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「World Cyber Games 2003」閉幕
上位入賞が軒並み入れ替わった第3回大会、総合優勝はドイツ

10月10日~18日開催

会場:ソウルオリンピックパーク

 韓国ソウルのオリンピックパークにおいて開催されていたコンピュータゲームの世界大会World Cyber Games(WCG) 2003が全日程を終え、3回目の幕を閉じた。最終日となる10月18日は、メイン6種目の決勝戦に加えて盛大な閉会式が執り行なわれた。

 本大会では、ヨーロッパ勢が全種目において予想以上の活躍を見せ、7種目中5種目において優勝を獲得し、WCGがアジア中心から欧米中心の大会となったことをまざまざと見せつける結果となった。総合優勝は金3、銀2の成績を残したドイツで、ホスト国の韓国は、3年連続の総合優勝は逃したものの、大会最後の競技となった「StarCraft: Brood War」決勝戦において、今回唯一決勝まで勝ち進んだogogo選手が、ドイツのFisheYe選手を2対1で下して優勝したことで国別総合3位となり、かろうじてホスト国の面目を保った。なお、日本は、優勝が期待されたHALEN選手が個人戦、国別団体戦ともに敗れたことで、WCG参加3年目にして初のメダル獲得なしという結果となった。

 本日開催された試合は、開催順に「Unreal Tournament」、「Age of Mythology」、「Half-Life: Counter-Strike」、「Warcraft III: Reign of Chaos」、「FIFA Soccer 2003」、「StarCraft: Brood War」の6試合。本稿では注目の対戦を模様と、その後行なわれた閉会式の模様をお伝えしたい。


■ FPS決勝は“スーパープレイの競演会”
~「Unreal Tournament 2003」決勝

次の対戦相手を知らせる告知。FPSの試合前には毎回ビートの効いたテーマ曲を流していたが暗い場内にいい演出だった
試合中の両者。たびたび大きな拍手や歓声があがるところは他のプロスポーツと同じ
左が優勝したイタリアのForrest選手。右がオランダのLauke選手
 最終日の最初に行なわれた「Unreal Tournament 2003」の決勝では、オランダのLauke選手とイタリアのForrest選手のヨーロッパ勢同士の戦いとなった。優勝候補は、大会前から優勝候補の筆頭に挙げられていたLauke選手。彼は決勝リーグで日本予選1位のkikuji選手をワンサイドゲームで下し、全勝で勝ち上がってきている。

 昨日の3位決定戦からすでにそうだったが、世界トップクラス同士の対戦は、まさに“スーパープレイの競演会”とでも形容するしかないぐらい素晴らしいプレイの連発だった。動きひとつとっても、常に限りなく死角をゼロにする位置を移動し続け、ステージ上にポップする全アイテムの位置を記憶しているだけでなく、リポップ時間まで正確に把握しており、動きにまったく無駄がない。

 射撃テクニックも言わずもがなで、射線がわずか数ドットしかない地点からピンポイント射撃したり、三角跳び空中に逃げる敵を正確に撃ち抜いたりなど、信じられないテクニックのオンパレードだ。ましてや同作はスポーツ系FPSの代表格であるため、双方の動きが超高速。コンマ数秒の接触で必ずどちらかがやられるという、3位決定戦同様、まさに目が離せない試合となった。

 決勝戦は、100のアーマーやダブルダメージなど、戦術上避けて通れない重要なアイテムのリポップのタイミングでコンマ数秒ほど接触するという、見ているこっちがハラハラするような展開となった。双方とも完全にリポップ時間を把握しているため、無人の通路を射撃したと思ったら、ミサイルが滞空中に、アーマーがポップし、それを取りに来た敵にミサイルが直撃し、場内拍手喝采といった感じで、一介のゲーム記者では到底たどり着けないような精神的領域の思考によるハイレベルな試合運びとなった。

 日本チーム監督の犬飼氏の話によれば、UTのようなスポーツ系FPSは、特に1対1用の小型マップでは、倒した敵が準備が整う前に再度倒すというケースが多く、わずかな実力差でもワンサイドゲームになりやすい危険性を持っていると指摘するが、彼らは決してそうならないところが実は一番凄いという。試合を見ていると、確かにミサイルの直撃を食らってHPが1桁になったところで逃げに逃げまくって、HP回復アイテムをゲットし、アーマーを整えて、徐々に体制を整えていく。

