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CPL2003冬季大会日本予選が開催 |
会場:LEDZONE
PCゲームを始めとしたコンピュータゲームをスポーツとして大会を行なうCPL(Cyberathlete Professional League)の冬季大会の日本予選が11月24日、東京の蒲田にあるナムコのLANエンターテインメント実験店舗「LEDZONE」で行なわれた。
CPLは1年に数回開かれるのだが、今回の冬季大会は、8月に行なわれた夏大会と並んで、CPLのメインとなる大会(他はスポンサー付きの冠大会というパターンが多い)として高い注目を集める。毎回、メイン種目として1タイトルが発表され、選手達はそのタイトルを練習して大会に臨むこととなる。
ここ最近の種目は実在の銃器が登場し、爆弾を仕掛けたり人質を取ったりするテロリストと、これを排除しようとする特殊部隊(カウンターテロリズム)の戦いを描いた「Counter-Strike」が種目として選ばれることが多い。今回の種目は武器や装備面で多くの変更が加えられた「Counter-Strike 1.6」を使う初めての大規模な大会と言うことで、新たな戦術や武器の使い方など選手達以外にも注目すべき点が多い大会となっている。
今大会も日本から代表チームを派遣することが決定し、日本での予選会が行なわれる運びとなった。参加チームは全部で6チームエントリーし、1日で試合が全部終了しないため、オンライン予選を経て本予選へと進められた。日本でも、CPL、World Cyber Gamesといった世界大会につながる大会が定期的に開かれるようになったことで、参加しようというプレーヤーも回数を重ねるたびに増えてきたのは歓迎すべき傾向だ。
参加プレーヤーの増加という傾向は、PCゲームを楽しむ人口が増えて、こういった大会を意識している選手とよべるプレーヤー層が厚くなってきたことの表われだろう。これまで日本代表が何度か海外の大会へ遠征しているが、結果だけを見てしまえば、FPSジャンルでは、毎回緒戦敗退という惨憺たる内容に終わっている。しかし、選手層が厚くなるということは、勝ち抜くためにはゲームが上手いことが要求される。プレーヤー人口が増加=参加選手全体のレベルが向上していくという傾向がこのまま続けば、日本から海外で通じる選手が続々出ることも、夢ではないかもしれないのだ。
■ Steamのトラブルによって、CSのバージョンを急遽1.6から1.5に変更
今回のメインスポンサーであるNVIDIAのデベロッパーリレーションズ事業本部アジア部長の飯田慶太氏 |
CPL冬季大会日本予選の運営を行なったAceGamer.netの犬飼博士氏 |
見事優勝を収めたNicotineのリーダーArk選手。NicotineのメンバーにはNVIDIAから副賞としてGeForce FX 5950 Ultraの特別バージョンが贈られる |
常にSteamを介してプログラムのチェックを行なうことで、利用者に適正な利用とチートプログラムのない公平なゲーム環境を提供しようと言うわけだ。そのためにSteamのクライアントプログラムは、毎回起動時にインターネット経由でSteamのマスターサーバーから認証を受けてゲームがロードされる形式となっている。今回、その形式があだとなった。
試合スタート時、LEDZONEのLAN環境からSteamマスターサーバーへの接続がうまくいかず、ゲームが上手く起動しないという事態に陥ってしまったのだ。結局、ネットワーク設定からマシンの変更までありとあらゆる手段を試したが、それも徒労に終わり、大会はCPL夏季大会と同じく「Counter-Strike 1.5」で行なわれることになった。当然主催者側も事前のテストなどは行ない万全を期していたはずだが、それでもこういった事態になってしまったのは残念なことだ。
Steamは導入以降、その動作速度の重さ、マスターサーバーの認証機能不全、これまでのMODとの互換性の放棄、ユーザーの承認を得ずに強制的に始まるアップデートなどなど、問題が一気に噴出しており、1週間に複数回アップデートがかかるといった修正作業が行なわれている。そんな安定という言葉からはほど遠い状態にもかかわらず、Steamを使ったCS1.6で大会を実行することに決めたCPLの運営側にも問題があるが、最大の問題はLAN環境での大会にもかかわらず、インターネット経由でのSteam認証がないとゲームが起動しない、という矛盾をはらんだSteamの構造欠陥にある。
そして今回そのSteamの構造欠陥の不具合をもろに被ったのが選手達だ。CS1.6とCS1.5には大きな違いがある。それは、たとえば新しい武器が追加されていたり、武器の性能に大きな変更が加えられていたり、マップにも細かい変更が加わっていたりといった部分だ。特に武器の変更に関しては一般のプレーヤーにとっても大きな変更点だ。小さなバランス変更でも大きな影響が出てしまう高レベルな技術を争うこういった大会において、この変更はかなり衝撃的だったのではないかと思われる。
