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★ PCゲームレビュー★
「マイト&マジック」は数々のプラットフォームに移植されてきた息の長いRPGの人気シリーズである。ネットRPG全盛となっている昨今だが、シングルプレイならではの、じっくりと練られたストーリーと世界観を堪能しながらゲームを進めていくのも、また楽しい。「マイト&マジック」シリーズ最新作である「マイト&マジック9」は、膨大でバラエティに富んだクエストが、冒険者気分を盛り上げてくれるシングルプレイRPGだ。今回紹介するのは日本語マニュアル付英語版だが、夏には完全日本語化も予定されている。 ■ クエスト主体のシングルRPG 「マイト&マジック9」(以下MM9)は、4人のキャラクタで編成されたパーティを操作し、広大な世界を冒険しながら数々の問題を解決し、大陸の危機に立ち向かっていくシングルプレイRPGである。連綿と続くシリーズではあるが、ストーリー的には各作品ごとに独立しており、初めてマイト&マジックシリーズにチャレンジする人でも違和感なく世界に入っていけるストーリーだ。 プレーヤーはチェディアンと呼ばれる地域で難破した冒険者だ。このチェディアンには地域ごとに6つの大氏族(クラン)があり、それぞれのクランでは“ヤール”と呼ばれる独自の指導者をたてて生活をしている。だが、西部地方のベルドニアが、突如、巨大な軍勢チェディアンへ進軍を始めた。それを知ったプレーヤーは、チェディアンの6つのクランを統一勢力とするため、各地のヤールへと進言をしにいくことになる。
ゲームは、この6つのクランのヤールたちを説得する事で進んでいく。彼らを納得させるために、盗賊退治やダンジョン探索などの様々な依頼やイベントをこなしていき、戦闘やクエストクリアなどによってキャラクタを成長させていく。ゲーム中には数多くのクエストが待ち受けているのだが、それらを次々と解決していくことでメインの物語も進み、さらに多くの謎が明らかになっていく。つまりMM9は、クエスト解決でストーリーが進み、戦闘やクエストクリアでキャラクタが成長していくという、今時珍しくストレートなRPGなのである。
■ キャラクタを育てる喜び
キャラクタは最初は戦士か魔法使いのどちらかなのだが、ゲームが進み、プロモーションクエストと呼ばれる特別なクエストをクリアすると、合計2段階の進化を遂げ、上級職へとクラスチェンジする。上級職になるとヒットポイントやスペルポイントが増えやすくなるほか、各種スキル能力も高められる。MM9は職業によって育成できるスキルが異なっていて、戦士では魔法は第一段階までしか使えないが、魔法使いの上級職ならばもっと強力な魔法が扱える熟練度までスキルを高められるようになっている。
キャラクタのレベルを上げて成長させ、職業を変えたり、スキル熟練度を上げたりすると、グンとキャラクタが強くなったのが実感できる。このキャラがどーんと強くなるのがMM9のポイントで、キャラクタを強くして戦闘で楽をし、より強い装備をさせたいがために、どんどんクエストを解いて、経験値を稼ぎたくなるのだ。
■ 戦闘はターン制+リアルタイム制 戦闘はマイト&マジック特有のリアルタイムとターン制を融合したものだ。フィールドを歩いていると、向こうからもモンスターがやってきて、そのまま戦闘にリアルタイムで突入する。まるでFPSのように、そのまま攻撃ボタンを連打して戦闘を続ける事もできるが、ここでEnterキーを押すと、時がとまり、素早いものから攻撃しあうターン制の戦闘へと切り替わる。 MM9ではリアルタイム制でも、ターン制でもどちらでも戦えるのだが、ゲームになれないうちは、モンスターが見えたらすかさずEnterキーを押してターン制に変え、ということになるだろう。攻撃は直接攻撃と遠距離攻撃、そして魔法による攻撃や攻撃補助の3種類を、キャラクタの特性に合わせて戦闘を行なっていく。 これまでマイト&マジックというと、骸骨ドラゴン何十匹など大量にモンスターが現れる印象が強かったが、今作ではほどほどの個体数となった。ただし、数が減ったからといってパワーダウンしているわけではなく、それぞれのモンスターが考えて行動するようになり、なかなか苦戦させられる。なので、骸骨戦士が5、6匹で襲い掛かってくると、前作までの10匹程度にはドキリとさせられる。モンスター個々に迫力があるわけだ。 また、ゲームが進むと各地にいるNPCを雇え、最大7人のパーティで進む事になる。このNPCメンバーたちは戦闘に参加するほか、それぞれに特殊能力を持っていて、銀行家なら得られるゴールドの増量、盗賊なら罠開けの能力がアップといったように能力面でもパーティに貢献する。
ただし、NPCメンバーたちを雇うのにはお金がかかり、月に何ゴールドとか、手に入れたゴールドの何%とかを持っていかれる。また、NPCメンバーはアイテムを装備したり、能力が成長したりすることはない。あくまでもメインなのは最初からの4人のメンバーであり、NPCメンバー3人はパーティを援護するオプション機のような扱いになっている。
■ バラエティに富んだクエスト キャラクタの育成と共にもう一つの柱を成しているのは、各地で受けるクエスト(人々からの依頼や事件などのイベント)だ。メインストーリーを進めるためのクエストがあれば、街の人々のささいな頼み事があったり、その種類も様々なのだが、共通して言える事は、解決すると経験値とお金がたっぷり入る事。クエスト以外でそんなにたっぷりと経験値が入る機会はないため、クエストを解決するために東西奔走するとキャラクタが成長し、お金も増えてゲームのストーリーも進んでいるといった具合だ。
