆発して天高くブッ飛んでいくなど、例をあげたらキリがないほど。必ず利用しなければならないということはないが、ギミックを使えるようになれば、これほど楽しいことはない。

 ひと通り遊んで隠し要素を出し、「なんだ、もうやることねーよ」などと思うのは、焼肉屋で白飯だけ注文して帰ってくるようなもの。「BYW」は、ちょっと変わった焼肉屋(プロレスゲーム)で、美味しい肉(ギミック)がステージのあちこちに仕掛けられている。それを味わいもせずに「あの店、不味いよね」とのたまってしまうのは“勿体無い!”のひとこと。おクチにあわなければ申し訳ないといったところだが、本記事を読んで「あ、ちょっと試してみたいな」と思った人がいれば、この機会に手にとってみていただきたい。

筆者が一番好きなステージは、アホなギミックだらけの「ガス・ステーション」。引火、爆発と何でもあり。まさにヴァイオレンス


(c) Eidos, 2003. Published by Eidos KK, 2004. Developed under license from Backyard Wrestling, Inc. Developed by Paradox Development. The Backyard Wrestling format, characters, artwork etc (c) 1998 Backyard Wrestling, Inc. All Backyard Wrestling logos and artwork are trademarks of Backyard Wrestling, Inc. Eidos and the Eidos logo are trademarks of the Eidos Group of Companies. All Rights Reserved.

□アイドスのホームページ
http://www.eidos.co.jp/
□製品情報
http://www2.eidos.co.jp/byw/
□関連情報
【4月8日】アイドス、PS2「バックヤードレスリング」プレスカンファレンスを開催。BYW勢が大日本プロレスに参戦!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040408/byw.htm
【3月3日】アイドス、PS2「バックヤードレスリング」過激なプロモーションムービーを公開!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040303/bp.htm
【2月3日】アイドス、品性無用のハードコアマッチが続出! PS2「バックヤードレスリング」を4月15日に発売
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20040203/eidos.htm

(2004年4月26日)

[Reported by 豊臣和孝]


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