実際、CS1.6で追加されていたTactical Shieldを組み込んだ作戦を組んでいたKruesなどは急遽作戦変更を強いられたり、他のチームもマップの進行ルートを組み替え、配置を換えたりするといった具合に混乱が発生していた。
しかし、もっとも影響が大きかったのが武器の買い物の問題だろう。通常、CSでは買い物を行なう際に“B”キーで買い物メニューを出し、“4”キーでアサルトライフルのメニューに移り、“1~6”キーでお目当てのアサルトライフルを買う、という手順を踏む。CPLでは、この購入の手順を簡略化するため専用のGUIメニューを配布し、選手たちにはこのメニューを使ってのみバインド(任意キーへの動作割り当て)が認められているのだが、1.6から1.5に変わったことによりこのバインドが一切使えなくなった。
結果、選手たちはB→4→3という具合にキーを押して装備を整えることになったわけだが、1.6では新しい武器などが追加されたことによって買い物メニューの番号割り当てが1.5から大幅に変わっている。これにより試合中に武器を買い間違えるプレーヤーが続出。百戦錬磨の選手たちといえど、使い慣れていない武器を使うのはかなり厳しいらしく、試合中に「なんでこんな銃買ってるんだーおれー、こんなの使えねー」という声がこだましていた。言うまでもなく、こうした状況を押して大会を続行した運営側の責任は重い。
■ 今回も劇的なドラマが発生したダブルイルミネーショントーナメント
プレイオフ、勝利が決まった瞬間ガッツポーズをとったNicotineのowan選手。観客席の友達や選手同士で健闘をたたえあう |
ダブルイルミネーションはオリンピックなどでも採用されているトーナメント形式で、いったん負けたチームはルーザーズバゲットと呼ばれるトーナメントツリーに移行し、もう一度トーナメントを戦っていくことになる。簡単に言ってしまえば2回負けたら敗北が決定するという方式で、トーナメント初戦で強豪同士のつぶし合いがあったとしてもそれをカバーできるように考えられたトーナメント方式だ。仮にいったん負けたチームでもルーザーズバゲットを勝ち進めば、ウィナーズバゲットを勝ち進んできたチームと優勝をかけて戦うことができる。
もっとも優勝するためにはウィナーズバゲットを勝ち進んできたチームを2回連続で倒さなければいけない。今回のトーナメントでそれを体現したのが優勝を飾ったNicotineだった。彼らはトーナメント2回戦でXenocrystとあたり、13:6(T6:C6 / C0:T7、Nicotinはテロリストスタート)という大差で負けてしまった。
しかし、ルーザーズバゲットに移った彼らはそこから盛り返し、決勝トーナメントでXenocrystと再び相まみえ、今度は13:7(T4:C8 / C3:T5、Nicotinカウンターテロリズムスタート)と逆転勝利、プレーオフへと持ち込んだ。今回の大会でもっとも衝撃的だったのはこのプレーオフの試合、チーム力のNicotineと個人技のXenocrystという両チームの特徴が十二分に出ていた。
プレーオフでの注目ポイントはいくつかある。1つはXenocrystのparanoiac選手のハンドガンだ。CSの試合では、最初のラウンドはハンドガンで戦うのだが、paranoiac選手は味方がやられて追い込まれた時点から、怒涛の5人抜き。最初のハンドガンラウンドで負けると、その後の2ラウンドもエコラウンドと呼ばれる買い物のための資金をセーブするラウンドとして負けることがほぼ確定するため、このparanoiacのハンドガン5人抜きでの逆転劇はXenocrystを一気に活気付けた。
しかし、ここで終わらないのがNicotine。もうひとつの注目ポイントは彼らの作戦だった。エコラウンドによって装備を整えた彼らは、3分という1ラウンドの制限時間をいっぱいに使って戦うという作戦を取った。1分2分と過ぎる時間、痺れを切らしたのはXenocryst。1人あるいは2人で周囲を警戒しながらも、ジリジリとマップを移動してNicotineのプレーヤーを探すが、逆に要所で待ち構えていたNicotineに立て続けにやられてしまう。個人技に優れ、守備よりは攻撃を選択するXenocrystの性格を読んだ作戦だったと言えるだろう。
むろん、そのままやられ続けるXenocrystではない。リーダーXrayNが、得意とするAWP(スナイパーライフル)を使って、遠距離から的確にNicotineのメンバーを打ち抜いていく。時には直線上に位置した2人のプレーヤーを1発で打ち抜く「2枚抜き」などを披露して会場を沸かせた。しかし、Nicotineのスローペースな作戦はそれを上回っていた。
