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Eidos UKレポート

「Republic: The Revolution」開発者Demis Hassabisインタビュー
ついに完成が見えた政治シミュレーションゲーム

会場:Wimbledon Bridge House

 昨日に続いてのインタビューはEidosの秘蔵っ子Demis Hassabis氏。同氏は19歳でケンブリッジを首席で卒業し、その後、Peter Molyneux氏に弟子入りするような形でゲーム開発のノウハウを吸収。「Black & White」開発後に独立を果たし、それ以降自ら設立したゲーム会社Elixir Studiosにて「Republic: The Revolution」の開発に全力を注いでいる。現在25歳。親子ほど年の離れた英国ゲーム界の父として名高いIan Livingston氏(Eidos会長)ですら一目置くほどの存在だ。

 開発からすでに4年が経過した「Republic: The Revolution」は、E3の常連タイトルとして毎年新しいコードを出展しては、Demis氏がプレスに対して壮大な構想を語るのが常だった。しかし、ついに今年、Eidos本社の強制力が働き、理想のゲーム像を追い続けるファンタジーではなく、利益を生み出すビジネスとしての修正を余儀なくされたようだ。

 それを実感したのは、今回のディストリビュータ向けのミーティングで、最新コードによるデモンストレーションを見たとき。これまでより遙かにゲーム内容が具体性を帯び、内容の説明も将来的な構想ではなく、デモを見せながらその内容に補足を加えるといった感じで、ようやく全容が見えてきた。「ついに今年プレイできそうだ」という確かな感触を得た。発売時期は6月。6月決算のEidosは、年度内の発売を厳守させる方針のようだ。

 今回はその彼に、ミーティングの間隙を縫う形でインタビューをお願いした。ただでさえ彼は多忙を極める上に、インタビューの途中でEidos本社があるWimbledon Bridge Houseでぼやが発生し、全フロアの人間が外に緊急避難するという、まったく想定外のアクシデントも発生した。このため、聞きたいことをすべて聞くことはできなかったが、だいたいの全貌は掴めたつもりだ。

 E3でマスター版が公開され、E3に前後して体験版もリリースする予定。発売は6月という。唯一のライバルは師匠のPeter Molyneux氏の最新作「Black & White 2」ということだ。


■ 市民が大統領を目指す政治SLG「Republic: The Revolution」

Demis Hassabis氏が書いたメモ
編集部(以下、編) 今朝、デモンストレーションを見せてもらいましたが、昨年のE3で出展されていた内容とは、かなり違う印象を受けました。どこがどう変わったのか教えてください

Demis Hassabis(以下、D) インターフェイスをシンプルにして、プレイしやすいようにした。また街のサイズも無限ではなく、限定的なものにし、「Town」、「City」、「Capital」の3つにわけた。それから操作するキャラクタの数は9人から6人にして、街のステージが変わるごとに雇うキャラクタを変えていくようにした。

 街のステージが上がるごとに持ち越されるキャラクタを限定的なものにしたのは、ゲームプレイの内容を街の規模に合うようにするためだ。たとえばTownでは、暴力をふるうチンピラ、Townではそのエリアに影響力を持つマフィア、そしてCapitalでは軍司令官が雇えるようになる。

 街のグレードが上がることによってゲームプレイにどういう違いが生まれてくるのでしょうか?

D そのステージごとに異なる目標が設定されている。最終目的はCapitalで大統領になることだが、スタート地点であるTownではパワーベースの政治が展開される。つまり物理的な力でそのエリアを収めていく手段がもっとも手軽で効果的ということになる。Cityになると複数のマフィアが存在し、その派閥争いに勝利したり、あるいはマフィアを金で操るといったことが必要になってくる。Capitalでは、最終目的である大統領になるために、マスコミや経済界、軍などをうまく操る必要が出てくる。

 一応、ステージクリア型になっているが、資金や人脈などはすべて継続性があり、時系列で進んでいくことになるのでTownにあまり時間を掛けすぎると、Cityのマフィアが少々の金では押さえきれないぐらいに強大になっている可能性もある。

 なるほど。それでは資金が足りない。人材が足りないという時に、CapitalからCityへ、CityからTownへと逆戻りすることは可能なんですか?

D それはできない。いったんステージを上がったら、そのステージから下がることはできない。

 このゲームにおいてプレーヤーはひとりの人間として生活を送り、賛同者の協力を得つつ、最終的に彼を大統領にするのが目的ということになる?

D そのとおり。デモでも見せたようにスーツを着た一般人が貴方の分身だ。身分で言うとリーダーということになる。キャラクタには4つのパラメータが設定されていて、Powerは物理的な力、Charismaは行動に対しての影響力、Controlはマキャベリストとしての才能、Presenceは指導者としての才能を示している。

 リーダーのサポートをしてくれる5人のキャラクタはどのようにして雇うのでしょうか?

D 一般的なのはお金で雇うことだが、脅し、圧力、説得といった手段もある。脅しにも数段階あって、リーダー自らが暴力をふるったり、他の人間に命令して集団でリンチを加えたりできる。

 大統領になったらゲームクリアということになるのか?

