【Watch記事検索】
最新ニュース
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【11月27日】
【11月26日】

★GCゲームレビュー★

新しい刺激を求めるRPGファンにオススメの新作タイトル
「バテン・カイトス ~終わらない翼と失われた海」



 RPGファンならずとも期待の新作であろう「バテン・カイトス ~終わらない翼と失われた海(以下、バテン・カイトス)」がいよいよ発売された。本作は株式会社モノリスソフトと株式会社トライクレッシェンドの共同開発によるもの。モノリスソフトは「ゼノサーガ」とは別チームを編成し本作の制作に望んだとのことだが、グラフィックやムービーシーンはどことなく「ゼノサーガ」を思わせるところがあった。

 グラフィックやムービーシーンに定評があるモノリスソフトだが、本作も例に漏れず、オープニングのデモムービーからその力の入れ具合が伝わってくる。派手な色使いが目を引くビジュアルに、キャラクタが次々と紹介される短いカットの連続。さしずめ、ハリウッド映画をほうふつとさせる壮大なストーリー展開を予感させられた(編注:オープニングは株式会社ロボットの手による)。

邪神「マルペルシュロ」の復活をたくらむゲイドブレイム皇帝
その復活を阻止するべく立ち向かう主人公達



■ カードゲーム的要素を含む「マグナス」

 華麗なビジュアルやそれを際立たせるサウンドに気を奪われがちな「バテン・カイトス」だが、本作最大の特徴は「マグナス」にある。「マグナス」は戦闘をはじめとした「バテン・カイトス」の世界のあらゆるシステムの中核をなしている。

装備画面。通常RPGにおける全てのコマンドが「マグナス」に置き換わっていると考えるといいだろう
 「マグナス」とは、様々な物質の本質である「マグナ・エッセンス」をカードに封じ込めたアイテムのこと。通常のRPGでは攻撃する際、装備した武器や、キャラクタごとの固定武器で攻撃するが、「バテン・カイトス」ではそれが全て「マグナス」に置き換わっている。武器や防具等の装備品ばかりだけでなく魔法や回復アイテムなど、全ての行動に加えて、イベントアイテムも殆どが「マグナス」を使用する。

 つまり戦闘は全て「マグナス」で行なうことになるので、いわゆるMP(マジックポイント)のような概念は存在しない。戦闘は「カードバトル」と考えてくれればわかりやすいだろう。とは言っても、一般的なカードバトルシステムを想像すると、このゲームのリアルタイム性に驚くことになる。じっくり思考するタイプというよりは、次々配られてくる「マグナス」を瞬時に判断し、直感とインスピレーションで最善のコンボを繰り出す、いわゆる「落ちもの」パズル的感覚だ。

 ルールはシンプルで、攻撃(味方)ターンと防御(モンスター)ターン時に、それぞれ攻撃、防御が終了する前に次の「マグナス」を出すだけだ。この時、そのターンに使用できない「マグナス」はモノクロで表示されるので、始めたばかりの頃でもそれほど迷うことなく「バテン・カイトス」の世界にのめりこむことができた。正確にはモノクロで表記された「マグナス」は、使用できないわけではないのだが、使用してもそのターンで効果がないものがモノクロになる。

 「バテン・カイトス」では通常のRPGと同じように、火や水などの属性の概念が存在し、これらは「マグナス」の説明を見なくとも色で判別できる。つまりモンスターの弱点や耐性のある属性を認識する必要があるのだが、「バテン・カイトス」ではモンスターの属性と関係なく、1ターンで水と火属性の「マグナス」を組み合わせてしまうと効果が半減(!)するなど、属性によるボーナスとデメリットが色濃く反映されるようになっている。

 戦闘時に使用する「バトルマグナス」には「精霊数」と呼ばれる数字がマグナスに表記されている。これが戦闘を優位に進めるためには必要不可欠なものとなっている。この精霊数を同じ数(ペア)や階段状(ストレート)に並べて出すことで「コンボ」が発動する仕組みになっており、適当に「マグナス」を選択する時と比べると大幅にボーナスが加算されることがある。

 加えて、精霊数とは関係なく、特定の「マグナス」を組み合わせることで「スペシャルコンボ」が発動することがある。これは攻撃用の「バトルマグナス」に限らず攻撃には使用できないアイテム形の「マグナス」でも重要な要素で、物語が進み、アイテム系の「マグナス」が増えてきたら「マグナス」同士を合成することで新たな「マグナス」を探し出す楽しみがある。もちろん、シナリオクリアだけでなく、アイテムコンプリート好きなプレーヤーならばなおさらのことだろう。

実際の戦闘画面(左)。隣の画像(右)のように、1回1回攻撃が終了するたびに戦闘結果が表示されるのでわかりやすい


「キャンプマグナス」使用画面。「キャンプマグナス」は「バトルマグナス」と違い、1回使用すると消滅してしまうので、充分に考えてから使用することをオススメする
 補足として「キャンプマグナス(キャンプ中のみ使用できるマグナス)」は「バトルマグナス」と違い、戦闘時以外で使用すると消滅してしまう。戦闘時以外で回復をしたいときは、「キャンプマグナス」を使用すればいいが、戦闘中は「デッキ」の中に数枚、HP回復用の「バトルマグナス」を投入し、戦闘時に使用するよう心がけることで回復を行なうことができる。

