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★PS2ゲームレビュー★

ゲーム本編だけでなくマーケティング戦略も評価したい一本
「鬼武者 3」

  • ジャンル:戦国サバイバルアクション
  • 発売元:株式会社カプコン
  • 価格:6,980円
  • プラットフォーム:プレイステーション 2
  • 発売日:発売中(2月26日)



帰ってきた鬼武者・明智左馬介。47歳という年齢を感じさせない外見は鬼の力によるものだそうだ
 「鬼武者 3」は「1」、「2」ともにミリオンを達成した大ヒットシリーズの最新作。戦国時代を舞台に幻魔と鬼の一族との戦いを描いたシリーズも本作で完結を迎える。

 本稿では発売に先駆け、ゲームの内容は「3」になってどのような進化を遂げたのか? そしてなにかと話題の多いゲーム周辺部分、金城武氏とジャン・レノ氏によるダブルキャストや、一編の映像作品といっても良い出来栄えのオープニングムービーなどを中心に見ていくことにしよう。


■ 新しいゲームシステム ジャックの鞭アクション

 「3」で追加された新しい仕様といえば、鞭を武器に戦うもうひとりの鬼武者「ジャック」の存在がまず挙げられるだろう。操作できるキャラクタを複数用意しゲーム性に幅を持たせることは「1」、「2」でも採用された方法ではあるが、左馬介と並ぶダブルキャストということもあって、その鞭アクションは充実している。

 攻撃面ではR1ボタンを押し続け、力をためた状態で□ボタンを押すと装備している武器で敵を縛する「鬼縛り」が使用できる。鬼縛りの後は、銃での攻撃や投げ飛ばし、鬼力を消費する「縛戦術」など多彩な攻撃が行なえる。また、移動面では「鬼蛍」と呼ばれるキャラクタを鞭でつかみ、通常行くことのできない場所へ移動できる「鬼蛍跳躍」がある。

 鞭を使用したアクションの使用感は悪くない。特に「鬼蛍跳躍」は絵面的にも気持ちがいい。本作では、これまで一枚絵だった背景がオブジェクトを含めフルポリゴンで表示されるようになり、立体感のあるマップ構成になった。このことと「鬼蛍」はうまくマッチしていると思う。

 その他追加されたところでは、カラス天狗の阿児も面白い。ゲーム中盤より時空転送装置というシステムを使い、未来のフランスと過去の日本を阿児が行き来することで攻略を進める必要がある。例えば、ジャックを操作し左馬介にとって必要なアイテムを阿児に持たせ、時空転移装置を使って未来の左馬介に渡すというような具合だ。過去と未来を行き来する必要性をうまく配置し、同じマップを使いながらも謎解きのボリュームアップが図られている。

 また、阿児の装備品に羽織というアイテムがある。羽織にはいくつか種類があり、例えば赤羽織は幻魔を倒したときにでる魂が赤魂のみに、青羽織であればXボタンによる魂の吸収速度が速くなるなどの効果がある。一通りプレイしたところではすべて集まらなかったが、場面に応じて羽織を着替えさせるといった遊び方ができるので、ぜひコンプリートしたいところだ。

「鬼縛り」後、□ボタン連打で愛用の45オートで攻撃。拳銃は倒れた敵への追い討ちにも使用する 「鬼縛り」後、方向キーor左スティック+□ボタンで敵を投げ飛ばせる。岩などを投げることも可能 「縛戦術」。縛りあげた敵に炎が鞭を伝わってダメージを与える。「鬼縛り」後、鬼力を消費して使用
ジャックの上に黄色く浮かぶ物体が「鬼蛍」。鞭でつかめる位置にくると緑色に光りだす 「鬼蛍跳躍」はR1ボタンを押しながら○ボタンを押すことで発動する。発動後は自動的に移動 「鬼蛍」は宝箱などの設置物を壊すと飛び出す場合が多い。敵が捕まえていることもある
カラス天狗の阿児。言語の翻訳やタイムスリップのほか、隠されたアイテムなどを拾ってきてくれる 時空転送装置。これを利用して阿児が現代と戦国時代を行き来する。ゲーム中盤から登場 赤羽織を着た阿児。羽織の色にしたがって阿児の光る色も変わってくる