 試合結果は、おおかたの予想を覆してイタリアのForrest選手が2本先取して優勝を決めた。選手たちに感想を聞いたところ、「動きが鈍かった」、「取れるところで取れてなかった」などLauke選手に対するコメントが目立ったが、kikuji選手の実父であり、コーチでもある寺沢氏は試合前からForrest選手が勝つと断言していた。

 理由を聞いたところ「Forrestは、ウォームアップでコンボ(難易度の高い破壊力抜群の射撃テクニックのひとつ)をしきりに練習していました。彼は試合中に決定的な場面でコンボを決め、Laukeを引き離したわけですが、基本的な技量が一緒なら、ああいう具体的な“強さ”を持つ選手が最終的には勝つと思ってました」とコメント。ともあれ「FPSは深いなあ」としみじみ感じさせられた試合だった。


■ 「Counter-Strike」の欧米頂上決戦は、スウェーデンのSKが制す
~「Half-Life: Counter-Strike」決勝

アメリカのCS大会CPLでも彼らは1位と2位。名実共に最強の2チームの激突だけあって会場は大いに盛り上がった
ウォーミングアップを行なう両チーム。左がスウェーデンSK、右が米国3Dだ
ウォーミングアップ時は、その練習模様が5つのプラズマモニタに映し出され、リアルタイムで見ることができる。試合中モニタを消すのは、チートの危険性をなくすためだ
スタンドはぎっしり観客席で埋まった。韓国ゲームファンではなく、選手やその関係者などWCG参加者ばかりだ
 さて、本大会で事実上のお国ゲーム「StarCraft: Brood War」を除いてもっとも盛り上がったのが、今なお圧倒的な人気を誇るFPS「Half-Life: Counter-Strike」(CS)決勝だ。世界最強のクランと呼ばれるスウェーデンのSKに対するは、CSの大会がもっとも盛んに行なわれている米国最強のクランTeam 3D。

 この2チームは、いずれも最強の呼び名を持ちつつもこれまでなかなか直接対決する機会がなく、今回のWCG決勝での対決をドリームマッチと呼ぶ関係者も多かった。日本チーム監督の犬飼氏も「この対戦のチケットなら、私は10万でも買います」と興奮気味に語る。ギャラリーはUT2003に比較して約3倍にまでふくれあがり、TSNの軽快な語りと演出で試合前から場内は異様な盛り上がりを見せ、興奮が最高潮に達したところで試合が開始された。

 試合内容に入る前に簡単にCSの試合ルールについて説明しておきたい。まずCSは5対5の団体戦となっているところが他の種目と大きく異なる。両チームはテロリストとカウンターテロリストの役割にわかれ、敵の全滅あるいは爆弾の爆発か解除で1ゲーム獲得となる。13ゲーム先取で1本獲得となり、2本先取したチームが勝利となる。

 CSのマップは、UTのようなスポーツ系FPSとは異なり、左右均等ではなく、テロリストとカウンターテロリストの勝利条件も違うため、平等になるように12ゲームで交代となる。どのマップも、テロリストあるいはカウンターテロリストが微妙に有利になっているため、先行逃げ切りあるいは終盤追い上げの展開になりやすく、そうした試合展開がギャラリーとしてはおもしろくてたまらない。

 それともうひとつ重要なのが武器を購入するルール。CSでは、全プレーヤーともナイフとピストルのみでゲームが始まり、手持ち資金から好みの武器を購入して、行動を開始していく。このため、完全に平等なのは1ゲーム目のみで、2ゲーム目以降は、勝った方は武器持ち越し&賞金獲得でますます有利となり、一方負けた方は、武器喪失&資金減少となりますます不利になる。

 さらに、CSは登場キャラクタの性能を人間の枠内に抑えたリアル系FPSであるため、基本的に向かい合ったら逃げられない仕様となっている。しかし、貧弱な武器では撃ち合いにすらならず、遠距離から狙おうにも弾が狙い通りに飛んでくれない。要するに技量が同じでも武器の面で勝負にならなくなるわけだ。そこでどうするかというと、1ゲーム目を落としたチームは、2、3ゲームで武器を買わず資金を貯め、負けて当たり前、勝てば大金星の覚悟で戦いを挑む。これをエコラウンドと呼ぶ。そして4ゲーム目に、敵と同等の武器を揃えて勝ちを狙いにいくわけだ。