 通常のRPGでは、ある程度の通常戦闘をこなした後、ボス戦の前に回復アイテムや魔法でHPを回復する、といったプレイスタイルがほとんどだと思うが、「バテン・カイトス」では通常戦闘からHPの回復には気を配っておいたほうが何かと得をする。これにより、通常戦闘を繰り返し、ボス戦の直前に全快にして戦闘に挑む、といったありきたりな作業をなくし、通常のRPGでは当たり前のように行なう動作1つ1つに意味を持たせたこの「マグナス」には、素直に感動を覚えた。

画像をご覧いただけるとわかると思うが、スペシャルコンボは全部で144種類。発動したスペシャルコンボは1から順番に埋まっていくわけではなく、それぞれ初めから番号が割り振られている
 さて、話は「スペシャルコンボ」に戻るが、これは1回発動するとメニュー画面の「ギャザリング」に登録されるのでわかりやすい。カードゲーム経験者ならば理解しやすいかもしれないが、このコンボの概念が戦闘を優位に進めるために必須となっており、また「バテン・カイトス」の大きな魅力の1つになっていることは間違いない。

デッキ調整画面。ゲームになれてきたら、デッキの調整も「バテン・カイトス」の醍醐味だと気づくはずだ
 これらの戦闘時に使用する「マグナス」は、あらかじめ「デッキ」と呼ばれる「マグナス」の束を構築しておく必要がある。始めたばかりの時はデッキの総枚数は“20”だが、通常のプレーヤーレベルと共に「クラス」が成長することによって、デッキの総枚数と共に、戦闘時に1ターンで使える総枚数が増加していく。使用可能な枚数が増えていけば、その分、コンボ発動率はおのずと高くなり、戦略性と共に爽快感が増す仕組みになっている。

 繰り返しになるが、「バテン・カイトス」の世界では通常のRPGで行なわれる行動が、全て「マグナス」に置き換わっている。カードゲームに不慣れな人だと、始めたばかりの頃はこのシステムが理解しづらいかもしれないが、慣れるまでは手持ちの「マグナス」も少ないこともあり、あまりデッキの構成にこだわらず、攻撃、防御、回復のバランスだけに要点を絞り、ゲームを進めていけばいいだろう。通常のRPGでいうところの“新しい街に行くたびに上位の武器と防具を揃え装備しなおす”といった行動を、「バテン・カイトス」においては“新しい「マグナス」を購入し、デッキを構築しなおす”と考えてくれれば間違いない。

 また、本作ではモンスターを倒した時に通貨のようなものを得ることはできない。取得した「マグナス」を街の店に売っても二束三文の扱いを受けてしまう。では、どうやってゴールドを取得するのか? これは戦闘時に「カメラ」の「マグナス」で写真を撮影し、できあがったものを店で売ることで解決できる。

 頻繁に出現するモンスターよりもボスキャラクタの写真は高値で取引できたり、カメラの種類や撮影するキャラクタのスピードパロメーターが、できあがったもののピンボケに影響したり(動きが早いモンスターはブレやすいため)と、写真1つをとっても一筋縄ではいかない。さらには、撮影したばかりの写真は色が完全に浮かび上がっておらず、時間の経過と共に完全な写真となったりするなど、写真に関してもなかなか本格的な仕様になっている。さしずめ、この世界での「カメラ」の「マグナス」は一般的な「インスタントカメラ」を想像してもらうとわかりやすいだろう。

カメラ使用画面。キャラクタがセリフと共にカメラを構えて撮影する姿はなかなか笑えるものだ 撮影した写真は「キャンプマグナス」として保管される


 さらに、この「時間」の概念が「バテン・カイトス」の世界では重要な要素となっており、写真だけでなく、時間と共に変化を遂げる「マグナス」も存在する。例えば「バトルマグナス」の中に果物の「バナナ」がある。これは初期段階ではまだ青く硬い状態なので、果物としてではなく、「攻撃用のバトルマグナス」として活躍する。しばらくすると今度は黄色くなり、甘く食べ頃となるので回復用「バトルマグナス」として、最後は黒くなってしまうので攻撃「マグナス」として使う。そして最後には「ヤバイ食べ物」に変化し、更に毒の効果が発動する、といった具合である。

 以上のように、「バテン・カイトス」は「マグナス」に始まり「マグナス」に終わるゲームといえる。特に戦闘時の「マグナス」による敵キャラクタとの緊張感あるバトルにこのシステムの真骨頂があり、ボタンを連打するだけで戦闘に勝利できてしまうようなありきたりのRPGとは比較にならない充実感を感じた。この作業が「めんどくさい」と感じるプレーヤーはいないと断言することはできないが、少なくとも筆者は作業が大嫌いなプレーヤーでありながら、本作のバトルはプレイが進んでも飽きを感じることはなかった。