■ ブラッシュアップされた操作系統

 操作系統や従来のシステム面にも細やかなブラッシュアップが施されている。

 操作方法については、□ボタンで攻撃、Xボタンで魂を吸収、△ボタンで必殺技である戦術殻を使用といったところはそのままだが、キャラクタの移動操作は従来の方向キーのほかに、左スティックでも操作できるようになった。

 方向キーは、「バイオ」シリーズから受け継がれるラジコン操作。これに対し、左スティックは倒した方向にキャラクタが移動。上に倒せば画面奥に、下に倒せば画面手前に、左右に倒せば回転せず倒した方向に移動するという直感的なもの。カメラの切り替えによって進みたい方向とこれまでスティックを倒していた方向が変わってしまったときはスティックの方向を入れなおす必要があるが、厳密なものではなくファジーな入力受付になっている。

 筆者はラジコン操作に慣れてしまって久しく、左スティックで改めて操作しようとは思わなかった。ただ、ラジコン操作は「バイオ」のような緊張感を持つゲームには良いが、「鬼武者」のようなアクションゲームに適しているのか、という議論は以前からある。一般層やラジコン操作になじみの薄いユーザーには左スティックによる操作がやはり動かしやすいだろうと思う。

 鬼武者変身についても細かな変更がされている。紫魂を5つ吸収した時点で鬼武者に変身した「2」とは違い、5つ吸収した後、R3ボタンを押すことで任意に変身することができる。これはXbox版「幻魔鬼武者」の「鬼の解放」に類する仕様だ。緊急回避的な使用やボス戦の攻略など使い勝手は良くなっている。

鬼武者変身後は一定時間無敵状態になり攻撃力もアップする。また、紫魂5つの状態で体力がゼロになった場合、鬼武者に変身して自動的に復活する



■ 向上したバッサリ感。扱いやすくなった「一閃」

 では、「鬼武者」シリーズを通してのテーマでもあるバッサリ感はどうだろうか。

 本作で剣戟アクションをより楽しむための仕様は、戦術殻やため攻撃などいくつかあるが、バッサリ感を文字通り表しているのは「一閃」だろう。「一閃」には基本的に、相手の攻撃が当たる瞬間に□ボタンを押すことで発動する「一閃」と、相手の攻撃を直前で防御した後に□ボタンを押すことで発動する「弾き一閃」がある。文字通り、ほぼすべての敵を一閃で倒すことができるシステムだ。本作では、これまでのシリーズに比べてかなり出やすい印象を受けた。

 「一閃」の後、ボタンをタイミングよく押すことで発動する「連鎖一閃」にいたっては、筆者は「2」では偶然のレベルであったが、本作では狙って出せることができるようになった。簡単な「弾き一閃」であればアクションゲームが苦手な人でも少し練習すれば出せるようになると思う。

 また、本作で可能になった「群衆vs群衆」、「主人公vs敵の群衆」という多人数戦闘がバッサリ感をさらに効果的にしている。群集は、本誌でも以前紹介したように、視点に近い位置のキャラクタはハイポリゴンモデル、奥で表示するキャラクタはローポリゴンモデルと位置によって動的にポリゴン数の違うキャラクタを表示させ、1画面に表示できるポリゴン数を稼いで表示している。

 こうした敵の群集を、前述の「一閃」や「戦術殻」で殲滅する爽快感はなかなかのもの。空前絶後のバッサリ感とはよく言ったものだ。ただ、城壁や遠方から狙われる弓矢にちくちくと動きを止められるのはいただけない。そこまでやさしくないぞ、というところか。

