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第2回東京国際CG映画祭「TIGRAF」開催 |
会場:六本木アカデミーヒルズ タワーホール
チケット:1コマ1,000円(前売り)
1,200円(当日)
1日券:1,500円(前売り)
4日券:4,000円(前売り)
マーク氏(左)とクリス氏(右) |
東京国際映像祭の一環として昨年から始まった東京国際CG映像祭「TIGRAF」。第2回のオープニングは、株式会社ナムコがプレイステーション 2版のアクションゲームを同時に開発中のヨーロッパ初のフルCG映画「ケイナ」が上映された。ちなみに、映画「ケイナ」は、ギャガ・コミュニケーションズの配給により、2004年3月6日から一般公開される。つまり、PS2版ゲームのほうもほぼ同時期に発売されるということだ。
2日目の会場には、ナムコ CTカンパニーの野口プロデューサー、映画のプロデューサーであるXilam Filmsのマーク・デュ・ポンタヴィス氏と監督のクリス・デラポート氏が壇上に現れ、「ケイナ」のプレゼンテーションが行われた。マーク氏は、'98年「フィフス・エレメント」のビデオゲーム化などで知られ、Xilamはゲーム制作を手がけながら映像産業に参入している稀有な存在の企業だ。また、クリス氏はH.R.ギーガー、大友克洋、宮崎駿氏の作品のファンという。とくに大友氏の「AKIRA」を見て、アニメーションに興味を持ったそうだ。
■ ジャパニメーションに影響を受けたCG映画「ケイナ」
「ケイナ」という作品は、確かにアメリカ的なエンタテイメントを重視した、ド派手な映像と勧善懲悪的ストーリーとはちょっと方向が違うものだ。制作側の意図としては、ターゲットはティーンエイジャーをメインにすえている。「ジャパニメーションに影響を受けている」というクリス氏は、「現実からインスピレーションを受けたスタイルで、クリエイターの主張が貫き通されていることがジャパニメーションの特徴」と語っていたが、「ケイナ」はまさに氏が描きたかったテーマを実現するための手段としてのフルCG映画ということのようだ。「情報が現実を観察した結果、そこからスタイルを作り上げることが大切」と氏の映像に関するポリシーはなかなか興味深い。
物語の舞台となる超自然生命体であり樹木の惑星であるアクシスには、まず巨大な1本の木が克明に描かれる。そこで暮らす人々は民族的衣装をまとい、神を信じ、大司教の支配と統制で一応の秩序を得ている。しかし、人々の足元にあるアクシスの樹液はすでに枯れかけ、その未来はおぼろげながらも衰退の色を見せている。景色は常に夕焼けのような赤みがかったものが連続し、観客の視界は常に木と雲で覆われる。そんな人々の中で育った少女ケイナが、ある日見た不思議な夢を追いかけ、人々が決して近寄らない領域へと種族の掟を破って冒険の旅に出る。
ここまではいわゆる中世ファンタジー+南アジア風の民族的雰囲気だが、ケイナが出会う謎の生き物はアーマーをまとい、巨大な機械の中で何かに向けての準備をこつこつと続けている。また、人々が神と呼ぶ存在は、アクシスの樹液を必要とする液体で構成される生命体なのだ。生き物と機械、そして異生体の登場へと、世界はSF的様相へと一気に移行していく。
「ケイナ」は1,300程度のショットで制作されており、すべてがCGで構成されている。また、予算の都合もあり、システムの研究開発に手を回すことよりも、市販のツールを使っての映像表現を追求した。逆境を、逆に独自の映像表現に結び付けて昇華していることからも、いわゆるハリウッドスタイルでの映像制作とは趣を異にしている。モーションキャプチャもほとんど使っていないとのことだ。これは「情報が現実を観察した結果……」を実証したにすぎない。また、この映画のライティングはアニメよりむしろ実写を研究した成果が発揮されているということだ。
また、声優に関してはいわゆるアニメに声をあてている役者ではなく、俳優を起用し、いわゆる「地声」で収録してもらったという。このあたりにも単なる「アニメ」という枠組にとらわれない作品作りを意図していたことがうかがえる。
それを裏付けるように、プレゼンのラストには。ケイナのモデルを使って実在の女優にインタビューを行ない、アニメーターに映像を渡して彼女の動きをケイナにシンクロさせたインタビュー映像を上映した。
「3Dは誰も見たことのない新しい映像を作り出すための発明を創出することできるすばらしい手段である」というクリス氏の言葉が印象に残った。