■ 斬新なシステムを凌駕するといっても過言ではない程の書き込まれたグラフィック。しかし……

 「バテン・カイトス」の魅力は「マグナス」だけに留まらない。既述であるが、オープニングを見ているだけでも「バテン・カイトス」の世界にグイグイと引き込まれてしまうほど、グラフィックには惹かれるものがある。実際のゲーム画面も、フィールドマップはあえてフルポリゴンの描写は避け、徹底的に2Dの画面特殊効果が使用されており、空間表現も素晴らしい出来栄えになっている。特に、これらを使用した自然描写に注目したい。書き込まれた背景ばかりでなく、錯覚を利用したダンジョンなどの表現はきっと新しい感覚を味わうことができるはずだ。

 一方で、2Dの画面特殊効果を巧みに利用することで展開される独創的なビジュアルには見とれるばかりだが、それゆえに、画面が見づらいと感じる場面がしばしば見受けられた。特に、フィールド上においては進める(画面が切り替わる)ポイントがわからず先に進めない、といったことも少なくなかった。

 ゲームを進めて本作に慣れていくことで大分緩和されるとは思うが、それでもフィールド画面の見づらさは若干のストレスを感じてしまったのは残念なことといえるだろう。


■ 急展開を遂げるシナリオが、ディスク2枚に渡る重厚なボリュームを飽きさせない

 「バテン・カイトス」の魅力は「マグナス」や書き込まれたグラフィックだけでは終わらない。特筆すべきは、重厚なシナリオの深さにある。

 「バテン・カイトス」の世界は大空にいくつもの大陸が浮かぶ、ファンタジーの要素が色濃く反映されている。大陸ごとにさまざまな様式、文化、生態系が形成されており、大陸に住む人たちはそれぞれ「心の翼」と呼ばれる羽を持っていたが、生活の安定からか、退化し空を飛べなくなっている。

 本作は「プレーヤー=主人公」の図式ではなく、プレーヤーはまったく得体の知れない、片翼の主人公「カラス」に「精霊」として取り憑き、対話をしながら未知の冒険に巻き込まれていくことになる。封印された邪神の復活劇や、カラスは一体何者なのか? すべては「精霊」であるプレーヤーには予測も付かないさまざまな展開が待ち受けている。気付けば、ストーリーを進めていくことで次々と明るみになる新事実に、時間を忘れてプレイに没頭してしまうだろう。

舞台を盛り上げる美麗なグラフィック。中には上下がさかさまになっているマップや、ナムコファンならば懐かしいであろうダンジョンも


 先の項で「バテン・カイトス」=「マグナス」と言えるほど「マグナス」を強調してきたが、続いて挙げたグラフィックやシナリオもそれに負けず劣らずの完成度といえる。もちろん、「マグナス」が画期的なものであるのは疑いようのない事実で、「バテン・カイトス」を語る上で最も重要な要素となるのだが、仮に「マグナス」の存在を抜きに「バテン・カイトス」を評価したとしても、やはりありきたりなRPGとは一線を画するゲームである、ということを強調しておきたい。

 特にシナリオは……と勢い余ってストーリーを解説してしまいそうになるほど、インパクトがあるシナリオが展開されるのだが、こればかりはプレイしてからのお楽しみということにしておきたい。付け加えるならば、「バテン・カイトス」の世界観やシナリオ展開が好きになれないプレーヤーの方々でも、途中で止めてしまう前に、ディスク2に入るところまでは必ずプレイして欲しい。きっと物語を終えるまで、プレイをやめられなくなっているはずだ。

(C)2003 NAMCO LTD., ALL RIGHTS RESERVED

□ナムコのホームページ
http://www.namco.co.jp/
□モノリスソフトのホームページ
http://www.monolithsoft.co.jp/
□製品情報
http://www.namco-ch.net/batenkaitos/index.html
□関連情報
【11月7日】ナムコ、GC「バテン・カイトス」のCMソングにHYDEの新曲をタイアップ
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20031107/baten.htm
【10月17日】ナムコ、「バテン・カイトス 終わらない翼と失われた海」の予約キャンペーンFC版「ドルアーガの塔」をGCで復刻!
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20031017/baten.htm
【9月26日】TGS2003ブースレポート~ナムコ編~ 「R:Racing Evolution」、「塊魂」など 良作が大量プレイアブル出展
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030926/namco.htm
【7月21日】「モノリスソフト新作発表会」開催 「バテン・カイトス」、「ゼノサーガEPI リローディッド」ムービーが上映される
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030721/namco.htm
【7月18日】ナムコ、GC用RPG「バテン・カイトス」を発表
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030718/bat.htm

(2003年12月12日)

[Reported by 林 智加良]


Q&A、ゲームの攻略などに関する質問はお受けしておりません
また、弊誌に掲載された写真、文章の無許諾での転載、使用に関しましては一切お断わりいたします

ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

Copyright (c) 2003 Impress Corporation All rights reserved.