ゲーム冒頭の森蘭丸戦。蘭丸は「一閃」が取りやすいのでドンドン狙ってみよう。「一閃」3回で倒せる 「戦術殻」も従来どおり。ジャックは「戦術殻」と呼ばず「戦術輪」と言うようだ 本能寺での明智光秀軍対幻魔軍。中には腰を抜かした兵士もいたりとモーションもいくつかあるようだ
画像は「連鎖一閃」。「一閃」を決めた後、ボタンをタイミングよく連続して押すことで続けて「一閃」を決めることができる。「2」からあった仕様だ。慣れれば「一閃」を決め続けることができるようだが……。筆者はまだ2つが精一杯



■ シナリオは意見の分かれるところ

 本作のストーリーは、2004年のフランス・パリと1582年の戦国時代の日本を舞台とするタイムスリップものだ。カラス天狗の阿児を道化回しに2つの世界を行き来して進めていく。

 もしあなたが本作に「1」のような戦国を舞台にした日本的なファンタジーを求めているなら少々つらいかも知れない。「2」のように、からくり馬やゴーガンダンデス、ジュジュドーマのようなユーザーの想像をはるかに超えた面白キャラクタが出てくるわけではないが、路線としては「2」の奇天烈な面白さを受け継いでいるように思う。現代を舞台に左馬介が立ち回る姿や、アンリとジャックの(超能力めいた)親子の絆など、真剣な芝居の中にある種のおかしさがある。テレビの変身ヒーローもののような面白さといえば良いだろうか。

 ネタばれになるので言明は避けるが、シナリオの好き嫌いはあると思う。筆者はこれでこそ鬼武者!(笑) と思う場面がいくつもあって楽しめたクチだ。

幻魔に襲われたフランス・パリ。空を飛ぶ生物から飛び降りる幻魔はまるでパラシュート部隊だった バイクで爆走するジャック。中間ムービーはすべてゲームキャラクタで演出。ゲーム本編と違和感のない形で行なわれる 携帯電話でギルデンスタンと会話をする左馬介。かなりシュールな画面だ



■ 金城武とジャン・レノのダブルキャスト

 「鬼武者」シリーズの一番の話題性といえば、やはり主人公キャラクタにおける俳優の起用だろう。「1」では金城武、「2」では故人である松田優作をゲーム上に復活させ、ゲームユーザー以外の一般層の注目を集めた。前作、前々作がミリオンを達成したのは、ゲームの内容や販売時期もあるが、こうした著名人の起用はやはり大きな要因のひとつだろう。

 映画やアニメでは、有名俳優を声優として起用し宣伝効果を狙うことはよく行なわれるマーケティング戦略のひとつではあるが、ゲームでは「鬼武者」シリーズが頭ひとつ抜けている形だ。本作ではすでにご存知の通り、金城武氏、そしてフランスの人気俳優ジャン・レノ氏が登場。ゲーム内のキャラクタはどちらもとても良く似ている。左馬介は金城武氏よりもいくらか体格がよくなっており、より侍然とした印象だ。

 海外展開を見越してのことだと思われるが、ジャン・レノ氏起用の初報を聞いたときは正直驚いた。現在の日本の市場の低迷を考えれば、より海外にアピールしやすい作品づくりを心なければならないことは明らかだ。こうしたマーケティング戦略からも、カプコンの本作への意気込みを感じる。


■ 格の違いを感じるオープニングCGムービー

 本作におけるもう1本のプロモーションの柱が、オープニングCGムービーだ。「1」ではCGの世界的な祭典シーグラフで最優秀賞を受賞、「2」では人馬一体のモーションキャプチャーなど、毎回驚きの映像を提供してくれているが、今回もその期待に十分応える出来栄えだ。