D そのとおり。ただし、時間を掛ければ誰でもクリアできるわけではなく、敵対組織による暗殺、国家からの追放、進退窮まっての自殺といった具合に途中でゲームオーバーを迎えることもある。晴れて大統領になると、自分の歴史が一冊の本になり、その中にプレーヤーが大統領になるまでの軌跡が事細かに記されることになる。が、とにかく発売を間に合わせないといけないため、もしかするとこの機能は未収録になるかもしれない(笑)

 街のグレードを上げるためには何をすればいいのでしょうか?

D Town、City、Capitalともにすべてオブジェクトが設定されていて、それを達成することによって、新しいエリアへ行けるようになる。具体的には警察に賄賂を使ってマフィアの力を落としたり、暗殺者を使ってライバルを消したりなど。全体で20から25のオブジェクトが設定されている。

 プレーヤーは自由にオブジェクトを決めることができる。それによって自分に合ったスタイルでゲームを進めていくことができる。具体的なオブジェクトとしては、たとえばCapitalでは、経済危機を起こすこと。いったん経済を崩壊させて、そこにプレーヤーが介入することで大統領への道が近くなる。Cityでは、経済的、宗教的、軍事的の3とおりのオブジェクトがある。

 または、現在の大統領を集中攻撃して孤立させてしまってもいい。米国のブッシュ大統領とイラクのフセイン大統領を想像すればいい。

 Town、City、Capitalの大きさは実寸でどれぐらいなのでしょう?

D Townが1km×1km、CityとCapitalは2km×2km。そこで生活を送る人々の数はTownが1万人、CityとCapitalが2万人ずつだ。すべてリアルタイムで独自のAIで生活を送っている。

 全体のプレイ時間は何時間を想定している?

D うまいプレーヤーで12時間ぐらいだ。ゲーム時間でだいたい60日だ。

 「Republic」を開発する時に参考にした国や政体というのはあるんですか?

D ウクライナ、カザフスタンだ。右翼、左翼がはっきり別れていて、宗教的にも分裂がある。ゲームの素材としては格好だった。ゲームを開発する前に英国図書館に行って1年ぐらい掛けて共産主義の本は全部読んだ。カストロ、レーニンの著作などをね。

 突然ですが、日本の政治についてはどう考えていますか?(笑)

D 戦後少しずつ変わっているが、トータルで見ると超保守的だ。今後、新しいアイデアを持った若い政治家が出ることが望まれるね。

 英国の政治はどうですか?

D 非常に退屈だ。議会の全員が中間に立っている。ブレア首相は右派を装っているが、実は中間だ。反対勢力の野党も何の特徴もないし、野党として非常に弱い。

 なるほど。いまのコメントのような選挙を行なって選ばれた政治家により運営される議会政治は、今回は入っていないのですか? つまり、ヒトラーのようなプレイの仕方はありえるんですか?

D ない。というのは、ストーリーラインを考えたときに、選挙制度を導入すると、プレイが非常に煩雑になってしまうからだ。エンターテインメントとして成立させるために、非常に原始的な政治スタイルを採用した。

 なるほど。ゲーム画面は、ヨーロッパを思わせる文明的な建物が並んでいますが、実際にそこで行なうのは非常にプリミティブな政治ということですね。

D そのとおりだ。

 グラフィックについてお伺いしたいのですが、E3で見たときより遙かに綺麗になっていたようですが?

D グラフィックエンジンはあれから大幅に改良した。E3の時はポリゴンを大量に使っていたが、それでは現行のPCでは動作しないことがわかったので、ポリゴンを減らしてメモリ領域を作り、代わりにハイカラーのテクスチャを張って対応した。見た目にも美しく、動作も軽くなっているはずだ。

 サウンドについて聞かせてください。デモではときおり流れる声楽曲が非常に印象的でした。

D 音楽に関してはジェームス・ハリガンという作曲家がすべて担当している。私が彼にここはロシア的なイメージ、クラシックなイメージ、マフィアなイメージといった具合にイメージを伝えて作曲してもらっている。

 私はゲームにおいてBGMは非常に重要だと考えている。無音だったら無味乾燥に過ぎないものがそこに音楽が加わることによって、視聴者の情感に直接訴えかけることができる

 6月に出ますか?(笑)

D 6月に出すスケジュールで動いているので、出せるだろう。E3ではマスターに近いβ版を出展する。体験版もリリースする予定だ。楽しみにしていてほしい。

 ありがとうございました。

最新一歩手前ぐらいのスクリーンショット。現在は画面端にプルダウン式のメニューが用意され、適宜メニューを引き出してキャラクタに対して適切な指示を行なっていくことになる



□Elixir Studiosのホームページ
http://www.elixir-studios.co.uk/
□「Republic: The Revolution」のホームページ
http://www.timesplitters2.eidos.com/
□関連情報
【2002年5月22日】「トゥームレイダー」シリーズのEidosがE3前夜祭を開催!
各ゲーム機&PC向けビッグタイトルが続々登場! その2
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020522/eidos2.htm
【2001年6月12日】ドロドロした政治世界を最新のテクノロジで描く
独裁者シミュレーション「REPUBLIC:THE REVOLUTION」
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20010612/republic.htm

(2003年1月31日)

[Reported by 中村聖司]


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ウォッチ編集部内GAME Watch担当game-watch@impress.co.jp

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