クエストはバラエティに富んでいて、新しい教会を建てるために新人のプリーストを探したり、人々を苦しめる盗賊を退治したり、ラブレターを届けたり、クイズに挑戦したりと実に様々。複数のクエストに並行してあたれるので、新しい街や地域を探索する時、「ここには今受けてるクエストの手がかりがあるだろうか」、「次にはどんな事件が待っているのだろう」と冒険者気分を強く味わえる。
また、クエストに関連してダンジョンに入る事もあるのだが、ただモンスターがうろうろしているだけの場所ではなく、冒険者を驚かす色々な仕掛けも施されている。例えば、トラップの床を踏むと針山が飛び出してきたり、通り過ぎた通路の後ろからモンスターが現れたり、天井が崩れてモンスターが落ちてきたりと、一時も気が抜けない。ダンジョンではかなり緊張感のある探索を楽しめる。
■ 軟弱を許さないゲーム序盤
ただし、2番目の島(最初の島はチュートリアル)で、人々の話を良く聞いてクエストをクリアするということを学ぶと、自然と島から脱出でき、最初の街にたどり着ける。このゲーム開始後1時間のとっつきにくさを乗り越えて最初の島を脱出できれば、晴れてゲーム本編とMM9の面白さの中に突入できるわけだ。もし、このゲームを購入してプレイする予定があるのならば、最初の島での冒険で挫折せず、これを本編への準備段階と思ってほしい。 ■ グラフィックとインターフェイスはもう一息。それでもやっぱり面白い マイトマシリーズはこれまでオリジナルのグラフィックエンジンで3D世界を築いてきたが、MM9ではLithTechエンジンをRPG用にアレンジしたものを使っている。今回、不満に思うのがこのグラフィックで、これまで以上にダイナミックで広大なフィールドや、人間の背の高さを考慮してきちんと作成されたリアルな街並など、良い点も多いのだが、一方で、解像度800×600固定、NPCキャラクタの顔がテクスチャ貼り付けで表情に乏しい、木がペラ紙をつぎはぎしたみたいでちゃちいといった欠点も多い。そのため、3D世界としてのダイナミックさ、リアルさは進歩したのに、全体的に一昔前のゲームのような印象を受けて非常に損をしている。 また、インターフェイスももうひとつな印象。右手マウスでフリールックと攻撃、左手十字キー(もしくはA、S、D、W)で移動なのはFPS風でとてもプレイしやすいのだが、ドアの開閉などのアクションと敵を攻撃するアクションがFPS風に別系統になっており、ダンジョンなどでは攻撃とドアの開閉といった一連の操作を同じボタンでできない。以前の作品とは違う操作体系にゲーム開始当初はやや手間取った。 また、装備画面やショップ画面でアイテムを複数同時に扱えないことなどもストレスがたまった。ただし、今作ではキーコンフィグが可能なので、慣れと工夫次第では、かなりプレイしやすくなる。もし十字キーで移動の操作をするならば、ドアを開けたり、アイテムを得たりといったアクションキーを右Ctrlキーに割り振って左手小指で押すようにしたら、移動や攻撃、ドアの開閉や宝箱の開閉もスムーズに行なえる。
また、これまでのシリーズ作品には世界3大チーズを集めるクエストやカードゲームのチャンピオンを目指すクエストなどがあったが、今回は、信者達がグワグワと鳴く怪しげな「アヒル教団」が登場するなど、一種独特のユーモアが光っている。MM6でプレーヤーに鮮烈な印象を与えたニコライ王子が登場して、サーカスへの職を探していたり、シリーズのファンを喜ばすような、ちょっとしたお遊びも好ましい。 MM9はマイト&マジックシリーズのポイントである、物語性豊かなクエストが満載だ。次から次へと新たな事件やイベントが起こるため、プレイしていて飽きない。また、冒険の進み具合とモンスターの強さなども良く考えられていてゲームが進めやすく、クエストを解決してキャラクタの成長を楽しみながら、じっくりといつまでもプレイできた。文字が見づらいなどグラフィック的に難はあるが、内容やゲームバランス的には手堅くまとめられており、シリーズ通してのファンも安心してプレイできるクオリティである。じっくり遊べるシングルRPGが好きならば、MM9はまさしくそんなタイトルだ。 ちなみに、今回紹介したのは日本語マニュアルつきの英語版だが、日本の発売元イマジニアががんばっており、日本語マニュアルつき英語版の購入者は、夏発売の完全日本語版へ2,000円でアップグレードするサービスを行なう予定だ。しかも、2002年4月26日から2002年5月31日のキャンペーン期間中に日本語マニュアルつき英語版でユーザー登録すると、アップグレードが無料になるという。
また、アップグレード版ではない完全日本語版にはゲームに役立つ特製グッズが同梱されるとのことなので、アップグレード版(つまり今、マニュアル付き英語版を買う)では金銭的なメリットが、完全日本語版の単体パッケージでは攻略やプレミアグッズといった要素でのメリットがあるわけだ。MM9を購入を考えている人は、どちらを買うかよく検討してほしい。
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□「マイト&マジック9」公式ホームページ http://www.imagineer.co.jp/pc/products/mm9/ □関連情報 【4月9日】イマジニア、「マイト&マジック9 英語版」から完全日本語版への無償アップグレードキャンペーンを実施 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020409/mm.htm 【4月4日】イマジニア、「マイト&マジック9 英語版」から完全日本語版への無償アップグレードキャンペーンを実施 http://game.watch.impress.co.jp/docs/20020404/mm9.htm (2002年4月30日)
[Reported by 西尾ゆき] |
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