テロリスト側だったNicotineは、攻める以上爆弾を仕掛けなくてはいけないのだが、時間いっぱい使って戦術を取ったため、設置した瞬間のラウンド残り時間は34秒を表示していた。爆弾が爆発するには35秒必要なので、Xenocrystは1秒足りないと判断して戦闘を回避したところ、ラウンドの残り時間が0:00を刺した瞬間、爆弾は爆発した。34秒の表示がされていたものの、ゲームプログラム内のカウントはまだ35秒だったのだろう。ラウンドの時間をいっぱいに使い、最後の最後で微妙なカウント誤差に賭けたNicotineが勝利を拾ったわけだ。
■ チーム構成が安定しないことによる実力の伸び悩みがうかがえた冬季大会
会場にはWCG2003の日本代表として活躍し、いまや日本を代表するFPSプレーヤーとなったKikuji選手の顔もあった |
なぜレベルが追いつかないかというと個人技という面での問題がひとつあるが、大きいのはチームメンバーが固定化されず、連携や作戦といったチーム力が育っていない点が大きい。今回出場チームを見ると気づくが、CPL2003夏季大会の優勝したチーム「DeadlyDrive」を始めとして、過去の大会に出場したメンバー達がチームを変えて大会に参加してきている。この件に関して会場に来ていたDeadlyDriveの選手たちに理由を聞いたところ、一様に「こういった大会に対するスタンスの違い」というコメントが帰ってきた。こういったチームの集合離散という状況はDeadlyDriveに限らず今回参加したチームにも見ることができる。
CPLは夏季大会、冬季大会と今回で2回目だがその前後にあったWCGも含めて、参加チームの名前が毎回変わり、選手もあっちのチームへ行ったりこっちのチームへ行ったり、あまつさえ大会のために新規のチームを組みました、というパターンが多い。いや、大会に合わせてチームを作るのが悪いとは言わない。しかし、大会が終わった後、勝ち負けにかかわらずチームが解散してしまうことが非常に多いのだ。
チーム強化のためにメンバーの入れ替えをするならまだしも、解散が日常茶飯事の現状では落ち着いて戦略や作戦を練ることはなかなかできないだろう。こんな状況ではいつまでたっても世界に通用するレベルのチームは誕生しない。今回出場した4チームは結果如何に関わらず継続的に練習を行なって個人技に加えて、作戦を磨きチーム全体としての実力を練り上げて欲しい。特にCounter-Strikeは5人でのチーム戦なのだから、最低でも半年は練習を重ねて欲しいものだ。
CPL冬季大会の日本予選は終了したが、NicotineのArk選手は最後のインタビューで「いろいろと課題の残る結果だった。特にDe_Dust2 とDe_CPL_Millに関しては練習不足・作戦の検討不足など不満が残る結果になってしまった。また、個人技という面ではXenocrystの面々に劣る部分も多く補強が必要だと感じた。がんばってCPL本選へ行ってまずは1勝をしたい」とコメントしている。本戦は、米国ダラスにて12月16日から20日の日程で開催される。まず一勝を目指して日本代表たちにはがんばってほしいものだが、国内に残るプレーヤー達も、来年の夏季大会やWCG2004を目指して今から動き出してほしいと思う。
今回のCPL冬季大会では、LEDZONEから少しはなれた廃工場を借りてLANパーティが行なわれた。会場には40台弱のPCが持ち込まれ、会場時間の朝10時から夜の20時まで、ゲーマーたちが日ごろはネットワーク経由でしか会えない友達たちと顔を突き合わせて遊んでいた。また、会場にはLEDZONEの予選もプロジェクターによる大画面で中継されていた |
参加有志がXboxを持ち込んでHALOの16人対戦などを行なっていた。機材はマイクロソフトのXbox事業部からの提供品。さすがネットワークゲームになれたPCゲーマーたち、すぐに声を掛け合い対戦を楽しんでいた |
□AceGamer.netのホームページ
http://www.acegamer.net/
□CPL2003冬季大会日本予選のページ
http://www.acegamer.net/cpl/2003winter/index.php
□関連情報
【10月29日】AceGamer.net、「CPL2003冬季大会日本予選」を11月16日より開催
賞金総額10万ドルの「Counter-Strike」世界大会
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20031029/cpl.htm
【10月19日】「World Cyber Games 2003」閉幕
上位入賞が軒並み入れ替わった第3回大会、総合優勝はドイツ
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20031019/wcg_02.htm
(2003年10月27日)
[Reported by tyokuta]
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