左がツール上、右が出来上がったシーン。こういった製作途中の映像がたくさん見られた | 女優さんの動きをアニメーターがケイナのモデルに付けたインタビューシーン |
■ ゲームと映画を同時に製作することでリソースの節約と世界観の統一を実現
ナムコ・野口氏 |
野口氏からはゲーム制作に関するエピソードが語られた。
「3年ぐらい前に初めて「ケイナ」の話をいただいた。最初に見た映像は「イルポ」というキャラクタの映像だった。やせこけた老人が得体の知れない虫のようなキャラクタとしゃべっていて、「これをゲーム化する」という話だった。最初はイルポが主人公かと思ったので、『ゲーム化はちょっとどうかな?』と思ったのだが、実際は後から主人公がケイナだとか、詳細がわかってよかった」とスタート当初のエピソードを披露。
「ゲームは99%完成している。映画のシーンももちろん入れているが、ゲーム独自のリアルタイム映像もかなり用意している。映画のスタッフがゲームの製作にも密接に関わりを持っているし、監督のクリス氏がゲーム独自のシナリオを熱心に話されていたことが印象に残っている」と現状のゲーム版「ケイナ」に関して話を始めた野口氏は、「映画とゲームの同時期制作」に関してのいくつかのポイントを語ってくれた。
まず、こういった映像とゲームが密接に関連したプロジェクトが遂行できている理由は、やはり映画がCGで制作されていることが大きいという。また、PS2というハードでもかなりのレベルで映像生成ができるようになったこともポイントとなっているようだ。ゆえに、映画用のテクスチャをPS2に応用したりなど、ゲームと映画の世界観を一致させることができ、コスト面でもイチからテクスチャを作らなくてもよくなった分、時間もお金も節約できたそう。ただ、クリーチャーに関しては映画よりもゲームのほうが多い分、新たに制作するところも多くなっている。
ただ、「同時に映画とゲームは別のものであることを頭に入れて制作しないといけない」と野口氏はメリットばかりではないことを協調した。「ゲームの中で重要なインタラクティブを強く意識しないといけない。映画のストーリーはある意味非常に複雑になっているし、それがひとつの特徴だが、それをゲームに関してはシンプルな形のストーリーにしている。最も違うのはケイナの動きに関して注目して制作したところ。ある意味アクロバティックなアクションが多いが、その部分を生かしてゲーム化している。特にクリーチャーとのバトルに集約して爽快感を演出している」と、ゲームならではのアレンジ、そしてまとめ方について提言した。
PS2版「ケイナ」は日本語吹き替えで、さらに日本語字幕という仕様となっている。洋画の吹き替えを行なっている声優さんを起用しているそうだ。また、オリジナルストーリーということもあり、武器の持ち替えが可能。ナイフや剣はもちろん、銃も持つことができるようになっている。この武器の持ち替えにより、連続攻撃が変化してパワーアップしたり、あるシーンでは雷撃のエフェクトを伴った攻撃を行なうなどの違いがあった。また、ケイナの衣装もオリジナルのものが用意されているという。
また、ケイナが得意なスケッチを集めることもできるようだ。その一部が公開されたが、映画版に登場しないクリーチャーが多数出現するようだ。その姿はメカ+生物といったスタイルだが、ややメカ寄りのものが多いように見えた。デザインは映画と同じスタッフが手がけており、確かに違和感は感じられなかった。動きなども「この世界に生息しているということを考えつつ」制作したというこだわりよう。
ゲームから始めても良し、映画を見てからゲームを遊んでも良しという相乗効果を狙っていることがはっきりわかる野口氏のプレゼンテーションだったが、CG映画とゲームの相性の良さ、そして新しい作品でもより映画の領域に近づいていくゲームに関して、今後は最初から映画とゲームをターゲットに制作するとき、ゲームから映画へという今までとは逆のアプローチも行なえること、そして制作初期から両者のスタッフが係わり合いを持ち、イメージをひとつにして制作しなければならないこと、スケジュール管理を上手く行なう必要があることを示唆し、プレゼンは締めくくられた。
ゲームオリジナルのアングルやリアルタイム映像などのデモシーンも多数取り入れられている | ||
武器の装備画面 | ケイナのスケッチ | 設定資料。ゲームオリジナルのもの |
(2003年11月5日)
[Reported by 佐伯憲司]
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