 以上のようなセオリーを理解していないと、なぜ1ゲーム目を取ったチームが激しく喜ぶのか、なぜ毎回いとも間単に3-0の展開になるのか、そして試合数が3の倍数なのかが理解できない。わかり出すと、選手たちの思考の一部が理解できたようで、観戦のおもしろさが倍増する。ちなみに極端になると、1本目取られたチームは、2、3試合目の 開始直後にメンバー同士で撃ち合って自滅消化することもあるぐらいだ。ただ、これに関しては、数百人のギャラリーとHLTV(Valveが提供している試合観戦システム)を通じて試合を観戦しているCSファンに対して失礼だろうという気がする。

 さて、試合のほうは、1ゲーム目を制したSKが、米国ランク1位(=世界1位)の実力を見せつけて3Dを押し切り、13対7で1試合目を終えた。勝負は常に一瞬なので、細かいテクニックまではよくわからなかったが、基本的な動きひとつとってみても、非常にきびきびしており、行動に迷いがない。毎回、各通路に対する人数振り分けが異なり、見ていて非常におもしろい。遠くの観客席から3分遅れで流れるHLTVの映像での観戦なので、彼らが送り合っているサインなどは一切わからないのだが、それを差し引いても十分魅力的だ。

 また、CSはスポーツ系FPSと違って、人間的な動き(ジャンプ、移動速度、着地ダメージなどなど)しかできないため、ある程度の予測ができて、試合展開がわかりやすい。たとえば、投げられた手榴弾をぎりぎりで避けて、出てきた敵の眉間を撃ち抜く、短時間で次々に肩車して高いところに飛び乗る、壁の向こうの敵を察知して見えない敵を撃ったりなど、会場から拍手喝采が起こるシーンは、一発でそれとわかるようになっているのがありがたい。

 続いて行なわれた2試合目では、SKが1ゲーム目を制し、2-0で迎えた3ゲーム目でサーバーがフリーズし、再試合となった。再試合では3Dが1ゲーム目を取り、10対2まで一気に追い込んだが、そこからSKが馬力を発揮して、最終的に13対11で3Dを破り優勝を決めた。無料で観戦できたのが少し申し訳ないぐらい興奮に満ちた素晴らしい試合だった。

【「Half-Life: Counter-Strike」決勝】
2試合を通して圧倒的に強かったSK。特に2試合目で2対10の劣勢から試合をひっくり返した彼らの団結力は見事としかいいようがない


■ 「StarCraft: Brood War」以外は盛り上がりに欠けたRTS部門
「Age of Mythology」、「Warcraft III: Reign of Chaos」、「StarCraft」決勝

「Age of Mythology」の決勝は、さまざまな要因によりつまらない試合となってしまった。MS風間氏も「HALEN君なら、陸戦もやっておもしろい勝負したはずなのにねえ」と不満気味だった
左は準優勝に終わった台湾のIamShiauTz選手、右が優勝したpgfire選手
ドイツの選手団の元気な応援が印象的だった
 今年のRTS部門は、「Age of Mythology」と「Warcraft III: Reign of Chaos」という2大タイトルが加わった割には、あまり盛り上がらない展開となった。もちろん、これは「Age of Mythology」でHALEN選手が破れてしまったことと無関係ではないが、根本的な理由として、いまだに解説を韓国語でしか行なわれないためだ。

 いずれも観戦モードで、ゆったり観戦できるところはいいが、操作しているのは韓国人スタッフで、韓国人解説者の解説内容に応じてころころ視点を変えるため、何がどうなっているのかわからない。場面場面での状況を見れば、どちらが優勢なのかは判断できるが、途中のプロセスが見えないため、韓国以外の残り54カ国の観戦者は勝ち負けしかわからないという具合になっている。

 また、もうひとつ重大だと思ったのも、試合内容そのものもHALEN選手が優勝した昨年に比べてずいぶんつまらないものになっている。今回RTS部門で一番おもしろかったのは、本来もっとも地味に見えてしかるべきの「StarCraft: Brood War」で、「Age of Mythology」と「Warcraft III: Reign of Chaos」に関しては、正直言って来年も観戦したいとは思わなかった。

 もちろん、これは出場選手や試合内容にもよるが、いずれにせよこれは2002年度以降に発売されたそれらのRTSが、スポーツとエンターテインメントとの狭間で明らかな乖離現象を起こしていることを意味している。つまり、ゲームデザインが複雑になればなるほど、本来ゲームが追求してきたエンターテインメント性と、RTSの最大の魅力であるスポーツ性との整合性が取れなくなっている、という印象が強い。