 制作は映像製作会社ROBOT。同社のCGムービープロデューサー倉澤幹隆氏はシリーズを通してムービーの制作に携わっている。CGムービーディレクターには「リターナー」、「ジュブナイル」で有名な映画監督の山崎貴氏。CGムービーアクションディレクターは「HERO」、「BRADE 2」などに出演、その創造的なアクションで注目を集めるドニー・イェン氏。CG制作は日本を代表するCGプロダクション白組。音楽は天野正道氏(「ジャイアントロボ」、「バトルロワイヤル」他)とワルシャワフィルハーモニーオーケストラによる演奏と非常に豪華なもの。ワールドワイドに通用するエンターテインメントを目指した、との倉澤氏の言葉どおりのスタッフィングだ。

 映像は、フォトリアルを目指したというだけあって圧巻。屋外やミニチュアの素材を使った実写背景に左馬介らCGキャラクタが見事に溶け込んでいる。特に屋内での照明の当たり方が絶妙だ。山崎貴監督は特撮やCGを得意とする映画監督。すべてをCGで作るのではなく、こうした実写とCGを交えた映像でのリアリティの追求は彼ならではのものであろう。

 もうひとつの見所はやはりアクション。ドニー・イェン氏が演出というだけあって、日本の殺陣とは違う円の動きあり、ワイヤーアクションありといった香港アクション的な面白さが随所に感じられる。

 芝居部分も台詞部分こそ少ないが、ゲームの内容をキチンと説明するもの。ガルガントが対峙する左馬介に向かって放つ「久しぶりだな……。左馬介」という台詞は、左馬介カムバックを見事に言い表していると思う。

 ゲームムービーの中にはゲーム本編と乖離するような、綺麗なだけのご褒美ムービーも少なくないが、本作は、ゲームの世界観をキチンと説明し、作品の広告塔としての役割も果たし、かつ一編の独立した短編映画としても成立している。

信長の元へ向かう巨大多足幻魔戦車。そのフォルムはまるで海老のよう 「戦術殻・炎」で周囲の刀足軽を一掃する忍者装束の左馬介 宿敵ガルガント。ゲーム本編には登場しないムービー専用の敵
ムービー中のアクションシーンはどこも小気味良い 壊滅した幻魔戦車軍の魂を吸収する左馬介 鬼武者変身。ガルガントと最後の戦いを迎える



■ 広く一般層にゲームの楽しさを伝えるマーケティング手法も評価したい

 ゲーム内容については新しいシステムも追加しつつ、これまでのシリーズをうまくブラッシュアップ、まとめ上げていると感じる。個人的には前作の絆システムを廃し、アクションと謎解きに重点を置いたシステムになっていることに好感を覚えた。バッサリ感もさらに増し、ファンならずとも満足できる作品だ。

 さらに本作においては、本稿の後半に述べたゲーム周辺のマーケティング部分についても評価させてほしい。ゲームバブルがはじけ現在の冷え込んだゲーム業界にとって、広く一般層にエンタテインメントとしてのゲームを認知させていくことはとても重要なことだ。次の良質なゲームの制作のためにも。

 そういった意味で、金城武氏とジャン・レノ氏のダブルキャストや一編の映画としても通用するオープニングCGムービーなど、ゲーム本編以外にも色々と話題を提供する本作はゲーム業界的に十分、価値があると思う。もちろん、本作のように購入した人が満足できるゲーム内容を持っていなければ、誇大なプロモーションは意味がないどころか市場を狭めるだけのものでしかないが……。

Character Samanosuke by (C)Fu Long Production,
(C) CAPCOM CO.、LTD. 2004 ALL RIGHTS RESERVED.

□カプコンのホームページ
http://www.capcom.co.jp/
□「鬼武者 3」のホームページ
http://www.oni-musha.com/
□関連情報
【2月12日】金城武とジャン・レノ、二大国際派スターが競演 「『鬼武者 3』完成プレス発表会 ~決着(クライマックス)」開催
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(2004年2月27日)

[Reported by 山内智和]


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