 具体的に例を挙げて説明すると、「Age of Mythology」決勝2戦目の地中海の1戦では、予想どおり序盤から中央の湖で戦略も戦術もない船同士のたたき合いに終始し、海上戦での劣勢を悟った台湾のIamShiauTz選手が投了を宣告して、ドイツのpgfire選手の優勝が決まった。プロレスでいえば、ふたりが最初から場外乱闘をはじめ、タイムアウトぎりぎりにリングに上がった選手が勝利。試合時間3分。そんな試合だ。

 こういう展開になることがわかりきっている地中海を公式マップに選択したICMも問題があるし、プロ意識を忘れて船同士のたたき合いのみに終始した選手にも問題があるが、根本的な問題は、この内容を持ってプロゲーマーが全力でプレイできるゲームとするメーカー側にある。

 「Warcraft III: Reign of Chaos」に関しても、パターンの繰り返しと運の介在要素に関して同質の問題点を感じた。細かい話は長くなるので省くが、結論としては、FPS 2タイトルのプロスポーツとしての完成度の高さ、リスクをおかして高難易度プレイを実践してみせる選手たちのプロ意識の高さと比較して、RTSはあらゆる面でプロスポーツとしての完成度が低い。

 これはRTSがプロスポーツとして適したゲームジャンルなのかどうかまで遡って考える必要があるかもしれず、容易に解決策は見いだせないが、個人的にはどうもメーカー側に根本問題があるような気がしてならない。DirectX 9世代以降のRTSはどうなるのか、今後はスポーツ的な面も含めて評価を加えていく必要がありそうだ。

【「StarCraft: Brood War」決勝】
「StarCraft: Brood War」の決勝だけは、表彰式および閉会式の会場で行なわれた。相手は「Age of Mythology」で優勝し、勢いに乗るドイツ。片や韓国勢は総崩れの状況下で、落ち着いた盤石の戦いぶりで優勝をものにした韓国ogogo選手は、本大会を代表するスターといえる。今年韓国は彼の存在で救われたところが大きい

【マスゲーム】
「StarCraft: Brood War」の決勝後は、華やかなマスゲームが執り行われた。演技は30分にもおよび、ちょっと得した気分。総予算22億円はダテではない

【エキシビジョンマッチ】
マスゲームが終わるとVIPが入場し、続いてなんとogogo選手とソウル市長のエキシビジョンマッチが行なわれた。1,000万都市のトップが、こうしたイベントに出るのも韓国ならではというべきか、SAMSUNGの力恐るべしというべきか。ちなみにソウル市長はザーグを選択。市長が何かアクションを起こすたびに場内から割れるような拍手が送られた(笑)。試合そのものは、ogogo選手が武士の情けですぐラッシュをかけて勝負を決めた

【授賞式】
最後に授賞式が執り行なわれた。順番にメダルと賞金を授与し、ドイツの総合優勝を祝してテープが打ち上げられた。3年目にしてついに韓国が優勝国の座を譲り渡したのが印象的。 最後に来年のホスト都市サンフランシスコに、WCGの旗を渡して終了となった

□World Cyber Gamesのホームページ
http://www.worldcybergames.org/
□Ace Gamers.netのホームページ
http://www.acegamer.net
□WCG2003日本チームのホームページ
http://www.acegamer.net/wcg/2003/
□関連情報
【10月17日】「World Cyber Games 2003」開催
トーナメントは欧米勢が圧倒、韓国含むアジア勢は低調気味
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20031017/wcg_01.htm
【9月28日】WCG2003日本予選準決勝開催 「Age of Mythology」の日本代表2名が決定
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030928/tgs_wcg.htm
【9月22日】WCG2003日本予選準決勝開催 「Age of Mythology」の日本代表2名が決定
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030922/aom.htm
【9月18日】「Age of Mythology」WCG2003日本予選準決勝を9月21日に実施
勝者2名が韓国ソウルのグランドファイナルに出場
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030918/wcg.htm
【8月7日】「World Cyber Games 2003」日本予選の開催が決定
決勝戦は東京ゲームショウのメインステージにて実施
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20030807/wcg2003.htm

(2003年10月19日)

[Reported by 中村聖司]


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